イベントも大成功でスクールの生徒さん達にも冷やかされる八幡、
しかし何故か余り嬉しそうな顔をしない八幡を心配するいろは。
イベントの2日間が終わり後片付けして会社まで戻って来たら9時を回っていた。
「二人ともありがとうな…助かったから気を付けて帰れよ。」
「八幡、送ってくれないの?」
「留美ん家はちょっと遠いから送ってやりたいんだけど、すまん!まだ、片付けが残ってるからまたな。」
「あのね、お母さんがね珠には遊びに来てって。次いでにお泊まりもしてきなさいって。」
「あっ?留美の母ちゃんそんなに俺の事気に入ってたか?いつも留美の成績を上げるよう考えろって文句言われてた気がするが。」
「今はそんな事ないから八幡が来るの楽しみにしてるし!」
「はは、じゃまた今度寄らせてもらうよ。」
「今度って、いつになるの?はぐらかさないで!」
「手の空いた時まで待ってくれ、此処んとこ徹夜続きだったし流石に疲れてヘトヘトだ頼む。」
「分かった…じゃあ帰るよ八幡…」
「ごめんなさい…我が儘、言って…」
そう言ってそっと、八幡に抱き着いた。
あぁ…言葉が出ないくらい健気で先輩の事を慕う彼女のいじらしさを感じるって、違~う!
「こら、留美…ダメだ。また来週な。バイト頼むよ。」
先輩が抱き着いた留美ちゃんを引き剥がそうとしても離れない。
「いゃ…もう少し… もう少しだけ…」
あ…留美ちゃんの手が先輩の背中まで回ってる、駄目だよこんなの。
「離してくれ留美、片付けが出来ない。」
「……」
離れてお願い先輩…
「おっぱいが大きくなったな留美…」
先輩が小さな声でボソっと一言いったら、急に留美ちゃんが先輩を突き放すような格好で離れた。
「八幡のバカ!!エッチ!急に変な事言って信じらんない。もう大嫌い!」
「ははっ、気を付けて帰れよ留美。」
「フンだ!お休み~八幡。一色さんも~。」
「あは、気を付けてね。」
照れ臭いのか駅前通りを留美ちゃんが小走りに帰って行った。
「…行っちゃいましたね留美ちゃん。」
「あぁ…」
「一色も疲れたろ?早目に上がってくれ、お疲れ様だ。」
「あたし、まだ大丈夫ですよ。それに先輩だって徹夜続きだし。」
「俺は直ぐ寝る事が出来るが一色は朝早いんだろ?遅刻するぞ。いいから上がってくれ。」
「はい…分かりました。でも…あたしの事は心配しないで頼って下さい。今日はお疲れ様でした、明日また来ますね!」
「ああ、助かったありがとう一色。おやすみな。」
「おやすみなさい先輩…」
後ろ髪をひかれながらも先輩に頭を下げ一人、駅に向い家路についたのであった。
・・・・・・・・・
アクセイベントが無事に終わり売上も上々!最初のスクール日、先輩は生徒さん達に冷やかされていた。
「比企谷先生のアクセ評判良かったわね~!今や新進ジュエリーデザイナーの1人だもん!やっぱりあたしが見込んだだけあって間違えはなかったわ~、それにいい男なんだから~。」
「あ~富田さん、からかわないで下さいよ。」
「謙遜しないで比企谷先生~あたしはね先生の作品に惚れてスクールに通ってるんだから。」
「ありがとうございます、でも、俺なんかまだまだですから。」
「そんな所がまた憎いのよ。ホント誰かさんみたいにホレちゃうんだから!ね~一色ちゃん?」
「あは、そうですよね~富田さん。」
富田さんやスクール常連さん達がニヤニヤと此方を伺ってる…もう。
生徒さんに冷やかされて照れ臭いのか先輩はいつになく無愛想(クール?)で寡黙に、あまり声を掛けようともせず講習を終らせ送り出しをしていた。
ざっと後片付けをして何時もの様に先輩の夕食を作ろうとする時に突然、オーナーの陽乃さんがいい事でもあったのか嬉しそうにお店に入って来た。
「ヒャハッロー、比企谷君~!おっ、一色ちゃんもお疲れ~!」
「今日は巡回でもないのに珍しいですねどうしたんですかオーナー?」
「やったよ~比企谷君~!決まったんだから♪比企谷君のお陰なんだから~!」
「一体どうしたんですか?大袈裟な。」
「もぉ~比企谷君てば大好き~♪」
オーナーは嬉しさの余りいきなり先輩に抱き着き頬っぺたにキスしだした。
「あ~~!オーナー先輩に何て事するんですかぁ~!抱き着くのとキスするの禁止ですセクハラです!」
つい先日、留美ちゃんに抱き着かれたばかりなのに、もぉ〜!
