半人半霊の魔法界生活   作:くるくる雛

6 / 8
どうも皆さんくるくる雛です。
最近また小説の意欲があがってきて、少し投稿速度が上がるかも?
まぁ、他の作品も書いていますから、極端に変わることはないかもしれませんが。
それでは今回もどうぞ!


第6話 少女、実戦を経験する

「…はぁ」

「妖夢大丈夫?最近ため息が多いわよ?少し手を止めて休憩したら?」 

 

ホグワーツに来て早二ヶ月、現在私は疲労の極致にいた。

クィディッチの練習に色んな科目の大量の宿題、自分自身の刀の訓練に宿題の後にも勉強をするハーマイオニーに習って自習をし、さらには何故か少し気になってあの赤い石の事を図書室で調べたりとホグワーツでの生活はとても忙しいものでした。

ですが上にあげたような努力による疲労は昔からのことなどで、普段通りに過ごしていれば特に問題もないものでしたがそれ以上の問題が私にまとわりつき、私の精神力及び体力を奪って着実に疲労をあたえているのです。

そしてその理由は…

 

「ええ…大丈夫ですよ。いつもこのくらいはやっていますので…」

「でも貴方最近疲れが顔にでてるし…まさかまたあの二人がなにかしたの?もしそうだったら私がガツンと言ってあげるわよ?」

「あ、いえ。別にそういうわけでは…」

「そうなの、ならいいんだけれど。でもそうじゃなくても悩み事くらい聞くわよ?だってあなたの友達だもの!」

「あはは…ありがとうございます…」

 

その理由はこのハリー、ロンとハーマイオニーの仲があまりよくないことだ。

そもそもの発端はこの前のハリー達が例の4階の部屋に行った日からだった。

あの時からハリー達はハーマイオニーに対して堅物というイメージが定着して少し避けるようになり、ハーマイオニーはハーマイオニーであの二人を見張らないと寮の点数がどんどん減らされてしまうと考え、監視しているそぶりが多くなっていました。

そして私は両方と親しくしているので板挟み、という状況のせいで絶賛心労増大中な訳です。

しかし、それを本人達に言ってどうにかなるわけでもなく、ずっとなんとかできないかと考えて疲労もたまるという状況に至るわけです。

 

「…そういえば今日の妖精の魔法は何を学ぶのでしょうか。」

「確か物を浮かせる魔法と言っていたわ。」

「物を浮かせるですか、また魔法と言われればの代名詞のような魔法ですね。というよりこんな序盤で学ぶということは有名なのにそんなに難しくない魔法なんですね。」

 

そんな感想を抱きながら寮を出て教室へ向かおうと廊下へと出ると何か甘い匂いがしていることに気が付いた。

この甘い香りは…

 

「カボチャの匂い…でしょうか?しかしまた何故?」

「あら、妖夢日付を忘れたの?今日はハロウィンなのだからカボチャのパイを焼いているのよ。」

「ハロウィン…?ああ、そういえばこっちにはそういう文化があるんでしたね。日本ではあんまりすることがないので忘れていました。」

「あら、日本ではハロウィンはやらないのね。なら他に何かしたりするのかしら?」

「…紅葉狩り?」

 

そういえば日本にはあまりお祭りのようなイベントって少ないなと思いながらそう言葉を返すのでした。

 

 

 

 

 

「さぁ、今回の授業は魔法の基礎でありながら皆さんが期待していたであろう物を飛ばす魔法を勉強します。」

 

そのフリットウィック先生の言葉に皆は早く試したいと言わんばかりに杖を持ち出しウズウズし始めました。

しかしこの魔法は序盤で学ぶ魔法にしては発音と手首の動きの正確さが求められるらしく、ハリーと組んでいたシェーマスはうまくいかない、と杖で羽を小突いて火をつけてしまったりロンはどうにか飛ばそうとしきりに腕を振りまわしていた。

 

「杖を振り回さないで、危ないわ!それに発音も違う。ウィンガーディアム レヴィオーサよ。あなたのはレヴィオサーになってるわ。」

「そんなに知っているなら君がやってみなよ。ほら。」

 

