半人半霊の魔法界生活   作:くるくる雛

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私の他の作品を見てくださってる方々は懲りずに見てくださってありがとうございます。
貴様の作品なんか見たことない!という方々は初めまして、くるくる雛です。
自分の元々書いてる小説が少し書きにくくなってきたので息抜き代わりに少し書いてみたらなにやら一話分が書けてしまったという経緯でこの作品はできました…普段書いてるのは3000文字くらいなのになにしてるんだろう。
まぁ、なにはともあれ手抜きは一切しておりませんのでよろしければ最後まで見てやってください。
それではどうぞ!

追記、少し内容変更しました。計画性の無い投稿者ですみません。


第1話 少女、魔法を体験する

「…ふっ!」

 

その刹那の瞬間に放出した気迫と共に私は腰に構えた刀を抜刀し、目の前の標的へと向かい今まで振ってきた中で最速の斬撃を打ち放つ。

しかし対象物である黒く光沢のある大岩は切れることもかけることもせず刀を振るう前と少しも変わらない状態であった。

 

「今日も駄目でしたか…」

 

少しの希望を砕かれた落胆とやっぱりという諦念に近いものを抱き抜刀した刀を鞘へと戻して縁側に用意しておいたタオルで汗を拭う。

 

「ふぅ、いつになったらおじいちゃんみたいにあの岩を切れるのでしょうか…。」

 

そう言って手に持って居た刀を引き抜いて天へとかざしながら昔のことを思いふける。

自分が生まれて3年後に家族でドライブしていた時に交通事故で両親が死んでしまい祖父のもとで暮らしていたが祖父までもが1年前に行方不明になって死んだのだろうという情報が流れた。

その情報を教えに来た親戚から聞いた時、私は一瞬その人が何を言ったのか分からなかった。

いや、頭では言葉も意味もすぐさま理解した、けれど心がそれを真に理解することを拒否したのだ。

しかし、そんな心の反抗も少しづつ時間が立つ事に弱くなりそれと共に目から滴があふれ始め、生まれたばかりの子どものように泣きわめいた。

その後の記憶はあまり覚えていないがその時に一緒にいてくれた親戚の女性の話によると私は三日三晩話さず、泣いて疲れて眠ってまた泣いてと繰り返していたようだ。

しかしある時目が覚めてまた祖父がこの世にいないという事実に押しつぶされ泣きそうになっていると頭の中に私を呼ぶ声が響いた。

なんだろうと頭を動かすとどうやらそれは別の部屋から聞こえてくるようだった。

私は部屋を這い出るとその音に導かれるまま灯に誘われる虫のようにフラフラとその声の元へと歩いていった。

すると祖父が使っていた部屋へとたどり着き、襖を開けて音の正体に眼を向けると今まで本能の様にこっちまで歩くように私に指令していた頭が一気に覚醒した。

 

(あれは…おじいちゃんの使っていた刀…)

 

そう、私を呼んでいた物の正体は祖父が使っていた刀であった。

その刀に手を伸ばし楼観剣を手に取ったすると何故か祖父が死んでいないだろうということを頭ではなく感覚で察した。

今の私にも何故かはわからないがとにかく死んでいないと感じているのだ。

そして楼観剣をゆっくりと引き抜くと中から私に向かって白い何かが飛び出してきた。

 

(なにこれ、柔らかい…?)

 

その顔に貼り付いた何かをはがして観察すると白い水のマークを反転さして細いほうを曲げたようなそんなものだった。

 

(…魂?おばけ?)

