京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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今度投稿する作品のプロローグです


艦隊これくしょん 絆の旋律 ☆

西暦1963年

第二次世界大戦が終結してから、約20年後突如として現れた存在

深海棲艦により、人類は制海権を失い、それに伴ってシーレーンも破壊された

それによって人類は海を奪われて、物資も滞り、人類は絶望しかけた

しかしある日、人類に一筋の希望が現れた

その名は艦娘(かんむす)

それは在りし日の軍艦の魂を受け継いだ、年若い女性達だった

彼女たちはそれまで当時の兵器ではまったく太刀打ちできなかった深海棲艦に対して、艤装という武装を纏って勇敢に戦い、深海棲艦を撃破していった

それから時は経ち、2003年

これは、その艦娘達とその艦娘達を指揮する一人の風変りの提督とその仲間達の物語である

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「祐輔さん! 新しい仲間が来たみたいですよ!」

 

と明るく言ったのは、数多く居る艦娘の一人

特型駆逐艦の吹雪である

その彼女が呼んだ祐輔こと、榊原祐輔(さかきばらゆうすけ)は彼女達、艦娘を指揮する提督の一人である

なお本来だったら、司令官、または提督と呼ぶべきなのだが、祐輔たっての願いで名前で呼んでいる(とはいえ、この鎮守府所属以外の人が居たら、きちんと役職で呼ぶが)

 

「ん、わかった。入ってもらって」

 

祐輔はそう言うと、捌いていた書類を一旦やめて顔を上げた

祐輔の年齢は17歳と若く、まだ少年と呼べる年齢である

しかし彼は、日本帝国海軍が行った教育を、優秀な成績で終えている

そして、新しく入ってきたのは、一人の小柄な少女だった

身に付けたコルセットと、頭に着けたカチューシャが特徴だった

 

「装甲空母の大鳳てす!」

 

と元気よく、海軍式の敬礼をしながら名乗った

すると、祐輔は立ち上がって

 

「ようこそ、大鳳さん。僕がこの初音島、風見鎮守府を任されてる榊原祐輔です。で、この子が総秘書艦の」

 

「吹雪です! よろしくお願いします!」

 

祐輔が紹介すると、吹雪は元気よく名乗った

それに対して、大鳳は敬礼することで応じた

すると、祐輔が

 

「太鳳さん。一つお願いがあります」

 

と言った

 

「お願い……ですか?」

 

太鳳は内心で驚きながらも、首を傾げた

命令してくる提督は居るだろうが、お願いしてくるのは中々居ないだろうからだ

太鳳が首を傾げていると、祐輔は右手の人差し指を立てて

 

「僕のことは、祐輔って呼んでください」

 

と言った

太鳳は予想外過ぎたお願いに、祐輔の顔を見たまま固まっていた

すると、祐輔が

 

「鎮守府では、全員家族です。その家族を役職で呼ぶのはおかしいですよね?」

 

と微笑みを浮かべたまま告げた

その言葉を聞いて、太鳳は祐輔が悪人ではないと悟った

 

「では、祐輔さんと呼びますね」

 

太鳳が笑みを浮かべながらそう言うと、祐輔は満足した様子で頷いて

 

「よろしくお願いしますね。では、これからですが……」

 

と太鳳に、これからの行動を教えようとした

その時だった

鎮守府中に甲高い警報音が鳴り響いた

そして

 

『コード991発生! 繰り返す! コード991発生!』

 

という放送までなされた

コード991

それは、最大級の警報である

哨戒艦隊の警備をすり抜け、防衛線までの接近を許したようだ

その警報を聞いて、祐輔は立ち上がり

 

「吹雪ちゃん。迎撃艦隊の編成は任せる。直ぐに出て、僕もすぐに向かうから」

 

と言った

 

「はい!」

 

祐輔の言葉に従って、吹雪は司令室から飛び出した

それを見送ると、祐輔は帽子を脱いで机に置いた

すると、太鳳が

 

「向かうってまさか、祐輔さんも出撃するつもりですか!?」

 

と驚愕していた

 

「ええ、そうですよ。今、第一から第四までの主力艦隊は出撃や遠征に出てて、残ってるのは、レベル上げ中や入渠中のみなんです」

 

祐輔はそう説明するが、太鳳は納得いかないらしく

 

「でしたら、私も出撃します!」

 

と祐輔に提案した

しかし、祐輔は首を左右に振って

 

「ダメですよ。太鳳さん、まだレベル1じゃないですか。そんなレベルでは、大して戦えませんよ?」

 

と拒否した

祐輔の言葉を聞いて、太鳳は歯噛みした

祐輔の指摘は正しかった

太鳳が俯くと、祐輔は太鳳の頭を優しく撫でながら

 

「大丈夫です。僕達は簡単には倒れませんよ」

 

と言うと、執務室から出ていった

祐輔が出ていって少しすると、太鳳は執務室から飛び出した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

着替え終わった祐輔は地下のロッカーから出ると、そのまま隣接された地下ハンガーに入った

その地下ハンガーは広大で、十数機もの巨人が静かに佇んでいた

しかし良く見れば、端の辺りが空いている

祐輔がそれを視界の端で確認していると

 

「祐輔」

 

と一人の少年が声を掛けてきた

 

「義之!?」

 