とロンが嫌味を混ぜながらハーマイオニーに言うとハーマイオニーはコホン、とのどの調子を整えて呪文を唱えた。

 

「『ウィンガーディアム レヴィオーサ』!」

 

その呪文とともにハーマイオニーはしなやかに手首を動かし、羽を浮かばせてみせる。

その様子を見て先生は拍手をしてほめたたえましたが、私は隣の不機嫌なロンの様子を見てああ、また一嵐ありそうです。と心労を加速させるのでした。

 

 

 

 

 

「だから誰だってあいつには我慢できないっていうんだ。まったく悪夢みたいなヤツさ。」

 

次の授業の教室へ向かいながらロンがいらだちを吐き出すかのように口調を荒げながら話す。

私はやっぱりこうなりましたか、と予想通りだったことに少し落胆しながらその話を聞いていると誰かがハリーにぶつかり、急いで追い越していきました。

ぶつかっておいて謝りもしないのか、と少し憤りを感じてそのぶつかった人物を見るとその犯人はハーマイオニーでした。

しかも彼女は珍しく泣いており、そのまま何処かへと歩き去っていきました。

私は一瞬追いかけるべきかと考えましたが今は一人にさせておいた方がよさそうと判断し、次の授業へと向かうことにした。

 

「…今の聞こえたみたいだね。」

「構うもんか。あいつだって自分に友達がいないことくらいもう気付いてるだろうさ。」

「おや、私は彼女の友達ですよ。だからいないわけじゃありませんよ。」

 

私がそういうとロンはバツが悪そうな顔をして次の授業へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

その後ハーマイオニーは次の、いやその日の授業に参加することはありませんでした。

流石に私も心配になっているとパーバティがラベンダーにハーマイオニーが女子トイレでないていることを話しているのを小耳にはさんだ。

その話を来たロンはまた少しバツの悪そうな顔をしましたが、大広間でハロウィーンの飾りをみた瞬間に笑顔になり、ハーマイオニーの事を忘れてしまったようでした。

しかし私はその飾りを見てもハーマイオニーの事が気になってしまいハーマイオニーを探しにいくことにしました。

 

「といってもお手洗いとしか聞いていないのでどこのお手洗いにいるのでしょうか…」

 

もう少しハッキリ聞いておいた方がよかったかな、と考えながらしらみつぶしに見回っているとハーマイオニーの泣く声が聞こえ、ようやく発見することができた。

私はあまり刺激しないよう、まずは軽く扉をノックして中にいるハーマイオニーに意識をこちらへとむけさせる。

 

「…誰?」

「私です、妖夢です。こんなところでどうしたんですか?もう夕飯が始まっていますよ?」

「…いらない、一人にしてて。」

 

そう答えるハーマイオニーの声はとても弱く、まだ立ち直れてはいないことを暗に私に告げていた。

こうして扉の外から話していても開けてくれる可能性は薄いでしょう、だけどこのまま放置することはするべきではない。

だから

 

「そうですか…けど『悩み事くらい聞くわよ?だってあなたの友達だもの』」

「ッ!」

 

朝、ハーマイオニーが言ってくれた言葉を私はそのままハーマイオニーへと送り返す。

しかしハーマイオニーは動揺こそしたもののまだ扉を開ける気配はないので仕方ない、と私は背中を扉にくっつけてハーマイオニーへと語りかける。

 

「お昼のロンの言葉を気にしているのでですか?」

「…うん。」

「そうですか…」

 

やっぱりと思いながらどう切り返そうかと私は頭を巡らせていると、まるで懺悔するかのような声でハーマイオニーは扉越しの私へと話しかけてきました。

 

「…私の性格ってきついでしょう?」

「まぁ、否定はしませんがそれがなにか?」

「うん…自分でもわかってるの。でも私自分ができるから他の人もできるって思っちゃっていつもきつく言ってしまうの。」

 

