京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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機動戦士ガンダム 英雄黙示録 ☆

狭いコクピットの中、少年は深呼吸をしていた

 

「これから、人間同士の戦いが始まる………」

 

彼の名前は土見稟

 

現在、ある軍のMSパイロットである

 

コクピットの中で待機していると、コクピット内に電子音が鳴り響く

 

どうやら、味方からの通信のようだ

 

『こちら、レーヴァティン5。柏木機! 土見機、聞こえる~?』

 

なんとも緊張感の無い声と共に、サブ画面に1人の女の子の顔が映った

 

彼女の名前は、柏木晴子(かしわぎはるこ)。稟の訓練生時代からの仲間だ

 

「こちらレーヴァティン6。土見機、感度良好。聞こえる」

 

稟は簡素に返答した

 

『な~に緊張してるのさ! ほらリラックス、リラックス!』

 

と、柏木は朗らかに声をかけた

 

「お前な、少しは緊張しろよ。……2年前の戦争を思い出してたんだよ」

 

稟は少し苦い表情で、返答した

 

『あー、タイタン戦争か……』

 

タイタン戦争

 

それは、今から2年前に起きた戦争だ

 

稟は当時を思い出したのか、ゆっくりと眼を閉じた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

新太陽暦70年

 

人類が宇宙に進出してから既に半世紀以上が経過していた

 

しかし、未だに争いを止められないでいた

 

そして、新太陽暦70年6月

 

人類は、決断を強いられた

 

それは、未知の敵<タイタン>が現れたのだ

 

タイタンは高さ約18mの6つ目の巨人である

 

タイタンは、突如として現れた巨大な門から出てきては人類に牙を向けたのだ

 

人類はこれに対して、一致団結して防衛を開始

 

人類の当時の装備は多脚戦車と戦闘機、そして海軍の戦艦であった

 

タイタンの装備は、弓や大剣、そして腕に直接くっついている大砲である

 

当初は優勢に戦えていた。しかし、戦闘開始してから、約3週間後

 

タイタン側に、生態型航空戦力の<ドラゴン>が出現

 

それに伴い、タイタンの中に大きな楯を装備したタイタンも出現した

 

その楯により、砲弾の効果は著しく減少

 

それが理由により、人類は新機軸の兵器の開発を余儀なくされた

 

楯を突破して、撃破するには主砲の大口径化かビーム化しかなかった

 

しかし、当時ビームは戦艦にしか搭載されていなかった

 

それに、もし小型化できてもエネルギーの問題もあった

 

そして、一番の問題は多脚戦車では効果的に攻撃できなかったのだ

 

それを解決するためには、戦闘機のような三次元機動をする兵器を作る必要があったのだ

 

そして考えられたのは、三次元機動を併せ持つ機動兵器だった

 

その間にも人類は、少しずつ防衛線を後退させていった

 

そんな人類にある一筋の光明が見えた

 

それは、人型汎用機動兵器MS<モビルスーツ>である

 

これを開発したのは、海洋独立国家初音島に存在する<天枷研究所>であった

 

天枷研究所は、世界でも名の知れたロボット開発の最先端の研究所だった

 

しかし、世界は最初天枷研究所が発表したMSに対して懐疑的だった

 

そして、天枷研究所の所長が提案したのは

 

「では、我々が開発したMSの威力をお見せしましょう」

 

と、言ったのだ

 

それにより、MS隊が日本に派遣されたのだ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

日本 光陽町

 

その町は業火に包まれていた

 

その町も、緑に包まれていた綺麗な町だったのだろう

 

しかし、今やその面影はない

 

そんな街中を3人の男女が走っていた

 

「はあ……はあ! 頑張れ(かえで)! (さくら)!」

 

先頭を走っているのは、身長170cm前後で端正な顔立ちの少年だった

 

名前は土見稟(つちみりん)

 

「はあ…はあ! 楓ちゃん、頑張って!」

 

その少年の少し後ろを走っているのは、腰まで伸ばした黒髪ツインテールが特徴の大和撫子と呼べる少女だった

 

