適当に魔法科学校で主人公の達也君と遊んだりしたい(願望) 作:倒錯した愛
卿サイド
第2体育館、通称『闘技場』へ向かう通路を歩く、窓の外にはたくさんの新入生、と、彼らを少し強引に勧誘するクラブの人たちが見える。
道を塞いだり、服を掴んだりなど、ある程度乱暴な行為をしない限りは私たち風紀委員は横槍を入れられない。
まあ、腕章をつけて近くを歩くだけでも抑圧できる、騒ぎが起きてから制圧するまでが面倒だし、未然に防いで行かないとね。
おっと、あそこにいるのは光井さんと北山さん、外の方を回ってるってことは、魔法を使うスポーツ系のクラブに興味があるのかな?
ここ第一高校には魔法系・非魔法系両方クラブが充実してるけど、人気があるのは魔法系のクラブ、見ていて派手で爽快感があるところが、新入生の心を掴むんだろうね。
非魔法系のクラブは、そういう派手さにはどうしても欠ける、純粋に魔法抜きで競う競技だから派手さが無いのは普通なんだけど…………若者に地味なものは好かれにくいっていうのが、あるのかな。
そして、魔法系・非魔法系のクラブには結構大きな溝がある、というのも、魔法系に入るのは優秀な一科生、非魔法系に入るのはあぶれた二科生、っていう配分になってしまってるから。
『魔法がろくに使えない集団』みたいなくくりで見られて、どうしてもクラブ毎に優劣がついてしまうのだとか。
渡辺先輩曰く、七草会長はこういう優劣差が小さくなるように努力はしているとのこと、一科生が多いからといって予算などを優遇はしていないと聞いた。
「七草会長マジ天使」
差別撤廃に向けて活動を続ける七草会長に脱帽、というかもう土下座の勢いまであるねこれ。
っとと、いつまでもこんなとこにいちゃサボりと思われる、見回り見回り…………あれ?なんだろう、あの、スケボとスノボを足して二で割ったような板。
あれも魔法で………あっ、動き出して、って早!?とりあえず録画して…………あ、もしかして勧誘の一環のデモなのかな?
端末で渡辺先輩に聞いてみよう…………。
『渡辺だ』
ヒューッ!イケメンボイスで蕩けそう!
「姫城です、第2体育館と校舎をつなぐ渡り廊下の窓から、スケボとスノボを足して二で割ったようなボードで走り回ってる人がいるんですが、魔法の使用の許可申請はありますか?」
『……………そのボードに乗ってるやつの容姿はどんなだ?』
あれ?なんか怒ってらっしゃる?
容姿…………うーん、そこそこかわいい感じ、と言っても伝わらない……あそうだ。
「言葉では難しいので、レコーダーの映像を繋げます」
レコーダーのIDから取っている映像を端末経由で渡辺先輩に送る。
『姫城、すぐにこいつらを捕まえろ!』
「はい?」
『こいつらは問題児だ!OBのくせに来るとは予想もできなかった…………魔法の不正使用だ、急いで制圧しろ!』
「了解です!」
許可が出た、端末をしまって窓を開いて飛び出す。
ヒェッ、3階はやっぱり高いし怖い。
「だけども!」
空中にサイオンで薄い板を形成、エイドスによって事象を引き起こし、空中で静止する金属板を創り出す。
「よっ!ほっ!」
今の魔法を複写して少し離れたところで転写する、これを繰り返しつつ金属板の上を移り跳び移動する。
でもこれじゃあの問題児たち2人には追いつけない、自転車で自動車を追いかけるようなもの。
地上に降りて自己加速術式を…………。
「きゃぁ!?」
「ほのか!?ぁぅっ!?」
光井さんと北山さんが問題児に拾い上げられた!?
「こいつらだよな?」
「あぁ、実技2位と3位だ」
あの問題児、優秀な光井さんと北山さんをクラブに勧誘するために、拉致しようっていうのか!?
「許さん…………許さんぞ!」
跳躍術式で金属板から大きく跳び上がり、地上30mほどからサイオンの槍を多重展開、ターゲットは問題児2人のなぞボード!
「止まれぇ!」
一斉に槍を投擲する、突如空からの攻撃に唖然として動きが止まる問題児たち、驚いて被害を恐れ問題児のそばから逃げ出す生徒、その判断は正しいね!
でも、問題児たちに槍は全部避けられる、あの謎ボード、結構速い、その上かなり小回りが利くみたい。
ってか、人のことあんま言えないけど、こんな生徒がたくさんいる場所であんな乗り物は危険だってわかんないの!?
