京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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はい、作者初の純愛物です

バカテスの明久に普通に純愛をしてほしいので、書きました

予定では、姫島コンビは出しません!


僕と君と初恋予報 ☆

あの雪降る日

 

僕と君は、初めて、お互いを意識した

 

それまで僕は、生きるのに必死で

 

君が同じ教室のクラスメイト、ってことだけしか知らなかった

 

そしてある日、僕と君の席が隣同士になって、声を掛けた

 

その時から、少し君が気になってた

 

けど、バイトと勉強を両立しなきゃいけなかったから、恋愛する余裕がなかったんだ

 

だけど、恋愛がどうでもいいわけじゃない

 

そして色々あって、気付けば

 

僕は君が気になってて

 

そして、君は僕の中で大きな存在になってた

 

君の何気ない仕草

 

時々見せてくれる笑顔

 

それら全部が好きになった

 

だから………

 

(せつ)……」

 

泣かないで………

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「おはよう。父さん、母さん」

 

寒い朝

 

僕は起きると、仏壇に向かい手を合わせた

 

僕の母さんは、僕が小学校低学年の時に病気で

 

父さんは、昨年交通事故で死んだ

 

それ以来、僕は一人暮らしをしている

 

本当は姉さんが居るんだけど、母さんが死んだ時に父さんと大喧嘩をして、家を飛び出したきり、何処に居るのか

 

「お? 今日は卵が特売か」

 

僕は朝食の準備をしながら、チラシを見ていた

 

今日は卵が特売日だ

 

学校帰りに買いに行こう

 

そして、朝食の準備が終わると僕は椅子に座って

 

「いただきます」

 

と、朝食を食べた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

朝食を食べ終わると、制服に着替えて僕は学校に向かった

 

すると途中で

 

「おーい! 明久!!」

 

と、背後から声をかけられた

 

振り向いた先に居たのは

 

陽斗(はると)……おはよう」

 

僕の親友の一人

 

植村陽斗(うえむらはると)だった

 

「なあ、明久は確か新しいバイト先を探してたよな?」

 

陽斗は走ってきたから乱れている息を、整えながら僕に聞いてきた

 

「うん。前のバイトは短期だったからね」

 

「だったらさ、悪いけど、俺のバイト先で働いてくれるか?」

 

と陽斗は、両手を合わせてきた

 

「陽斗のバイト先って、確か………ミセスドーナッツだっけ?」

 

「ああ、駅前の本屋の隣な。正直言うと、本当は明久には紹介したくなかったんだよ。バイト代が安いからな………」

 

と陽斗は、うなだれてるけど……

 

「いいよ」

 

と僕は、即答した

 

「マジで!?」

 

「うん。それに、困ってたから僕に声を掛けたんでしょ?」

 

「そうなんだよ。この間、急にバタバタ辞めていってな……」

 

と、陽斗が愚痴りだした

 

けど、僕の視線は別のことに支配されていた

 

その日の朝は、空気がとても澄んでいて

 

だから、朝日も眩しくって

 

僕は……

 

ただ純粋に

 

なんて、綺麗なんだろうって思ったんだ

 

「で早速、今日バイト先の店長に……って、明久? 聞いてるのか?」

 

横から陽斗が声を掛けてきてるけど、この時は聞こえてなかった

 

「おーい、明久?」

 

「えっと……椎名さん……だよね?」

 

僕が声を掛けると、椎名(しいな)さんが視線をこっち向けた

 

「は? 椎名? …って、うぉ!? 椎名!!??」

 

なにをそんなに、驚いてるの?

 

「………なにか用?」

 

まあ、確かに目つきは怖いかな?

 

「いや、クラスメイトだから挨拶しとこうかなって」

 

「……そ」

 

彼女は素っ気なく頷くと、そのまま行こうとしたので、僕は慌てて

 

「おはよう!」

 

と、大声で挨拶した

 

すると、ほんの一瞬だが視線がこっちに向いてから、進み出した

 

「……明久。お前、凄いな」

 

陽斗がシミジミと呟いた

 

「いきなり、なに?」

 

「だってよ、あの椎名だぜ? 怖い噂ばっかりの」

 

「は、噂?」

 

僕は首をかしげた

 

「おうよ。なんでも、レディースの頭とか、ヤクザの組を一晩で壊滅させたとか、薬の売人と繋がってるとか、色々あるんだぜ?」

 

なにそれ……

 

「あのさ、そんなの所詮噂でしょ? そんなので人を判断するものじゃないよ」

 

僕は説教の意味も込めて、少し強く言った

 

