グリムガル〜灰燼を背負いし者たち〜   作:ぽよぽよ太郎

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épisode.3 ギルド

 

 

 

 

 

 俺たちが義勇兵宿舎に着いた頃には、周囲はすでに真っ暗になっていた。義勇兵宿舎が人気がないというのは本当だったようで、俺たち以外には人影が見えない。

 

 とりあえず俺が代表してお金は払おうと思う。四人部屋を二つ。男は三人で、マイは一人で使うことになるけど仕方がないだろう。その点は道中簡単に説明しておいて、納得してくれている。

 

 「あ〜とにかく、手続きしちゃうからちょっと待っててくれ」

 

 シュンはともかく、ここに来るまでほとんど言葉を発しなかったマイとタケシにそう言って俺は受付っぽいところに向かおうとした。

 すると、そこにぽわわんとしたおさげの少女が現れた。彼女の後ろには魔法使いっぽい服装をした女の子もいる。きっとここで生活している義勇兵の人だろう。手にはタオルやその他いろいろと入った桶を持っている。

 ……もしかして、これから沐浴するところだったか?

 

 「あれぇ〜新人さんたち? また来たんねんやなぁ」

 

 「……」

 

 ぽわわんとした子が独特の言葉遣いでそう言う。やはり俺たちの先輩みたいだ。後ろの気弱そうな彼女は何も言わずおどおどとしている。

 

 「どうも、俺はイブキ。一応、今日からここで生活しようと思ってて。こっちはチームのメンバーの――」

 

 「マ、マイです」

 

 「シュンでーす」

 

 「……タ、タケシ……」

 

 俺の言葉に三人はそれぞれ自己紹介をする。先輩義勇兵なら繋がりを持っておくのも重要なことだろう。

 

 「うちはユメってゆうやんかぁ〜。こっちの可愛い子がシホル。よろしくなぁ」

 

 ユメと名乗ったおさげの少女はそう言い、シホルという魔法使いの少女に頬ずりを始める。シホルはそんなユメに戸惑っているようだが、どこかまんざらでもなさそうな表情だ。

 ……なんだろう。義勇兵っていうのは個性的なキャラの人が多いのだろうか?

 

 「ねえねえ、もしかしてその子、一人で四人部屋泊まるん?」

 

 「は、はい。そうです……」

 

 ユメの言葉にマイは答える。確かにそのつもりなんだが、それがどうかしたんだろうか?

 

 「えっとなぁ、やっぱり夜に一人っていうんは寂しいと思うねんよ。うちも最初は寂しい〜ってなって、シホルをぎゅ〜って抱きしめて眠ったりしてたやんかあ」

 

 ユメの言葉に、シホルは恥ずかしそうにアワアワと慌て出す。

 ……確かに、そういう可能性は考えていなかった。マイはただでさえ不安定というかそんな感じだ。見知らぬ世界での初めての夜、たった一人だと相当しんどいだろう。

 俺はユメに言われて初めてその可能性に気がついた。……やっぱり、俺には荷が重い気がする。まとめ役なんて向いていない。

 どうするべきか俺が考えていると、ユメが続けて口を開く。

 

 「だから、マイちゃんが良かったらユメたちと同じ部屋にならん? マイちゃん可愛いし、妹みたいでええやん。ほら、それに”いちごいちご”っていうやねんかぁ」

 

 「ユ、ユメ……?」

 

 ……それを言うならたぶん、一期一会だろう。いや、突っ込まないが。

 

 ユメの言葉にシホルが驚いている。ユメの独断みたいだ。正直俺も驚いている。なんというか彼女は警戒心がなさすぎる気がするぞ。

 だが、ありがたい申し出であることは確かだ。

 

 「えーと、それはありがたいと思うけど……マイはどうだ?」

 

 「ユ、ユメさんがいいなら……一緒の部屋に置いてもらえると、すごく安心できます」

 

 「そやろぉ〜? なら、うちとシホルとマイちゃんで同じ部屋や」

 

