男をナメるなよ?Re   作:ガイジ・ジーガ

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武田家訪問その7(ゲーム編)

「もう嫌だ、交代だ!」

「何でアタシぃ!?」

「私はもう自分が死ぬ所を見たくない!ふて寝する!」

 

そう言ってラウラはオータムにコントローラーを押し付け、幼女と化している正樹を抱き枕にして布団に入ってしまった。

 

「ダンテこったい。まぁいいや、3人とも頑張って下さいね~。(スヤァ…」

 

そして1秒経たずに爆睡する正樹。残ったのはエム、オータム、スコール、そして茶菓子をかじりながら神経衰弱をやる明良とのほほんさん。こっちの二人は除外していいだろう。思いの外盛り上がっているので。

 

オータムはこういったゲームは基本的に見ているだけなので、ぶっちゃけて言ってしまうとどちゃくそ下手っぴなのである。なので、次にオータムが取った行動はエムにコントローラーを渡す事だった。

 

「どういうつもりだ貴様」

「アタシは見てるだけで自分でやるのは専門外だ。だからゲームが得意なお前に回した」

「確かに、こっちに来てから貴方ってゲーム三昧よねぇ」

「楽しいんだから仕方ないだろう!チッ、分かった私が引き継ぐ。どうなってもしらんがな」

 

 

 

 

 

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任務から帰還するなり、四人はマギアに指令室に来いと連行された。ミナはさっさと帰りたかったのでスルーしようとしたが、マギアから強烈なリバーブローを貰い、そこからバックドロップからのジャーマンスープレックス。更にそこからパワーボム。そしてトドメに壁に向かってジャイアントスイングで投げた。しかも壁に亀裂が生じるほどの勢いだ。血まみれとなったミナは壁からずるずると落ちて床に倒れ伏す。

 

「僕ちゃんスルーたぁいい度胸じゃないか、えぇ?」

「やめて。足で頭ぐりぐりしないで。死んじゃう。わっち死んじゃう」

 

明らかに致命傷を負っているのに、まだ余裕がある。

 

「喋れる余裕あっか。ようし」

「えっ、ちょっと待って。本当に待って。何するの?これ以上何かされたら本当にわっちヤバい。死ぬのは別に構わないけどこんな死に方したくない。ちょっ、本当にごめんさない。待ってお願いやめて嫌だ本当にこんな死に方、あぎゃあああああああああ!!!?」

 

ついに絶叫するミナ。とてもではないが言葉にする事ができない光景。ラウラは恐怖のあまり震えており、ドーラは顔を青くするどころか吐くのを手で必死に抑え、アプレストアは目と耳を手で押さえて歯を食いしばる。

 

惨劇が終わる頃にはモザイク処理されたミナらしきものを、マギアが片手に持ち上げていた。

 

「呼吸はしてんな。おーい、ミナちゃーん?」

「」

「よし、お仕置き完了。んじゃ、残りの3人行くぞ~」

 

そう言ってミナらしきものを肩に担ぎ上げ、先に歩き出したマギア。そのあとを無言のまま付いて行く3人。

 

「……あの、ミナは大丈夫なんでしょうか?」

「多分……マギたんだし、そういう力加減はしとると思う……。うん、多分」

「っ…う、ぉ…おえぇぇぇ…!」

「ド、ドーラさん!?」

「やっぱ吐いた!もう全部ここで吐いてまえ!後処理アタシがするから!」

 

身体を震わせて吐く姿は今にも死んでしまいそうであり、ラウラはアプレストアに聞いた。

 

「あの、アプ姉さん…ドーラさんはどうしてこんな風に?」

「……そうやね、一応話しとく。ドーラちゃんは一度命令違反起こしたんよ。敵を少しでも多く倒して、少しでも早く平和を取り戻すためにって。あん時のドーラちゃんは焦ってたかんな。んで、先程のマギたんお仕置きアルティミットを受けてトラウマになってん。ちなみにさっきミナが受けたんは超ショートコース。それ見たアタシはマギたんの命令には絶対従うって心に決めてん。いや、マジであれは死んでまう」

「………………」

 

ラウラはアプレストアと同じく絶対に命令違反しない事を心に誓った。そうしなければ間違いなく死ぬ。あれで超ショートコースならば、アルティミットコースなど一体どんな地獄なのだろうか。