 

そのよくわからないものをとりあえず机の上に置くともう一度飛んで私を軸に回り始めた、ほんとうにこれは何なんだろう。

もう一度触って確かめようとすると私の目の前の襖が開きお盆を持った親戚の女性…幽々子さんが現れた。

 

「どうやら立ち直れるものをつかめたようね。」

「あ…あ…」

 

私は幽々子さんに対して口を開こうとするがなにも飲まずに泣いて喉が枯れきっていて声が出なかった。

そんな私に対して幽々子さんはあったかいお茶を渡して飲みなさいと進めてくる。

私は迷うことなくそのお茶を飲み、喉を潤わせると生き返ったかのようにふぅ、と息を吐いた。

 

「幽々子さん…ありがとうございます。」

「いえいえどういたしまして~。それよりも少しは何かをみつけれたのかしら?」

「はい、私は…おじいちゃんはどこかで生きていると今感じました。」

「…何故その結論に至ったのかしら?」

「わかりません、ですが何故かこの刀に触れた瞬間それを感じたのです。」

「ふむ、ところであなたにはもう…見えてるのかしら?」

 

そう言って幽々子さんは蒼い澄んだ瞳を動かし私の右側にいる白い何かを見つめる。

それに対して私は白いもののあごした?を撫でながら返答をする。

 

「えぇ、さきほど刀から飛び出してきました。」

「あなた…妖夢はそれが何かわかってるのかしら?」

「いえ、それがさっぱりでして…これはいったいなんなのですか?」

 

そう言いつつまた白いそれを撫でる、触ると柔らかくて気持ちいい。

 

「それは半霊、簡単に言えばアナタのもう半分の存在よ。」

「私の…半分?」

「そ、と言っても行動などはあなたが指示したり出来るみたいよ。」

「指示…こうかな?」

 

ひとまず私は指の動きに合わせて動くように考えながら手をU字に動かすとそれに合わせて半霊もU時に動いた。

 

「なんとなくはわかりましたけど何故幽々子さんは半霊のことを知ってるんですか?」

 

私がふとした疑問を幽々子さんにすると幽々子さんは自分の湯のみに一口つけて疑問に答えてくれる。

 

「少し前に妖忌が教えてくれたのよ、自分が教えれない状況になったら私から教えてやってくれってね。」

「少し前…?ということはおじいちゃんは自分が戻ってこれないと思ってた?」

「かもしれないわね、けれどなぜ妖忌が姿をくらませたのかは私にも分からないわよ。まぁ、それはおいおい考えていけばよいけれどあなたはこれからどうするの?」

「…私ですか?」

「そう、流石に貴方の年を考えると一人で住むのは他の人たちが納得してくれないのよ。」

 

確かにまだ10歳の私が一人で暮らしていくというのは無謀だし周りの心配もわかる…けれど私は今どこにいるかわからないが多分生きている祖父の帰る場所に居たい。

それに今はこの家だけが祖父の残した温もりを感じられるのだから。

 

 

「幽々子さん、それでも私はこの家にいたいです!」

 

私が今の自分の決意を伝えると幽々子さんはまたお茶を一口飲んで軽く息を吐いた。

 

「ふぅ、それが通ると思うの?」

「それは…でも、それでも…!」

「是が非でもここにいたいわけね…わかったわ、ここにいられるように手配してあげる。けれど条件がひとつあるわ。」

「条件ですか?」

「えぇ、その条件だけど私も一緒にこの家に住むわよ?いくら住みたいと言ってもあなた一人では他の親戚達を納得させれないのよ。」

 

 

 

 

 

あの後私はこの家に住んでいられるように取り計らってもらえたがあの時幽々子さん…お母さんは相当無理をしたのだと思う。

なぜならあの後親戚達が集まった時私は親戚が集まった部屋から遠くの部屋にいるように言われたがその場所まで声が響いていたから。

それでもお母さんは私の願いを押し通してくれた。

正直な話お母さんが一緒にいてくれてよかった、お母さんのおかげで私の心は元気でいられたし祖父がいない間は自分でやっていた家事はお母さんがやってくれるので剣の特訓に割ける時間が増えた。

 

「まぁ、それでもおじいちゃんには届かないんだけどね。」

「妖夢~、なに独り言いってるのかしら?もう朝ごはんできたわよ~。」

「あ、もうそんな時間だったんですか。手を洗ってきますね。」

「早くね~じゃないと私が食べちゃうから~。」

「すぐに洗ってきます!」

 

