~転生者深海棲艦奮闘記~前世持ちの姫がチート鎮守府とか相手に頑張るお話~   作:R.H.N

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~第8話~大作戦事前準備と姫達が見たもの~

その日、レ級が持ち帰った情報は恐ろしいものであった。

 

 

翌日から数日に渡り、入手した情報の整理を段階的に行ったが、その後に確認されたラバウルの新たな艦娘の件の話も混じり、情報をまとめて対策会議を開くまでに時間をかけてしまったのだ。

 

 

そして、遅れながらもやっとのことで、レ級がラバウルに戻って数日の後、再びハワイに於て統合姫会議が開かれるのであった。

 

 

 

「《青の6号》《織田大日本二大最強戦艦》《鋼鉄のリヴァイアサン》に《超兵器双胴航空戦艦》とかチートも大概にしてくれ!!」

 

 

しかし、ようやくハワイの拠点化が進みだし、本格的な反抗作戦を立案しようと思った矢先に後述する報告の群れが発生した。

 

 

太平洋方面に全力を出せるから楽になるかと思ったタイミングでもあった為、会議の開口一番に置いて、この報告を聞いた戦艦水鬼が叫んだのも無理は無かった。

 

 

「うう・・・人が小説とかで名前を出してる強い艦が揃い過ぎだよぉ・・・・」

 

 

「こっちもほっぽや偽航戦姫の所の開発陣が頑張ってるけど、これらと直接戦って勝てる気がしないわねぇ。」

 

 

北方棲姫も、中間棲姫も、このチートと言って等しい艦娘達への対抗手段として決定打となりうる物を用意出来そうにないと悟り、非常に弱気になっている。

 

 

あの日、レ級が持ち帰った資料と北方棲姫と偽航戦姫が持っている本や、集積地棲姫が台湾から引き上げるに辺り残った建物から収集させた本などから、ラバウルにいた《片割れ》は上総の方であり、もう一隻の(りゅうおう)とは《青の6号》と呼ばれる作品に出てきた超武装潜水艦であることが判明した。

 

 

だがそのたった数日後にまたラバウルにて新しい艦娘の存在が確認され、上述した情報リソースを元に調べた所、深海棲艦の一部に深刻なトラウマを与えたもう1隻の戦艦、「下総」、《鋼鉄のリヴァイアサン》に出てきた命中率チート戦艦「ヴァツーチン」と、多少武装に違いがあったが超巨大双胴航空戦艦「近江」の存在を確認、更に名称不明のアメリカ艦娘とアイオワ、ザラ、グラーフの海外艦娘も確認されたのである。

 

 

それらの内、既存の艦娘と謎のアメリカ艦娘を除いた艦娘は偽航戦姫達が見つけた情報ソースそのままならば、凄まじいなどと言う言葉で済ませてはいけない恐ろしさを有しているのがほぼ確定していた。

 

 

そして止めと言わせんばかりに、同時期にラバウルにて某小説にて《電征》と呼ばれる艦上戦闘機が確認され、他の一部鎮守府でも同様に確認例が出たため、偽航戦姫の配下である空母棲鬼、北方棲姫の配下である飛行場姫がそれまでに開発していた大型水上爆撃機《爆龍》等を持ってもこちら側の劣勢は目に見えてしまっていたのである。

 

 

「う、ヴァツーチンは通信妨害を行えば弾道観測を妨害できないかしら?それに人類側は現在、マトモな人工衛星が残って無かった筈だし・・・・」

 

 

「駄目ね・・・・レ級が発見した資料によると、ヴァツーチンが観測されるずいぶん前、ラバウルで小型の人工衛星が妖精の主導の元に発射されてたそうなのよ・・・・」

 

 

「実際、私が空に浮かぶやけに変な形の人工衛星を観測しちゃってね、部下に命じてたまに様子を確認してもらっているわ。」

 

 

「あらららら、ちょっと不味いわね、何か打開案は出ないかしらね・・・・。」

 

 

「失礼します水鬼様、開発部と、哨戒部隊より連絡です。」

 

 

「手短に話してくれ。」

 

 

「先ず開発部から、北方棲姫様と偽航戦姫様の開発部による共同開発を行っていた空中戦艦《富士》、双胴型との3胴型両方の開発が終了し、生産を開始いたしました。」

 

 

会議の場が重くなるなか、やって来た防空棲姫が出してきた報告は、少しばかりの打開策を思い浮かばせる打開策になった。

 

 