 「……うん、それでもういいよ……」

 

 ユメの言葉にシホルは諦めたようにため息をつく。……なんか、苦労してそうだな。

 あれよあれよという間にマイを連れて部屋へと戻ろうとしているユメたち二人。

 

 「ありがとう。一応一泊10カパーってことだから、三分の一はこっちで出すよ。そこは甘えられないし。とりあえず、今日の分のカパーは受け取っておいてほしい」

 

 俺は若干慌ててそう言うと、皮袋から予め両替しておいたお金を4カパー取り出す。そしてそれをユメへと手渡した。

 一泊してみて、ここに泊まり続けるかどうかは改めて話し合おうと思っている。その場合は、ある程度まとめて払わないとな。

 

 「んん〜そやったら、これ返しとくよ。見習いのうちはお金かかるしなぁ。節約しなきゃあかんよ」

 

 ユメはそう言って俺が手渡した4カパーのうち3カパーだけを受け取り、1カパーは返してきた。

 ……ここは受け取っておくべきだろう。本当、出会った先輩たちが良い人ばかりで良かった。

 

 「……ありがとう」

 

 「ええってええって。それじゃあ、うちらはマイちゃん部屋に案内したら、そのまま一緒にお風呂入ってくるよ。明日の朝にでもハルくんたち紹介するなぁ」

 

 「よ、よろしくお願いします」

 

 マイは嬉しそうにユメにお礼を言い、一緒に歩いていった。ハルくんというのは、ユメのパーティーの一人なんだろう。確かにここまでしてもらったのだ。ユメのパーティの人たちにもお礼は言わないと。

 

 「……とりあえず、受付に行ってくるよ」

 

 「俺も一緒に行くよん」

 

 「……」

 

 残された俺たち三人は、そうして一緒に受付へと歩いて行った。

 

 

 

 

 翌朝、俺はハルヒロと言うユメのチームリーダーにお礼を言って、いろいろと教えてもらうことができた。ランタとかいうやつがうるさかったが、ハルヒロたちが何も言わないので俺も黙っておいた。

 驚いたことに、彼らがキッカワの言っていた同期のチームだった。もう一組いるみたいだが、彼らはここには泊まっていないみたいだ。

 

 ちなみに四人部屋を借りたのだが、ベッドは藁を集めただけの簡素なもので、部屋自体も隙間風がひどかった。ぶっちゃけ、正式な義勇兵から人気がない理由がわかった気がした。

 

 それから、俺たちはチーム内でお互いの持ち金を確認しあい、各々が(というかほぼ俺が)集めた情報を共有しておいた。ハルヒロから聞いた話も合わせて情報の真偽を確かめておいたから、比較的精度は高いだろう。

 

 「さて、そういうわけだから、誰がどの職業に入るか決めよう」

 

 現在俺たちは、宿の中庭みたいなところにあるテーブルとベンチに集まっている。

 俺は三人にそう言った。当初はモンスターと戦うことに消極的だったマイとタケシも、今ではどうしようもないことは理解したのか真剣に考えている。

 

 「最低でも、戦士と神官が一人ずつ欲しい。あとはできれば遊撃兼準壁役の聖騎士と、遠距離攻撃ができる魔法使い、斥候ができる狩人か盗賊も欲しいな」

 

 考えれば考えるほど、たった四人という制限が厳しい。戦士と神官、聖騎士がいればなんとかなるか?

