楽しみにしていたスクール初日でいろはは久しぶりに由比ヶ浜と再会し
喜び合う。
今日は朝から楽しみな日、そうスクール初日の日なの。
あれから先輩のお店には仕事の残業で行ってないから楽しみで。
「失礼します~お疲れ様です~!」
会社を急いで飛び出しREALに到着した。
「初めまして~一色です~今日からお世話になります~!」
他の生徒さん達と顔を合わせ講習を受ける事に。
「一色さんは最初これね。」
「あれ?この前と違いますよ先輩?」
「これがスクールの教材用シルバーでこの前のは売り物の用の俺が加工するシルバーなのよ。
こっちの方が少し加工しやすいんだ。まっ、変わらんけど。」
「なになに?『先輩』って先生とどう言う関係なの?」
隣のおばさんから、ねちっこく聞かれちゃった。
「嫌だなぁ~比企谷先生が高校時代の先輩だったんですよ~ねぇ先輩?」
「一色さん、ちゃんと教えた通り加工してね。」
「富田さんはこの前の作品、いい出来でしたよ。次の作品が楽しみですね。」
「あらぁ~先生ったら上手なんだから、そう言えば先生の展示発表会デザインが凄く良かったって評判だったのよ!
あたしも先生の教室通ってるってみんなに自慢出来るんだから次の作品も期待してるわ~。」
「富田さんに期待されちゃあ頑張らないと、ありがとうございます」
先輩ってこんなに人当たり良かったかしら?上手く行ってるみたいだし…でも評判いいんだ、
やっぱり品物の質感とかいいと思うし昔から几帳面だからかな。
?「遅れてごめんなさ~い!」
遅れて来た生徒さんのようだ、
「ヒッキー遅れてごめんねぇ~」
えっ?あたしの知る限り先輩を「ヒッキー」と呼ぶ人はただ1人だけ…そう結衣先輩だけ?…えっ?
その女の人は華やかなカジュアルファッションに身を包みスタイルが良く明るく優しい感じがする人だった。
「え~結衣先輩ですか?お久しぶりです~!覚えてますか?一色です、一色いろはですよ!」
「えっ?いろはちゃん?いろはちゃんなの?久しぶり~!どうしたのこんな所で…あ、いろはちゃんもヒッキーの教室に入ったんだ。」
「そうなんですよ!偶然お店に入ったら先輩が居てビックリしちゃいました。前々から興味があったしやってみようかなって!」
「そっかぁ、いろはちゃんも通う事になったんだ。…でも昔の友達にまた会えて嬉しいよ元気にしてた?」
「えぇ、なんとかです。結衣先輩も元気そうですね。」
「あの~積もる話もあるっうか、時間無くなるしリング作ろうよ?」
「あっ、ヒッキーごめん…」
「先輩、折角の再開で盛り上がってるんですから多目に見て下さいよ。」
「ダメです、他の生徒さんに迷惑だからね一色さん。」
「あっ、そうでしたごめんなさいです。」
クスクスと他の生徒さんに笑われちゃった。結衣先輩にも迷惑かけてゃって後で謝ろう。
「さあ、今日はここまでにしときましょう。」
出されたカジュアルリングの課題工程を何とかクリアして今日の教室が終了した。
「ありがとうございました。」
教室が終わり結衣先輩と目が合ってお互いに吹き出した。
「懐かしいですね~結衣先輩!今は何してるんですか?」
「あたしは近くの保育園で保母さんかな。いろはちゃんは何をしてるの?」
「いいですねぇ~あたしはしがないOLなんですよ、クスン。」
「そんな事ないよ~あたしは計算とか事務が得意じゃないから。」
「でも結衣先輩、素敵です。保母さんなんて結衣先輩にとっても合って優しそうで安心して子供を任せそう。」
「えへへ〜、やだぁ~いろはちゃん、褒めすぎだよ~恥ずかしいな。」
「由比ヶ浜、一色のリップサービスなんだから図に乗るなよ。」
「先輩、そんな事ないです!結衣先輩は凄く素敵で可愛くて羨ましすぎですよ~。」
「そう言ういろはちゃんだって変わらず可愛いいし会社でモテるんじゃないの~?」
「全然なんですよ~彼氏もいませんし募集中なんで…」
先輩の方をチラ見したけどガン無視で片付けしてるわ。酷くないですかぁ?もう!
