京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

18 / 55
これは、今投稿してる作品
漆黒と桜花のif作品です
そちらでは、裕也は生き返って元の世界に帰りますが、こっちでは別の世界に旅立つというものです


英雄、新たな世界へ旅立つ

「裕也! ヤダよ、裕也ぁ!」

 

と泣き叫んでいるのは、金髪赤目の美少女

フェイト・T・ハラオウンである

そんなフェイトの腕に抱かれてるのは、一人の少年

防人裕也だった

裕也は満身創痍だった

しゅうまつ戦争

裕也達が住む初音島に、ヴァチカン法皇教皇庁禁書目録聖省

通称、インデックスが単独宗教による統一支配を敢行すべく第一歩として侵攻を開始

これを防衛に出たのは、対インデックス私設武装組織

通称、守護者部隊の十数名

初音島警察署機動隊員約三百五十名

そして、聖王教会騎士団五十名の約四百名

これに対して、インデックスは約数万の軍勢

逃げても文句は言われないというのに、彼ら四百名は勇敢に防衛戦闘を敢行

仲間が一人、また一人と倒れていくなか、諦めることなく戦い続けた

それにより、味方部隊の到着まで時間を稼ぐことに成功

更には、インデックスの女教皇

ヨハンナを討ち取ることに成功した

しかし、そのヨハンナを討ち取った裕也の命は、風前の灯火だった

 

「フェイト………敵は………どうなった?」

 

裕也が息絶え絶えに問い掛けると、フェイトは涙を流しながら

 

「インデックスは、ヨハンナを失って瓦解したよ!」

 

と言った

すると、裕也は微笑みを浮かべて

 

「そうか………それじゃあ、俺は……守れたんだな……」

 

と言った

 

「そうだよ! 裕也は、島と皆………ううん。世界を守ったんだよ! だから、裕也!!」

 

フェイトが泣き叫びながら裕也の体を揺するが、裕也は微笑みを浮かべ

 

「良かった…………」

 

と呟くとその目を閉じ、その体から力が抜けた

 

「裕也……?」

 

フェイトが呼び掛けながら揺するが、裕也から返事はなかった

それが、愛しき少年

防人裕也の死を、フェイトは理解した

 

「っ……………つっーーーーー!!」

 

フェイトの悲痛な叫びが、島に響き渡った

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「…………あれ?」

 

気付けば裕也は、一人で暗い場所に居た

周囲を見回すが、誰も居ないし何処だかも分からなかった

 

「そもそも、俺は死んだはず…………」

 

裕也がそう言いながら首を傾げた

すると、背後に光が起きて

 

「正確には、魂を使いきる直前に、私達が助けたんだよ。お兄ちゃん」

 

と少女の声が聞こえて、裕也はビクリと体が固まった

なぜならその声は、裕也にとっては二度と聞けないと思っていた声だったからだ

 

「ま、まさか………」

 

裕也は呆然とした声を上げながら、ゆっくりと振り返った

そして、振り返った先に居たのは一人の幼い少女だった

その少女を見て、裕也は目を見開いた

なにせ、その少女は、裕也が殺してしまった少女だからだ

 

「美樹……なのか……?」

 

裕也が問い掛けると、少女、美樹は微笑みながら頷き

 

「そうだよ、お兄ちゃん」

 

と肯定した

すると裕也は、辛そうな表情を浮かべて

 

「すまない、美樹………俺はお前を………助けられなかった………」

 

裕也がそう言うと、美樹は首を振って

 

「ううん、わかってるよ、お兄ちゃん………操られてた私を解放するには、あれしかなかったって」

 

と言いながら、裕也に抱きついた

今から数年前、裕也は操られていた美樹を助けようとしたが、助ける方法がなかった

ゆえに、その手で殺したのだ

涙を流しながら……

そこから裕也は、本格的に対インデックスの戦争に参加

約十年余り戦争に参加し、勝利へと導いた

正しく、裕也は英雄と呼ばれる少年だった

しかし、その命は潰えてしまった

《使えば死ぬとわかっていた魔道具を使って、敵を倒して》

 