 

 「ぼ、僕は、できれば神官が良い……かな。た、戦うのは、怖い……」

 

 「私は……魔法使い……かな。シホルさんもそうみたいだし……」

 

 タケシが申し訳なさそうにそう言い俯き、マイもそれに続く。……確かに、タケシやマイに前衛職は厳しそうだな。

 

 「んん〜ぶっちゃけ俺はなんだっていいんだよなぁ。イブキは何やるんだ?」

 

 「俺は戦士をやろうと思ってる。身体もでかいし、適任だろ」

 

 シュンの問いに、俺は元々考えていたことを話す。身体の太さでいったらタケシもまあありっちゃありだと思ったが、性格が向いていない。身長もそれほど高くはないしな。消去法で言っても、俺がやるしかないだろう。

 

 「そんなら俺は狩人やろうかな〜。カッコ良さそうだし」

 

 シュンはあっけらかんとした表情でそんなことを言う。まあシュンが狩人をやってくれるなら心強い。良くも悪くもマイペースなシュンなら、比較的落ち着いて立ち回ってくれるはずだ。

 

 「よし、それならマイが魔法使い、タケシが神官、シュンが狩人で俺が戦士。これでいいな?」

 

 全員が頷く。欲をいえば聖騎士や盗賊が欲しかったが、こればっかりはしょうがない。最悪落ち着いてから考えればいいだろう。

 

 「じゃあ、各自でギルドに行って習ってこよう。お金はできるだけ使わないようにな。講習後、門のところで待ち合わせってことで」

 

 そう言って、俺たちは別れた。

 七日間の初心者講習は泊まり込みで行われる。再び会うはそれが終わってからだ。

 この期間のうちに、できるだけ技術を吸収する。それが今後の生死を分けるかもしれない。

 

 

 

 

 

 そうこう考えているうちに、俺は戦士ギルドの前にたどり着いた。比較的広い石畳の道沿いにあるここは、情報通り荘厳な空気のある石造りの建物だった。戦士ギルドと書いてある看板が出ているから、ここで間違いないだろう。

 

 「すみませーん」

 

 扉の前で俺はそう声をかける。勝手に入るべきか迷ったのだが、一応声をかけておくことにしたのだ。

 しばらくすると、軋んだ音を立てて扉が開いた。中からは髭面の大男が現れ、面倒そうに俺を見る。

 

 「なんだ、坊主? なにか用か?」

 

 「はい、ギルドに入れてもらおうと思って来ました」

 

 「おお、今日は二人目だな。中に入れ」

 

 だが、俺がギルド加入希望者だと言うと嬉しそうに笑った。二人目ってことは、セイヤたちのグループの誰かかな。……だとしたらたぶん、ショウヘイだろう。

 

 中はホールのようになっていて、壁際にはカウンターが一つある。奥のほうには通路があって、いくつか置かれたテーブルでは数人がジョッキで何かを飲んでいる。

 

 俺は髭面のおっさんに空いているテーブルへ座るよう促された。特段断る理由もないのでそれに従い、俺は木の椅子に座る。

 

 「んで、うちに入るってことは、しっかり金も用意してあるんだな?」

 

 「あ、はい。ここに」

 

 俺はそう言って皮袋を取り出し、中から銀貨八枚を取り出した。これで残金は1シルバーに諸々あって34カパー。銀貨一枚を使ってしまったシュンと俺のカパーを分けたため、残ったのはこれだけだ。マイとタケシは……正直不安だったが、10シルバーをそのまま持たせている。

 

 「どれどれ……ふい、ふう、みい……うん、八枚あるな。よし、それじゃあ――」

 

 髭のおっさんは銀貨を数えると、両手を広げて笑顔を見せた。

 

 「――ようこそ、戦士ギルドへ」

 

 

 

 

          *

 

 

 

 七日間の初心者講習は、あっという間に終わった。

 俺は七日間かけて、あのガルバスという名前の髭のおっさんに徹底的にボコボコにされた。体育会系のノリといえばいいんだろうか。ガルバスは脳筋な考え方をするおっさんで、ひたすら身体で覚えさせられたのだ。敵がこうしたらこう、ああしたらこう、みたいな感じで攻撃してきて、俺がミスったら攻撃がクリーンヒット。おかげで身体中あざだらけだ。

 

 装備はといえば、鎖帷子に皮製の手袋やグリーヴ、皮のヘッドギアにブーツを中古で譲ってもらえた。使い手がいなくなった装備をギルドで保管しているらしく、それをもらえた感じだ。気になってガルバスに「使い手はどうなったんだ?」と聞いてみたが、気持ちの良い笑顔ではぐらかされた。……あまり想像しないでおこう。