私はすぐさまタオルなどを片づけて家に入り手洗い場へと向かう。

一度どうせ冗談だろうと特に気にせずのんびりと片づけやらをしていたら朝食が半分ほどなくなっていたことがあったのでそれからは急いで手を洗ったりしている。

急いで手を洗った私はリビングに戻るとお母さんが私のご飯に箸を伸ばしているところだった。

 

「あら~、もう戻ってきちゃったのね…」

「あ、危なかった。」

 

ひとまず朝食を確保できたことに安堵すると私は食卓の前に正座で座りいただきます、と言ってから箸を持ってみそ汁を一口すする。

相変わらず私では再現もできないくらい美味しい。

 

「そういえば妖夢は今日が誕生日よね?」

「あ、はい。今日で11です。」

「んー…それじゃあ今日はちょっとお出かけしない?」

「外出ですか、構いませんがどこにいくのですか?」

「それはもちろんあなたへのプレゼントとか買いによ。ほら、自分で選びたいでしょ?」

 

…そういうのは本人が選ぶものなのでしょうか。

普通は本人に内緒でかってくるという物のような気がするのですが。

とは言っても何を言っても譲らないのは今までの生活で分かっているので言われるままに外出の用意をして近くのデパートへと向かった。

 

 

 

 

 

買い物を終えデパートから帰ると時間は4時半という何をするにも少し微妙な時間だったので今度は祖父が使っていた道場で素ぶりでも使用かと思っているとお母さんが後ろから声をかけてきた。

 

「妖夢、今からまた特訓するつもりかしら?」

「え、うん。そのつもりだけど。」

「…なら私と手合わせにしない?」

「お母さんと?いいけどお母さん刀とか使えたの?」

 

私の記憶にある限りはお母さんが刀を振るっていた記憶など全く無く、また他の武器の類も振っているのは愚か持って居るのも見たことがなかった。

 

「ふふ、そうね。妖夢はしらなかったわね。ちゃんと私も心得のあるものくらいあるわよ。」

「そうだったんだ…じゃあ私は先に道場で用意しとくね。」

「えぇ、先に行って待ってなさい。」

 

話が終わると私は先に道場に行って竹刀を取りだして軽く体を温めた後にその場に座りこみ、精神を統一する。

さて、お母さんはどんな獲物で来るのだろうか。

あの様子では刀ではなさそうだから薙刀?それとも棒術だろうか。

と、どんな武器で来るのかを頭の中でシュミレーションしていると道場の襖が開き、お母さんが入ってきた。

 

「待たせたわね妖夢。」

「別にそれほど…ってお母さん結局獲物は?」

「あら、今私が手に持ってるじゃない」

「手に…ってふざけないで。」

 

お母さんの手元を見るとそこに握られているのは閉じている扇子だった。

両手に持っているがそれが何だというのか。

 

「あらあら物事を見かけだけで決めるのはだめよ~…妖夢。」

 

私がなめられているのかと声を発するとお母さんは扇子を開いてその柔和な表情の顔を隠すように顔の前に持って行き、通り過ぎるとさっきまでの優しい顔は消えて対峙して体が底冷えするような感覚すら感じるくらいの冷たい表情になった。

それと同時にいつ動き始めたのか分からないほどの滑らかさでこちらに滑るように近づくと開いた扇子を叩き込んでくる。

一瞬いつの間に近づいたのかと呆気にとられたがすぐさま意識を戻し竹刀で弾く。

 

 

「…それ扇子の割には固すぎじゃない?」

「だって細工なしだと扇子が壊れちゃうじゃない。さ、次はあなたから討ってきなさい。」

 

そういうとお母さんは交差するように扇子を構えて防御の構えを取る。

 

(…いくら細工をして壊れにくい上に素早さはあるとはいえ扇子自体に力は籠めにくい。だったら攻め続けて体勢を崩す!)

