「ウボアアアァァァァ!!!」
千冬さんから強烈なサマーソルトキックを貰い、身体が浮いた所にソバットをぶち込まれた。みぞおちに。てか、この人さっきからみぞおちばっか狙ってくるな。
蹴り飛ばされ、頭から落ちるがそのままヘッドスプリングで立ち上がる。
「流石にみぞおちツラくなってきたなー」
「やっと効いてきたか……」
「そりゃあねぇ」
何度も同じとこやられれば、痛いのも当たり前よ。人間として異常なのは認めるが、人間に変わりない。
「これ以上やられたら、深呼吸が必要かも」
「そうか。ならばそうしてやる」
「やめて下せぇ」
私は千冬さんに向けて飛び蹴りをかますが、逆に足を取られて地面に叩き付けられた。おぉっと、私のファーストキスはやらんぞ地面。
「おおおおっ!」
「はべるばぁ!?」
何と千冬さんは足を掴んだまま、私を柱へと叩き付けてくれました。痛いじゃねぇのコノヤロー!
転がって立ち上がろうとしたものの、膝立ちになったところに千冬さんの蹴りがみぞおちに入る。そのまま足を押し付けたまま、もう片方の足で私の顎を横に蹴り抜いてくれやがった。
シャイニングウィザード使えたんですね、千冬さん。
「あ~~…顎痛い」
「ちっ…まだ倒れんか」
「もちろんです」
解剖は嫌なもんでね。
首を回すと、バキボキと骨が折れたんじゃないかと思うような音がする。大丈夫か私のボディー?思ったよりもダメージ受けてる?まずいな。
千冬さんを倒す事しか頭になかったが、別にそんな事しなくてもいいんだった。だって逃げ切れば勝ちなんだから。
「千冬さん、悪いたぁ思いますが、そろそろ撤退させていただきやす」
「何?」
「という訳でチョエヤァ!」
ジャンプして天井に蹴りをぶち込んで破壊する。野次馬の皆様、瓦礫にご注意下さい。
悲鳴を上げ、落下する瓦礫から逃げる野次馬。千冬さんも砂煙が目に入ったのか、目をこすっている。
「じゃあのー千冬さん」
「ま、待て武田!」
待てと言われて待つバカいるか。私は自由になるんでい。天井に空いた穴に向けて大ジャンプしたら、あららビックリ。
「キョヌーちゃん久し振りデース!」
「ええぇっ!?」
あのISをまとった緑髪のキョヌーちゃんがいた。まさかずっと地下鉄の入り口付近でおろおろしていたのだろうか?だとしたら笑えるぞ?
「m9(^д^)プギャー」
「何ですかその顔!?」
「バカにしますた」
「怒りますよ!」
あんま怖くなさそうだな。
「でも、大人しく捕まってもらいますから!」
「武田ぁぁぁぁぁ!」
流石の千冬さんも大ジャンプできないのか、地下鉄の入り口から飛び出して私に向かって爆走してくる。うぇーい!前にIS後ろに最強!大ピーンチ!!!
「山田先生!思いきりぶん殴っても構わん!とにかく捕えろぉ!」
「えええええっ!?そんなことしたら死んじゃいますよ!?」
「大丈夫だ!ISくらいでそいつは死なん!」
「テメェ何てこと言ってくれるんだ!!!?ゲロ吐いたらッどぉーするつもりだぁ!!!?」
「それで済んじゃうんですか!?じゃ、じゃあ遠慮なく!」
「ぎゃあああああああああああ!!!」
ISの拳が私に向かって放たれる。それは見事な軌道で私のボディーへと吸い込まれ…
「とでも思っているのか?」
「えっ!?」
紙一重で余裕回避した私は、逆にキョヌーちゃんに腹パンしてやりました。おお、柔らけぇ。
「かはっ!?…ハッ…ッ……」
目を見開き、大きく口を開けてブルブルと震える。流石の千冬さんも驚愕しているようだ。
「武田家流CQC……」
キョヌーちゃんはそのまま前のめりになって倒れた。
「『衝撃貫通拳』…!」
説明しよう!衝撃貫通拳とは、その名の通り物体を貫通する衝撃を放つパンチだ!効果としては、壁の向こう側にいる相手にすら衝撃を与えるのだ!つまり!ISの絶対防御も余裕で貫通するのだ!ちなみに、この衝撃貫通拳は使い方次第では相手を惨い姿にしてしまったりする。背中がパーンしてしまい、内臓も飛び出しちゃうから、R-18Gのようなことになってしまう。
ん?キョヌーちゃんはどうなったか?倒れたまま口から涎垂らして、両手で腹押さえてビクンビクンしてまふ。何とか呼吸しようと、か細い声が聞こえますな。
ってか、早く逃げねーと。
「ア・デュー!」
モンハンダッシュで逃走だ!
***
「オノォォォォレェェェェェェェェェ!!!」
捕まったよ。捕まっちまったよこんちくしょう。あのあと千冬さんが連絡したのか、大量のISが押し寄せて来おったわ。
ダッシュで高速道路を走り、時々衝撃貫通拳を突っ込んで来たIS乗りにお見舞いし、時々ジャーマンスープレックスをかまし、時々ISを逆に捕まえて武器にしたけど捕まりましたよ。理由?高速道路に何故かバナナの皮があったんだよ。誰だよ捨てた奴?マリオカートでも再現したかったのか?
「……くそう」
さらば兄弟達よ。私は解剖されてしまうようだ。折角逃げる手伝いをしてくれたというのに……。
「まさか、お前がここまでやるとは思わなかったぞ武田。本当に人間か?」
「異常なのは認めるが、れっきとした人間でい」
目の前には千冬さんが腕を組んでこちらを見ている。こんなんじゃあ逃げる事すらできねぇじゃんか。
「それにしても、まさか山田先生を簡単に倒すとはな。ああ見えて、彼女は元々代表候補生だったのだぞ?」
「へーぇ。衝撃貫通拳かましちゃったけど、平気だった?」
「立ち上がれなかった、とだけ言っておこう」
睨まれました。
「ISの絶対防御が意味を成さない攻撃…貴様、私と戦っていた時、まだ本気ではなかったな」
あれ?そっち?
「…ふん、まぁいい。IS学園についたら覚悟しておけ」
「…………」
ん?
「ちょっと待って」
「何だ?」
「解剖じゃなくて、IS学園?」
「そうだぞ?まさか、解剖されるかと思って逃げていたのか?」
「…うぃっす」
千冬さんは溜め息を吐いた。
「…武田、私はお前を解剖しようとする者に手は貸さんし、貸したくもない。そもそも、私はそういう輩からお前を守るために……って、どうした?」
「自己嫌悪中。しばらくお待ち下さい」
どうやら千冬さんは私を助けようとしてくれていたらしい。それを私は解剖するために政府から派遣された人間かと勘違いし、そのままドンパチしてしまった訳と。
…笑えねぇ。しかも何人かは絶対に怪我させちまった。何てことだ……。
「申し訳ありませんでした…!」
とりあえず、私は千冬さんに頭を下げるのであった。