「・・・・あまり使いたくない手だけど、1つ良い案が思い浮かんだわ、富嶽をできるだけ多く用意して、ラバウルの倉庫を急襲するのよ、燃料倉庫は効果があるかはわからないけど、弾薬倉庫を吹き飛ばせば間違いなく大打撃になる筈よ。」

 

 

「でも普通の手段だと迎撃されない?」

 

 

「富嶽を使い捨てにしかねないけど、超高高度からの急降下爆撃なら行けるかも・・・・」

 

 

「成る程・・・・よし、作戦決行までに揃えられるだけ揃えよう。」

 

 

「陽動の航空隊も揃えなきゃね、」

 

 

「相手の強大さからするに、相当数の製造が必要だから、早いとこ工廠を増設しなきゃ。」

 

 

「お取り込み中のところ申し訳ありませんがもう2つ報告があります。」

 

 

「ん?なんだ、報告してくれ。」

 

 

作戦案の一部に纏まりが生まれる中、防空棲姫から続けて報告が入る。

 

 

「1つ目ですが、先程集積地棲姫様の所のドックにて新しい仲間が建造されました。」

 

 

「ほうほう!してその内容は?」

 

 

「対象は鬼クラスの様でありますが、《駆逐古姫》、《駆逐古鬼》と名乗っています。」

 

 

「詳細は確認中でありますが、凄まじいステータスの代わりに大食いのようです。」

 

 

「あら、高性能な味方がまた増えたのね、嬉しい限りだわぁ。」

 

 

「アカン・・・維持費が・・・・維持費が・・・・」

 

 

 

「だが、このタイミングで新しい味方が増えるのは嬉しい話だ、後で確認するとしよう。」

 

 

新深海棲艦の参入に沸く会議であったが、当の集積地棲姫だけは維持費を気にしてそれどころではなかった。

 

 

「続けて二つ目の報告です、艦娘側が大規模作戦の準備をしてる予兆を発見、また無線の傍受に成功し、簡単な作戦目標を掴むことに成功しました。」

 

 

「何!?それは本当か!」

 

 

「何処?何処を狙っているの?」

 

 

相手の作戦の事前察知成功の報に更に沸き上がる会議陣、防空棲姫の話に期待がかかる。

 

 

「今回の人類側の作戦目標は、ニューカレドニア島およびソロモン海の完全攻略にある模様、また陽動として大規模艦隊によるミッドウェー方面からのハワイ攻撃もあるようです。」

 

 

「わーお、私の地元ですか、攻略先」

 

 

「地元って・・・それよりも、その作戦内容でなら、ミッドウェー方面へ一大攻勢を仕掛ければミッドウェー奪還も無理では無さそうだな。 」

 

 

「ニューカレドニアはもぬけの殻にしとくべきかしらね、ラバウルへの具体的対策と平行して作戦案を練るとしましょうか。」

 

 

「後、もう1つ気になる報告が・・・・」

 

 

そして、このタイミングで防空棲姫の最後の報告が入る。

 

 

「非常に気になったのは、英国、プリマスのデヴォンポートに各国の通常艦艇群と、何隻かの輸送船が終結し始めていること、そしてその殆どが「国際連合」の旗を掲げている事です。」

 

 

「ん?通常艦艇群?」

 

 

「あー、偽航戦姫は知らなくても無理はないわね、実はまだ艦娘も我々は深海長クラスも出現する前の話、人類側の軍艦と当時の深海棲艦との間に何度かの戦闘があったんだけど、その時の生き残りが各国にバラバラの状態で温存されているのよ。」

 

 

 

「多分、インド洋と大西洋で深海棲艦が見当たらなくなったから動き始めた感じね、何でイギリスに総集結してるのかはわからないけど。」

 

 

「待って・・・・国際連合旗?運河棲姫、国際連合の組織の本拠地ってどこ?」

 

 

「確かニューヨーク・・・・あ!」

 

 

「成る程・・・・大西洋横断によるアメリカとの連絡復活と国際連合の形式的復活が本筋の狙いか!!」

 

 

長達は察した、実のところ、人類側にとっては太平洋方面に置ける攻勢の全てが囮のようなものであることを、本当の目的はアメリカと言う超大国との連携復活によるハワイ挟撃への道筋を立てる事にあるのだと。

 

 

だが悲しいことに、この本筋の目的と思われる方を阻止する戦力は、既に大西洋、及びにインド洋から引き上げており、阻止行動に移るのは不可能に等しかった。

 

 