 

攻め手を決めた私は正面から突っ込み、両手で竹刀をつかんで突きを繰り出す。

お母さんはそれを扇子で自分の右側へと逸らすが私は竹刀を片手持ちに変えて右足を強く踏み込んで右へと切り払う。

しかしそれでもお母さんは扇子の面部分でそらして自分の上へと流してもう片方の扇子を私の首元へと突きつける。

 

「こういうのでも一本でいいのかしら?」

「…いいと思うよ。」

 

そういうと二人とも一度距離を取りもう一本戦う構えを取る。

 

(…強い、でも予想通り力そのものはあんまり籠っていなかった。だったらむしろ扇子を狙って攻撃する!)

 

「はあああ!」

 

私はもう一度真正面から特攻し右から水平に一撃、それをお母さんが扇子で防ぐのを確認して受け流されながらも振り抜き左からもう一度水平切りを放つ。

しかしそれすらも流されてしまうが気にせず竹刀を返し右切り上げ、そして唐竹を放つ。

右切り上げはまた流されたが唐竹の方は手ごたえがあった、唐竹は流さずに扇子で突くような形で対抗してきたのだ。

しかしこっちは竹刀の上振り下ろす形、相手は扇子で突き上げる形であればどちらのほうが威力があるかなど明白だろう。

私はそのまま押し切るべく竹刀に力を籠めて振り下ろそうとするとお母さんがもうひとつの扇子をこちらにむけて口を開いた。

 

 

「ルーモス(光よ)」

「え…うっ!?」

 

お母さんが扇子を構えながら何かを呟くと扇子の先から光があふれ、私の視界を奪った。

それに怯んだ私は後ろにフラリと下がってしまいもうすこしで押しきれるはずだった竹刀を扇子との競り合いからも外してしまう。

そうして絶大な隙をさらした私をお母さんが見逃すはずもなくるりと回転して右に持って居た扇子を私の竹刀にあてつつまた何かを呟いた。

 

「レダクト(粉々)」

「なっ!?」

 

なんと母が呟きながら自身の扇子を私の持って居た竹刀にぶつけると触れた部分が粉々に砕け散り使い物にならなくなった。

その光景をみた私は棒立ちのまま唖然としてしばらく動くことができなかった。

 

「うん、久々でも案外使えるものね。」

「な、なに?今のは…?」

 

未だに呆然とした状態から復活できていないままお母さんに説明を求めるとさっきまでの底冷えするような表情は姿を隠していつもの優しい表情に戻っていたお母さんが答えてくれた。

 

「今のは魔法、よ。」

「ま…魔法?」

「そ、魔法♪」

 

魔法ってまた幻想的なものがでてきましたね…私はてっきり扇子になにか現実的な、たとえば鉄なんかを仕込んで反射で目に光を当てて武器破壊の時は竹刀の弱点を狙って壊したものと思ったのだけど…

 

「と、とりあえずお母さんが魔法を使ったのが事実だとしても何で今まで使えるのを黙っていたの?」

「んー…だって妖夢はその刀を握ってから妖忌は死んでないって感じてたでしょ?」

「はい、その気持ちは今も変わりません。」

「そんな妖夢がこっちの世界で見つからないどころが妖忌が最後にどこにいたかという痕跡さえも見当たらない状態で魔法界なんて異世界の存在なんて知ったらどうするのかしら?」

「それは勿論すぐさまおじい様を探してその世界まで行って」

「だから今まで隠してたのよ。」

 

お母さんは私の言葉を最後まで言わせずに割り込み、そのまま何故と私が聞こうとしていた理由まで話し始める。

 

「魔法界っていうのはね全体が危険とまでは言わないけどこっちの世界よりも危険なことが多いのよ。そんな所に幼く、感情で動いてるような貴方を連れていくのはよしたほうがいいと判断したのよ。」

