私はどうすればいいだろう
「大胆不敵にIS革命
らいらい楽々IS国歌
日の丸印のIS動かし
白騎士事件
IS万歳!
環状線を走り抜けて
モンド・グロッソ何のその
少年少女IS無双
浮き世の合間に
IS桜夜ニ紛レ
君ノ声モ届カナイヨ
ココハ宇宙
無限ノ檻
ソノ全テハ私ノ手ノ内ニ
三千世界
常世ノ闇
嘆ク歌モ聞コエナイヨ
青蘭ノ空
遥カ彼方
ソノ零落白夜デ斬リ裂イテ」
「そのしょうもない替え歌をやめろ」
「ちーちゃん酷い!」
千本桜の替え歌か。最近聞いたのはR-TYPEだったな。またニコニコで聞かなければ。
「ところで箒ちゃん、紅椿の調子はどう?」
「凄いのは分かるのですが、どうも振り回されて……」
「ふむふむ。もうちょっと設定しないとかな?」
そうそう、大和撫子に専用機が送られました。おめっとさん。しかしながらまだ不慣れな様子。さてさて、ここまでの流れを簡単に説明しましょう。
まず、体調崩した組を私のCQCで復活させる。そのあとやっとこさ授業始まるぜ!と思いきや束さん襲来!紅椿プレゼント!乗ってみろやぁ!今ここ。
分かりやすい説明だるぉ?
「しっかし、中々派手な見た目ですなぁ紅椿。ま、IS全体に言える事なんですけどもねぇ。私以外」
「正樹のISもある意味目立つけどね」
「まぁブラッドボーンの狩人だし。Bloodborneのhunterだし」
「何でわざわざ発音良く言ったの?」
「何となく?」
デュノアさんと軽く話したあと、クラスメイトに視線を向ける。どういう訳か、専用機を見ても無関心のような感じだった。のほほんさんも「ふ~ん」程度。なして?
「いや、だって正樹の『生身でISを対処する講座』のせいで、クラス皆がISが最強じゃなくて生身の人間が最強っていう価値観になってるから」
「待ちたまへ。それ束さんに詳しく」
いつの間にか調整が終わったのか、束さんがデュノアさんの真後ろにいた。そして、さして驚く事もなく説明するデュノアさん。
「…たっきー?」
「むん?」
「束さんの常識が音を立てて崩れてくんだけど」
ガシャァーン!バリバリー!フタエノキワミ!アッー!
「本当に音がしてますね」
「最後のは誰?」
「どゆ事!?何でそんな事できちゃうの!?束さん泣いちゃう!」
うわあああぁぁぁぁん!とばかりに嘆く束さん。知らぬがな。対処できるもんはできるんだから。
「なぁ箒、俺もたっきーに対処方を教えてもらおうと思う」
「奇遇だな。私もだ」
「ちょっと箒ちゃん!?いっくん!?」
「たっきーさん、全く身動きができなくなってしまった時はどうすれば?」
「幻覚が見えるくらいの半端ない殺気をブチ当てりゃいい。トライガン・マキシマムのとあるオカマがやってたから、セッシーにもできる筈だ。オカマにできて貴族にできぬ道理などない。さぁ、レッツトライ」
「なるほど。分かりましたわ!」
「そこぉ~!エレンディラ・ザ・クリムゾンネイルの真似なんかしてんじゃねぇ~!」
知ってんのかよ束さん。
「お、織斑先生ーーー!」
おん?山田先生が織斑先生に向けて慌てて走って行くぞ。そんで資料を見せる。
「あ゙」
「ん?…どうした束さん!?すんごい汗だぞ!?」
「やっべー…すっかり忘れてたわー……」
何やらまずい空気だ。
「全員聞け!訓練は中止だ。これよりIS学園教員は特殊任務に入る。織斑、武田、篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒは私と共に来い!他の生徒はISを片付けた後、旅館の部屋で待機!部屋から出た者は拘束する!」
真面目にヤバいよなこれ。しかしながら束さんがそこで割り込んでくる。
「あーっとちーちゃん!悪いんだけど、ちょっとたっきー借りてくから!」
「は?」
「What?」
束さんは体重137キロの私を軽々と肩に担ぐと、そのまま凄まじい勢いでニンジンロケットへと乗り、大空へと飛び立つ。私を拉致ってくれやがったよこの声だけ管理局の白い魔王。
「あとで返すからー!」
『な、束ぇぇぇぇぇ!』
……とりあえず、どういうこったい。下ろしてもらった私はとりあえず一言。
「よう、くーちゃん」
「お久し振りです、たっきー様」
懐かしのくーちゃんに挨拶だ。
「ところで束さん、何で私を拉致ったんだい?」
「…………。たっきーは水着を買ったあの日の事覚えてる?」
「うん?いきなりどったの?まぁ覚えてますよ?私が参加できぬビッグイベ……そゆこと」
「そ」
ビッグイベントとは、どうやらこの緊急事態のようだ。しかしながらイベントというには物騒な感じがするんだがな。
「たっきーには教えておくよ。この事」
「…?」
資料を渡された私は、中身に目を通す。
「…シルバリオ・ゴスベル?」
ハワイ沖で試験運用中だったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型『軍用実験IS』銀の福音が制御下を離れ暴走。という筋書きの束さんのハッキング。そして、イッチー達のいる旅館の近場を通過するので、それをイッチーと大和撫子で撃墜する、と。
「…束さん、あんたも酷な事するねぇ。いくら何でも早すぎるんじゃねぇですかい?模擬戦でも試合でもない実戦なんて」
「たっきーは7歳で経験してるくせに」
「おう、やめろよ。私の黒歴史掘り起こすな。つか何で知ってんの」
「束さんは天災」
「納得したよ畜生」
確かに私は実戦…と言っていいのだろうか?とにかく実戦を経験した事はある。我が武田財閥を乗っ取ろうとしたアホがおり、そいつが送ってきた刺客との戦闘だった。あの頃の私は映画の撮影かと思っていたんだがな。
「この世界は穢れてるんだよ。その穢れから自分を守る力を付けてほしい。それは私の純粋な願い。たっきーだって分かってるでしょ?」
「そりゃもちろん。イッチー達は間違いなく戦いに巻き込まれる。正真正銘の殺し合い。ま、ここで死んじまったら、元も子もねぇですが」
「大丈夫だよ。そこは対処できるから」
「…………」
さてはて、どうなっちまう事やら。正直、今ここで束さんを止めた方がいいんだろうけども……。
「箒ちゃん達のためなら、私は喜んで悪役になるよ。哀れな道化にだってなってやる」
覚悟は完了済み。やれやれ、こういうのを止めるのは無理だから諦めるしかないわな。
「それでね、たっきー」
「おん?」
「今だけは、私と同じように悪役になってくれないかな?」
今まで見た事がない、悲しい顔をしている束さん。何だいその顔?本当はやらせたくないみてぇな顔じゃねぇか。
「…言うだけ言ってみそ。私にできるんなら可能な限り協力したりますから」
「…ありがと」
やれやれ、シリアスは嫌いなんだがな。もっとシリアルに行こうぜ。