 本当は兜も欲しかったのだが、そこまで贅沢は言ってられない。

 

 そして、俺の武器はハルバードという斧槍だ。だいたい2メートルくらいか。俺の身長よりも少し大きい。重量は結構あるが、慣れてしまえばそちらのほうが使いやすかった。

 大剣だったりが人気らしいが、ハルバードのほうが間合いが広く取れるため比較的広範囲を牽制をできる、という考えもあった。俺たちのパーティーには壁になれるのが俺一人しかいないからな。敵が後ろに流れそうになっても、ハルバードの間合い内ならなんとか惹きつけられるだろう。

 

 それ以外には特に荷物らしい荷物は持っていない。薬などの購入も考えたのだが、いかんせん所持金が足りない。目的地であるダムロー周辺ならば一時間程度ということもあり、今回は大荷物を持っていく必要はないという判断だ。

 

 この七日間初心者講習で学んでことは、あくまで知識だ。実践を通して経験を積むことで、初めて自分のものになる。それを七日間でガルバスに耳にタコができるほど言われ続けた。

 

 「……正直、ここまでしんどいとは思わなかったな」

 

 ギルド内の訓練場と部屋を行き来するだけの毎日だったので、こうして外に出て日の光を浴びると久しぶりに穏やかな気持ちになれた。

 

 「みんなとは門のところで集合だもんなぁ。なんか久しぶりで新鮮だ」

 

 俺は久しぶりに見る街並みを楽しみつつ、門へと向かった。

 門の付近には義勇兵っぽい人がたくさんいる。俺がいるのは北門で、ここからダムロー旧市街周辺まで行き、付近の森でゴブリン狩りに向かう予定だ。四人でもゴブリン程度なら倒せるだろう。たぶん、きっと。

 

 誰かすでに来ていないか周囲を見渡すと、見覚えのある顔を見つけた。ハルヒロたちのパーティーだ。義勇兵宿舎で顔を合わせた五人に、見たことのない神官の女性が一人いる。

 俺が挨拶のために近付くと、ハルヒロが俺に気付いた。

 

 「あ、イブキ」

 

 「おす。ハルヒロたちもこれからか?」

 

 「まあ、そういう感じ……かな。最近はサイリン鉱山でコボルトを狩ってる、っていうか」

 

 サイリン鉱山か。俺たちからしたら、だいぶ先のことだろうな。

 

 「イブキくんたちは、これからが初めてなんやねんっけ? マイちゃんはまだおらんのぉ?」

 

 「ここで待ち合わせてるんだけど、まだ来てないって感じかな。そういえばマイは、シホルを目標に魔法使いになるって言ってて、魔法使いのギルドに行ったみたいで」

 

 「ほぇ〜そーなんやぁ〜。シホル、お師匠さんやんかあ、うりうり〜」

 

 「え、わ、私……? その、私、太ってるし……」

 

 ユメは前に会った時と同じく、ぽわわんとしている。シホルはいつも通りおどおどしつつ(たぶん、俺に怯えてる)、よくわからないことを呟く。

 

 「あの、イブキくんは、戦士に?」

 

 モグゾーというハルヒロのパーティーの戦士が俺に聞いてくる。この人は俺の先輩になるんだよな。身長は同じくらいだけど、彼のほうが身体は大きい。なんというか、熊みたいで頼り甲斐がありそうだ。

 

 「俺らのパーティー、俺以外あまり適正がなくって……。それに、俺の体格も生かせるかなって」

 

 「つーかよ、イブキ。お前後輩だよな、俺たちの? 敬語使えってんだ、敬語ぉ」

 

 俺がモグゾーにそう言うと、今まで黙っていたランタがつっかかってくる。いや、ランタの言うことはわかるんだけどさ……。

 

 「ハルヒロとかユメがタメ口でいいって言ってくれたからさ。歳も同じくらいだろうからって」

 