 

「ヒュー……ヒュー……」

「あ、あの…ドーラさん?」

「…ごめん……今だけ…肩…貸して……」

 

先程のミナがお仕置きされる光景によってトラウマが蘇ったドーラは、本当に今にも死んでしまいそうだ。立つ事すらままならないのか、身体は力無く震えたままで、顔色も悪く冷や汗も酷い。ラウラは肩ではなくそのままドーラを背負った。

 

「これで行きましょう」

「……ごめん」

「先行っといて。アタシはこれの処理したら直ぐ向かう」

「分かりました。では、お願いします」

 

ラウラはそう言って、できるだけ揺らさないように早足でマギアの後…というよりも、指令室へと向かった。

 

 

 

 

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「……どれほど恐ろしい事をされたんだ…!?」

「生半可な事じゃねぇ、よな……多分」

「お、恐ろしいわね……本当に」

 

 

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「…その様子だと遅れたのは僕ちゃんが原因だねこりゃ」

 

全くもってその通りだ、とラウラは口にしたいが、今はドーラを楽な態勢にするのが優先だ。ラウラはソファーにドーラを横にし、とりあえず膝枕して頭を撫でる。これで少しは楽になるだろうと思っての行動だ。ちなみにドーラは羞恥で顔色が悪いのに赤いという謎の色になっている。

 

「げひひゃひゃひゃ!何だよドーラちゃん!恥ずかしいのかぁ!?」

「ちゃん付け…すんな…!」

「…ところでマギア教官、ミナは?」

「あそこ」

 

マギアが親指で示した先には、包帯やら湿布やらギプスやらで一通りの治療を施されたミナが、車椅子に座ってブスッとした顔をしていた。その横には今の世の中では滅多にお目にかかれない男性がおり、白衣を着ている事から彼が医師なのだろう。更にその横に白衣を着た初老の女性もいる。何かもうただの肉塊だった筈の彼女をここまで治療した二人に、むしろ恐怖を覚えるラウラだった。

 

「悪いなお二方」

「ならもう少しお仕置き内容を考えなさい」

「そりゃ無理だ、申し訳ねぇがな。おっと、ラウラはこの二人知らなかったな。今じゃ珍しい男のサイモン・ブットゲライトと、カノン・カンデルだ。あ、サイモンとドーラの性は一緒だが、赤の他人だ」

 

「赤の他人ではない、友人だ」とでも言いたげな視線をマギアに向けるサイモン。そんな視線を受けてもマギアは知らんぷりである。

 

「ところでアプちゃんは?」

「ドーラの嘔吐物の処理をしています」

「結局吐いたんかい。そんなにトラウマかぁ?」

「………………」

 

ドーラの顔色が青一色に変わった。彼女は顔をラウラの腹に埋め、耳を塞いだ。相当のトラウマのようだ。

 

メンタルケアせねばと言わんばかりの表情のサイモンと、溜め息をつくカノン。ブスッとしたままのミナ。何だこの空間。

 

「すんまへん、遅れたわ」

 

そしてアプレストアが入室。ミナを見るなり「生きとったんかワレ」と驚愕した。

 

「あ、サイモンとカノンは医務室戻っててくれ。他の患者の世話頼む」

「そうさせてもらうわ」

 

サイモンとカノンは指令室から退出し、その入れ替わりとなるように一人の少女が入って来た。頭に包帯を少し巻いている見慣れない少女だ。

 

「お、もう動けんのかラッキーガール」

「は、はい!幸いにも軽傷でしたので!」

「本当にラッキーだなお前」

「なぁマギたん、この子は?」

「ん?ああ、こいつはシーナ・クロフト。実はミナに関係ある話しだ」

「わっち?」

「おう。お前の魔改造武器のガトリングキャノンが完成したんだよ」

 

ガタッ、グキリッ、スッ

 

ミナが勢い良く立ち上がると、何か折れた音がした。そして、ミナはまた車椅子に座った。

 

「…で、そのガトリングキャノンを運んでたのがこのシーナちゃんだ。車で輸送中に運悪くパラサイトに遭遇し、車が寄生されちまってな。何とか脱出して走ってここまで来たんだよ」