代わりに結衣先輩が微妙な反応を。
「結衣先輩は彼氏さんとかいるんですか?」
聞かれないと思ったのか肩がピクンとしてる。
「へっ?あたし?あははっ…それがいないんだよね~」
なぜか先輩の方をチラチラと気にしてる。結衣先輩ってまだ先輩の事追っかけてるの?
先輩達3人は高校時代、結局付き合わないで友達関係を保った…
あたしもそれは知っていたが卒業後の関係までは聞いていないし年月も過ぎていった。
未だに微妙な関係を大事にしているんだろうか。
「あの…雪ノ下先輩はどうしてますか?」
「えっ…うん、ユキノンは…あははっ…そのぅ、葉山君とね…」
「えっ、それって結婚とか?ですか。」
「うん…まあ、大学出て直ぐ結婚しちゃったかな、それから葉山君の仕事で一緒に海外へ行ってるよ。珠に帰ってくるけどね、ははっ。」
「知らなかったです、でもお二人が幸せならいいかも知れませんね。」
「…そうだね、ははっ。」
「結衣先輩なんか気を使ってないですかぁ~?」
「だっていろはちゃん葉山君好きだったでしょ?」
「やっぱり…大丈夫ですよ何年経ってると思ってるんですかぁ~嫌だなぁ~。」
「だよね!でも親が決めた結婚とかで色々あったみたいで…それにね…」
「それに?」
「ううん何でもないよゴメン!あたし今日は用事があってすぐ帰らなきゃあいけないんだ。次回ご飯でも行こうよ、
いろはちゃん!じゃあ、またね。ヒッキーもバイバイ。」
「はい!結衣先輩も気を付けて、さよならです~」「おう、由比ヶ浜〜気を付けてな。」
バタバタと慌ただしく帰って行った結衣先輩の言葉尻に引っ掛かりを覚えたけれど、あたしの気のせいだよね?
「先輩~帰っちゃいますよ~!」
「お~お疲れ、帰っていいぞ、じゃな一色。」
あたしの方に顔を向けもせず知らん顔でリューターを使い品物を作ってる、相変わらずなんだから!
「むぅ~、そうあっさり言われると何か嫌な感じがします! 先輩、あたしお腹が空きました先輩は
お腹空かないんですか?食べに行きたいと思いませんか?」
「腹は空いたが後でコンビニでも行ってパンでも買うよ。」
「へ?毎日そんな物しか食べてないんですか?」
「仕事に集中すると食べる時間とかバラバラになるし面倒だからな」
「ちゃんと食べないと駄目じゃないですか!」
「お前は俺の母ちゃんかって、いいだろ生きてるんだから。」
「何ですか、付き合ってもないのに女房呼びなんで早すぎます。ちゃんと順番を守って下さい、ごめんなさい。」
・・・・・・・・・
「はい!野菜炒めと玉子焼きにインスタントのお味噌汁と、『さとうのご飯』……こんな物しか
出来なくて申し訳ないですけど食べて下さい。」
食べに行こうと誘っても『手が放せないから』の一点張りで動かない先輩を置いてすぐ近くのコンビニに
駆け込んでスクールにあるミニキッチンを勝手に使い先輩に簡単な料理を作った。
「俺の事なんかほっといて帰ればいいのに…」とか言いながら「美味いな」とか
「そう言えば一色は料理得意だったな」って言ってる。
先輩覚えててくれたんだ…お世辞でも褒めてくれると嬉しい。
「一色、遅くなったな…その、ありがとな。美味かった。」
「この前工房で教えて頂いたお礼です、先輩。」
「お礼される事はしてないが?悪かったな。」
「またご飯食べてなかったら作ってあげますね先輩!」
「そんな気を使わなくていいから申し訳ないから止めてくれ。」
「ちゃんとご飯食べるのならいいですけど、またやりますよ?」
「分かったから、ちゃんと食べるから。」
「それから、今度ご飯食べに行きましょうよ…」
「お前とか?」「他に誰がいるんですか?」
「………」
「………」
「分かったよ、あんまり高いとこはダメだぞ。」
「はい、先輩!」