京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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裕也が死後に異世界に行くパターンその2
今度はダンまちです
最初はベル出ません
それと、リンディさんに神になってもらいました


ダンジョンに英雄が行くのは間違ってますか?

迷宮都市オラリオ

そこは世界で唯一、地下にダンジョンが存在する街である

ダンジョン

それは、オラリオの地下深くまで広がる広大な空間である

全部でどれほどなのか

それは、未だにわからない

しかし確実なのは、いつかは全て開拓されるはずである

その開拓の最前線に立っているのは、数数多居る冒険者達だ

冒険者とはなにか

冒険者というのは、地上に降りてきた神々から恩恵を受けて人智を超えた力を得た存在である

そして、神と神から恩恵を受けた冒険者達によって構成された集団を、人々は派閥《ファミリア》と呼んだ

これは、あるファミリアに所属することになった元英雄だった少年と、出逢いと英雄に憧れる少年の物語……

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「今日もたくさん買ったね、キリトくん!」

 

と言ったのは、腰辺りまで伸ばした水色の長い髪に長い耳が特徴のエルフの美少女

アスナ・ユーフォリアである

街を歩けば、10人は10人振り向くだろう掛け値なしの美少女である

 

「だな。アスナも見事な値切りだったよ」

 

アスナの言葉に返したのは、全身黒で統一しているハーフエルフの少年

キリト・ディバイダーである

細身の体に中性的な顔立ちが特徴で、髪が長かったら女の子に間違われる可能性が高い(本人にとっては、悩みの種)

そんなキリトの両腕には、その体格からは予想つかない程の荷物が抱えられている

この二人、実は買い物帰りである

あるファミリアのサブリーダーなのだが、自ら買い物に出ていた

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうか………あれ?」

 

「どうした、アスナ?」

 

帰ろうとした時、アスナは道の先を見て首を傾げた

それに気付いてキリトが問い掛けると、アスナが道の先を指差して

 

「キリトくん、あれ……人じゃないかな?」

 

「なに?」

 

アスナの指差した方向を見て、キリトは目を細めた

二人の視線の先

ファミリアのホームに向かう道の途中に、人が一人倒れているのを見つけた

近づいてみると、それは二人と年が近そうな少年だった

しかもよく見れば、かなり大怪我を負っている

 

「君、大丈夫!?」

 

怪我に気付きアスナが声を掛けるが、反応はない

倒れている少年は、所謂東方系の少年だった

ショートカットの黒髪に、少し黄色みがかった肌

アスナが揺すったりするなか、キリトはあることに気づいた

 

(あの傷は……戦闘によるものだな……)

 

その少年に着いている傷は、切り傷や刺し傷等様々だったが、どれも確実なのは、自然に着くのはあり得ない傷痕だった

キリトがそう考えていると、アスナが振り向いて

 

「キリトくん。彼を運ばないと」

 

と言った

それを聞いて、キリトは我に帰り

 

「アスナ。これを頼む」

 

と持っていた買い物袋を手渡した

恐らくアスナでも担げるだろうが、キリトのほうが確実に筋力が高い

この二人はこの街でも名の知れた冒険者で、そんな彼らのファミリアのホームには医療を得意とする者も居る

一応公共の医療施設がこの街にもあるが、そこよりかはファミリアのホームのほうが近い

二人はそう判断して、ファミリアのホームに運ぶことにした

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「エイミィさん、シャマル先生、居る!?」

 

「いきなりどうした……って、その子どうしたの!?」

 

受付に座っていたショートカットの茶髪の女性

エイミィ・ハラオウンはキリトの背中に担がれた少年に気付いて驚愕の表情を浮かべた

 

「道の途中で倒れてたの! 酷い怪我だから、治療しないと!」

 

アスナがそう言ったタイミングで、近くのドアが開いて

 

「誰か、私を呼んだかしら?」

 

とショートカットにした金髪の美女が現れた

彼女の名前は、八神シャマル

このファミリアでは薬剤の調剤や、医療等後方支援を担当している冒険者である

シャマルを見ると、アスナはキリトが背負っている少年を指差して

 

「シャマル先生! 彼の治療をお願いします!」

 

と言った

どうやら状況を理解したらしく、シャマルは真剣な表情を浮かべて

 

「わかったわ。任せて」

 

と言って、キリトに自らが出てきた部屋

医務室に少年を運ぶように頼んだ

そうすると、階段を降りてくる存在が居た

ポニーテールにした薄緑色の髪が特徴の美しい女神だった

彼女がこのファミリアの主神

母性と慈愛を司る女神、リンディである

 

