銀座の英雄王(偽)   作:サーヴァント当たらない

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プロローグ

俺の名前は田中(たなか) 幸助(こうすけ)

 

銀座に住んでいる一人暮らしの何所にでもいるオタクな大学生である。

今日は来週、同人誌即売会と共に発売されるエロゲ《ハイスクール乱ブル》の初回限定版を購入する為に顔なじみの店にやって来たのだが……。

店の近くの交差点に薄い膜のような、ゲートのような物を俺は見た。

 

「まさかルイズたんかタバサたんが俺を呼んでいるのでは?」

 

恥ずかしい妄想を膨らませ冗談交じりに膜のようなものに触れるが異世界に召喚されたりすることはなく、何も起きなかった。

何だ、ただの蜃気楼か……。

地球温暖化が進み、ますます暑くなる現在の夏が起こした何所にでもある現象だと結論付けた俺は、この場を立ち去り予約券を自宅の金庫に保管しなくては、と思って歩き始めたその時……

 

クシャ

 

「ん?」

 

紙を踏んだ感触を靴ごしに感じた俺は足元を確認する。

すると……。

 

「タロットカード?しかもアーチャー?」

 

フェイトステイナイトというアニメで見たことのあるアーチャーと書かれたクラスカードと呼ばれるタロットカードを見つけた。

プリズマ☆イリヤのDVD初回限定版を買った誰かの落し物だろうか?

カードを拾い裏表を見る。

アニメに出てくるクラスカードを見事に再現されたカードだ。

思わずインストールとか詠唱がしたくなる。

 

……。

 

キョロキョロと周りを見渡すがこのカードを探しているであろう人は見当たらない。

 

………。

 

俺はこっそりポケットにカードを収納し、何事もなかったかの用に自宅のアパートに帰還した。

いや、別にネコババしようって言うんじゃないんだ。

ただ、持ち主が現れるまでは俺が自宅のフェイトコレクションBOXの中に保管してあげるだけさ。

 

そう、心の中でいい訳をしつつ、録画したプリズマ☆イリヤを鑑賞しつつ湧き上がる

中二的欲求を満たす為に画面の中でバーサーカーと対峙して居る美遊たんと一緒にクラスカードを掲げて詠唱をする。

 

『「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

祖には我が大師シュバインオーグ。

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」』

 

『「みたせ。みたせ。みたせ。みたせ。みたせ。

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する」』

 

『「―――――Anfang」』

 

『「――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」』

 

『「誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――

 夢幻召喚!!」』

 

 

……ふう。

なんとも言えない満足感に浸っていると……。

 

は?

 

魔法陣のようなものが俺の足元に出現した。

 

え?

 

突然の状況に混乱し、唖然としていると魔法陣が黄金の光を発し、俺の視界を

埋め尽くした。

 

え?え?まさか英霊化?

英霊エミヤに変身?

体は剣になっちゃうの?

驚愕とワクワクの狭間に揺れながら自分の体が大きな力によって変質していくのを肌で感じる。

 

つ、ついに選ばれし者としての人生が俺に訪れて、美少女なヒロインとイチャイチャが…。

 

大きな力の本流と体を作り変える謎の力の存在を感じなくなり、視界がクリアになった俺は、ゆっくりと洗面所に移動して鏡をみる。

 

中学の頃に何度も妄想した無限の剣製がついに俺の……は?

 

赤い外装を纏った自身を妄想していた俺は固まった。

何故なら鏡に写った俺は褐色の肌になったワケでも赤い外装のあの字も纏っては居なかったのだ。

 

だが、その代わりに俺は……。

 

煌びやかな黄金の鎧を身に纏い。

 

逆立った金髪と赤い瞳をした……英雄王・ギルガメッシュに変貌していた。

 

な、なんでさ……。

 

いや、別に英雄王は嫌いではない。

作品の中では最も古い最強のサーヴァントにして宝具を湯水の如く打ちまくる奴は、まさに圧巻だった。

 

しかし、しかしだ。

 

俺としては想像するのは常に最強の自分とか、体は剣で出来ているとか色々とやってみたかったんですよ。

 

なんだろうか?先程までは新しいポケモンをゲットしたサトシの気分だったのに、今ではニドラン♂が欲しかったのに卵から生まれたのがニドラン♀だった時の気分だ。

 

つーか、これ元に戻れるの?

 

 

☆二時間後☆

 

 

元に戻れませんでした。

なんぞこれ?

