目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
という訳で、やって来ました、孤島です。例によって一瞬の内に辿り着いた。
今はベースキャンプに居るのだが、快晴である。超良い天気。青空が眩しいぜ。
辺りの状況はゲーム時代と大差は無い。
大きなテントに、4人は寝られそうなベッド。渓流のに比べると、少し固そう。入り口の両脇には燭台が置いてあるが、火は着いていない。
隣には赤色をした納品ボックス。その向かいには青色の支給品ボックス。
低層断崖から少し離れた先には、小さな離れ小島もある。明らかに人の手が加わっているのでは、という岩があちこちに突き刺さっている。大きさはマチマチ。遺跡か何かがあったのだろうか。
そこから先は、辺り一面見渡す限りの海。ふつくしい。絶景だぜ。
「あっ、エクシアさん!」
背後から声。振り返ると、テントの脇からリリーとサニーの二人が姿を現した。一緒に居なかったという事は、別々に此処へ来た事になっているのか…?
プンプンと若干怒り気味のリリーから話を聞いてみると、集会所を出た所で俺の姿を見失ったのだとか。マジかよ。恐るべしゲームシステム…。
それで彼女達は、港から船で此処まで来たのだという。いざ着いて見れば、孤島に他の船は見当たらない。
発つ前に港で聞いたらしいが、他に船は出していなかった。どこぞの漁船に便乗した訳でもない。
一体、俺はどうやって孤島に辿り着いたのか。
………。
……えーっと…。
「……泳いで…?」
「お、泳いで来たんですか!?」
「…凄い…船でも…1時間は掛かる…距離なのに…」
そんなに離れてんのかよ!?
「船より速く泳げるなんて、エクシアさんは凄いですね! 何か速く泳ぐコツとかあるんですか!?」
「あー…、えっと……それはだね………潮の流れが速い海域があってー、……」
「それに乗って泳いで来たんですか!?」
「…私達、も…知りたい…です…」
「えっ!? あー、いや……えっと……、その……かなり危険だから、教えるのは…ちょっと…」
「成る程、泳ぎが得意な人でなければ不可能なルートなんですね!」
「う、うん……
「…? …今…何か…言いました…?」
「いんや何でもないよ!」
「ところで、泳いで来た割には余り濡れてないですね…?」
「は、早く来すぎちゃってさ! 乾かしたんだよ!」
「そうなんですね! 流石です!」
嘘が嘘を呼ぶ。まさしく嘘八百。
このままでは、いつ嘘がバレるか解らん…! 強引にでも話を逸らさなければ…!
「そんな事より、見てご覧よ! 孤島の景色って美しいと思わない!?」
「そうですね! 私達、孤島へ来るのは初めてだったんですけど、とっても綺麗な所だと思います!」
「…絶景…です…」
よし、何とか話を逸らせたぞ。二人ともチョロくて助かった。
そして、孤島の景色が絶景で助かった。
常夏の島と言われるハワイ、とまではいかないが、それでも美しい景色が広がっている。
見ろよ、空にはカモメが飛んでるぜ。ゲーム時代では、翼を広げたまま左右上下にゆらゆらと空中を漂っていただけだったが、この世界ではちゃんと羽ばたいている。何とも気持ちよさそうに飛んでいるじゃあないか。
しかし、帰りにも同じ様に言い訳を考えておかなきゃならないのだろうか。すんごい面倒くさい…。どないしよ…。
「ご主人も大変だな」
「ああ、うん━━━うんっ!?」
━━━魔理沙とチルノが其処に居た。
…いや…っ…おまっ、おまま、お前ら、何で…!?
「お、お前ら何でいるの…!?」
「何でって…オトモアイルーがハンターについて行くのは当然だろ?」
……いや。いやいや。
そういう事でなくてね!? ハンターが3人居るんだからオトモが入ってきちゃダメだろ!! しかも2匹も!!
なんつぅかこう……ダメだろ!?