「何が起きたの、アスナさん?」

 

「神リンディ。実は……」

 

リンディに問われて、アスナはリンディに状況を説明した

 

「怪我人………」

 

「はい。見た感じ、戦闘によるものでした」

 

リンディの呟きを聞いて、キリトはそう教えた

そして、キリトの直感では

 

(恐らく、戦闘慣れしてる……)

 

と思っていた

すると、医務室のドアが開いて

 

「治療、終わったわよ」

 

とシャマルが出てきた

それに気づいて、アスナが

 

「シャマル先生。彼の怪我はどう?」

 

と問い掛けた

シャマルは、出てきた医務室に視線を向けて

 

「外傷だけじゃなく、内臓にもダメージがあるみたいだったから、エリクサーを使ったわ。大丈夫よ」

 

と説明した

エリクサー

またの名を万能薬と言って、キズだけでなく病気すら治せると言われてる薬である

ただし、失った物はどうすることも出来ないが

なお、シャマルのエリクサーはかなりの効能を有している

それを使ったのならば、大丈夫だろう

 

「だけど、あのキズの全てが、戦闘によるものね……」

 

シャマルがそう言うと、リンディは真剣な表情を浮かべて

 

「変ね……私が知る限り、ここ最近そんな大規模な戦闘なんて起きてないはず……」

 

と言った

このオラリオの近くには、軍国ラキアが存在する

このラキアは戦神一人が頂点に君臨している国で、一国全てがファミリアである

そしてこのラキア、時折大軍を率いてオラリオに侵攻してくるのだ

目的は、オラリオにて豊富に産出される魔石である

この魔石というのはモンスターから採取出きるのだが、オラリオの地下ダンジョン以外に存在するモンスターは、その魔石の質も大きさも悪いのだ

故に、このオラリオはその魔石産業により繁栄しているのだ

故に、ラキアはそんなオラリオを占拠すべく侵攻するのだ

しかし、その侵攻は全て失敗

オラリオは自由を守っていた

そして、リンディだけでなく、この場の全員の記憶の限りだが、ここ数ヵ月はラキアからの侵攻はない

だったら、モンスターとの戦闘か?

と問われたら、その答は否だ

少年のキズは全て、人の手によるものだ

しかも、かなり大規模と予想出きるほどの怪我だった

どういうことか分からず、全員が悩んでいると

 

「ただいまぁ!」

 

「全員、無事に帰ってきました」

 

「これ、今日の収入です」

 

と元気よく、十人以上帰ってきた

どうやら、ダンジョンに潜ってクエストをこなしてきた仲間達と、友人達と遊んできた子供達が帰ってきたようだ

しかし、帰ってきたメンバーはリンディを含めたメンバー達が神妙な表情を浮かべているのに気付いたようだ

 

「何かありましたか? 神リンディ」

 

と問い掛けたのは、二人の子供を抱えている短い黒髪に童顔の男性

リンディファミリアのリーダー、クロノ・ハラオウンだった

 

「あら、クロノ……それがね……」

 

クロノに問い掛けられて、リンディは状況を説明した

リンディの話を聞き終わると、クロノは腕組みしながら

 

「それは確かに、奇妙だな………」

 

と呟いた

 

「まあ、なんにせよよ。そいつが起きないと何も始まらないわよ

!」

 

と言ったのは、短く切り揃えられたピンク色の髪にそばかすが特徴の少女

リズベット・レプラだ

リズベットの言葉にキリトは同意するように頷いて

 

「だな。あいつから話を聞かないと、何も始まらないな」

 

と言った

その直後、件の少年が居る医務室からガタガタン! という物音がした

 

「まさか、もう起きたの!?」

 

「あの怪我を負ってたのに!?」

 

シャマルとアスナの二人は短時間で起きるとは予想出来ていなかったので、驚愕した様子で医務室の方を見た

すると、キリトとクロノが顔を見合わせて

 

「それでは、話を聞きに行くとするか」

 

「だな」

 

と話し合って、医務室へと向かった

医務室に入ると、あの少年がベッドに上半身を預けて、片膝を突いて荒く呼吸していた

どうやら、立とうとして倒れたらしい

すると、シャマルが駆け寄って

 

「無茶しないの。あなた、大怪我してたんだから」

 

と言いながら、少年をベッドに座らせた

クロノはそれを確認してから

 

「すまないが、話を聞かせてもらうよ?」

 

と少年に問い掛けた

これが、英雄と呼ばれた少年の新しい物語で

英雄と出合いを求める少年の物語の始まりだった


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