王の財宝とか金ぴかな鎧にエアの扱い方はクラスカードの補助のお陰か脳内で親切な解説をしてもらえたが、戻る事については教えてはもらえなかった。

 

どうやらクラスカードは装備欄から外す事のできない呪われた装備だったようだ。

どうするんだよこれ。呪いを解いてくれる神殿なんて現実にねーぞ。

 

あー、とりあえず喉が渇いたし、神代の酒とやらを飲んでひとまず寝るか。

 

鎧を霧散させて全裸になった俺はパジャマに着替えた後、王の財宝の揺らめく空間から金ぴかの酒瓶とコップを取り出し、酒を浴びるように飲んだ。

 

 

 

☆ギルガメッシュ生活一日目☆

 

目が覚めても俺はギルガメッシュのままだったので大学は休んだ。

自動変換される言葉とギルガメッシュボイスを楽しみつつ、色々考えたが駄目だったのでステータスを確認する事にした。

 

筋力B

 

耐久B

 

敏捷B

 

魔力A

 

幸運A

 

宝具EX

 

保有スキル

 

黄金率(A)

 

神性(A+)

 

おおう。

 

聖杯戦争ではない為か、単独行動のスキルはないが結構凄い事になっている。

カリスマがなかったり、神性が高いのは恐らく中身が俺だからだろう。

カリスマは軍を率いた事もなければ王様でもない俺にはあり得ないスキルだし、神様を嫌っていたギルガメッシュと違って、俺は神様を特に嫌っていない。

その影響で神性は本来のランクに戻ったようだ。

 

このステータスを脳内で見た俺は、とりあえず黄金率と幸運を試す為に人生初の競馬を経験したのだが……。

 

滅茶苦茶稼ぎました。

 

3000円が6000万に膨れ上がりました。

もうウハウハですね!!

 

フェイト・グランドオーダーのストーリーガチャを引けば、常に欲しい物が出て来て、全てのサーヴァントを一発コンプリート!!

アレだけ課金して引いても出なかった☆5のアルトリアが一発で出るなんて……。

 

俺、英雄王としてこれからの人生を満喫してもいいかもしれない。

 

 

☆英雄王として新しい生活を満喫する事にした 二日目☆

 

王の財宝から絶版になったエロゲやゲームを取り出してプレイする傍らで株を購入して大もうけ。

 

もう笑いが止まらない。

 

一生働く必要のない金が俺の口座に振り込まれた。

 

フハハハハハ!!

 

俺の生活は薔薇色だ。

二次元の嫁(ポスターとフィギュア)に囲まれて好きなゲーム(エロゲなど)をプレイしつつ金を稼ぐ。

 

まさに理想郷!!アヴァロンはここにあったのだ!!

 

 

☆エロゲ生活一週間目☆

 

俺が本来の姿に覚醒してから一週間がたった。(大嘘)

これから俺は大きな戦へと赴く。

そう同人誌即売会と予約していた《ハイスクール乱ブル》の初回限定版の発売日だ。

俺は朝早くから同士たちの並ぶゲームショップへと続く列へ並び、一歩また一歩と

同士たちと共に列を進んでいく。

 

お宝を手にした漢達は急いで駅へと走り去っていく。

恐らく戦場(同人誌即売会)の会場へと向かったのだろう。

 

我も彼等に続かなくては……。

 

しばらくしてようやく俺の順番が回って来た。

俺はレジの店員からゲームを受け取り、持っていた手提げ袋にゲームを宝物のように大事に入れて駅へと歩み始めたのだ。

 

さあ、お宝(同人誌)達よ!

我が蔵へと収納してやるから覚悟いたせ!!

 

気合を入れて同士たちと共に駅に向かうのだが……。

駅に向かう為の道が沢山の人々によって封鎖されていた。

な、なんだこれは?

 

よく見れば先程俺と一緒にゲームを購入していた同士達も立ち往生している。

 

時間は午前11時47分。

 

もたもたしていたら我のお宝たちが!!

 

こうなったらエアを使って幼女以外を殲滅して……。

焦りからか、そんな物騒な事を考えていたら……

 

野次馬の前の方から悲鳴と共にワイバーンと呼ばれる幻想種が大きな槍を持ち、甲冑を着た人間を乗せて空を飛んだ。

 

何だ、あれ?

 

ワイバーンを見上げているとワイバーンの口から人間の手が落ちてきた。

 

は?

 

どか(ふってきた人間の腕が俺の持っていた手提げに直撃する音)

グシャ!グシャ!!(地面に落ちて、逃げ惑う人々に踏まれる手提げ袋)

そして無残な姿を晒す俺のお宝。

 

無残な姿になってしまった俺のお宝ちゃんを見て俺は真っ白になり、ゆっくりと…

この原因を作り上空を旋回しているクソ野郎を見る。

 

「おのれぇーーーーーーー!!!!!」

 

俺の人生で一番の怒りが銀座で爆発した。

 

 

 

 

 

 


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