「ぐ、確かに昔の私が聞いたら知らないところでも用意せずに向かってたわね。じゃあ、今日言ってくれたはもうその…魔法界?に言っても問題ないという判断になったの?」

「ん~…二割はそうね。でも残りの大半はどちらにせよあなたが魔法の存在を知るからよ。」

「? それはどういう…」

 

お母さんがまるで私が自然に魔法の存在を知るという風に言ったことに疑問を持った私が質問しようとすると開いていた窓から急に黒いフクロウが道場へと飛びこんできた。

それに対してすぐに追い払おうとしたがフクロウは迷うことなくお母さんの方へと向かいくちばしに加えていた封筒を渡してすぐさま立ち去っていった。

その現状をみた私はフクロウが郵便を届けに来ることもだがそれに一切動揺せずに封筒を開いている母にも少し驚愕していた。

 

「来たわね、ほら妖夢これが言っていたそのうち魔法の存在を知ることになる理由よ。」

 

そう言ってお母さんは私に対して封筒の中身の紙を私に渡してくる。

私はそれを驚きから立ち直ったばかりのたどたどしい動きで受け取るとそこにはホグワーツ魔法魔術学校に入学許可という旨を書いてありもう一枚の紙には新学期から何がいるかというリストであった。

それらを読んだ私は一先ず今一番気になった単語を口に出して意味を理解しようとする。

 

「ホグワーツ…?魔法魔術学校…?」

「その名前の通り魔法を学ぶところよ、そこは魔法界でもっとも安全な場所だからまずはそこで力をつけなさい。妖忌を探すのはそれからよ…ってあらアルバスからの手紙…?」

 

どうやら封筒の中にもう一枚、お母さんへの手紙が入っていたようで2つ折りにされたそれをペラリとめくってお母さんが読むとわかったわ、と何かを納得したようにそれをもう一度2つ折りにすると上へと放り投げると扇子から虹色の蝶を出して中に浮いている紙へとあてて一瞬にして灰も残らなくなるほど燃やしつくした。

 

「それじゃあ杖を買いに行きましょうか。」

「え、今から買いに行くの?ってそもそもどこで売って…?」

「大丈夫よ、もう移動したから。さ、行くわよ。」

 

そう言うとお母さんは私の手を掴んで玄関から外へと出る。

 

「ま、待って移動したって何って何処ここ…?」

 

自分の家からでるとそこには見たことのない世界が広がっていた。

いつも見ていたはずの家の対面にあったはずの灰色のレンガの塀で囲まれた家は無く、代わりにオレンジのレンガでできた堀などない家がそこにあり、少し右を見てみれば台形をそのままひっくり返したかのような形で立っている家に何故か箒ばかり売っている店、それにビンに入っているグミのような食べ物がウニョウニョと動いている普通ではありえない光景がそこにはあった。

 

「…なにここ」

「ロンドンの大阿含、もといダイアゴン横丁よ。魔法界の有名な商店が立ち並ぶ場所。」

「そうじゃなくて!なんでこんな…外国みたいな場所に、ってロンドン!?いきなり何故!?」

「あら、杖を買いに来たんじゃない。」

「そうでもなくて…あぁ、もういいです。」

 

私はもう追及するのを諦めた。どうせ件の魔法とかいうので何とかしたのでしょう。

 

「それじゃあ杖を買いに行くわよ~、と言ってもすぐそこだけどね。」

 

そういうとお母さんは道を挟んで反対側の3つ隣の…狭くてみずぼらしい店に入っていく扉には剥がれかけた金色の文字で【霖ノ介杖店 平凡杖メーカー】と書いてあるが店の見かけからして半身半疑になる。

とはいえお母さんが迷うことなく選んだ店ということで最後の希望だけは捨てないで店の扉を開けて中に入るとそこは壁伝いに…いや本棚の壁に沿うように階段が設置されてその階段の下にカウンターと思わしき場所、そして本棚?にはとにかく入る限り魔法の杖が入っている。

