男をナメるなよ?Re   作:ガイジ・ジーガ

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好き放題にやっちまいました
その結果がこれです


武田家訪問その1

数日前、私は嫁に「家来るか」と誘われ、嫁の実家に訪れる事となった。本音も誘われていたのが少し腹が立つがな。そして

 

「ここが……嫁の家……」

「お~……」

 

私と本音が見上げる建物。それは正に城と呼べるような建物だった。武田財閥という存在は本国にいた時から知っていたが、まさかここまでとはな……。

 

「入り口って何処にあるんだろ~?」

「城門はあるが、ここまで大きいと自力では開けられんな。嫁と連絡を取るからしばし待て」

 

携帯電話を取り出し、嫁へとかける。するとワンコールもしないうちに電話に出てくれた。

 

『おーうラウリー?到着したのか?』

「うむ。今本音と共に城門の前にいる」

『おっけーおっけー。ちっと待っとってねー。今迎えに行くから』

「了解した」

 

通話を切り、携帯電話をポケットにしまう。

 

「嫁が迎えに来るそうだ。だからしばし待て、と」

「あいあいさー!」

「お待たせー」

「「早い!?しかも地面から!?」」

 

嫁は地面から出てきた。まさか隠し通路から来るとは…!まぁ嫁の実家だしこれくらいはあるか。

 

「ささ、こっちよこっち。私のあとをカルガモの如く付いてらっしゃ~い。迷子になりたくなきゃ」

「うむ。行くぞ本音」

「りょーかいなのだー!」

 

隠し通路へと入り、嫁の後ろを直ぐ付いて行く。嫁の服の裾を掴み、本音と手を繋ぐ。これで迷子になる心配はない。しかし、こう隠し通路……地下道を通っていると、何だかワクワクするな!

 

「あ、ラウリーとのほほんさんや、迂闊に壁触るんじゃないぞ。罠あっから」

「えっ!?」

 

それではまるで本当に冒険をしているみたいではないか!不謹慎で危険で愚かだとは分かっているが、こう、何だ?罠に引っかかって脱出してみたい!

 

ポチッ

 

「「え?」」

「…え、えへへ…たっきー言うのちょっと遅いよ~」

 

本音の手が壁にあったわざとらしいスイッチを押していた。いや、土や石でできた道に何故プラスチックのスイッチが?あまりにもわざとらしい。ところで…

 

「嫁よ、このトラップは何だ?」

「確か結構えげつないヤツだったような気がしたな。誰も押さないだろうと思って、もし押しちまった時は、自分の宝物を持ったままシュールストレミングの海に叩き落とす並みにキッツイどころじゃねぇ内容だったかな?」

「………………」

 

シュールストレミング並みと聞いた私は血の気が引いた。刺激臭に耐える訓練と称し、もはや拷問の領域を越えたあの訓練じゃなくて死刑レベルの何か。原産地スウェーデンの食品で、ニシンを塩漬けにして発酵させたものだ。これだけならまだいい。しかし、缶詰にしたあとも発酵し続ける事により、もはや兵器の領域までの刺激臭を放つものとなってしまう。対IS装備者用毒ガス兵器として使えるんじゃないかと、兵器開発者が提案したほどだ。しかし広範囲に拡散するうえに、一生臭いが取れないのは確定なので却下された。

 

ちなみに焼きたてのクサヤの数値が1267とすると、シュールストレミングは8070とかいうもはや比べるのも烏滸がましいレベルである。

 

そ、そんなにもキツイ内容の罠なのだとしたら、私は死んでしまうのではないだろうか?そ、そんなの…!

 

「い、いやだああああ!嫁と結婚して子供を産んで幸せな家庭を築き上げ、寿命を迎えるまで死にたくなぁぁぁい!」

「嬉しい事言ってくれるじゃないの」

「しかもちゃっかり死ぬ気はないと公言してるね」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

 

地面が揺れる。ついに罠が発動してしまうのか!?決して離してなるものかと嫁に抱き付き、足も絡ませた。絶対に離れんぞ私は!