確かにハーマイオニーにはその気があります。今日の魔法の授業なんかはそれの最たる例だ。

けど私はそれを告げずにただ黙って彼女の話を聞くことにする、恐らくまだ私に向けての言葉ではないから。

 

「でも、止めれないの…何故できないのとだけ思って相手の事を考えてられなくて。ロンの言う通りよ、誰も私なんか我慢できな「それは違いますよ。」…え?」

「少なくとも私は我慢できない訳ではありません…っていったら語弊がありますが、けれど私は貴方の言葉に一々我慢なんてしていませんよ。」

「嘘、それは同じ…」

「同じ部屋だからしかたなく言っているわけでもありません。さっきも言った通りそして今朝貴方が言ってくれたように私たちは友達です、その友達の言葉に我慢なんてしませんよ。」

「…」

 

私はそう告げるもののハーマイオニーからの返事がないので、私は自分勝手に話を進める。

 

「本当に我慢しなければならないような気持ちでしたら、素直に文句もいいますよ。だけど友達だから、自分の事を思って言ってくれているとわかっているから私は何もいわないんです。だから我慢なんてしていませんし、むしろ感謝すらしていますよ。」

「妖夢…」

 

私が必死に語り掛けると少しハーマイオニーの私を呼ぶ言葉が心なしか柔らかくなり、カチャリと扉の鍵が開く音がした。

私はすぐに扉に寄りかかっていた体を起こし、扉へと向き直る。

すると今まで閉じていた扉をハーマイオニー自身が開き、少しだけ元気が戻ったような顔を私へと見せてくれた。

ひとまず私は何も言わずに彼女に手を差し出した。

 

「さぁ、お腹も空いたでしょうし夕飯を食べにいきましょう。早くしないと時間すぎちゃいますよ。」

「うん…ねぇ妖夢」

「はい?なんでしょうか?」

「その…ありが…!? 妖夢後ろ!」

「え…?後ろになにか…!?」

 

瞬間、私は硬直してしまった。

なぜならばそこには体が全身薄緑色で棍棒を持った巨大な生物がいたからです。

私はすぐさま自分の全身に動くように命じ、ハーマイオニーと供に後方へと下がりながら袋から自分の刀を取り出して構えました。

 

「なんですかコレ…!?なんでホグワーツの中にこんな生物が!」

「妖夢、これはトロールよ!闘わないずに逃げるべきよ!!」

「そう言われましても…!」

 

私たちが逃げる為の出入り口は件のトロールに塞がれてしまっている。

真正面から戦わないにしてもどうにかして意識をそらさないと逃げることもままならない。

そう判断して私はハーマイオニーに小声で話しかけた。

 

「ハーマイオニー、私がスキを作りますので状況を見てトロールの後ろの扉から逃げてください。」

「え!?でもそれじゃあ貴方が危険よ!」

「こうみえても私は強いんです。多分ハーマイオニーが逃げて先生方を呼んでくるまでは耐えることができます。」

「でも貴方が危険なことに変わりは…」

「それじゃあお願いしますよ!」

 

私はその言葉でハーマイオニーとの会話を打ち切ると刀を脇構えにしてトロールへと突貫を開始しました。

するとトロールは私が刀で防御しにくい左半身側に棍棒を打ち付けてきました。

ロンはまるでトロールの事を馬鹿の代名詞のように告げていましたが、相手の弱点を狙う知性はあるようですね。

後ろからハーマイオニーの危ない!という言葉を聞きながら私はそんなことを思い、その横から迫りくる棍棒を私は走り高跳びの背面飛びと同じ要領で飛び越え一気にトロールの懐へともぐりこみます。

 

「せやぁあッ!!」

 

裂帛の気合いと供に足を一閃…しようとしたものの人とは比べようもない肉の量に少し深めの切り傷をあたえただけで、とてもいい一撃とはいえる物にはなりませんでした。

その事実に軽く憤りながらトロールが痛みにもがいている内に一度距離を置きます。

もしあのまま追撃して一撃でもあてられれば私は致命傷、もしくは戦闘不能にさせられるでしょうから。

けれどこのまま、押せば勝てるかもしれないし、この隙にハーマイオニーは逃げられるはず、とハーマイオニーの方に視線だけを向けるとなんと彼女はその場から動いておらず、驚愕の顔を向けておりました。

一体何が…ッ!