名前は八重桜(やえさくら)と言う

 

「はあ…はあ…待ってください!」

 

一番後ろを走っているのは、橙色の髪に赤いリボンを結んでいる大人しい印象の少女だった

 

名前は芙蓉楓(ふようかえで)である

 

「頑張れ! もう少しで避難できる!」

 

3人の走ってる先には、兵士が避難誘導している

 

そんな時だった

 

轟音と共に激しい震動が起きた

 

「うお!?」

 

「きゃー!?」

 

あまりにも激しい震動で、稟たちは立っていられなくって倒れた

 

「楓、桜! 大丈夫か!」

 

「私は大丈夫! 楓ちゃんは!?」

 

しかし、楓からは返事は無い

 

「ま、まさか……」

 

稟は信じたくない思いで、振り返った

 

先ほどまで楓が立っていた場所には、大きな足が立っていて、その近くには千切れた腕とリボンが残されていた

 

「か、楓ちゃん……」

 

桜は顔を青くして、口元を手で覆っていた

 

「そんな……楓…楓ーーー!」

 

稟は叫ぶことしか出来なかった

 

すると、目の前に立っていた巨人が手に持っていた大剣を振り上げた

 

(あ、俺ここで死ぬのかな? でも、桜だけでも!)

 

稟は桜を背後に大きく突き飛ばすと、眼をきつく閉じた

 

すると、大きな音が3回響き、稟の瞼の裏に強い光が差した

 

稟はいつまで待っても来ない痛みに不思議に思い、ゆっくりと眼を開けた

 

すると、巨人は大剣を振り上げた状態で固まっていた

 

巨人はその体勢のまま、ゆっくりと倒れた

 

「稟くん! 無事!?」

 

気付くと、桜が駆け寄っていた

 

「あ、ああ。大丈夫だ…」

 

稟は、なぜ自分が助かったのか分からなかった

 

桜は稟に抱きついて泣いている

 

すると、どこからか空気を切り裂くジェット音が聞こえた

 

稟は音のした方向に振り向いた

 

すると、こちらに向かって飛んでくる大きな人型の影

 

その人型機は、青赤白のトリコロールが印象的な機体だった

 

その機体は、稟達の近くに着地した

 

『君達! 大丈夫か!?』

 

目の前の機体からだろう。若い男の声が聞こえた

 

「はい! 大丈夫です!」

 

稟は内心驚きながら返事をした

 

(俺と年齢差はない?)

 

『よし! 今、桜武(おうぶ)の高機動車と歩兵を呼んだ! 少し待ってろ!』

 

稟はその名前を聞いて驚いた

 

(桜武! あのMSを開発した初音島の軍隊!)

 

桜武というのは通称である

 

正式名称は初音島統合防衛軍である

 

確かに、目の前の機体の左肩には桜武の証である桜の花に刀が重なったマークがペイントされている

 

稟は泣いてる桜の頭を右手で撫でながら、左手を握りこんだ

 

(これがMS! 人類の反撃の刃!)

 

稟は眼の前の機体を見上げた

 

 

 

 

これが、後に英雄と呼ばれる少年との出会いである

 

そして、初音島の派遣したMS部隊は僅か3週間で日本のタイタンを全て駆逐

 

それを見た世界各国の軍部はMSの採用を決定

 

新太陽暦71年 12月

 

人類はタイタンとの戦争を数多の犠牲を払いながらも、勝利したのだった

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

早朝の朝日が差し込む部屋

 

その部屋のベッドに、腰掛ける男が1人

 

その男は両手を組み、その上に額を置いている

 

すると

 

「怖いの? 義之(よしゆき)

 

男の背後から、優しそうな声がかけられた

 

男、桜内義之(さくらいよしゆき)は、背後の眼鏡を掛けて、裸身にシーツを巻いた状態の少女に振り向いた

 

「ああ………少し、怖いかな? ありがとう、麻耶(まや)

 

