男をナメるなよ?Re   作:ガイジ・ジーガ

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武田家訪問その2

「おおおぉぉぉぉ!!!?」

 

私は今巨大な丸い岩石から逃げていた。映画やアニメで良くあるトラップの一つだ。だからだろうか、命の危険だというのにワクワクしてしまい、やっとまともなトラップだと涙を流してしまった。

 

しかしこのままではマズいな。どうにかせねばいずれスタミナが尽きて潰されてしまう。くっ、ISさえあればどうとでもなると言うのに…!

 

「ぎにゃあああぁぁぁ!!!」

「む?…って篠ノ之博士!?何故ここに!?」

 

何故か前方から篠ノ之博士が全力で走って来た。いや本当にまた何でだ!?

 

「だあああああ!?前も絶望後ろも絶望だあああ!?」

 

篠ノ之博士も何かに追われているのだろうか?しかしこのままでは衝突して仲良死してしまう。しかし偶然にも横穴があったので、私と篠ノ之博士はそこへ飛び込んだ。

 

「ぜぇ…ぜぇ……さ、流石の束さんも死ぬかと思ったよ」

「…あの、篠ノ之博士は何故ここに?」

「うん?ああ、確かラウラ・ボーデヴィッヒだっけ?じゃあらーちゃんって呼ぶけどいいね?意義は認めない」

「ア、ハイ」

「二週間くらい前だよ。たっきーの実家が気になって忍び込んだら、無様にとトラップに引っかかってね。この様って訳。らーちゃんも?」

「いえ、こちらは本音がトラップを起動させてしまい、私と嫁が巻き込まれた感じです」

「なるほどねー」

「ところで篠ノ之博士。先程は何に追いかけられていたのですか?」

「あー、それなんだけどね?」

 

ポンッ

 

「ん?」

「………………」

 

真顔になり、どんどん蒼白になっていく篠ノ之博士。その肩には何やらピンク色の猫系の動物の手が置かれていた。そして、にゅっ、と全体が露になる。ピンク色をした、糸目の獣人?

 

「さぁ、捕まえた。世界を混乱に陥れた悪い子はしまっちゃおうね♪」

「きぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

暴れる篠ノ之博士を軽々と持ち上げると、獣人はそのまま何処かへ立ち去ってしまった。…何だったのだろうか?あのような生物が存在するとは、何とも驚きだな。というか、篠ノ之博士は一体何処に連れて行かれたのだろうか?

 

「…まぁ篠ノ之博士ならば大丈夫だろう。それよりも、早く合流しないと」

 

待っていてくれ嫁よ。あと本音!

 

 

 

***

 

 

 

これは一体どういう状況だろうか。無事に本音を発見する事ができた。これはいい。しかし、この状況をどうすればいいのか、まるで分からない。

 

「うぅううぅぅぅううううぅ…!!!」

 

鎖で椅子に縛り付けられ、身動きが取れない本音の目の前には、かなり高級であろうスイーツが大きな机一杯に広がっている。そのスイーツを、昆虫のような羽の生えた小さな小人達が楽しそうにして食べている。間違いない。妖精だ。

 

「ううぅぅぅ…グジュルゥ…!ふーっ…!ふーっ…!」

 

目を血走らせ、唾液を垂らして獣のような呼吸。身体を前に突き出してブルブルと震えるその様は、鎖に繋がれた野獣そのものだろう。

 

一言で言ってしまえば、本音にとってあそこは正に理想郷なのだろう。モフモフもあり、可愛い妖精達もいるし、何よりスイーツの山があるのだ。黙っていられる筈がない。

 

「…ん?」

 

気が付けば、私は妖精に囲まれていた。私の髪をいじったり、服を引っ張ったりとやりたい放題している。一匹が手招きしてスイーツの山へと向かう。一緒に食べようと誘ってくれているのだろう。

 

しかし本音が……。いや、でもスイーツの山に行きたい。いやしかし、だが、でも、それでもっ…!

 

その場で悩んでいると、一匹の妖精がカステラを持って来て、私に渡した。これを食せと?

 

「ふむ……。あむ」

 

………………。本音は後回しにしてスイーツ食べよう。そして今更私に気付いたのか、本音はこっちを必死になって呼びかける。もはや死に物狂いの領域だ。しかしすまんな本音。私はスイーツの虜となってしまったのだ。見えない聞こえないの演技をしつつ、私はスイーツの山へと歩みを進めた。

 

 

 

***

 

 

 

「ラウリィィィィィィィ!!!のほほんさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!何処だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

その頃正樹は黒い闇、もとい大量のローチに追いかけ回されていた。

 

 

 

***

 

 

 

「す、すまなかった本音…!欲望には敵わなかったんだ…!」

「ふーんだ!絶対に許さないもーん!」

 

可愛らしく怒る本音。あのあと本音は結局スイーツを食べられなかった。そして、それの恨みと言わんばかりに背中にしがみつかれている。正直ツラい!重い!そして本音、その胸をこれでもかと言う程押し付けて、貴様嫌味かそれは!

 

「…ん?」

「んむ?」

 

どうすべきか考えていると、先程の妖精が手招きしているのを発見する。他の妖精達も私や本音の髪や服を引っ張ってくる。

 

「…行ってみる、か?」

「たっきーも見付からないし、何もしないよりはいいと思うよ?」

「それもそうか。嫁のいる所へ案内してくれれば嬉しいのだがな」

 

私は本音をしがみつかせたまま、妖精達に付いて行った。

 

 

 

***

 

 

 

あの本音が目を見開いて険しい表情をしている。私もきっと同じ表情をしている事だろう。目の前の光景、これは一体何なのだろうか?

 

嫁がいる。これはいい。しかし、その嫁が…!

 

「小さくなってる!?」

 

いやそれでも180センチはあるのだが、だいぶ縮んでいる。一体何があったのだろうか?

 

「嫁、一体何があったのだ…!?」

「コックローチと死闘を繰り広げていた……。その反動だよ」

「その理屈はおかしい」


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