そう思いながらハーマイオニーの視線の先を見ると、なんと先ほどまで開いていた扉が閉まっていたのです。

 

「一体誰が…」と一瞬犯人を探ってしまいますが、今はそんなことは関係ない、と頭の中からその思考を追いやります。

扉が閉められたなら今するべきことはとにかくハーマイオニーを守る事、次にトロールを倒すこと!

そう思考を打ち切り、トロールの動きに集中しなければと決めた瞬間、トロールは棍棒を下からすくい上げる軌道でハーマイオニーに襲い掛かりました。

ハーマイオニーは外にまで響くだろう恐怖の声を上げ、その場へと身を守る為の反射で座り込んでしまいました。

私はそのハーマイオニーの行動に内心で舌打ちしながら迷いなくハーマイオニーに接近して、彼女に心の中で謝りながら蹴り飛ばしました。

しかしハーマイオニーがいなくなってもトロールはその棍棒を振り払う速度を弱めず、私へと振り払いました。

 

「…ッア!!」

 

すぐさま私は刀を盾に横に回避を試みます。

しかし無常な体格差、そして力負けにより完全に回避しきれずに脇腹に棍棒を食らい、壁へと叩きつけられてしまいます。

…ハーマイオニーが立った状態で固まっていればまだ手で押し飛ばすことができたのにな、と思ってしまいながら。

 

「ぐっ…あっ…!!!」

 

そして私の体にかかった横に吹き飛ばされる力が壁に逃げると、今度は重力に従い私の体は床に落下しました。

 

「うっ…!」

「妖夢!?」

 

私がやられたのをみて、ハーマイオニは焦ったようにこちらへと向かってくる。

しかしそれは二人とも固まって危険度が増してしまう、とすぐに立ち上がろうとして…気付いた。

 

(あばら骨が折れている…!)

 

その事態に気付いた私はほぼ無意識のうちに手を当ててしまい、体をこわばらせてしまいました。

そしてそれは私の体になにか異常があるということをハーマイオニーに悟らせてしまい、ハーマイオニーはどんどんとこちらに近づいてきます。

更にその背後からは棍棒を振り上げたトロールがいて、ハーマイオニーが私の元へくれば即座に共倒れになることは必至、どうにかしなければと思考を巡らせるものの徒労に終わり、ハーマイオニーは私の元へと到達してしまいました。

そしてトロールも棍棒を振り下ろそうとしてるのを見て

 

(ああ、終わった…)

 

そう思い、諦めて瞳を閉じた瞬間に聞いたことのある声が聞こえました。

 

「こっちに引き寄せろ!」

 

その声に私は瞳を今一度開くとそこにはトロールに水道の蛇口や、木片なんかをトロールへ必死に投げて気を引かせているハリーとロンがいました。

 

「早く逃げろ!」

 

続けざまにロンは私たちにそう叫び、必死にトロールへ物をぶつけ続けます。

私はその二人の言葉に応じて、ハーマイオニーに肩を借りながら出口へと少しづつ歩きはじめます。

しかしロンのその大きな叫び声がトイレの壁に反響し、トロールを逆上させてしまったようで、唸り声を上げてロンへと向かっていきました。

 

「っ、させませんッ!!」

 

私はトロールめがけて杖がわりに持っていた刀を投てきし、トロールの眼へと深々と刺さらせました。

その瞬間ハリーは無謀か勇気か痛みにもだえるトロールの腕に飛びつき、暴れて手を上げた勢いを利用してトロールの首に手を這わし、深々と鼻の奥へ杖を突きさした。

思わず見てるこっちも痛いと思ってしまうほどの光景に目をそらしそうになった瞬間、トロールは更に暴れてハリーを振り落とそうと棍棒振り回しはじめる。

そしてその棍棒がハリーを襲おうとした瞬間、その棍棒は中に浮いてハリーに当たることはありませんでした。

 

