目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
「二人共、ついて来て」
二人を引き連れ、加工屋までやってきた。
「あぅあぅ! よぅ来たなぅ」
そう言って出迎えてくれたのは、背丈が俺の胸辺りまでしかない、小さな爺さん。耳が尖っている。多分、竜人族とやらなんだろう。知らんし興味無いけど。
「大至急『真ユクモノ弓』を二つ揃えて頂戴」
「1時間程掛かるけんどなぅ。構わんけぇ?」
「構わないわ」
「よっしゃ。ぅお〜い! レベッカやぃ!」
爺さんが店の奥に向かって叫ぶと、これまた小さな少女……というか、幼女が現れた。爺さんと同じくらい小さい。
10歳前後だろうか。桃色の髪をしており、腰辺りまで長く伸ばしている。瞳の色も髪と同じ。
服装はというと、黒のタンクトップに赤の作業用ズボン。同じく赤の作業着は腰に巻いている。
この幼女も竜人族なんだろうか。案外、年上だったりするのかも。
あ、因みにこれから人と話す時は女言葉で喋る事にした。女になってしまったので、女の子として生きていこうかと。
俺、女の子になります!
既にツインテールだし。あんなに長くないうえに赤くもないけど。
そんな事はどうでも良くて。
幼女が俺の姿を見るなり、
「あ、エクシアさんじゃないですか!」
と此方へ駆け寄ってきて━━━あと数歩分程度の距離で足がもつれ、俺の身体に飛び込んできた。危ない。
「ご、ごめんなさい…」
「ああ、怪我は無い?」
「はい、大丈夫です! …えへへ」
はにかみながら俺の身体に腕を回す幼女。
何故抱きついてきてるんですかね…。懐かれているのだろうか。幼女に好かれてもあんまり嬉しくない。どうせならジンオウちゃんやナルガちゃんに……げふんげふん。
「こりゃぁ! レベッカ! さっさと離れぇ!」
「ぁ〜ん…!」
爺さんが幼女の襟首を引っ張り、引き剥がしてくれた。
で、この幼女。レベッカちゃんとは何なのか聞いてみると、爺さんの孫娘らしい。年は見た目通り10歳だった。もうじき11歳になるとか。将来は鍛冶師になりたいらしく、爺さんの元で修行を積んでいるんだって。へぇー。
なので経験を積ませる為に、今後はレベッカちゃんが武具製作を請け負うとの事。
「それは、大丈夫なのですか…?」
不安そうな声を発したのはジンオウちゃん。まぁ、普通そう思うよね。俺も思ったし。
対するレベッカが憤慨する様に声を荒げる。
「失礼ですね! 私は5つの時から鎚を握って研鑽を重ねて来たんです! ハンターさんの装備の作製や調整だって行っています! 小さいからって馬鹿にしないでください!」
小さいのは竜人族だからじゃないの?