 

「のほほんさんも掴まれ。正直何が来るか私も予測できん」

「う、うん。ごめんね?」

「いや、入る前に言うべきだったわ。もしくは素直に城門開けりゃ良かったい」

「呑気に会話してる場合かぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

ガコンッ!

 

「おっ?」

「ひっ!?」

「わっ?」

 

ピンポイントで私達のいる地面に穴が開く。つまり良くあるアレだ。

 

「没シューーーーーットォ!」

「いやだああああ!シュールストレミングだけはいやだああああ!」

「たっきーに掴まってれば大丈夫!…だよね?」

 

重力に逆らう事などできずに落下する。ISを本国に修理に出さなければ助かったのにと、何度も後悔する事となった。

 

 

 

***

 

 

 

「…………っ」

 

身体の節々の痛みによって、私は目を覚ました。身体を起こし、周りを見回せば何もない殺伐とした部屋だった。そして、私は嫁と本音がいない事に気が付いた。

 

「嫁!?本音!?」

 

部屋には私しかおらず、当然返事など帰って来ない。歯噛みするが、とにかくここから出ない限りどうしようもない。立ち上がり、startと書かれたドアを開けて先へと進んで直ぐ様Uターンした。

 

「……!?」

 

いや待て何だ今のは!?ドアを僅かに開け、外の様子を確認をする。そこに広がるのは濃いメイクをした男達が集まる謎の集会だった。全員が女装をしており、ほとんどが出会い頭に相手を気絶させるであろう筋肉の塊の、というか素手でIS倒せるであろう肉体を持った巨漢達だった。

 

何だあの魔物は。私は魔界に来てしまったのだろうか?嫁の言っていたシュールストレミング並みが現実味を帯びてきた。

 

…ここを通らねばならないのか?私にできるのか、この魔界を突破する事が。ISがあっても自信がないのだが……。

 

チラリと再び覗くと、何故か魔物達は北極熊の群れと格闘していた。

 

(いや何でだぁぁぁぁぁ!?)

 

陸上最大の肉食獣に果敢に立ち向かう魔物達。いや、この場合魔物達に果敢に立ち向かう北極熊だろうか?

 

「貴様の死に場所は…ここだァ!!!」

 

ゴシャアッ!

 

「!?!?!?!?!?!?!?」

 

魔物の一体が北極熊の頭を殴り潰した。もう一度言う。殴り潰した。

 

「ガアアアアアアア!」

 

別の北極熊の攻撃が魔物の顔面に当たる。しかし…!

 

「それで攻撃のつもりか?」

 

かすり傷一つなく、全く効いていなかった。精々メイクを少し剥いだ程度。そして驚くべき事に、魔物達全員が格闘技を身に付けていた。柔道、空手、合気道、テコンドー、システマ、コマンドサンボ、クラヴ・マガ、ムエタイ、ブラジリアン柔術、レスリング、カンフー、カポエイラ、キックボクシング、カンプフリンゲンまで。というか色々ありすぎて数え切れん!

 

そして、北極熊達の奮闘虚しく魔物達を一体も倒すどころか僅かなダメージを与える事すらできなかった。

 

カチカチカチ…

 

(どうしよう、怖くて震えが止まらない)

 

今のでここを突破できないのが分かった。万が一…いや億が一…いや、もはや京が一で突破できたとしよう。果たして私は五体満足でいれるだろうか?

 

特に危険なのは先程の魔物。ウェーブのかかった青い髪に褐色の肌。見る者を威圧するような凶暴な顔付き。最初に北極熊を殴り潰した魔物だ。

 

北極熊が防御したら「縮こまってんじゃねぇ!」とカウンター。北極熊が後ろに回ると「俺の背後に立つんじゃねぇ!」とカウンター。北極熊が距離を取ると「男に後退の二文字はねぇ!」とカウンター。知能の高い北極熊が手榴弾を投げようとしたら「アイテムなぞ使ってんじゃねぇ!」とカウンター。何かオレンジ色の胴着を来た北極熊が手からレーザーのようなものを発射しようとした瞬間「術に頼るか雑魚共が!」と、北極熊よりも速く手からレーザーを発射してカウンター。

 

ちなみに背中の開いた紫色のドレスを来ている。今にも張り裂けんばかりにピチピチだ。

 