…品ぞろえに関しては多分当たりの店のようだ。

 

「おや、幽々子さん久しぶりだね。扇子に何か不良でもあったかい?」

「うふふ、そんなことないわよぉ~…この扇子はそんなにやわなものではないわ。」

「そうだったね…さて、それではなんの用でこの店を訪れたんだい?」

「この子の杖を探しに来たのよ。」

 

そういって幽々子様は私の背中を押して老人の前へと押し出す。

すると白髪で眼鏡をかけた青年くらいの人は私の顔、そして腰と背中にかけていた刀を凝視してへえ、と驚嘆の声を出す。

 

「ひょっとしてこの子は妖忌の子かい?」

「あら、やっぱりわかるのかしら。」

「髪色の特徴にこの刀と来れば簡単にわかるよ、なにせこの刀にあの細工を頼まれた時に手伝ったのは僕なんだから。」

「あらそうだったわね霖之助さん。」

「この刀に細工…ですか?」

「おや、妖忌は刀のことを言ってないのかい?実はその刀は…」

「待ちなさい霖之助さん、今はそれよりこの子の杖よ。」

 

霖之助と呼ばれていた人物が刀の説明をしようとするとお母さんは無理やり着身に話題を逸らし私の杖選びを優先させた。

私としては不満だったが霖之助さんも話をそちらに戻してしまったので渋々と私も従う。

 

「それもそうだね、それじゃあ名前を教えてくれるかい?」

「魂魄妖夢です。」

「魂魄妖夢…っと、杖腕はどっちだい?」

「杖腕ですか…?」

 

と、一瞬私が困惑するとすぐさまお母さんが利き腕の事とおしえてくれたのだが…

 

「あの、私両利きです。」

「おや、そうかい。だったら…」

 

私が自分の利き腕のことを伝えると霖之助さんは店の奥の方へと行って梯子を登り棚の上の方にある箱を一つ手に取り戻ってきた。

 

「この杖なんかどうだい?ホワイトウッドにユニコーンの髭、23cmで柔軟。」

 

杖の内容を説明した後霖之助さんは私に杖を渡しに軽く振るように指示したので言われた通りに杖を振るうとひとつの棚にしまってあった杖が全部飛び出した。

その惨状をみた霖之助さんは私から杖を取り自分の杖を振ってすぐさま飛び散った杖を棚へと戻した。

 

「これは合ってないようだね、それなら…これならどうかな。レッドパインにドラゴンの心臓の琴線25cmで振りやすい。」

 

そういって霖之助さんはもう一度私に杖を渡してくる。

私はさっきのことであってるのかどうか心配になりつつも振るうと今度は窓際の方で栽培していた花が一瞬で枯れてしまった。

するとまたもや霖之助さんは杖を振るって花をもと通りに直し、杖を私から受け取った。

私は二回連続で自分にあう杖ではなかったため本当に自分に合う杖があるのかと少し心配になっていた。

 

「ふむ、これでもダメとなると…ああ心配しないできっと君に合う杖があるさ。」

 

そして霖之助さんは私に少し待って居てくれと言うと店の奥へと戻り、しばらく待つとさっきもってきていた杖よりも年期の入った古い箱を持って来た。

 

「これならどうだい?東洋の桜の木に麒麟の(たてがみ)24cmで手先の動きが伝わりやすい。はい、持ってみて。」

 

3度目の正直と願いながら私は渡された杖を掴むとまるでその杖が元から私の体の一部だったかのようにしっくりと手に収まりかるく振るうと私を中心に風と雷が渦を巻いて吹き、同時に桜のはなびらも現れて私の視界を桃色に染めた。

それが10秒ほど続いたのち桜吹雪が一遍に消え去り、雷は杖の先端へと収まってさっきまでの本棚にいっぱいの杖という光景に戻っていた。

 

