どうもイッチーのクラス代表を祝ってパーティーを開くらしい。しかしながら、今回私は欠席させてもらう。理由?特に何もないが、気分が乗らないとでも言っておこう。イッチーにゃ悪いが、お前は女子達の生け贄となるのだ。
それはともかく……。
「篠ノ之束さん、Doして私はこげな場所におるんですか?」
「まぁまぁいいじゃん。お互い暇だったんだし」
ずずっ…
二人して緑茶を飲む。ちなみに私が淹れた。客である私が。
「いやー、君には感謝してるんだよ?いっくんをボッコボコにしているお陰か、箒ちゃんが段々素直になっていい空気になってるし」
「ほう、大和撫子が」
いい酸素になってきてるのか。いやはやえがったえがった。
「ついでに漫画と小説も感謝してるし」
「そんなに気に入りました?」
「徹夜して読んでます」
「ちゃんと寝ましょうね?」
この前より隈ひでぇもんな。
「それにね、一番嬉しかったこともある」
「んん?」
「箒ちゃん……私の妹だけど、段々素直になってくれたでしょ?だから思いきって、電話をしてみたんだ」
「…喧嘩でもなさってたんで?」
「喧嘩というか、なんというか……。まぁ、いっぱい迷惑かけちゃって」
「…………」
私のほうは兄弟喧嘩なんかなかったな。だから良く分からん。
「それでね、一度箒ちゃんに電話したんだ。そしたら、さ……。箒ちゃん、私のこと許してくれて」
……つまりバタフライエフェクト現象か。私が私利私欲でイッチーをボッコボコにし、心配になった大和撫子が段々素直に。で、今まで迷惑かけてた束さんが思いきって電話。素直になってきた大和撫子は、束さんを許したと。
……ご都合良すぎやしませんかね?世の中上手くいかないハズなのに、何で私の行為でここまで行くんだよ。あり得んなぁ!これは誰かの悪意を感じる……。
「だからさ…ありがとう、たっきー」
「……礼を言う必要はねぇと思いますが、受け止っときますよ」
わだかまりが解けるってのはいいことだしな。
「…さてと、束さんや」
「ん?」
「…………。本当に、貴女が私のISを作ってくれたんですか?」
「うん、そだよ」
軽い!
「流石に作れないものもあったけどね。中々いい出来でしょ?」
「ええ。パーフェクトだウォルター…と言いかけたくらいです」
「ああ、ショタになったら何故か色気が増したあの執事くんね」
「ヒラコーさんはエロがないのに、何故かエロかったりしますからね。リップバーンさんは旦那に血ィ吸われてる所はエロかった」
「あー、あそこはねぇ」
「つか、知ってたんですねヘルシング」
「まぁね。シュレディンガーの能力が羨ましかった」
「確かに、あれは羨ましかった」
更衣室覗きたい放題。
「っと違う違う。束さんはブラッドボーンやってたんで?」
「いや?たっきーが好きらしかったから、作ってみただけだけど」
何だやってなかったのか。残念。
「そういえばたっきー、ちょっと君について色々と調べたんだけど」
「……?」
さっきとは全く違う束さんの雰囲気に、私は妙な感覚を覚えた。顔は笑っているが、その目はこちらを値踏みするかのようだ。
「今更だけど、君は何者だい?」
「…………」
「やっぱりどう考えてもおかしいんだよ、君の肉体のスペックは。髪の毛一本からDNAを採取してみたけど、やっぱり色々とおかしいんだよ。改めて問うよ、君は何者だい?」
「……確かに、私は化物と言われてもおかしくはない。いや、言われたこともある。でも、これだけは言える」
私は束さんに顔を近付けた。じっと彼女を見据える。
「本物の化物を知っているからこそ言える。私は人間ですよ。他の誰よりも、人間というものを満喫していますよ」
「…………」
しばしの無言のあと、束さんはくすっと笑い、値踏みするような目をやめた。
「何というか、確かにたっきー程、人間やってる奴なんていないね」
「ええ、いませんとも。いたら紹介してほしいね」
その後、私と束さんは他愛もない談笑をした。その他愛もない談笑が、何でかとても楽しかったとだけ言っておこう。