…やはり私は魔界へ来てしまった。怖い。嫁に会いたい。地上に帰りたい。

 

「あら、どうしたの?」

「…へっ?」

 

つい泣いてしまい、その声が聞こえてしまったのだろう。ドアが開かれ、一体の魔物にバレてしまった。

 

(死んだ)

 

私は思考を放棄した。

 

 

 

***

 

 

 

「やらないか」

「冗談じゃねぇぇぇい!」

 

一方その頃正樹は青いツナギのいい男から逃げていた。掘られないようにムーンウォークで。

 

 

***

 

 

 

「うーん……うーん……」

 

のほほんさんは素晴らしいまでのモフモフに囲まれているのだが、そのモフモフはのほほんさんを潰そうとしているのか、ぎゅうぎゅうと圧迫している。

 

「気持ちいいのに苦しいよ~…!」

 

 

 

***

 

 

 

「いい人達だった」

 

それはそれはいい人達だった。あれは魔物などではなく、そこらの人間よりもよっぽどいい人間だと言える。人は見かけによらないと言うが、本当なのだな。それにこのゴスロリという衣装も中々にしっくりと来る。どういう訳か非常に動きやすい。それにクッキーも貰った。あの青いウェーブの男の手作りと聞いた時は驚いた。今まで食べたクッキーで一番美味かった。

 

それと、武装もいくつか貰った。傘の見た目をした銃と収納型リストブレード。あと手袋に内蔵されたスタンガンだ。これで少しは安心できる。

 

そうそう、あの青いウェーブの男は刃流刃徒數という名前だった。一番バーサーカーだった男が一番の常識人であった事を言っておく。

 

さて、嫁と本音を探さねばな。一刻も早くここから脱出せねばなるまい。無機質な長い廊下をしばし歩くと、分かれ道があった。

 

出口

 

ブラジル

 

「………………」

 

普通ならば出口だろうが、これは多分引っかけだろう。ここは無難に……。

 

「ブラジル」

 

ブラジルのルートへ向かった。そして…

 

「本当にブラジルに来てしまった……」

 

何がどうなってこうなったのだ?私は急いで来た道を戻った。

 

「仕方ない、今度は出口を選……ん?」

 

選択肢が変わっている。どういう事だ?

 

レッドピラミッドシング

 

シュールストレミング

 

「………………」

 

救いはないのか?レッドピラミッドシングとはあれだろう?静岡県に存在する処刑人なのだろう?ISがあったとしても勝てる訳がないではないか。

 

そして……シュールストレミング…!どちらを選んでも死しかないではないか!よし、もう一回ブラジルへ行こう。そしてクラリッサに救援を要請しよう。

 

私は来た道を戻った。

 

「何故だあああああ、うえぇえぇぇええぇぇぇぇ!!!」

 

そこには開け放たれたシュールストレミングがあああああああ!たまらずUターンした私!刺激臭が!刺激臭が脳に突き刺さる!

 

「げほっ!おぇっ!く、くそっ…!どうなっているんだ!?……うん!?」

 

且<オオオォォォォウ!マジェスティィィィック!

 

且<我らの祈りが聞こえぬか…!

 

「訳が分からん!」

 

その場で地面を殴った私は悪くない!するとその衝撃か、カラカラと音がしたあとに選択肢が変わる。

 

ひでぶ!

 

タコス!

 

「知るかぁ!」

 

ドゴッ!

 

WRYYYYYYYYYY!!!

 

ぶるぁぁああああ!!!

 

「言葉を話せ!」

 

ドゴッ!

 

ぶち殺すぞヒューマン!

 

エェェェェイメェェン!

 

「何処の吸血鬼と神父だ!」

 

ドゴッ!

 

タイキック

 

ソバット

 

「どっちもお断りだ!」

 

ドゴッ!

 

出口

 

もう一回遊べるドン!