「『ヴィンガーディアム レヴィオーサ』!!」

 

その声に反応して振り向くといつの間に取り出したのか、杖を構えたロンがトロールの棍棒めがけて魔法を放っていました。

そしてその棍棒はゆっくり浮かびながら一回転するとトロールの頭に落ちて、そのまま気絶させてしまいました。

…生き残った。

そう感じた瞬間私は今回の負傷と今までの精神疲労が一気に出たのか、急に眠くなってその場へと崩れ去ってしまった。

 

 

 

 

 

次に私が目を覚ますとそこはトイレの中ではなくなっており、自分の身はなにかやわらかいものに包まれておりました。

 

「んっ…ここは?」

 

そう呟きながら体を起こすといつもよりも起こしにくく、少しだけ鈍く痛み、気になって腹部に視線を移すと、なんと自分の腹部が包帯でまかれているのがパジャマのスキマから見え、腹部を骨折したことを思い出しました。

 

「ッ!そうだ、皆は!?…痛ッ…」

 

意識が一気に覚醒し、ベッドから降りようと掛け布団をバサッと音を立ててめくると、衝撃のせいで腹部が激しく痛みその場で悶絶するという一人芝居をしてしまった。

そうして私の痛みが少しずつ薄まって動けそうかと思った瞬間、私を囲っていたカーテンが開かれて、ダンブルドア校長が現れた。

 

「おや、起きておったか。」

「はい、と言っても今起きたばかりですが…ここは?」

「医務室じゃよ、もちろんホグワーツのな。ああ、そうじゃ君の友達は三人とも無事じゃ。もっとも君が怪我をして幾分か落ち込んではいるかもしれんがの。」

「…そうですか。」

 

私はホッ、としながら心配をかけてしまいましたか…と自分の弱さを悔いる。

傷つかないくらい強ければ皆を心配させもしなかったのに…

そう私がマイナス思考に染まっているとダンブルドア校長は私に言葉を語り掛け、思考を中断させた。

 

「そうそう、今回の件でグリフィンドールは5点減点だそうじゃ。理由は…どうやらわかっておるようじゃの。」

「ええ、あれだけ無謀なことをすれば言われなくともわかります…」

 

ハーマイオニーを助ける為という名目でトロール相手に時間稼ぎをするはずだったのに、どこか心の片隅で一撃目が当たった時に私でも勝てるかもしれないと思ってしまった。

実践なんて初めてなのにいきなり驕るなんて…!

 

「…妖夢よ、そう拳を握るものではない。自分は大切にしなさい。」

 

そういってダンブルドア校長は無意識的に爪が食い込むくらい握りしめていた私の拳に優しく手を重ね、柔らかく手を開かせました。

開いた手には赤く爪の跡が残り、痛々しくみえました。

 

「…すいません。」

 

誰に言うわけでもないのに私はそう呟く。

 

「妖夢よ、君ははまだ若い。そう自分を追い込むものでもない。」

「はい…ですが、療の皆さんには悪い事をしてしまいました…」

 

前に私が加点したのと会わせて差引き0になってしまいました…

 

「それも気にやむ必要はないじゃろう、マクゴナガル先生がハリー達に五点ずつ点数をあたえておる。なんでも幸運に対してのようじゃ。」

「幸運ですか…なら私に加点はなさそうですね。」

「そうじゃな、幸運として君に点はあたえれんじゃろう。」

 

やはり、と少しだけ落胆するとダンブルドア校長はじゃが、と言葉を続ける。

「友を助ける為に自分より大きな敵に挑んだその勇気にわしから五点を送ろう。」

「…え?」

「これからの期待も込めての。それじゃあそろそろ君の友達もじきに来るじゃろうし、老いぼれは去るとするかの。」

 

そういうとダンブルドア校長は椅子から立ち、またカーテンを開き出ていった。

…あ!そうだ!私の刀は!?

