何やかんや色々あって初任務。初任務なだけあって、簡単なものだ。簡単とはいえ、このゲームはプレイヤーが容易く即死する。気を引き締めねば。私は一度深呼吸をして、標的となる寄生生物を探す。えーっと、確か人間に寄生したスタンダードのタイプだった筈。
「こういう初任務なんかは必ずイレギュラーが起こる。例えば今の状況では逃げる事しかできないような強敵か、はたまた倒せるが苦戦を強いられる強敵が現れるかのどちらかだ」
「エム、お前いつの間にいたんだ?」
「今さっきだ。コードベロニカのSランクは諦める」
「コードベロニカのSランクは難しいものね」
エムという少女はとても教官に似ていた。織斑千冬教官の事だ。何故そこまで似ているのか気になったが、世の中には自分に瓜二つな人間が3人はいるという言葉を思い出し、ただ似ているだけなのだろうと判断した。
「変わりにこのゲームの実況をしようと思う」
いつの間にかマイクを持っているエム。用意周到だ。
「…で、誰が同行してくれるのだ?」
「メンバー紹介の時にいたアプ姉という外見詐欺の人と、背が高くないくせに無駄に胸が大きいミナという人、そしてドーラだ」
ミナ・ドラックゲイル。βチームではかなりの腕を持つのだが、正に「テメェなんざ知らん、勝手にやれ。俺も勝手にやるぜヒャッハー」と言わんばかりの態度。一応おふざけキャラ枠だろうか。静かな口調でありながら、かなりのぶっ飛んだ輩だ。サイボーグの腕にパイルバンカー仕込んでいたり、サイボーグの足にはブースターくっ付けていたりと、色々とおかしい。
アプ姉ことアプレストア・ステイルメンは、最強のおばちゃんと言われる大阪のおばちゃんのような性格だった。サツマイモ味の飴を持っており、説明欄には【個性的な味】とある。基本的にオールマイティーで動ける有能キャラ。中でも彼女が持つ専用武装がビームで刃が形成されるカトラスが強力であり、大概のものはそれで焼き斬ってしまう。かなり愛着を持っており、手放そうとしない。その理由はまだ不明。
ドーラのキャラ性能は近距離寄りで、サブマシンガンとショットガンを使う。サブマシンガンはUZIを使うが、ショットガンはマギアと一緒に改造したというウィンチェスターのものを使っている。そのためリロードがポンプアクションではなくレバーアクションとなっているので、一回撃つとその反動でショットガンを回転させ、また直ぐに撃つという動きをしている。ショットガンとサブマシンガンは二丁ずつ装備しており、基本は二丁で戦闘する。流石は姉御だ。
「味方が頼もしすぎるんだが」
「協力性は皆無だけどバカにならない破壊力を持つ奴。オールマイティーで何でもこなし、ビーム刃のカトラス使う奴。そして二丁射撃で敵を圧倒する姉御。負ける気がしねぇな」
「IS相手でも勝てちゃいそうね」
確かに勝てそうだ。さて、私も装備を整えよう。とはいえ、最初に支給されるハンドガンとアサルトライフル、ナイフしかないのだがな。
「貧弱だな」
「貧弱じゃねぇか」
「貧弱ね」
「黙れ!」
これだけでもかなりありがたいんだぞ。しかも応急措置キットまである。これで生存率はかなり上がった。あとは即死しないようにするだけだ。
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任務が始まり、開始早々ミナが突貫していった。正に暴走機関車の如し。ドーラは溜め息をついて肩を落とし、アプ姉は大笑いしている。
「アプ姉さん、ほとんど必要ないけど、ミナの援護頼めるかい?」
「おう、まかせとき!じゃあラウラちゃん、しっかりドーラちゃんに付いて行くんやで?」
「はい!」
「ん。ほなら、アタシは行ってくるわ。またあとでな!」
アプ姉は爆走していったミナを、これまた凄まじい速度で追いかけていった。
「…ラウラ、ミナみたいにならないでよ」
「…心中お察しします」
「…はぁ~~~~……」
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いいのかこんな始まり方で。ま、まぁなるようになるか。
「ところで長男、このゲームって難易度どれくらいなんだ?」
「全ての敵が即死攻撃を持ち、更には即死攻撃でなくとも場合によっては即死するようになってるけども」
「ダメだろそれは!」
「リアルを追及したかったんだ。仕方ないね」
……これクリアできるのだろうか。しばらくドーラと移動していると、イベントが発生する。人間に寄生したスタンダードのタイプとの遭遇だ。名前はそのまま『ヒューマン』であり、派生種も多数存在するらしい。
ヒューマンは2体であり、ボロボロになった黒いスーツを着ていた。どうやら一般人に寄生したもののようだ。特に武器は持っておらず、近付けさせなければ何も問題はない相手だろう。ドーラが片方を相手にするので実質1体のみである。
そう思っていた時期が私にもあった。
「あーっと!ヒューマンが素晴らしいフォームで石を投擲!主人公の顔面に直撃!これによって即死判定!初任務で見事な初死亡!」
「近接攻撃しかしてこないと油断した結果ね」
「うわぁ……頭が半分なくなっちまってるぜ」
「つ、次は必ず倒す!」
グシャアッ!