 

「右だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

もう私は止まらない!止まらんぞぉぉぉぉぉぉ、

 

「ばぶぇっ!?」

 

……我を見失っていた。壁に衝突する事で正気に戻るとは恥ずかしい。しかしようやくこれで進めるな。全くもって恐ろしい場所だ。私は新たなドアを少し開けた。そしてそこは…

 

「あ?どちら様?」

 

どっかのマフィアの部屋に繋がっていた。

 

「ん~?こんな子ウチんとこにいたか?」

 

身長2メートルはあるであろう、明らかにヤバそうな女が私を品定めするかのように、頭のてっぺんから爪先までじろじろと見る。癖の強い白髪に大きめの眼帯で右目を覆い、白濁した左目。歯がギザギザとしていて、まるでピラニアのように鋭い。左頬から首元にかけて痛々しく深い傷痕が目立つ。黒いタンクトップの上に黒いコート、黒いスラックスといった格好をしている。

 

…白濁した左目でこちらを見ているのだが、あれは見えているのか?普通なら視力を失っている筈なのだが……。

 

「…なぁ、このゴスロリっ子誰だ?誰かコスプレデリバリーでも頼んだのか?」

「さて?私は存じないな」

 

こちらは散髪しそこねた貞子といえばいいだろうか?真っ赤な大きな左目に、無機質な金色の瞳がこちらを見ている。右目は髪に隠れて見えない。黒い男性用スーツを来ており、正直怖い。

 

「…まぁいいや。とりあえず茶菓子でも出してやってちょうだいな。ほら、こっち来いな。大丈夫大丈夫、噛み付きゃしねぇから。これでもそこそこ常識あんのよ僕ちゃん」

 

ニッ、と笑みを浮かべる女。敵意は感じない。それどころか好意的だ。警戒するに越した事はないが、いきなり襲われる事はないだろう。私は女の横に座った。

 

「あ、そうそう。僕ちゃんマギア・トライアングルって名前な。まぎたんと呼んでくれ。よろしく。あとこれ読んでる読者の皆ぁ!僕ちゃんの事よぉろしくぅ!」

「!?」

「ああ、気にしないでくれ。マギアのいつもの癖だ」

「癖って何よ?これってフィクションよ?しかも二次創作よ?これを読み続けてくれた読者に感謝しないとアカンでしょうに。いつしか僕ちゃんが主役になるんだから、今のうちにファンを獲得しとかないと」

「正統派とは真逆の道を全力疾走する君が言うのかね?」

「正統派?知ったこっちゃないわ!卑怯者?生きるか死ぬかの戦いに卑怯もクソもあるかぁ!いいか?僕ちゃんは正統派主人公に言っちまいたい事がある。何でもかんでも正義貫きゃいいってもんじゃねぇぞゴルァ!人質?おおいに結構じゃねぇの!立派な戦法だからな!それを卑怯?こちとら命かかってんだ!生きる戦いをして何が悪い!僕ちゃんは目潰し不意打ち何でもござれだ!惨めでも最後に生きてりゃ勝ちだ!僕ちゃんはそうやって今まで生きてきたんだよ!……さぁて、今のでどんだけ読者からアンチやらヘイトやらが集まったかな~……。ぐすん」

「続けて言うが気にしないでくれ。マギアの癖だ」

「う、うむ」

 

このマギアという女は精神異常者なのだろう。そうに違いない。

 

「さて、近々僕ちゃんが主人公になる訳だし、どの作品に飛び込もっかな~。無難にここは最近流行りのFateシリーズのオリジナル英霊か?いや、反英霊だな僕ちゃんの場合。そして絶対アルトリアと仲良くなれない。騎士道なんてもの豚に喰わせろ派な僕ちゃんだし、むしろ毒ガス使うような輩だしな僕ちゃん。となると何がいいだろ?読者の皆、僕ちゃんが出るなら何がいい?ちなみに僕ちゃん馬鹿力で生首でも5時間生きてられるくらいにしぶといよー!ついでに再生力も強い!」

「ああ、先へ行くといい少女よ。出口はあっちだ」

「う、うむ」

 

ドアを開け、先へと進む。何だったのだろうかあのマギアという人物は?精神異常者というよりも……何だろう?形容する言葉が出てこない。

 

それよりも、次に行こう。早く嫁と本音と合流し、こんな阿鼻叫喚の混沌とした世界から脱出するんだ!




何だこれ…

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