でも風紀委員みたいな奴らを撒くのなら、効果的だよ。
まったくめんどくさいっていうのに、光井さんと北山さんという大事な友達を、私の目の前でよくも………よくも、私を怒らせてくれたね!
「一気にケリをつける!」
「なんだあれ!?」
「風紀委員の野郎か!チッ!」
「風紀委員です!道を開けてください!」
周りへの注意はしたからいいよね?良いとするよ!
自己加速術式を展開、さっきのを転写して空中に一枚の金属板を斜めに展開、それを思いっきり蹴り飛ばし、自己加速術式によって地面に高速で突っ込む。
「ぐっ…………逃がさんと、言った!」
問題児たちの眼前に着地、サイオンブレードを展開、問題児の体ごと謎ボードを叩き斬る!
「うわっ!?」
「風祭!」
「落ちろぉ!!!」
「っ!?きゃああ!?」
実際には体は斬られてないのだが、驚きからか2人とも転倒した、かなりの速度で転倒したため相当痛かっただろうが………今はそんなことよりも空中に放り投げられた光井さんと北山さんだよ!
最悪骨折レベルの高さから制御も無しに落ちたら痛いですむはずない!
「ぐっ……!」
痛っ!足が……着地の時に挫いたかな?でも………。
「間に合う!」ズザザザッ
よし!間に合った!完璧ぃ!
「きゃっ!…………え?」
「っ!………」
「ふぅ…………」
なんとか、間に合った…………。
光井さんは驚いてキョロキョロしてる、見た所怪我はないみたい、北山さんは………目をぎゅっと閉じてる、まだ落ちてると思ってるのかな?北山さんも一応怪我はないみたい。
よかった………。
「光井さん、北山さん、怪我はない?」
「え、え!?姫城君!?あれ!?私、持ち上げられて、空を飛んで、落っこちて………」
「うん、私がキャッチしたから、もう大丈夫だよ」
「……………ん、生きて、る?」
「あ、北山さん、怪我はない?」
「……………ない……もしかして、助けて、くれた?」
「そのまさか、だよ、助けさせていただきました、っとと」
さ、さすがに軽いとはいえ、女の子2人を1人ずつ片手でキャッチしたのは負荷が大きすぎたかな。
それに、なんだか足も結構な痛みが…………ええい!気のせいだ気のせい!女の子2人の前で弱音は吐かないぞ!
「私たち、どうなってたの?」
「えっとね、スノボとスケボを足して二で割ったような板に乗った変態に拉致されそうになってたんだよ」
「そうだったんだ、ありがとう、卿」
「あ、ありがとうございます卿さん!」
「いやいや、風紀委員として当然のことをしたまでだよ、光井さんに北山さん」
ん?気のせいかな、名前で呼ばれた気がしたんだけど。
「あの………ほのか、って呼んでもらえますか?」
「私も、雫でいい」
「いいの?じゃあ、これからは、ほのかさん、雫さん、って呼ばせてもらうね」
深雪さん以外では初の名前呼び!純粋な(?)女友達だぁー!イェーイ!
前世はモテた(?)っていうのが知識でわかってたから、今世でモテなかったら泣くとこだったよ!よかったー女の子とより良い友達になれて。
最後は達也君にフラグ立つけど、ま、友達で十分だよね!実は前世知識が女の子と親密になることに警鐘を鳴らしてるんだよね、今も鳴ってるんだよね、なんでだろ?
「いつつ…………」
「な、なんで………」
あっ、派手に地面を転がった問題児×2がよろよろだけど起き上がって………痛すぎるのか全然無理そうだね、やり過ぎたかな?
「じゃあ2人とも、風紀委員の仕事がまだあるから、またあとで!」
2人を下ろして問題児のほうに向かう。
「はい!ありがとうございました!」
「頑張ってね」
くー!レベルの高い女の子2人からのエール!ふーっ!さいっこー!
………………あっ、目立ちすぎた、すっごい視線集めてる、これはちょっとヤバイですわ。
1年なのに!1年なのにめっちゃ目立っちゃってるし!『ナマ言ってんじゃねえぞゴラァ』とか言われちゃうよ!
いや100年くらい前の不良みたいなのがいたら逆に凄いけど。
「姫城!問題児供は………」
「あっ、渡辺先輩、問題児たちならあっちで転げてます」
「よくやった姫城!さあ、お前たち、風紀委員本部でじっくりと話を聞かせてもらおうか!」
おお、渡辺先輩カックイー!まるでスケバンだ!
かっこいいぜ!渡辺の姐御!
