京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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異世界食堂inバカ ☆

日本のある街のビル街

そのあるビルの地下に、小洒落た料理店があった

その名前は、《洋食のねこや》

今の店長が、先代の店長から店を継いで10年

月曜日から金曜日は、通常営業として開店

そして土曜日、《特別営業》をやっている

特別営業と聞いたら、普通は予約限定と思うだろう

しかし、違った

特別営業は、お客が何者なのか

扉の向こう(・・・)がどんな場所かは、知らない

だがその土曜日は、異世界食堂とも呼ばれていた

それが、洋食のねこやのもう一つの呼ばれ方だ

そして、別世界のある炭坑町の外れの丘

そこに、一人の女性が居た

長い茶髪を、三つ網にした女性だった

その女性は、双眼鏡を覗いていた

そして、目的の場所を見つけたらしく

 

「……! 見つけた、あそこね!」

 

と言って、移動を始めた

森を抜けて、山を上り、その炭坑に入った

そこは、廃坑になった元炭坑だった

女性はその中に入り、奥を目指した

途中で幾つもの罠を掻い潜り、少し広い空間の岩に腰掛けた

すると、その岩がガコンと沈みこんだ

 

「しまった!? 何かの罠!?」

 

と女性は叫んだが、罠は起動しない

不思議そうにしていると、何か重い物が動く音が聞こえた

 

「ん?」

 

周囲を見回すと、ある一ヶ所の巨大な岩が無くなり、その奥に猫の絵が描かれたドアがあった

女性は、恐る恐ると近寄り

 

「ドア……よね?」

 

と不思議そうに首を傾げた

そして、腰のバッグの中から一冊の本

日記を取り出して読み

 

「文字は分からないけど……これは、ネコ……よね?」

 

と呟いた

そして、ゆっくりとドアを開けた

そうして見えたのは、様々な種族の人々が揃って楽しそうに料理を食べている光景だった

その光景を見て、女性

トレジャーハンターの、サラ=ゴールドは呆然とした表情で

 

「なんなの……ここは……」

 

と呟いた

すると

 

「いらっしゃい!」

 

「洋食のねこやに、ようこそ!」

 

と二人の男性が声を掛けてきた

それに思わず、サラは腰からナイフを抜いて

 

「……ねこや?」

 

と首を傾げた

すると、若い青年が

 

「はい、しがない料理屋ですよ」

 

と言った

それを聞いたサラは

 

「料理屋? こんな廃坑で?」

 

と驚いていた

それを聞いた髭の生えた男性

店長は

 

「廃坑?」

 

と首を傾げた

そして、パチンと指を鳴らして

 

「お客さん。もしかして、ウィリアムさんのドアから来ました?」

 

と問い掛けた

すると、サラは

 

「ウィリアム=ゴールドを知ってるの!?」

 

と店長に詰め寄った

すると、店長は

 

「何年か前まで、ウチに来てくださった常連さんですよ」

 

と説明した

それを聞いた青年は

 

「僕が雇われるより、更に前ですか?」

 

と問い掛けた

すると、店長は

 

「明久がきたのは、二年前か。それより前だな」

 

と言った

しかし、サラは

 

(ここに、ウィリアム(お爺ちゃん)の秘宝が有るのは、間違いないんだけど)

 

と思った

そして、二人に

 

「それより、ウィリアム=ゴールドの秘宝はどこ?」

 

と問い掛けた

しかし、店長は

 

「ウィリアムさんの秘宝は知りませんが、料理を食べませんか?」

 

と言った

すると、明久が

 

「そんな物騒なのは仕舞って、お好きな席に座ってください」

 

と席に座るように、促した

そして二人して、両手に大量の皿を持って奥に引っ込んだ

それをサラは、呆然としながら見送ったが、ぐぅーと腹の虫が鳴り、顔を真っ赤にしながら座った

すると、明久が

 

「こちら、メニューになります。お客さん、東大陸語は読めますか?」

 

とサラに問い掛けた

すると、サラは

 

「ええ、読めるわ」

 

と返した

それを聞いて、明久は

 

「では、どうぞ」

 

とメニューを手渡し、机の上にコップを置いた

すると、そのコップを見たサラが

 

「ちょっと、水は頼んでないわよ?」

 

と言った

それを聞いて、明久は

 

「そちらのレモン水は、サービスですよ」

 

と言って、離れたのだった

そしてサラは、ウィリアムの秘宝を知ることになる


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