「それにさ、僕はクラスメイトとして当然の事をしたまでだよ。朝会ったら、挨拶する。これ常識!」

 

「いや……本気で尊敬するわ」

 

その後、僕達は話し合いながら学校に向かった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、教室に着くと

 

「おはよう」

 

「おはようなのじゃ」

 

「おーっす、明久」

 

「………おはよう」

 

僕が挨拶すると、友人達から挨拶された

 

最初に翁言葉で挨拶したのは、木下秀吉(きのしたひでよし)。見た目はほとんど女の子なんだけど、男だからね

 

なんでも、男に見られないのが悩みなんだとか

 

因みに、双子の姉で木下優子(きのしたゆうこ)さんが居る

 

次に挨拶してきたのは、親友でもあり、悪友の坂本雄二(さかもとゆうじ)

 

頭の回転は早いんだけど、少し荒っぽいんだよね

 

で、最後に土屋康太(つちやこうた)こと、ムッツリーニ

 

無口なんだけど、動きが素早く、気配遮断に長けてる現代の忍者だよ

 

因みに、ムッツリーニというのは寡黙なる性職者って意味で、まぁ、要するにムッツリスケベなんだよね

 

「おい、明久。今、俺とムッツリーニに関して失礼なことを考えなかったか?」

 

「………(コクコク)」

 

「そんなわけないよ」

 

鋭い

 

と、ダベッてたらチャイムが鳴って

 

「はーい! みんな! 席に座って!」

 

と、僕らの担任の九条珠恵(くじょうたまえ)先生が入ってきた

 

「はーい、出席を取ります! 相川くん」

 

「はい!」

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして授業も終わって、LHRの時間

 

「はーい! 毎月恒例、席替えをするわよ。今月末に冬休みに入るから、これが2学期最後でーす!」

 

このクラスでは、毎月席替えをクジで決めるんだ

 

「それじゃあ、順番に取ってねー」

 

それから、僕達は並んでクジを引き

 

(えっと……2-4だから……廊下側から2列目の4番目か………まあまあだな)

 

と、僕がクジを見ていた時だった

 

「だっぁー! 嘘だろぉぉぉぉ!?」

 

と、クラスメイトの須川君の悲鳴が聞こえた

 

「どうしたの、須川君? 真ん中の最前列になった?」

 

と僕が聞くと、須川君は体と声を震わせて

 

「まだ最前列のほうがマシだったよ……」

 

「は?」

 

そこ以外に、どこに悪いところが?

 

「椎名の隣になっちまった………」

 

「え?」

 

椎名さんの隣が最悪?

 

「どうしよう……俺、まだ死にたくねーよ……」

 

「あのね、椎名さんの隣だからって、死ぬって、おかしいでしょ?」

 

てか、そこの秀吉。両手を合わせるな

 

「だってよー……椎名の隣に座った奴は、大抵病気になるか病院行きだぜ?」

 

須川君……涙目になるほど、嫌なの?

 

「あのさ……そんなの偶然でしょ? 本当に椎名さんが何かしてるんだったら、彼女とっくに警察に捕まってると思うよ?」

 

「吉井は椎名の隣じゃないから、そんなことが言えるんだよーー!」

 

本当に泣くか………

 

僕は、視線を窓際に座ってる椎名さんに向けた

 

椎名さんは無言で、窓の外をジッと見ていた

 

「俺、明日から冬休みに入って、そのまま休んでやる!!」

 

留年するよ?

 

「は! それとも、今ここで怪我をすれば……っ!」

 

「須川よ! 落ち着くのじゃ!!」

 

そのまま気絶させちゃえ

 

けど…………ふむ

 

「代わってあげようか?」

 

「マジで!?」

 

即答かい

 

「静かに! 珠恵先生にバレたら、怒られるよ?」

 

僕が近くに寄ってささやくように言うと、須川君も同じように

 

「ありがとう、吉井! ありがとう!」

 

と、涙ながらに感謝してきた

 

そのタイミングで

 

「はーい! みんなー、座席表を作るから報告に来てくださーい」

 

先生に呼ばれたので、僕達は手っ取り早く紙を交換すると

 

「よっと」

 

僕は椎名さんの隣に座って

 

「えっと………椎名さん?」

 

僕が呼ぶと、椎名さんは視線をこっちに向けてくれて

 

「………なに?」

 

と、聞いてきたので

 

「席、隣だね。これからよろしく」

 

と僕が言うと、視線を窓に向けて

 

「…………あぁ」

 

と、呟くように返事をしてくれた

 

 

 

 

これが

 

僕と君との

 

初恋予報だった


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