「今度はヒューマンが飛び掛かり、そして押し倒した!脱出コマンドのミスにより顔面に強力なパンチ!即死判定!」
「頭なくなったぞ」
「酷い有り様ね」
「ぬぅ…!?」
つ、強い!?訓練とは比べものにならない!カウンターもままならん!だが、まだ終わっていないぞ!
「今度は石の投擲、それに飛び掛かりを回避!直ぐにアサルトライフルによる反撃!しかしヒューマンはそれをものともしない!」
「ラウラちゃん、弱点の目をちゃんと狙わないと効果が薄いわ」
「まずは落ち着け。な?」
とはいえ、一般人に寄生したものでこの強さなのだぞ?パッケージの軍人に寄生していたタイプや戦車、それにヘリに寄生していたものはどれ程までに強いんだ?
ギリギリ敵の攻撃が当たらない位置を保ち、何とかヒューマンを倒す事に成功した。
「まさかこれ程とは……」
「これって今の腕のままだと団体戦とか無理じゃねぇか?」
「訓練所の難易度を実戦レベルに上げて頑張るしかないわね」
ぐうの音も出ない…!これは一回鍛え直さねば。
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「大丈夫かラウラ!…って、流石に平気か」
ヒューマンを片付けたドーラが走って戻ってきたが、無事なラウラと倒れ伏すヒューマンを見て安堵した。
「良かった、訓練通りにやれたみたいだね」
「はい。多少苦戦はしましたが、問題ありません」
「ならいいさ。胆力があるのはいい事だからね。……でも、本当に無事で良かったよ。さて、じゃあ二人の援護向かおうか」
ラウラとドーラは突貫して行ったミナと、それを援護しに行ったアプレストアを追いかけて行った。
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「む?チェックポイントに入ったな。次はここからリトライできるぞ」
「もうリトライはしない!これ以上自分が死ぬ光景を見てたまるか!」
「まぁ確かに自分が惨い死に方してんの見るのは嫌だしな」
「冗談でも質が悪すぎるものね」
全くだ。これならば普通にキャラクターを作っていれば良かった。…まぁ、死ななければいいだけだがな。
「…ん?」
イベントが発生し、ミナとアプレストアが全速力でこちらに向かって走ってくるものだ。どちらも必死な形相で、何かから逃げているようだ。
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「はよ逃げぇ!“イビル”タイプがおった!」
アプレストアがそう叫ぶと、ドーラも驚愕の表情を浮かべて「逃げるよ!」と言うなりラウラの手を引っ張って走り出す。
「ど、どうしたんですか!?それにイビルタイプって…!?」
「イビルタイプは接触禁忌種とも呼ばれてるヤバい奴だよ!今のアタシ達じゃ絶対に勝てやしない!」
ドーラがそう言った瞬間、廃ビルが突如として崩れ、その煙の中から30メートルを越す巨人が現れた。ヒューマンをそのまま巨大化させたかのような見た目だが、全身がひび割れており、そこから黒煙と炎、そして溶岩のようなものが吹き出している。体も岩石のようにゴツゴツしており、並みの攻撃ではまず傷一つ付ける事はできないだろう。しかも凄まじい熱量により、周りが溶解していた。
「スルト!?よりにもよって…!」
スルトと呼ばれたその巨人は、炎と黒煙を吐きながら咆哮を上げた。
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「スルト?」
「北欧神話に登場する炎の巨人だな」
「エムお前詳しいな」
「いつ知ったのよそんな事」
スルトは逃げる主人公達を発見するなり炎と黒煙を更に吹き出し、緩慢な動きで追いかけ始めた。しかしその巨体故に一歩一歩が大きく、このままでは追いつかれてしまう。そして、ここで突然のボタン連打。
「ぬおおおぉぉぉぉぉ!!!?」
「おー、頑張れ。ミスったら死ぬなこれ」
「そうね」
「そうだな」
く、くそぉ!死なん!死なんぞ私は!しかし現実は非情であった。突然切り替わったコマンドを押し間違え、スルトによって投擲された建物の瓦礫に押し潰されて死んでしまった。
「………………!」
「まぁ…ドンマイ」
「最後のドーラが貴様の名前を叫んだな。いや、もはや絶叫に近い。罪悪感が凄まじいな……」
「お、おぉ、お、おの、おの、おのれぇぇぇぇ…!」
スルトめぇぇぇ…このあとリトライして逃げ切り、更にはもっと強くなってから復讐してくれる…!
ちなみに私がここを突破するまでに36回リトライした。
ZXZIGAさん
真庭猟犬さん
gesyoさん
キャラクターありがとうございます!
真庭猟犬さんのミナ・ドラックゲイルの世界観に
自称科学統括班のトカゲ並みに世界観が違うとあったので、急遽ギャグキャラになりました。
真庭猟犬博士、お許しください!
それとgesyoさんのキャラクターの提供の多さは想像以上…!これなら私が考えるキャラは一部のみになりそうで楽ですな!