義之は恋人の、沢井麻耶(さわいまや)に微笑みながら、返事をした

 

「仕方ないわよ。今回の相手は人間なんだもの……」

 

麻耶はそう言いながら、義之の首に腕を回した

 

「そう、だな………」

 

義之はそう呟きながら、眼を閉じた

 

(今でも覚えてるさ。あの、2年前の戦いを……)

 

義之は、2年前の戦い。<タイタン戦争>を思い出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

新太陽暦71年 8月某日

 

独立海洋都市国家 初音島

 

「これで……何体倒した?」

 

義之は愛機、ストライクの武装

 

15,78m対艦刀<シュベルト・ゲベール>を、タイタンの死骸から引き抜きながら、周囲を見回した

 

今、ストライクが立ってる場所は。本来、美しい砂浜だった

 

それが今や。夥しいほどの醜いタイタンの死骸と、友軍機、M1アストレイの機体の残骸で埋め尽くされている

 

「……IFF及び、レーダーに反応なし……俺以外は全滅か……」

 

義之は計器を確認して、呟く

 

最初この砂浜には、ストライクを含めて30機近くのアストレイが展開していたが、今立っているのはストライクのみだった

 

更に、無線には味方の救援要請、怒号、悲鳴が引っ切り無しに響いている

 

すると、狭いコクピット内に電子音が響いた

 

どうやら、通信のようだ

 

『こちらHQ(ヘッドクォーター)! ウラヌス1、戦況を報告してください!』

 

サブ画面に、通信将校の沢井麻耶の顔が映った

 

ウラヌス1と言うのは、義之のコールサインだ

 

「こちら、ウラヌス1。当該戦闘区域のMS部隊は、俺以外は全滅した。繰り返す、全滅した」

 

義之は悔しさを堪えて、報告した

 

『HQ了解! 現在そちらに向けて、連隊規模の敵が進行中!』

 

「おいおい……さすがに俺1人じゃ、対処しきれないぞ!?」

 

義之はその多さに、絶句する

 

『大丈夫よ。今そっちに、強力な援軍が行ったから』

 

それを聞いた義之は、片眉を上げて

 

「援軍? 一体誰が……」

 

疑問に思った時だった

 

コクピット内に、甲高い警告音が鳴り響いた

 

義之は直感に従い、機体を右ステップさせる

 

すると

 

先ほどまでストライクが立っていた場所に、光弾が着弾して、クレーターが出来た

 

「っ! ドラゴンか!」

 

義之はストライクの頭部カメラを、上に上げた

 

するとそこには、10数体のドラゴンが飛んでいた

 

しかもその内の1体はまさに、光弾を撃とうとしている

 

ストライクは着地したばかりで、すぐには動けない

 

「ヤバイ!」

 

義之は撃墜されると思った

 

その時だった

 

光弾を放とうとしていたドラゴンに、レールガンとミサイルが着弾する

 

「この攻撃は、デュエルAS(アサルトシュラウド)! まゆき先輩ですか!」

 

義之は攻撃の来た方向に振り向いた。すると

 

『ほらほら! 油断しちゃ駄目だよ? 弟くん!』

 

と、SFS(サブフライトシステム)のベースジャバーに乗っている鈍重そうな青い機体。デュエルASが飛んできた

 

次には、海から出現したタイタンに、鑓のような物体が刺さった

 

「この攻撃は、ブリッツ! 杉並か!」

 

気付くと、ストライクの右側に黒い流線型の気体

 

ブリッツガンダムがベースジャバーに乗って、着地していた

 

『同志桜内は、無事か?』

 

そして、次には

 

10数初のミサイルが、ドラゴンに殺到する

 

「これは、バスター! 菊理(くくり)さん!」

 

義之は背後に振り向いた。そこには、まさにミサイルを発射した証拠に、煙が出ているランチャーが開いている緑とクリーム色の機体

 

バスターガンダムが、両脇に火砲を抱えて立っている

 

『流石にこの数は、厳しいですからね♪』

 