 「え、おぉう。べ、別に睨まなくたっていいだろ? コミュニケーションだよ、コミュニケーション!」

 

 俺は睨んだつもりはないんだが、ランタはなぜか怯えてしまった。まあ、別にいいか。

 

 「そういえばさ、イブキのパーティーって、他はなんの職業なんだ?」

 

 「えーと、タケシが神官で、シュンが狩人かな」

 

 「神官……?」

 

 俺の言葉に神官の女性が怪訝そうな顔をして何かを呟いた。だが、そのまま何も言わずに元の無表情に戻る。なんだか、やけにその表情が気になった。というよりは、彼女にどこか――。

 

 「――イブキ……」

 

 と、そこでハルヒロの声がした。そちらを向くと、ハルヒロが真剣な目をして俺を見ている。少し控えめなイメージを持っていたが、今の彼は経験を積んだ義勇兵のそれだ。少なくとも、俺にはそう見えた。

 

 「たぶん、これからゴブリンを狩るんだろうけど、油断だけはしないほうがいい」

 

 そして、一言。その言葉には、先達ゆえの重みがあった。ユメやランタ、シホル、モグゾーの顔が少し曇ったことから、ゴブリンとの戦いで何かあったのかもしれない。

 

 「……ありがとう。その忠告、絶対忘れない」

 

 言葉以上の何かを感じ、俺は神妙にそう返す。

 

 「……なんていうか、さ。説教みたいになっちゃったな。そんなつもり、なかったんだけど……。それじゃあ、俺たちはもう行くよ」

 

 ハルヒロは照れくさそうにそう言うと、全員で北門から出て行った。

 

 神官の女性のことがひっかかったが、今はとりあえずいいだろう。

 

 「あ、あの、待たせちゃったかな……?」

 

 「お、マイか。俺もさっき来たばっかだから、大丈夫」

 

 俺がぼんやりとしながら立っていると、マイがやってきた。

 黒っぽい三角帽子に同じ色のローブを着ていて、先ほどまでいたシホルとほぼ同じ格好をしている。

 

 「まだ二人は来てないの?」

 

 「ああ、まだ……いや、今来たみたいだ」

 

 俺とマイが話していると、通りからシュンとタケシがやってくるのが見えた。シュンは狩人らしく動きやすそうな革鎧を着て、腰に鉈のようなものを差している。背中には狩人の象徴ともいえる武器、弓も背負っていて、すごく狩人っぽい。

 タケシはというと、怯えたように周囲をキョロキョロと見回していた。俺たちに気付いていないのか? 神官服を着ていて腰にはスタッフを下げているので、一応それなりの神官に見える。体型は七日前と変わってないけども。それに、タケシはやけに顔色が悪かった。

 

 「おーす、イブキ、マイ! 久しぶりだな!」

 

 「は、はやく行こう……」

 

 元気の良いシュンに比べ、タケシはやはり体調が悪そうだ。遅れたことを気に病んでいるのか急ごうと言ってくれるが、少し心配だ。ハルヒロからも注意されたし、油断はできない。

 

 「タケシ、大丈夫か? 体調悪いなら、後日改めてって感じでも大丈夫だぞ? みんなまだ、お金は残ってるだろうし」

 

 「い、いや、大丈夫……! 少し疲れてる、だけだからさ……」

 

 二人に挨拶を返してから、タケシにできるだけ優しく問いかけた。

 だが、タケシは頑として譲らない。まあ自分のことが一番分かっているのは本人だろう。

 ここは彼の心意気を尊重するべきか。

 

 「……わかった。それならもう何も言わない。ただ、どうしても厳しくなったら言ってくれ。タケシだけじゃなく、みんなが危険なことになる」

 

 俺の真剣さを感じ取ったのか、タケシはこくりと頷いた。

 他の二人も見ると、同じく神妙そうに頷いている。

 

 「――よし。それじゃあ、行こうか」

 

 俺はそう言って、みんなの先頭に立って歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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