「は?わっちのガトリングキャノンちゃんは?」

「奴さんに横取り」

「は?ふざけんなマジで。わっちのガトリングキャノン返せクソが」

「侵食されてっからもう使えねぇよ。残念無念南無阿弥陀仏」

「そのパラサイトぶっ殺す。絶対ぶっ殺す。必ずぶっ殺す。無慈悲にぶっ殺す」

「でもテメェは出撃停止だ。命令違反したらお仕置き追加」

「」

 

ミナは燃え尽きた。

 

「んで、そのパラサイトが厄介でなぁ。既に他の奴に寄生してたんだわ」

「他の?」

「多分虫だと思う。クモのような串状の足で四足歩行すんだとよ。気持ち悪いったらありゃしねぇ」

 

確かに気持ち悪い。

 

「そんで、寄生された場所が場所だ。直ぐに処分しねぇといけねぇんだ。何せこっから3キロ離れてない」

「それマジかマギたん!?っかー!アカンわそれ。今襲ってきてもおかしない」

「そ。だが、流石に帰ってきたばっかのテメェらにゃ向かわせねぇよ。別の奴らに頼んである。つっても、多分全滅するだろうけど」

「ちょ…マギたん、なしてそんな全滅するかもしれん子らを選抜すんねん」

「高飛車集団」

「あ、はい。もう分かったわ。マギたんがやめろ言うても行ってもうたんやな」

「そゆこと。今頃派手にやられてるだろうよ。ま、共倒れしてくれりゃ一番だけどな。ミナ以上に質が悪いからなあいつら」

 

どうやらかなり問題となっている集団のようだ。ここで正義感だけで動くような奴は、その集団を助けに向かうだろう。しかしラウラは理性的だ。まずはその集団がどういった行動をしているのかを二人に聞いた。ドーラ?まだ鎖国している。

 

「その高飛車集団とは?」

「ん?あー、要はちょいとできる輩の集団よ。つっても中身はすっからかん。骨粗しょう症すらビックリのスッカスカ加減よ」

「まぁ確かに普通の子らよりもできる。それでもちょいとだけ。でも自分は他より優れていて、何でもできるんだって思い込んでしもうた輩やね。困ったちゃんやでホンマ。お陰で上官に歯向かうボケもおる」

「何とかしねぇといけねぇのは分かってたんだが、どうしようもなくてなぁ。んで、さっき言ったが、今回はシーナちゃんの車が基地の近場で寄生されたもんだから、高飛車集団が僕ちゃんの命令聞きゃしねぇで行っちまいやがったんだよ。だから、そのパラサイトに処分してもらう。強大な敵よりも、無能な味方ほど厄介なもんはない。つまりそういう事だ。戻ってきたんなら戻ったで構わねぇさ。そん時はもう部屋の隅っこで震えてるだけになってっだろ」

 

つまりは事実上の死刑宣告。問題しか起こさないのならば当然だろう。ラウラはその集団に絡まれなかった事に安堵した。

 

「さて、その話しは少しだけ後回しにして、本題入ろうか。今回テメェらが遭遇したスルトの事だ」

 

スルトと聞き、さっきまでやれやれといったアプレストアは真剣な表情をし、ミナも直ちに復活。ドーラもラウラの膝枕から起き上がって話しを聞く姿勢になった。シーナは「スルト?え、あの接触禁忌種の?」と軽く混乱している。

 

「スルトは活火山の中で活動してるイビルだ。本来ならそこから動かない筈なのに、荒廃した街中に出現した。問題はここなんだよ。何でスルトが活火山を離れたのかだ」

「せやな。確か、スルトって身体冷えるとアカンかったっけ?」

「身体が冷えると動きが酷く鈍くなるし、熱量で無効化されてた攻撃も通るようになる。だから冷まさないように溶岩の中にいるようなバケモノよ。今更だけど、確かにスルトがあそこにいるのはおかしいねぇ」

 

完全復活したドーラが思案する。どうやらスルトは基本的に活火山の溶岩に入って動かないらしく、あのような街中にいるのはあり得ない事だという。

 

「そこで僕ちゃんは4つ仮説立ててみた。1つ目は活火山にいなくてもあの熱を維持できるようになった。2つ目は自分よりも強い何かに追い出された、または逃げてきたか。3つ目は新たな拠点探し。そこの活火山の熱量じゃ足りなくなっちまったんだろう。4つ目……これが一番当たって欲しくないが、スルトがもう1体増えた」