画面に映っている橘菊理(たちばなくくり)は、微笑んでいる

 

『ふむ。これで、全機集結したな』

 

最後に、鋭角的な赤い機体。イージスガンダムがベースジャバーに乗って現れた

 

「伊隅隊長!」

 

『全機に通達する! 1体たりとて、タイタン共を攻め込ませるな! 1体残らず血祭りにしろ!』

 

『『『「了解!」』』』

 

伊隅みちるの命令に、4人の斉唱が答える

 

5機はそれぞれ、武器を構えて攻撃を開始した

 

『行くぞ! 同志桜内!』

 

杉並は言うと同時に、ベースジャバーを駆ってストライクの後ろに回りこむ

 

「ああ!」

 

義之はストライクをジャンプさせて、ベースジャバーに着地した

 

強力な推進力を有するベースジャバーは、最大で2機まで乗せて飛行できる

 

杉並はベースジャバーを急上昇させて、ドラゴンの群れに突撃した

 

義之は、ベースジャバーがドラゴンの上に来たことを確認すると、機体をベースジャバーから切り離した

 

もちろん、機体は重力に従って、落ちていく

 

しかし、真下にはドラゴンの背中が見える

 

義之はドラゴンの背中に、ストライクを着地させると

 

「はああぁぁぁ!」

 

ドラゴンの首目掛けて、対艦刀を振り下ろした

 

ビーム刃は簡単に、ドラゴンの首を切り裂く

 

義之は、ドラゴンの翼が止まる前に、近くのドラゴンにスラスターを噴かして飛んだ

 

義之はドラゴンの背中に着地すると同時に、ストライクの左肩に取り付けられている取っ手を掴み、右側のドラゴン目掛けて投げた

 

投げたのは、ビームブーメラン<マイダス・メッサー>である

 

マイダス・メッサーはドラゴンの翼の付け根を容易く切り裂く。ドラゴンは飛べなくなって、落ちていく

 

マイダス・メッサーは大きく弧を描き、ビーコンで左肩に戻る

 

そして義之は、シュベルト・ゲベールをドラゴンの背中に刺してから、切り払った

 

ドラゴンは絶命して、落下し始めた

 

義之は慌てずに、ストライクの左腕を上に突き出す

 

すると、左手に装備されている楯からワイヤー、<パンツァー・アイゼン>が射出された

 

パンツァー・アイゼンは上を飛んでいたドラゴンの、足に当たる部位にアンカーを噛ませると、ワイヤーを巻き戻した

 

するとストライクは、その勢いによって、上に上がる

 

義之は、そのままスラスターを噴かしてドラゴンの上に飛びながら、シュベルト・ゲベールを振り上げる

 

「このっ!」

 

そしてドラゴンの胴体目掛けて、振り下ろす

 

シュベルト・ゲベールは重力の助けもあって、容易くドラゴンを切り裂いた

 

そして落下しながら、周囲を見回す

 

空域には、他に敵は見えなかった。どうやら、いまので最後だったらしい

 

義之は、どうするか考えてると

 

『同志桜内! こっちだ!』

 

と、声が聞こえた

 

義之は声のした方向を見た。すると、杉並の駆るブリッツとベースジャバーがこちらに向かっている

 

『ビーコンを同調させろ!』

 

義之は反射的にコンソールを操作して、ビーコンに機体を同調させてベースジャバーに着地した

 

『やれやれ、キリが無いな』

 

杉並は疲労の溜まった声で、ぼやく

 

「ぼやくな、杉並」

 

義之は言いながら、エネルギーゲージを確認した

 

「そろそろ、ヤバイか……」

 

エネルギーゲージは危険域(レッドゾーン)を示している

 

すると

 

『義之くん! エールとランチャーストライカーの予備、持ってきたわよ!』

 

とサブ画面に、2人の女性の顔が映った

 

「更識大尉! 神宮司中佐! ありがとうございます!」

 