自分の体の一部ともいえる存在思いだし、焦って首を振って辺りを見回すと枕元に立て掛けるように置かれているのを発見し、ホッとしながら刀を手に取り抜刀する。

鞘から抜いた刀身は銀に輝いていて、トロールの血液などは付着してはいなかった。

…誰かが手入れをしてくれたのでしょうか。

しかし魔法界に手入れをできる人はそういないでしょうし、魔法で汚れを取ってくれたのでしょう。

…この魔法は覚えた方がよさそうですね。

そう言ってパチン、と刀をしまうとまたカーテンが開かれ、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が顔を出しました。

そして勢いそのままにハーマイオニーは私をギュッと抱きしめてきた。

…本音を言えば少し腹部が痛いのでやめてほしいのですが。

 

「妖夢!目覚めたって聞いたけどもう大丈夫なの!?」

「あう…す、少しだけ痛みますけど多分大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。」

 

私がハーマイオニーにそう告げて隣り合わせに立っているハリーとロンに目を向けると、何故か二人はばつが悪そうにこちらを見ていた。

 

「…二人ともどうしました?」

「その…ごめんなさい。」

 

そう言って二人は急に私に頭を下げた。

…って、いきなりそんなことされても訳がわからないのですが。

 

「えと、いきなりどうしました?」

 

私がそう聞くとまた二人はばつが悪そうに口ごもり、そして細々と理由を話始めた。

 

「その…ハーマイオニーから話を聞いたんだけど、君がトロールと戦ってる時に閉じ込められてただろ?」

「そういえばありましたね。」

「あれ…僕とハリーのせいなんだ。」

「…どういうことです?」

 

私が詳しく追及すると二人は少しずつ答え始めた。

どうやらトロールを閉じ込める為に二人はトイレに鍵をかけて閉じ込めたそうで、トロールに狙われた時のハーマイオニーの声を聴き、急いで扉を開けたということだったようです。

それを聞いて私は二人に頭を上げさせ、気にしないでください、と告げる。

 

「あなた方が来なければハーマイオニーをなんとか逃がせても、恐らく私は死んでいました。だから謝罪なんていりません、むしろ…助かりました、ありがとうございます。」

 

そう言って頭を下げると今度はハリーとロンが私の頭をさげるのを止め、ロンが私がトロールの目に刀を投げて助けた事を感謝して、そしてそれを止めて、としている内になんだかおかしくなって笑い合ってしまいました。

そしてその後、保健室担当の教員であるマダム・ポンフリーに解散させられるまで話し合い、ハーマイオニーからは暇な間に読むといいと言われながら本を借り、ハリーとロンからはグリフィンドールの皆から預かったという数種類のお菓子をもらいました。

…百味ビーンズだけは絶対に食べませんけど。

 

 

 

 

 

「…まさか一日で治るとは流石魔法界、なんでもありですね。」

 

ハロウィンの次の日、私はそんな事を呟きながら手に本を抱えて廊下を歩いていた。

マダム・ポンフリーの腕がいいのか、それとも魔法界が特殊なのかトロールに折られた骨は一晩の内に治り、いつも通り生活ができるようになったので、現在私はハーマイオニーが借りてきてくれた本を返しに図書館へと向かっていました。

…そういえば一人で最初から行動するのは久しぶりですね、最近は誰かとともに行動してましたし。

 

「それにしてもハーマイオニーの借りてきてくれたこの本は参考になりましたね。賢者の石…ですか。」

 

そう、ハーマイオニーが借りてきてくれたこの本は前に私が部屋で彼女にチラリと話した、この世界の鉱石で刃物を作ればどうなるのだろうという言葉を覚えていて、魔法界の鉱石に関する本を持ってきてくれたのです。

そしてその中には私が以前半霊を使ってみた赤い石、賢者の石の事も書いてあって積年…というほどでもありませんが、胸につかえていたものが一つ消化されました。

ハーマイオニーに心の中で感謝をしてマダム・ピンス先生に本を返し、なにかいい本はないかと図書室をなんとなく歩いていると視界の隅に咲夜を発見し、話しかけました。

 