だが、太平洋アジア圏側の戦線を一気に楽にするための情報は出揃っていたし、遅滞するくらいの戦力は派遣できたために、この後、会議において、相手側の作戦タイミングにあわせ、ミッドウェー方面で大攻勢をかけること、大西洋方面は簡易的な遅滞戦術を行うことを決定、ニューカレドニア島に関しては、適度に交戦した後、放棄してハワイに退避することで纏まった。

 

 

そして、作戦の準備を進めつつ、何日か過ぎたある日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海の長の一人、北方棲姫は夢を見ていた。

 

 

これまでに何度か見た、とある夢である。

 

 

その夢の中では、自分はとある人、一介の技術者の姿ををしていた。

 

 

 

遥か遠く、横須賀の海岸で飛行艇の試験飛行を行っているようであった。

 

 

 

「ーーーーーーーさん!やりましたよ!これなら自衛隊に売り込み出来ます!!」

 

 

「良かった・・・・やっと要求基準を満たした機を産み出せた・・・・」

 

 

夢の中での己の意思に関わらず夢の中の自分は勝手に話し、受け答えをする。

 

 

そしていきなり場面は変わり、自身が飛行機に乗っているシーンに移る。

 

 

まるで何かを成し遂げたかのように気分が高揚している夢の中の自分の視点である人物。

 

 

「まもなく、幌延に到着します。」

 

この後何が起きるのかは何度も見ているので、覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

突如発生する大爆発音。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎上し、落下していく機体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして海底に沈み行く自分・・・・・・

 

 

この最後の時、いつも目の前に朧気ながら戦艦タ級が見えるところまで、その夢はそれまで見てきたそれと一緒であった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・またあの夢かぁ。」

 

 

北方棲姫がたまに見るこの夢は最初に見た日から忘れられないものとなっており、最近ではこの夢に何かしらの()()があるように思えてきたほどになっていた。

 

 

「・・・・空はやっぱり綺麗だなぁ……」

 

 

北方棲姫が見た夜空は、まるで何かを教えたそうにしているのであった………。

 

 

 

 

 

それと同じ頃、もう2隻、夢を見ていた深海棲艦がいた。

 

 

 

 

 

 

~とある深海棲艦の夢の中~

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりですーーーー提督、何だかんだ言って3年ぶりですかね?」

 

 

「ーーーーも元気そうじゃない、今日は輸送頼むわよ、」

 

 

「任せてください!」

 

 

飛び立った機は二人の女性を載せ、マラッカ海峡へと向かっていた。

 

 

 

 

「そういえば、奴らは今のところどんな感じなんです?」

 

 

「………相変わらず、酷い事をやってる様子ではあるわ、尻尾掴みきれてないからアレだけど、視察先が()()()()()から、そこから芋づる式に出来ればなぁ・・・・とか思ったりして。」

 

 

「私は輸送任務で忙しすぎるからあまり関われませんが、気を付けてくださいね?」

 

 

「わかってるわかってる・・・・ん?・・・・こりゃ詰んでるわね。」

 

 

機長の女性と会話してたその女性が見たのは、海峡付近から此方を狙う数々の人影。

 

 

「まさか、私の巻き添えを自重せずに殺しにかかるなんて・・・提督を殺しときたいようですね。」

 

 

「ーーーーーの事が心配だけどこりゃもうしょうがないわね、ーーーーー、ごめんね、私は帰れそうにないや。」

 

 

「ーーーーーーが横浜に残してきた子達が、あの子を支えてくれれば良いのだけどね、まぁーーーーーと一緒に死ぬんなら人生、マシな終わりかた立ったのかもしれないわね」

 

 

「私も私で提督の後世の安穏でも願いますよ。」

 

 

「そう?・・・・ありがとね、ーーーーーー、。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後、場面が切り替わり先程の機が放たれたミサイルにより撃墜され、マラッカの海に沈んでいく・・・・。

 

 

 

 

 

 

「・・・・っはぁっ!!」

 

 

 

マラッカに沈んでいく機を見終えると、その深海棲艦は夢から目覚める。

 

 

 

「・・・・また見たわね、この夢、でも夢の中で聞けてない二人の名前って、なんなのかしらね?」

 

「でもまぁ私が気にしても答えが見つかるわけでもないし・・・、せっかくだし、今度本格的に調べてみましょう。あの夢の中のように、マラッカで死んだ提督と飛行機乗りがいるかどうかの事を・・・・・・。」

 

 

 

そんなことを呟きながら、その深海棲艦、中間棲姫は一抹の疑問を覚えつつ、再び就寝に至るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~続く~

 


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