片方は、くせっ毛なのか、外側に撥ねた水色の髪が特徴の女性。名前は更識盾無(さらしきたてない)大尉で、不思議な頼れるお姉さん

 

搭乗機は、青いタイプのアストレイ。通称アストレイ・ブルーフレームである

 

もう片方は、三つ網にした長い茶髪が特徴の女性だった。名前を神宮司(じんぐうじ)まりも中佐で、厳しくも、優しい女性だ

 

こちらの搭乗機は、金色のアストレイ。アストレイ・ゴールドフレームである

 

砂浜には、予備のストライカーパックが収まったトレーラーが2台止まっている

 

「杉並!」

 

『うむ!』

 

義之が端的に言っただけで、杉並はベースジャバーの機首を砂浜に向けた

 

義之はベースジャバーが砂浜の上に来たのを確認すると、機体を砂浜に着地させた

 

そして着地すると同時に、ソードストライカーをパージした

 

すると、ストライクの色が

 

赤・青・白のトリコロールから、グレーに変化した

 

どうやら、PS(フェイズシフト)装甲がダウンしたようだ

 

PS装甲は、一定の電圧を通電することで相転移する特殊な金属で作られており、実体弾や実剣などに対して、絶大な防御力を誇る画期的な新型装甲である

 

そして相転移すると、電圧毎に色が違うのだ。そして、ストライクの場合は赤・青・白のトリコロールなのである

 

そして義之は、トレーラーの中から出てきた緑色のストライカーパック

 

ランチャーストライカーを背中に装備した

 

すると、装甲の色がグレーからトリコロールに変わった

 

ストライカーパックには、予備の小型バッテリーパックが内蔵されているために、換装すればバッテリーが危険域でも充電が可能なのだ

 

「菊理さん。手伝います!」

 

義之はストライクを、膝たち状態のバスターガンダムの隣に進ませた

 

バスターは、94mm高エネルギー収束火線ライフルと350mmガンランチャーを連結した武装、超高インパルス超射程狙撃ライフルで上空のドラゴンや、海面に出現したタイタンを狙撃していた

 

義之もそれに同調して、左肩に懸架されている巨大な火砲<アグニ>を脇の下を通して構えて連射する

 

するとレーダー上に大きな反応が突如、出現した

 

「あれは!」

 

『くっ! ギガンテスか!』

 

<ギガンテス>

 

それは、タイタンの中でも最大級の巨人で、最大で80m近くある

 

『義之くん!』

 

「合わせます!」

 

義之は菊理の言いたいことを、瞬時に理解した

 

そして、義之と菊理はお互いにギガンテスの頭部を精密照準する

 

『「いっけーーー!」』

 

2機の火砲から同時に、巨大な火線が走り、ギガンテスの頭部を吹き飛ばす

 

ギガンテスは、巨大な水柱を起こしながら倒れた

 

すると、義之たちの左側の砂浜にタイタンが出現した

 

「間に合え!」

 

義之はストライクを即座に向けると、右肩に装着されている120mm対艦バルカン砲と350mmガンランチャーを撃ちまくる

 

10数秒後、タイタンが居た場所には、肉片が残っているのみだった

 

「なんとかなったか………」

 

義之が安堵の息を吐いていると、周囲にイージス、ブリッツ、デュエルASがベースジャバーで着地する

 

『全機、状況を報告しろ!』

 

隊長の伊隅みちるが通信で聞いてきた

 

『すまん。もう、エネルギーが危険域だ……』

 

杉並が表情を暗くしながら、報告する

 

『ごめん。あたしも、エネルギーだけじゃなくって、グレネードもミサイルも弾切れだ…』

 

まゆきも苦しそうな表情で告げる

 

『すいません。私もです……』

 

菊理も同様に告げた

 

「俺はエールストライカーが残ってるので、まだ行けます!」

 

義之はランチャーをパージして、エールストライカーを装着しながら告げた

 

『私は、まだ大丈夫よ!』

 

『私もだ』

 

盾無とまりもは、簡潔に答える

 