「お久しぶりですね、咲夜。」

「あら妖夢じゃない、久しぶりね。そういえばあなたが怪我したってグリフィンドールが騒がしかったけど大丈夫なの?」

「ご心配ありがとうございます、けれどもう大丈夫ですよ。それより咲夜は何を見ていたんですか?」

「私は何か使えそうで、今の私の実力で習得できそうな魔法の本を探していたのよ。そっちは?」

「私は借りていた本を返して、代わりに何かないかと見ているだけです。その途中で咲夜をみかけたのでつい話しかけたんですよ、よければ何か良い本などは知りませんか?」

「うーん…いい本ねぇ…なら、この本なんていかがかしら?」

 

そう言って咲夜は手頃な近くの棚から一冊の本をとり出し、私に見やすいように本の底部分を私に向けて手渡してきた。

タイトルは「魔法界の名剣百選+消えた剣」というこちらの世界の剣に関しての本でした。

 

「剣…ですか。私が刀を使うから進めてくれたのでしょうけど、失礼ながら私は剣にはあまり…」

「違うわよ、そういう雑学を知っていれば魔法界でも話題には事欠かないでしょう?たまにマグルの常識が通じないみたいだし。」

「…成程、そういうところには頭が回りませんでした。」

「まあ、普通はそうなんでしょうけど、貴方は少し肩の力を抜いた方がいいでしょうしね。それじゃあ、またね。」

 

…たしなめられてしまいましたか。

他療の咲夜にまで見透かされるとは…そんなに見破られる程肩肘はってるように見えるのでしょうか。

そう思いながら咲夜の言葉にも一理ある、と何か雑学にあたる本を探していると隣りから私を呼ぶ声が聞こえ、そちらに振り向くと魔理沙が悪意を欠片も感じさせない、子供のような笑顔でたっていました。

 

「よ!久しぶりだな妖夢。」

「おや、魔理沙でしたか。私になにかご用でも?」

「いや、別に用はないんだがな。なんか暇そうだったからさ。」

「暇…まあ、特にやることもないので暇ではありますね。」

「だろ?だったらちょいと一緒にこないか?」

「構いませんが…何処にでしょうか?」

「それは行ってからのお楽しみだぜ。」

 

そう言われて私は特に疑おうとも思わずに魔理沙について八階まで行き、ただのなにもない壁の前につれてこられました。

 

「…ここで何をするんですか?もしかしてからかいました?」

「まあまあ、落ち着けって。お前をからかうのも楽しそうだが、その刀で切られたくはないんでね。」

 

そういうと魔理沙は壁の前を三度歩き回った。

すると何もなかったはずの壁に扉が現れ、魔理沙が得意気な顔でこちらを振り返りました。

 

「…なんですかこれ?」

「さあな、よくわからんが入学して次の日に見つけた面白い部屋だぜ。さ、入れよ。」

 

軽い調子でそう言うと私を中に招き入れ、中にある光景を私にみせつける。

部屋の中には様々なものがおいてあり机の上に本棚等かくっついている勉強机からは何かのパーツが整頓されておいてあるし、まともな本棚には読むのが億劫になりそうな程に本がおいてあり、また別のところには台所のような場所に物が乱雑におかれ、大きな窯がおいてあったりとなにやら複数人が思い思いの事をしているかのような部屋でした。

 

「…なんですかこの部屋は?」

「へへ、ここはどうやら必要の部屋って場所だそうだ。ホグワーツの歴史云々の本でにた項目があったってだけだけどな。」

「ふむ、でも見た感じただの勉強部屋といった感じですね。」

「ところがどっこい、例えば…あの大釜の隣を見てみな。」

 

そう言われて私は大釜の辺りを見ると、ポンッと追加でもう一つ釜が現れました。

 