「だって比企谷君がやってくれたんだもん~大好きだよ~!」
「兎に角、落ち着いて離れて下さいオーナー。」
「あ~ん、比企谷君~ん。愛してるぅ~。」
「止めてくださいオーナー!何があったんですか?」
「決まったのよぉ、高○屋の出店が!後ね、松○屋も!何度か交渉してたけど今回のアクセイベントで比企谷君のリアルゴッドシリーズがオブザイヤーをもらったお陰で雑誌とマスコミに載ったしネット通販も大量契約が取れたし、もぉ~陽乃、比企君大~好き!」
「…そうですか、喜んでもらって良かった。」
「先輩、おめでとうございます!」
「ああ…ありがとうな一色。」
先輩…あんまり嬉しそうにしてない。
「先輩…?」
「うん?あぁ…何でもないから。」
「そうですか…」
なんでたろ、先輩に何時もの元気が無いような気がする。
それでもオーナーが御祝いにご飯を食べに行こうって事になって焼肉屋さんで二人ご馳走になった。
「一人前、6000円の上カルビーを6人前に5000円のタン5人前に、ロース肉…凄いご馳走。」
「どんどん食べてね~比企谷君、一色ちゃん!足らなかったら追加注文しちゃうから遠慮しないで食べて食べて!」
「先輩~美味しいですね、ビールのお代わりはいいですか?あと、こっちのタンはもう焼けてますから塩で食べますよね。」
「うん…上手いな、一色もオーナーがああ言ってるから俺の事はいいから遠慮するなよ。」
「はい~♪ビールも美味しい~恵比寿?初めて飲みましたけど全然違いますね。」
「ああ、俺はドライ派だけどな。」
「……美味しい?良かった~喜んでくれて。」
「それにしても比企谷君、今回の新作の出来栄えは最高だねあのシリーズの他に限定品を出すのってどう?予約販売で限定300個とかさ。」
「1個30000で300…9000000悪くないですね、これからはネット通販だから大量に裁けるし当たれば大儲けできる。」
「そうよ、比企君やっとあたしの言ってる事分かってくれたんだ。ブランドが定着してくると独り歩きしだすのよ、何もしなくてもその名前だけで売れていくの勿論それなりの品質が伴わないといけないけどね!」
「スクールの生徒さんもここんとこ2倍になったしすぐに100名位になりそうよ。」
「それは困る…新作を作る時間がなくなるから。」
「大丈夫よ、新店舗の方でカバーするしそちらの方の講師は用意するから。あっ、そうだそっちの講師を一色ちゃんに頼もうか?」
「彼女はまだまだですよ、オーナー。それにOLなんだから。」
「あら副業で色々やってる子なんていくらでもいるんだから、それに今すぐじゃあないからね。レベルを上げてからのお話よ。」
「ならいいが、一色の場合善意で手伝ってるから甘える事が出来ないし。」
「あたしなら何時でも喜んでお手伝いしますから言って下さい!」
「ありがとうね、一色ちゃん!そう言ってもらえると嬉しいわ。」
「………」
「先輩…?」
「うん?あぁ…何でもない。」
どうしたんだろう…時折寂しそうに先輩の顔が曇る。こんなに順調に仕事が
進んでるのに?
時折曇る八幡の顔、何かあるのか?