クチナー様
これは私が嫁の親戚の家へと遊びに行った時の話だ。
「暇なら私と親戚の家行かね?」
と誘ってくれたので、私は断る事なく付いて行った。その親戚の家は田舎で、とても空気が澄んでいた。真夏だというのに、風がとても心地よい。なるほど、夏は田舎に居たいと良く部隊の人間達が言っていたが、確かにこれはいいものだ。
嫁の親戚の人も私を歓迎してくれた。おばあさんのくれたべっこう飴というお菓子がブームになっている。いつか部隊の人間にも食べさせてやりたいものだ。
さて、この場所では蛇の脱け殻がとても縁起の良いものらしく、嫁にプレゼントしようと探し回っていた。しかし中々見付からずに歩き回っていると、いつの間にか神社へと来てしまっていた。
(そういえば、神社には近付くなと嫁と親戚の人が言っていたな)
それを思い出した私はずくに引き返そうとしたが、神社の方に白い浴衣のような格好をした女がいたんだ。こちらに向かって歩いて来ていたので、私は「言い付けを破ってしまったから怒られてしまうな」と思い、謝罪しようとしたら有り得ない事が起きたのだ。何と女の手足の関節が曲がらない方向へと、ぐにゃりと曲がったのだ。それを見た私は
「うおおおおお!?お前手足が骨折しているぞ!?」
「…え?」
「だ、大丈夫なのか!?痛くないのか!?こんなの複雑骨折どころではないぞ!と、とにかく腰を下ろせ!悪化してしまう!」
私は女を横抱きにし、近場の木へとそっと寄りかからせた。改めて女の状態を見ると、手足がぐにゃぐにゃになってしまっている。あまりにも酷い…!しかしこの女は驚いた様子で瞬きするだけで私を見ていた。ま、まさかこいつ…!
「お前、無痛症だったのか!?」
「…え?」
「ああ、何て事だ!早く病院に連れて行かねば!し、しかしこんな場所に病院なんて……。!、そうだ!嫁のCQCがあるではないか!お前!ここを絶対に動くなよ!すぐに嫁を呼んでくるから!」
「お、おい!待て!」
「嫁ぇっ!嫁ぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
私は大急ぎで戻り、その事を嫁に知らせた。そうしたら、親戚の人達が顔色を変えたのだ。そして私はそのまま「今日は家から出るんじゃない」と言われた。しかし、そうしたらあの女が!そう思ったら、その女は「クチナー様」という神様だったらしく、どうも私は今とても危険だという。
しかし、流石は私の嫁と褒めるべきだろう。
「ちょっと私がクチナー様と話つけてくる」
そう言って、嫁は単身で神社へと向かって行ってしまった。焦った私だったが、親戚の人が「正樹なら大丈夫」と言った。納得してしまう自分がいるから腹が立つ。
しばらくすると、神社の方から「ぶるぁぁあああ!」という嫁の雄叫びが聞こえ、一瞬地面が揺れた。
「あ、終わったな」
つい口に出てしまった。しかし、親戚の人も同様に頷いている。しばらくすると、「待てやごるぁ!」という嫁の声と、嫁から全力で逃げるクチナー様の姿が見えた。クチナー様が私に気が付くと、「助けてくれ!」と言って私の背後に隠れてしまった。
「ん?おぉ、ラウリー。クチナー様こっちに出してくんね?」
「ぴぃっ!?」
クチナー様が私に掴まってガタガタ震える。あえて言おう。なんだこれ?流石にかわいそうになってきたので、私は嫁を説得したのだった。