「4つ目ホンマ堪忍やで…!?」

「当たったら絶望どころじゃないね……」

「わっちは3つ目以外当たって欲しくないけど」

 

ミナの意見に同意だ。1つ目の仮説が本当ならば、スルトが何処にでも現れるという事。2つ目はスルト以上に強力な存在が実在するという事。4つ目は2体のスルトと戦うという事。どれも絶望的だ。

 

「…あとはあいつが帰ってくんの待つだけかぁ」

「あいつ?」

「僕ちゃんの部隊員で僕ちゃんの子。テメェらがスルトと遭遇した街に向かわせて、色々調べてもらってる」

「ああ、良い子か」

「超良い子やな」

「良い子ちゃん。義理とはいえ、マギアとは似ても似つかないくらい良い子ちゃん」

「お仕置きじゃなくて単純にぶっ殺したるぞミナちゃん」

 

ラウラは驚いた。義理とはいえ、マギアに子供がいたようだ。一体どのような子なのだろうか?ラウラが考えていると、指令室の扉がノックされ、開かれる。

 

「お帰りレムザちゃん」

「おう、帰ったぜ」

 

第一印象、目付き悪いなこの女の子!?短髪で、右側をオールバックにしている髪型。白いタンクトップの上にメンズのフード付きのモッズコートを着ている。顔にはマギアのように大きな傷痕があり、右上から左下に切り裂かれたようだ。首にも痛々しい傷痕がある事から、全身が傷だらけなのだろう。下は黒いダメージジーンズを履いている。

 

一言で言うとTHE・不良であった。

 

「ん?こいつは?」

 

早速発見されたようだ。

 

「僕ちゃんの特殊訓練突破した期待の新人ラウラちゃん」

「あっ、お前がラウラか!会ってみたいと思ってたんだよ!俺レムザ。よろしくな!」

 

人当たりの良い満面の笑みを浮かべるレムザ。ラウラは警戒度を最低にまで下げた。間違いない、良い子だ。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒです。よろしくお願いします」

「そんな堅苦しくするなって!ため口で話そうぜ?…って、しまったスルトの報告が先だった!」

 

気付いたレムザは一度咳払いをし、スルトに関しての報告を発表した。

 

「スルトだけど、痕跡の続いていた方向からするに、あいつは自分の寝床から移動してるのは間違いねぇ。で、偶然にもスルトも見つけた」

「よぅし!僕ちゃんの当たってほしくなかった仮説4が外れたぁ!…となると1と2と3のどれかか」

「1と2は真面目に嫌やわぁ……」

「でもあり得ない話しじゃないからね……」

「…ガトリングキャノン」

「テメェまだ言う?つかもうスルトそっちのけかい。あとシーナちゃんはいい加減戻ってらっしゃい」

「痛いっ!?」

 

どっから取り出したのか、スリッパでシーナの尻を叩くマギア。頭はケガしているので尻を叩いたのだろう。

 

「んでレムザちゃん。スルトの場所は?」

「あの街から南西に数十キロ離れた荒野。ゆっくり移動してたから、今はもっと遠く」

「あい分かった、いい情報ありがとな」

 

マギアが頭を撫でてやると、レムザは口では「やめてくれよ」と言っているが、決して退けようとしない。満更ではないようだ。

 

「…じゃあ一旦放置したガトリングキャノン…じゃない!ガトリングキャノン乗せた車に寄生したパラサイトどうするか話すか。高飛車集団そろそろくたばったろ」

 

 

 

 

 

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「ふむ、次はどうやら特殊な敵と戦闘するようだな。俗に言う小ボスのような存在か」

「スルトってのはまだまだ先みたいだな。ま、気長にやっていこうぜ?」

「そうね。それにしても、本当に何でもありねパラサイトって」




何か6000文字越えてた…
そんなことよりも数々のキャラクターありがとうございます!まさか敵キャラクターまで提供してくれるとは、思ってもみませんでした!

何かもう世界観ぶっちぎりで無視しすぎたキャラクター達もいらっしゃり、出したいものの……出すのにはあまりにも厳しい状況となっております。

なのであまりにも世界観ぶっちぎりで無視しすぎると、そのキャラクターが影も形もなく、一切登場しないという場合が発生します。どうか、ご了承ください。

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