「おお…まさか、ここまで杖と相性がいい人が僕の目の前に現れるとは。」

「ええ、私も妖夢には魔法使いの素質はあるだろうと思っていたけどこんなことが起こるなんて…」

「え?え?」

 

私は前後を困惑と感動の顔に挟まれ、自分がそんなに変なことをしてしまったのか?と考えてしまいお母さんと霖之助さんの顔を交互に確認しているとお母さんが最初に声を発する。

 

「妖夢、あなた…その杖の力に一番あった持ち主なのよ。」

「え?今のは誰にでも起こることじゃないんですか?」

「確かに自分に合った杖を手にすると自分の周りに風が舞ったり火の球が軽く出たりなんかはあるけど少なくとも今みたいに混合のような状態になることはないよ。素材のすべてを表す様に杖から魔力があふれ出るのはその杖が本当にその杖との相性が一番いい者の時しかでないんだ。」

「そ、そうなんですか…じゃあ私は運が良かったんですね。」

 

と、一定の説明を受けた私が運が良かったという結論を決めるとお母さんが口を開く。

 

「あのね妖夢、杖っていうのはひとつひとつ素材も…ううん、たとえば同じ不死鳥等の素材でもまったく同じ素材は無いの。そして素材の組み合わせも万をゆうに超えて杖の数はいくつになるかなんてわからないしその上で魔法使いも沢山いるのだから自分に真にあった杖なんて見つけるのは無理な事とされてきたのよ。」

「? だから運が良かったのでは?」

「確かにあなたは運がいいわ…だって紀元前から続く魔法使い族の中でも9人しか自分にあった杖を見つけれていないのにあなたはその10人目の持ち主となったのよ。」

 

 

 

 

 

「って言われても私は霖之助さんが持って来た物を手に取っただけなんだけどなぁ…」

 

そう呟きつつ窓に向けて眺めていた杖を机の上に置く。

いま私は杖店から帰り自分の部屋の椅子に座りながらあれこれと考えている。

私は今度の夏休みが終わり次第その魔法学校、ホグワーツとやらに入学する手はずになっているらしい。

しかしこの話を聞いたときに何故夏休みが終わってからなのかと疑念が抱き調べた所どうやらイギリスでは夏休みの後から新学期が始まるらしい。

こっちにいる友人達にお別れの挨拶を済ませたいがお母さん曰く魔法で記憶を変えて色々して私がいなくても違和感なく、でも私が出会った際は昨日まで話していたかのごとく接してくれるようにしてくれる。

本当に魔法って万能なんですね。

 

「でも万能って言っても使えなきゃ意味がないんですよね…」

 

そういって机に置いた杖と教科書をチラリと見て溜め息をひとつつく。

私は帰ってから一度お母さんに魔法を教えてくれるように頼んでみたけどちゃんとした教師に教えてもらいなさいと言われて教えてはもらえなかった。

確かに刀等でも間違ったフォームを覚えると直すのに大変だから教えるのを専門としている人に教えてもらうというのは間違いではないので私はぐうの音も出せずにあきらめるしかなかった。 

…そういえば

 

「霖之助さんがこの刀について何か言おうとしてたけど結局なんだったのかなぁ。なにか刀を研ぐみたいな感じではなく機能を追加したみたいに言ってたけど…」

 

そう呟きながら刀を回しながらいろんなところを見るけどなにも発見できずただ無駄に時間が過ぎただけだった…

 

 

 

 

 

そして修行やある程度の魔法界の事を調べてから数ヶ月後、ようやく待ちに待ったホグワーツへと向かう日だ。

 




記念すべき(?)第一話、最後までお読みいただきありがとうございました!
そして後書きまで読んでいただき本当にありがとうございます!
今回は妖夢の過去話、それと魔法界に行くにあたっての身支度にさせていただきました。
妖夢の良さを出せてるかどうかは不安ですが…まぁ、これが作者の実力ということでひとつお見逃しをお願い致します。
それではこれからもお読みいただける方々はまた次回!

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