『くっ! 私は、エネルギーが危険域だ……』

 

みちるは悔しそうに、歯噛みしている

 

それを聞いた義之は、ある答えに行き着いた

 

「伊隅隊長、杉並、菊理さん、まゆき先輩は補給に戻ってください!」

 

『『『『!?』』』』

 

義之の判断に、4人は驚いている

 

「ここは俺達が引き受けますので、早く!」

 

『なに言ってるの、弟くん! 5機でやっとだったのに、3機だけなんて!?』

 

まゆきが、驚きと心配の入り混じった声で言うが

 

『安心しろ。それに関しては、頼もしい援軍を呼んだ』

 

と、まりもがまゆきを制した

 

『援軍でありますか? 一体、誰が?』

 

と、伊隅が不思議に思っていると。レーダーに味方を表す光点(ブリップ)が2つ現れた

 

方向は後ろ、軍事式に言うと6時の方向だった

 

義之が後ろを向いて確認すると、見えたのは赤いアストレイと紅いストライクだった

 

「あれは、アストレイ・レッドフレームとストライク・ルージュ! 織斑中佐に草壁大尉!」

 

『すまんな、お前達。遅れた!』

 

『間に合ったか!』

 

通信画面に映ったのは、黒髪ロングの釣りあがった目つきの女性と

 

赤い髪をポニーテールにしている、女性だった

 

黒髪ロングなのは、織斑千冬(おりむらちふゆ)と言い、厳しいが頼れる女性。階級は中佐で搭乗機はレッドフレーム

 

赤髪なのは、草壁美鈴(くさかべみすず)といい、リーダーシップ溢れる勇敢な女性。階級は大尉である。搭乗機はストライク・ルージュだ

 

『さて、伊隅少佐。話は無線で聞いた。桜内大尉の提案に従って、お前達は補給に向かえ。ここは我らが引き受ける!』

 

千冬は毅然とした態度で、みちるに告げた

 

『し、しかし!』

 

不服なのか、食ってかかるが

 

『行け! これは、上官命令だ!』

 

千冬は上官として、命じた

 

『っ! 了解しました……御武運を!』

 

みちる達は後ろ髪を引かれる思いで、補給に向かった

 

『さて、桜内大尉。貴様の気概を、見せてもらうぞ?』

 

千冬は試すような口調で、義之に問いかけた

 

「了解! して、織斑中佐。その腰の刀は?」

 

義之は、レッドフレームの腰に装着されているMSサイズの刀を見ながら聞いた

 

『ん? ああ、これか。これはな、ガーベラ・ストレートと言ってな。私が頼んでおいたのだ』

 

私は刀のほうが得意だからな。と千冬は、付け足した

 

「菊一文字ですか。かつての名刀の名前ですね」

 

『まあな。さて、雑談は終わりだ。来るぞ!』

 

義之たちは機体の向きを、変えた

 

その先には、数百体のタイタンやドラゴンが居た

 

『織斑中佐。どうします?』

 

まりもが千冬に問いかけた

 

『私と桜内大尉が、空を抑える! 神宮司中佐は、草壁大尉と更識大尉を率いて地上を頼みます!』

 

『了解!』

 

それを聞いた義之は、ストライクのスラスターを最大限で噴かした

 

「桜内義之。ストライク、行きます!」

 

そう宣言すると、ストライクはドラゴンの群れに突撃した

 

 

 

 

この戦いは一昼夜続き、後にその激しさから

 

<初音島攻防戦>と呼ばれるようになった

 

更に、この時の戦闘データはシミュレーターに転用され

 

以降のMSパイロット育成に、大きく貢献した

 

なお、この戦いで義之は<初音島の守護神>と呼ばれることとなった

 

そして、新太陽暦71年 12月

 

人類は莫大な被害を出しながらも、タイタンを地球上から殲滅したのだった

 

 

これは、日常と、戦争と言う、非日常を

 

逞しく生きていく、少年少女たちの記録である




どうでしょうか?

かなりのキャラが登場する作品です

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