「…え?」

「こんな感じで今必要な物が出てくるんだぜ。」

「ちょっと魔理沙、今日人が来るなんて聞いてないわよ?」

「…というかその人、他の寮の人よね。」

 

その声に私は魔理沙とともに振り返り、声の主を見やるとそこにはまだ会ったことのない二人の女性がいました。

一人は黄金の髪をショートにした真面目だけど優しそうな女性、もう一人は紫色の髪を長く伸ばして前は胸元でリボンでくくった、なんだか気だるげそうな人でした。

 

「まあまあ、そう固いこと言うなって。ホグワーツの学生って意味じゃ同じ仲間だぜ。ほら、妖夢とりあえず自己紹介しとけよ。」

 

そう言って魔理沙は二人の言葉を払って、私に自己紹介を促す。

一先ず私は彼女の言にに従い自己紹介をしておく事にした。

 

「初めまして、私はグリフィンドール寮の魂魄妖夢と申します。本日は魔理沙につれられて来ましたが…ご迷惑だったでしょうか?」

「ああ、さっきの言葉なら別に気にしないで。魔理沙がいつも勝手な事をするから言っただけだから。私はアリス・マーガトロイド。今の目標は自立人形を作ることよ。」

「…そして照れ屋さんでもあるわ。」

「パチュリー!?今それ言わなくてもよくないかしら!?」

「…私はパチュリーよ。」

「スルー!?それと自己紹介短くないかしら!?」

「とまあ、この二人はよく漫才をするが気にしないでくれ。」

「漫才じゃなくて貴方達がボケるから私が突っこみになってるだけではなくて!?」

 

アリスさんは二人に次々とキレのある突っこみをいれ、疲れたのか少しハァ、と呼吸を直す仕草をみせた。

そのタイミングで魔理沙はハハ、と少し笑うとけれど、と話を続ける。

 

「そんな風に悪態つきながらも律儀につっこんでくれる可愛いアリスは好きだぜ?」

「ッ…!」

 

瞬間、アリスさんの顔は赤くなり、言葉に詰まる。

…なるほど、照れ屋さんと言われたのが解った気がします。

 

「…ところで貴方はなにかしたいことはないの?」

「うわっ!?」

 

私が二人を見ているといつの間に来ていたのか、私の隣からパチュリーさんが話しかけてきて、つい驚いた声をあげてしまう。

しかしそんな私にどうしたの?と首を傾げながらパチュリーさんは私に告げ、その声でなんだか落ち着いてしまう。

 

「いえ…ちょっと声を出したかっただけです。」

「…まあ、声を出すのはストレス発散になるものね。」

「それとしたいこと…でしたか?そうですね、なんでも出てくるなら実績の練習をしたいです。」

 

そう言うと部屋の中に刀を手に持った石でできたゴーレムのような物が現れました。

 

「…なるほどね、戦闘相手ってとこかしら。」

「ゴーレムですか…確かに戦闘相手といえばそうなのかもしれませんが動きは遅そうですね…」

 

私がそう呟いた瞬間、ゴーレムは自分の力をしめすように刀を一つ払った。

その一払いは見ただけで速く、鋭く、人ならば幾年の年を刀に費やした者の動きでした。

 

「…流石ホグワーツとでも言えばよいのでしょうか、これならば相手にとって不足はないですね。」

 

そう言いながら私は袋から刀を取り出して、腰に通すと刃を抜き、構えた。

私は強くなる…もう、周りに迷惑をかけずに済むように。

そう決意してゴーレムに勝負を挑んだ。




今回もお読みいただきありがとうございました。
今回は書いてみて自分で気になったことを一つ。
…少し妖夢を弱く書きすぎたでしょうか?
かと言ってここで妖夢を勝たせるのは何か違うかな、とこんな結果に…構成力あげないとですね。
そして賢者の石の段階で必要の部屋を使用可能にした作品はそうないのではないでしょうか。
実はまだ出すつもりはなかったのですが魔理沙の出番を出したら何故か必要の部屋まで…どうしてこうなった。

それではまた次回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。