「お兄ちゃん………頑張ったね」

 

美樹がそう言うと、裕也は首を振って

 

「あれが、俺の運命だったんだ………」

 

と答えた

しかし、美樹は首を振って

 

「お兄ちゃんはもう、戦いの運命から解放されたの………だから、幸せになっていいの」

 

と言った

それを聞いて、裕也は眉をひそめて

 

「しかし、俺はもう………」

 

と言った時。裕也達の横に光が現れて

 

「貴方の魂は、私が治しました」

 

と声が聞こえた

裕也がそちらを見ると、そこに居たのは両手両足、更に背中に翼がある人型の存在だった

 

「……あなたは?」

 

「私の名は……デミウルゴス」

 

デミウルゴス

その名前を聞いて、裕也は目を見開いた

デミウルゴスというのは、ずっと昔にキリスト十字軍により滅ぼされた都市が信仰していた創成神である

 

「お兄ちゃん。私の能力、覚えてる?」

 

「ああ……確か、無から有を造り出す。物質創造だよな?」

 

裕也がそう言うと、美樹は頷いてから

 

「私の能力はね、デミウルゴスの能力の一端なの」

 

と答えた

美樹の言葉を聞いて、裕也は目を見開いた

美樹の言葉の通りなら、美樹は一端とは言え神の力を使っていたことになる

 

「では、デミウルゴスの力は………」

 

「物質創造。造り出した物質に命を与える。過去と未来の監視。そして………並行世界への干渉」

 

「並行世界への干渉………」

 

デミウルゴスの能力を聞いて、裕也は一つの答えに行き着いた

 

「つまり、俺の魂を救いだして、治したのは……並行世界への干渉?」

 

裕也の言葉を聞いて、デミウルゴスは頷いた

 

「今私達が居るのは、世界の狭間………つまりは、あらゆる世界に干渉出来ます」

 

「なるほど………」

 

デミウルゴスの言葉を聞いて、裕也は納得した様子で頷いた

 

「これから貴方を生き返らせますが、一つ残念なことに……元の世界へは戻せません」

 

「だろうな……」

 

デミウルゴスの言葉を聞いて、裕也は納得した様子で頷いた

一度死んだ命

それが甦るだけでも高伏だと言うのに、更に元の世界に戻れるというのは、余りにも都合が良すぎるだろう

 

「本当は、元の世界に戻したいけど………それが出来ないから、せめて……近い世界に送るね?」

 

美樹が申し訳なさそうにそう言うと、裕也は美樹の頭を撫でた

 

「ありがとうな、美樹……」

 

「つっ………お兄ちゃんっ!!」

 

美樹は涙を流しながら、裕也に抱きついた

そんな美樹を裕也が撫でていると、デミウルゴスが

 

「そろそろ、いいですか?」

 

と問い掛けてきた

それを聞いて、裕也は美樹を離して

 

「ええ、いいですよ」

 

と答えた

そして、デミウルゴスに近寄ろうとした時

 

「お兄ちゃん」

 

と美樹が呼び止めた

裕也が振り向くと、美樹が両手の上に黒い腕輪を乗せていた

 

「阿修羅か………」

 

それは、裕也のデバイス

阿修羅だった

裕也はそれを受けとると、改めてデミウルゴスに近寄って

 

「それでは、お願いします」

 

と言った

 

「ええ」

 

デミウルゴスは頷くと、裕也の足下に鎖で円を描いた

すると、裕也の体を眩い光が覆った

 

「新たな世界で、貴方に幸在らんことを願います」

 

「お兄ちゃん! 幸せになってね!!」

 

二人の声を聞きながら、裕也は新たな世界へと旅立った

リリカルな世界へと………


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。