いや、竜人族でも背の高い人は居るか…? よく解らないしどうでもいいや。
そんな事より、
「レベッカ、ちょっと聞いてほしい。例えばの話だけど、狩りを始めて数ヶ月程度のハンターがいたとしよう。そのハンターがアカムトルムの様な超大型種を狩りに行くと言ったら、君はどう思う?」
「そんなの、無謀にも程がありますよ! アカムトルムなんて、エクシアさんの様な超一流のハンターでないと…!」
「まぁ、普通はそう思うでしょう。しかし、そのハンターがもしも俺…じゃない、私と同じ技量を持っていると言ったら、君は信じられるかい?」
「……、……それは…」
言い
まぁ、ゲーム的に考えると、数ヶ月もあればベテラン並みの腕にはなれるけど。勿論、人によって個人差はあるだろうがね。
どうでもいい話だが、上位のアカムトルムは封龍宝剣C程度の強さがあれば討伐出来る。2ndをプレイしている時によく『アカムチャレンジ』とか言って、色々な縛りを加えて討伐していたものだ。裸でアカムを倒せるか、とかね。それなりの装備があればアカムは狩れるのである。駆け出しハンターでも、討伐は可能だろう。
話が逸れたな。
まぁ、兎に角だ。俺が何を言いたいのかというと、
「レベッカ。信頼とは作るものではなく、生まれるものなんだよ。今は人から軽く見られるかもしれないが、君がコツコツと仕事を積み重ねていけば、いずれは誰もが認める立派な鍛冶師になれる。もしも君が幼いからと軽んじる人が居たのならば、仕事で見返してやればいい。そうすれば、その人は君の事を見直すだろう。君の腕が確かならば、それが出来る筈さ」
「……エクシアさん…」
レベッカが俯いて僅かに震えだした。
やべ、言い過ぎたかな…。っていうか、俺は何を偉そうに説教臭い事をほざいているのか。
どうしよう…。泣くのかな…泣いちゃうのかな…。矢ッ張り子供は苦手だ…。
そして、数秒程してからレベッカはバッと顔を上げ、
「感激しました!」
━━━何か感銘を受けたらしい。更に続けて、
「私今まで調子に乗っていたのかもしれません 自分には確かな技量があると思って相手のハンターさんの事を考えていませんでした そうですよねよく考えたらハンターさんからすれば私はヒヨッコ同然なんだからいきなり信頼される訳がないですよね そんな事にも気付けないなんて私はまだまだだなぁ そして矢っ張りエクシアさんは凄いです!!尊敬します!!大好きです!!いつかエクシアさんの装備を製作するのに相応しい鍛冶師になれるよう精一杯頑張ります!!」
「……アッ、ウン」
マシンガン過ぎて殆ど何言ってたのか理解出来なかったけど、とりあえず俺の言いたい事は伝わった様なので良しとしよう。いい子で良かった。
レベッカはジンオウちゃんの方へ向き直り、
「先程は大変失礼致しました。私の力量をお見せしたいので、是非ともこの仕事を請け負わせて頂けませんか?」
「あ、いえ、私こそ失礼しました…!」
急に謝られてテンパるジンオウちゃん。可愛いです。
ここでずっと黙っていたナルガちゃんが「あの…」と口を開いた。
「依頼したの…私達じゃなくて、エクシアさん…」
「はぇ!? そうなのですか!?」
そうなのですよ。依頼した時、奥に居たレベッカちゃんは事情を知らないのだった。
「ああ、依頼したのは確かに私だけど、弓はこの二人用ね」
「えっ!?」
「…!?」
今度はジンオウちゃんとナルガちゃんが驚いた様な表情を浮かべる。
「え、エクシアさん!? ど、どういう事です!?」
「どういう事も何も、これから君達には『真ユクモノ弓』を使って狩りをしてもらう為だよ」
「……でも、エクシアさん…私達…お金が…あんまり無い…素材も…」
「ああ、別にいいよ。それは私が出すから」
「ええっ!? いや、エクシアさん!? 『真ユクモノ弓』って製作費用12000zですよ!? 二つ合わせて24000zです!! そんな大金を…!」
「構わないよ、その程度」
製作に必要な素材は『ユクモチケット』『ユクモの木×10』『ドラグライト鉱石×10』の3種類だが、ユクモチケットとユクモの木はそもそも使い道が殆ど無いし、ドラグライト鉱石は300個近くある。
また、お金に関してもこんな事を言うと感じ悪いだろうが、24000zなどハッキリ言って
「エクシアさん、素材を戴いてもよろしいですか?」
と、レベッカ。
そうだった。ゲームじゃないんだから、その場でアイテムボックス内の素材を渡せる訳がない。
とりあえず、俺の双肩に乗ったままコケシと化している魔理沙とチルノに持って来てもらう。2匹は嫌がる事なく引き受けてくれた。ええ子達じゃ。
1、2分程で取ってきてくれた。近いしね。
そのまま素材をレベッカに渡す。1時間程で出来上がるとの事なので、俺達一向はそれまで時間を潰すべく加工屋を後にした。
『肉焼きセット』を『焼き肉セット』と間違えて読んでいたのは私だけですかね?