目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした   作:勇(気無い)者

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またしてもノリと勢いでやった。後悔と反省をしている。


気が付いたらユクモ村に居たけど、いきなり緊急指令が下された

 その日、俺はいつもの様に仕事を終えて家に帰り、飯を食って風呂に入ってからモンハンをプレイしていた。

 今日は金曜日で明日は休みだから、何も気にする事なくゲームに没頭出来る。やったぜ。

 プレイしているのはモンスターハンターポータブル3rd。PSPで発売された、最後のモンハンである。

 何でそんな古いものをやっているかと言うと、3DSに機種が変更されて以降、新作のモンハンをやっていないからだ。

 何故かって?

 俺は弓使いなのだ。弓以外では碌にモンスターが狩れないヘタレなのだ。逆を言えば、弓を使えば何でも狩れるという事なのだが、今はどうでもいい。

 問題はPSPと3DSで十字キーとスティックの位置が逆だという事だ。これでは俗に言うモンハン持ちが出来ないではないか。

 重ねて言うが、俺は弓ハンターなのだ。モンハン持ちが出来なかったら死ぬしかないじゃない! 何も狩れんわ!

 まぁ、噂によると3DS以降はロックオンシステムが追加されたらしいので、プレイするうえでは問題ないのだろう。

 でも何か嫌だ。

 結局の所、つまらない意地であった。

 

 さてさて、そんな事はどうでも良くて。

 昔やってたデータはプレイ時間が3000時間超の遊び尽くしたデータなので、今は新しく始めている。と言っても、既にプレイ時間は318時間になっているが。称号を埋めようとチマチマ頑張っている所である。

 キャラクターは女性。男の装備は矢鱈とゴツゴツしていて好きではない。

 とりあえず資金繰りの為にアカムでも一発やるべぇなと、装備やアイテムを整え、その前に農場行ったりオトモアイルーを確認したり加工屋で武具を見たり……なんて事をしていたら睡魔が襲ってきた。

 いや、大丈夫だ、問題ない。眠気なぞ、クエストが始まってしまえば吹き飛ぶさ。

 そう思ってクエストを受注し━━━結局眠ってしまった。

 

 ああ、俺もモンハンの世界に行けたらいいのになぁ…。

 

 そんなくだらない事を考えながら、俺の意識は夢の世界へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「……んぁ…」

 

 目が覚めた。寝ぼけている意識が徐々に覚醒してゆく。

 ぼやけた視界のピントが合わさり━━━

 

「……あぇ?」

 

 目の前には、見知らぬ天井が広がっていた。

 ガバッと身体を起こし、辺りを見回すと━━━矢張り見知らぬ部屋。

 

「……え…あ…え…っ!?」

 

 な、何だここは何処だ!? 俺は何でこんな……。

 ん…?

 待てよ。見知らぬと思ったけど、何だか見覚えがある…。

 とりあえず、俺が居るのはベッドの上。赤いシーツが敷いてあり、藁で編まれた枕が置いてある。

 すぐ左隣は物が乱雑している。ツボの中にピッケルが数本入ってたり箱や道具袋が並べられていたり。

 右方を見遣る。

 左から順に、ちょっとだけ口の開いた大きな箱が置いてあり、その横には桶が置かれている。中には洗濯板と青い布が入っている。更にその横には箒が立てかけてあり、すぐ隣には竈に火がついている。更に更に横には薪が纏めて置いてあり、その手前には紙の貼られたボード。猫の飾りが付いており、手には釣竿が握られている。

 ベッドから降りて、更にその先に広がる外の景色を見遣る。切り立った崖が広がっていた。あと、紅葉の木が生えている。綺麗。

 

「此処って……もしかして…!」

 

 反対方向へ駆け出し、外へ出る。

 其処には、矢張り見知らぬ━━━いや、よく見知った村の光景が広がっていた。

 まず、すぐ左に小さな婆さんが立っている。背には身の丈の倍以上はあろうかという大きな籠。中から猫が顔を覗かせている。可愛い。

 その先には、階段が伸びている。二十段程度で、上には木造の建物が建っている。階段の前に鳥居の様な建造物があり、その脇に設置されたベンチの上には艶やかな着物に身を包んだ女性が座っている。

 その女性の背後には、小さな温泉。湯気が昇っている。

 すぐ近くには橋が掛けられ、その手前には荷物を背負った男が立っている。何となく行商人の印象を受ける。

 男の左隣には、これまた小さな温泉。猫が頭にタオルを乗せて湯に浸かっている。猫の癖に。

 その横には下へ続く階段があり、幾つか建物が並んでいる。

 

 其処まで確認した所で、俺は再び元の建物の中へと引っ込んだ。そのまま入り口の前で呆然と突っ立っている。

 ……どう考えても、今の光景はモンハン3rdのハンターが拠点とするユクモ村だった。カメラの視点ではなく、自分の視点だったから理解するのに時間を要したが、間違いなく此処はユクモ村だ。俺はユクモ村に居るのだ。

 夢かと思い、頬を思い切り抓ったら凄く痛かった。ちょっと涙が出てくるぐらい痛かった…。

 

「夢じゃ……無いのか…?」

 

 フラフラとした足取りで近くのベッドへ腰掛け、自分の身体の異変に気付いた。

 

 ━━━胸がある。

 

 男である筈の俺の胸元に双丘があるのだ。服装も女性用のインナー、ミナガルベストを着ていた。サラシの様な胸巻きにショートパンツ一枚。二の腕辺りにバンドを巻いている。

 恐る恐る胸元の双丘に手を触れてみる。

 

「……柔らかい…」

 

 そして、ハッと気付く。

 またも恐る恐るに足と足の間、つまり股間に手を伸ばす。

 

「……ねぇ…」

 

 男ならある筈のアレが無い。大事なアレが無くなっている。

 

「た……玉がねぇ!」

 

 思わず叫ぶ。

 いや、無くなったのは玉だけではない。竿の部分も無くなっている。俺の息子が丸々消失しているのだ。

 

「嘘だろ……」

 

 意気消沈。まだ一度も使った事もないのに無くなってしまった……。別に使う予定も無かったけどね……。

 そういえば、声も全然違う。女性らしく可愛い声に変わっている。

 一体どうしてこうなった。まさか、自分の使っていたキャラクターに憑依合体でもしてしまったというのか。シャーマンキングじゃあるまいに。

 

「エクシアさん!」

「ふぁっ!?」

 

 突然、家の中へ女性が飛び込んで来た。思わず変な声を出してしまった。

 二十歳ぐらいであろうか。割に可愛らしい顔立ちをしている。

 服装は狩衣をベースに色々と弄った様な衣装。というかどう見てもギルドの受付嬢が着る撫子装備である。色は薄い青。

 という事は、この人はギルドの受付嬢?

 因みに、エクシアとは俺のキャラクターの名前。由来は勿論、ガンダムだ!

 そんな事はどうでもいいのだ。

 受付嬢らしき女性が此方へ駆け寄って来た。

 

「大変ですエクシアさん! アカムトルムが出現しました! このまま放っておくと村の近くまで降りて来て大惨事になるかもしれないとの事です! 至急、討伐へ向かって下さい!」

「………えっ」

 

 モンハンの世界へ足を踏み入れ、数分。

 いきなりアカム討伐指令が下されたのであった。

 


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