京勇樹の予告短編集   作:京勇樹

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本編書かずに、なにやってるんだろ
俺……


艦隊これくしょん アクアマリンの瞳

時は現代

 

世界は危機に瀕していた

 

ある日突如として、ソレらは海中から現れた

 

現れたソレらは人類に牙を向いた

 

当然ながら、人類は反撃した

 

しかし、現代兵器はその存在に対して、あまりにも無力だった

 

そして、人類はあっという間に制海権を喪失し、それに伴ってシーラインも破壊された

 

そして人類は何時からか、海中から現れたその存在を深海棲艦と呼ぶようになった

 

ほとんどの人々が絶望するなか、一筋の希望が人類側に現れた

 

その名は艦娘

 

在りし日の艦の記憶を有していて、その見た目は若い女性達だった

 

彼女達が纏う艤装と呼ばれる武装は、深海棲艦に対して有効だった

 

そして、その艦娘達を率いる者達を人々は提督と呼んだ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

とある日、一人の少女が鎮守府と書かれた門柱の前に立っていた

 

その少女は額に《第六十一駆逐隊》と書かれた鉢巻きを巻いていた

 

そんな彼女の名前は、秋月(あきづき)

 

防空駆逐艦として、非常に高い対空能力を有する艦娘である

 

そんな秋月は、チラッと腕時計を見ると

 

「遅いなぁ……新しい提督」

 

と呟いた

 

今彼女が居る鎮守府は、彼女と新しい提督により今日から稼働予定の鎮守府である

 

だが、彼女の近くには提督の証拠の白い軍服を着た人物の姿は無い

 

なお、本来ならば彼女は初期艦娘ではなく、ここの所属でもなかった

 

だが、彼女が所属していた鎮守府が大規模深海棲艦の襲撃を受け壊滅

 

彼女はその鎮守府の唯一の生き残りだった

 

その後彼女は救援に訪れた海軍本部、通称大本営によって保護されて、一時預かりとなった

 

本来だったら、そこから別の鎮守府に配属となる筈だった

 

だが、約一週間程前にある問題が起きた

 

日本や奪還できた世界各地の鎮守府や泊地に着任する提督に対して、初期艦娘が一人足りなかったのである

 

その問題を解決する為に、どの鎮守府や泊地にも属しておらず、尚且つ、前に所属していた鎮守府にて、秘書艦の教育を受けていた秋月に白羽の矢が立ったのだ

 

そして秋月自身も、こんな自分で良ければと初期秘書艦の役割を受諾した

 

そして今に至るのだが、その提督たる人物が来ない

 

「着任の時間は0800……もう、十分過ぎてる……」

 

秋月は迷ってるのかな? と思いながら、視線を足下に向けた

 

そこに居るのは、一匹の猫だった

 

猫とは言っても、普通の猫とは違ってかなり大きい

 

普通の猫の大体、四倍近い大きさの白猫だった

 

その猫は今から、約二十分近く前に秋月の足下に近づいてきて座ったのだ

 

(この猫、なんなんだろ……)

 

秋月はそう思いながら、その猫を観察していて気づいた

 

まず、背中にリュックを背負っていて、頭に帽子を被っていたのだが、その帽子は提督が被る白い帽子だった

 

(まさかねえ……)

 

秋月がジーッと見ていると、その白猫も視線を秋月に向けた

 

秋月は微笑みを浮かべると、しゃがみ込んで

 

「まさか、君が提督な訳ないよね……」

 

と言いながら、白猫の頭を軽く指先で撫でた

 

「ぷいにゅ」

 

鳴き声だろうか

 

白猫は鳴き声(?)を上げると、左前足で帽子の鍔を上げて右前足を帽子に突っ込んだ

 

「え?」

 

猫の行動に秋月が驚きの声を上げると、猫は帽子の中から一枚の紙を取り出して器用に広げると、紙と秋月に交互に視線を向けた

 

「ぷいにゅ!」

 

猫は再び鳴き声を上げると、今度は二本足で立ち上がって、背負っていたリュックを下ろした

 

「え? え?」

 

猫がまさかそんな行動をするとは思わず、秋月は驚きで固まっていた

 

そんな秋月を無視して、猫はリュックの蓋を開けては、中に顔を突っ込んだ

 

数秒後、顔を出した猫は大きめの茶封筒を咥えていて、その茶封筒を秋月へと差し出した

 

「もしかして、私に?」

 

秋月が問いかけると、猫は頷いた

 

秋月は茶封筒を手に取ると、表面に《秋月へ》と書かれていることに気づいた

 

そして裏面には《海軍本部》と書かれてある

 

(夢かな……)

 

秋月は夢かと思い、自身の頬を軽く抓ったが、痛かったので、夢ではないと分かった

 

秋月は意を決して、茶封筒の中から紙を取り出して読み始めた

 

「えっ!?」

 

読み始めて数秒後、秋月は驚愕した

 

内容は簡単に言うとこうだった

 

目の前に居る白猫が、新しい提督だ

 

 

「正気ですか、大本営……」

 

秋月は大本営が正気なのか疑い、思わず呟いた

 

だが、まだ続きがあったので読み進めた

 

《正気かと疑っているだろうが、こちらは至って真面目である。まず、その猫の名前はアリア・ポコテン。驚いたことに人間並みの知性を有しており、そこらの一般人より遥かに高い知能を有している。(証拠に別紙参照)防空駆逐艦秋月は、アリア提督と共に、新しい鎮守府を切り盛りしてほしい》

 

内容的には、そんな感じだった

 

秋月は中を見ると、数万の紙を見つけて、それを確認した

 

それは、テスト問題の解答用紙だった

 

なんと、かなりの高得点である

 

秋月が事実を受け入れるので固まっていると、猫

 

アリア・ポコテンが秋月の膝に手を置いて

 

「ぷいにゅ?」

 

と首を傾げた

 

 

 

これが、猫提督のアリア・ポコテンと初期秘書艦の秋月の初めての出会いだった


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