………と思ったけど、まぁいいか。
この世界がゴチャゴチャなのは今更だし、これからの狩りが楽でいい。
うん。気にしない事にしよう。そうしよう。
人生は前向きに生きねば損なのだ。
因みに、オトモ達は瞬間移動システムの存在を知っている様だ。ゲームシステムのお陰である、という事は解っていない様だが。
「ところで、二人はオトモアイルーを雇ってないの?」
「あ、いえ、それは…その…」
「…お金、余裕が無い…」
……、……そうでした。ちょっと考えれば解るだろ俺の馬鹿…。何度同じ失敗を繰り返すのか…。
……魔理沙、足を踏むな。チルノも真似しなくていい。
「とりあえず、行こうか」
強引に話題を終わらせ、先へと進む事に。
まず、細く短い傾斜を上がった所にある、人が立った状態でギリギリ通れる穴蔵に入って奥へと進んでゆく。中は真っ暗で何にも見えない。
手探り足探り━━穴とかあったら危ないので━━で慎重に進んでゆき、暫くすると外の光が見えてきた。
穴蔵から抜け出た先は、緩やかな傾斜が続く場所。すぐ左手には、大きく頑丈そうな木製の門が構えている。木の板で打ち付けられており、開きそうにない。
とりあえず、右手の方へ傾斜を上がってゆくと、開けた場所に出た。地図でいう、エリア1番である。
断崖から見える景色の美しき事。絶景だよ。孤島には絶景スポットが多い。素晴らしい景色だ素晴らしい。
「綺麗ですねぇ…」
リリーがウットリした様に呟く。美しい自然に魅力されている様だ。サニーも同様。
ゆっくりして行きたい所だけど、そうも言ってられない。遊びに来た訳ではないのだ。
2人と2匹を引き連れ、真っ直ぐ進んでゆく。今度は緩やかな下り坂。エリア2番へと続く道である。
これをどんどん下ってゆく。
どんどんどんどん、どんどん…どんどん……。
……。
な、長ぇよ! エリア2番に辿り着くのに10分近く掛かった。
ゲームではエリア間の移動がカットされていたから良かったけど、現実は非常に厳しい。
体力のあるハンターの身体で良かった。もしも自分の身体だったら、この移動だけで死んでる。矢っ張りハンター凄ぇ。
新人であるリリーとサニーでさえ、ちゃんとついて来られるんだもんな。本当に凄ぇ。
さて、2番へやって来て、漸く辺りが平地となった。
左手の方には小さな滝があり、その水が川となってエリア5番の方へと流れていっている。
また、3頭のアプトノスが居る。内1頭は小さく、まだ子供だ。その辺に生える草をもそもそと食べている。ゴッツい尻尾してんなぁ。
まぁ、コイツらに用は無いので、無視して先へ進む。
僅かに水の張った細い道が続き、足首辺りまでだった水深が、膝の辺りにまで到達。更に少し進むと、漸くエリア5番に辿り着いた。エリア2番よりも少し広い。
右側の壁に沿って浅い川が続いている。この水は2番から流れてきたものではなく、更に奥の9番から流れて来ているものだ。
逆に中央から左側は陸地。岩壁に挟まれた細い道がある。其方をずっと進んでゆけば、僅かな緑とモンスターの骨が散らばるエリア6へと辿り着く。彼処は多分、鳥竜種の巣だったと思う。
が、其方へ行く必要は無い。
何故なら、このエリア5番にターゲットであるクルペッコが居るからだ。まだ此方に気付いておらず、浅瀬の中を見詰めながら呑気に歩いている。
……魚を探しているのだろうか。だったらエリア10にでも行けよと思うが。
まぁ、兎も角だ。
「魔理沙、チルノ。手出しは一切するなよ」
「えーっ!? 何でだよ!? 折角ついて来たのに!?」
「そーだそーだ!」
「リリーとサニーに弓の立ち回りを教える為だよ」
2匹は渋々ながら納得してくれた。
「リリー、サニー。今から私の立ち回りをよ〜く見ていてね」
俺は真ユクモノ弓を展開しながら、クルペッコへ向かって走り出した。