その人物を見て、祐輔は驚いた

祐輔に声を掛けてきた少年

桜内義之は、松葉杖を突いていた

 

「悪いな……俺が怪我したばっかりに」

 

「いいから、休んでなって!」

 

祐輔がそう言った時、一人の少女がフラついていた義之を支えた

 

「義之、せめて車イスに乗って」

 

少女、沢井麻耶はそう言いながら、義之を車イスに座らせた

この二人は新人の軍人である

しかし、桜内義之少尉は約一週間ほど前の戦闘にて負傷

現在、療養している身だった

 

「あれは、僕も悪かったよ……義之をカバーしきれなかった」

 

祐輔はそう言いながら、一機の機体の前に立った

蒼に塗装された、戦術機

試01式戦術機、不知火弐型だ

その隣は現在空白であり、そこが義之少尉の機体置き場である

しかし、彼の機体は被弾し損傷したために、現在はこの島にある天枷研究所にて修理中である

戦術機

正式名称は戦術歩行戦闘機

これを省略して、戦術機だ

1972年、アメリカが艦娘と共に現れた妖精と協力して開発・配備を開始した新機軸の機動兵器である

その後、アメリカだけでなく世界各国も開発・配備を開始

試01式は現在、日本帝国軍が主力配備されている94式不知火をアメリカからの技術支援を得て大幅改修強化した機体である

それの先行量産機体を、祐輔の部隊を含めた少数部隊が試験運用しているのだ

 

「とりあえず、義之は休んでてね。沢井伍長、後はお願いね?」

 

「了解」

 

麻耶が返事したのを確認すると、祐輔は自機に歩み寄って

 

「リズさん! 準備は出来てますか!?」

 

「当たり前でしょ! 装備も、祐輔の要望通りに強襲制圧(ガンスイーパー)よ!」

 

祐輔にそう言ったのは、リズと呼ばれた少女

篠崎里香技術大尉だった

祐輔とは長い付き合いで、機付き整備長であり、この鎮守府の整備班長だ

なお、リズというのはアダ名である

その理由は、彼女の洗礼名から来ている

彼女の母親が敬虔なキリスト教信者であり、彼女が産まれた時に洗礼名を与えたのだ

しかし、彼女自身は熱心なキリスト教信者という訳ではない

そんな彼女にとって、洗礼名はアダ名に使える程度の認識でしかなかったのだ

そして彼女が気に入った人物限定で、リズと呼ばせているのだ

 

「ありがとうございます!」

 

里香に謝辞を述べながら祐輔は、コクピットブロックに入った

そして、コクピットブロックが収容されると、祐輔の網膜に機外の光景が見えた

それは、網膜投影という機能だ

機体の各所に配置されてあるカメラからの映像を、直接網膜に映すのである

これにより、まるで実際に自分で見ているような感覚で操縦出来るのだ

祐輔は移動設定が歩行になってるのを確認してから、誘導に従ってカタパルトまで移動を始めた

そして、機体をカタパルトのロックに固定した

すると通信画面が開いて、眼鏡を掛けた長い黒髪が特徴の少女が映った

艦娘の一人、大淀である

普段はオペレーション関連を担っている

 

『HQよりアサルト1へ! 現在戦況は苦戦中の模様です。相手は空母ヲ級フラグシップを旗艦とした艦隊です』

 

「了解」

 

祐輔はそう言いながら、機体がキチンとロックがされたことを確認した

 

『カタパルトシステム、オールグリーン。進路、オールクリアー! アサルト1、発進どうぞ!! ……お気をつけて』

 

大淀が最後に心配そうな表情でそう言うと、祐輔は笑みを浮かべて

 

「了解」

 

と返答した

そして、ハッチから見える青空を見ながら

 

「アサルト1、不知火弐型(94式改)……榊原祐輔、出撃する!」

 

と宣言して、カタパルトで加速されて空に射出された

 

『こちらの編成は、吹雪、瑞鳳、摩耶、潮、多摩、電。それと、トライアド隊が出撃してます』

 

「うん、データリンクで確認した……トライアド隊が居て苦戦してるってことは、ヲ級フラグシップは噂の改か新型機搭載型かな?」

 

祐輔はそう言いながら機体を加速させて、戦域へと急いだ

仲間達のために

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

それから数十分後、祐輔と出撃した艦隊と戦術機部隊は無事生還

祐輔と吹雪は、執務室に戻った

その執務室には、戻ってきた大鳳も居た

 

「さて、少しドタバタしてしまいましたが……これにて、着任式を終えます」

 

「はい!」

 

祐輔の言葉を聞いて、大鳳は敬礼した

それを確認すると、祐輔は頷いて

 

「吹雪ちゃん。セットを持ってきて」

 

と言った

すると吹雪は、敬礼しながら

 

「わかりました!」

 

と言って、部屋から出た

祐輔はそれを見送ると、大鳳に視線を向けて

 

「大鳳さん。先程は言い忘れてましたが、ここは最前線です」

 

と語りだした

 

「詳細は今度話しますが、これだけは言わせてください」

 

祐輔はそう言うと大鳳に歩み寄って、右手を差し伸べて

 

「最前線にようこそ」

 

と言った

 

これは、一人の風変わりの提督と艦娘

そして、軍人達による物語である




分かると思いますが、艦これを中心に多作品のキャラが登場します

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