「何か言ったか?」
「いいいいいいいえいえ何も!」
渡辺先輩ってもしかしてヘル・イヤー(地獄耳)をお持ちなんです!?
「そうか、ではとりあえず、この馬鹿どもを連行する、手伝ってくれ」
「えーっと、一応お聞きしますが、方法は?」
「担げばいいだろ?」
「ぃやだん、男らしぃ……」ジュン
(胸が)きゅんときたぁ………。
「あ"っ?」
(タマタマが)きゅんときたぁ………。
「へい!準備ばっちしですぜ!」ヒョイ
「ちょっと!どこ触って………」
「行け」
「イエス!マム!」
このあと問題児2人を背負って本部までめちゃくちゃダッシュした。
本部に連れ込んだ後、擦り傷だらけなのが痛々しかったので、逃げられないようにして治療してあげた。
「初日から大戦果だな、姫城」
「お帰りなさい渡辺先輩、言うほど戦果上がってますか?」
「恥ずかしい話だが、姫城が拘束したそこの2人は迷惑行為常習犯で、我々でも手を焼いていたんだ、卒業してホッとしていたんだが…………」
あっ、だんだんとイライラしてきてる!逃げよう!
「そうだったんですね!では私は任務に戻りますので!お2人のことはお願いします!」
「ん?あぁ、わかった、引き続き頼む」
逃げるように本部から出た。
あっ、レコーダー切っとかないと。
ほのかサイド
2度目だ。
1度目は、一科生の人達が、深雪さんを無理やり達也さんから引き離そうとして、トラブルになった時。
2度目は、さっきのクラブ勧誘の時、ボードに乗った人に連れ去られそうになった時。
真っ先に来てくれた、真っ直ぐに助けてくれた、まるでヒーローみたいに。
正義の味方が、悪の組織に囚われたヒロインを助け出すみたいに……………。
「卿さん…………」
なんだか、体が熱いよぉ…………。
「ほのか、ほのか」
「ひゃっ………雫?」
「ぼーっとしてると、また連れてかれる」
「そ、そうだね、うん、気をつけないとね」
……………かっこよかったなぁ、卿さんの、真剣な表情………。
うぅ………頭から離れない……あっついぃ////
『落ちろぉ!!!』
「もう堕ちちゃってるよぉ〜////」
思わず悶える、ジタバタと足を動かしてどうしようもない思いを虚空に向かってぶつける。
いつもは優しい柔らかい表情が、キリッとかっこよくなっちゃうのは反則すぎる!
「ほのか…………」ジトー
「あ………………ごめんなさい////」
うぅ……恥ずかしぃ………。
恥ずかしくてジュースを煽る、キーンとした冷たさが頭と体を冷やし━━━━頭痛を引き起こした。
「いっ……………つぅ………」
「ほのかのドジ」
頭痛に襲われる中で、雫の罵倒が聞こえた気がした。
卿サイド
最初の予定通り、第2体育館に来たよ。
色々あって結構時間使っちゃったけど、それでも第2体育館は人が多い。
闘技場の名前通り、ギャラリーは満席みたい、まるでコロッセオだね。
こういう場所ほど『人の多さ=トラブルの厄介さ』の方程式の解が出やすいんだよね。
X=10Yくらい値で、人数に対して10倍くらいのトラブルが起こりそう。
「グァ!?」
あっ、さっそくトラブルの予感がする。
2階から覗くと剣道部と剣術部が言い争いをしているみたい、しかも結構白熱してるよ。
あーあー、『剣のうんたらかんたらを見たけりゃ見せてやるよ!』なんていうフラグ立てたよ剣術部の人、ってか声渋くてかっこいいね。
剣道部の人は………うんまあ、いいんでない?なかなか可愛い人だと思うよ。
睨み合いがつづく…………先に動いたのは剣術部!遅れて動く剣道部!互いに斬り結ぶ!
…………同時にあたった、ように見える、これだと、相打ち?
「あなたの籠手は浅かった、真剣なら、肩を切られているあなたの方が致命傷よ」
あの剣道部の女の人、実戦的なことを言うね。
確かにそうだろうけど、手首でも肩でも切り落とされれば致命傷なのは変わらない、たとえ今、剣術部の人が死んだとしても、20分もしないうちに剣道部の人も死ぬだろうね。
幸いにもここは魔法科学校、出血を止めることくらい容易にできるから、間に合えば助かるかもね。
「真剣なら?…………壬生、お前、真剣がお望みか?」
なにやら剣術部の人が怪しい雰囲気…………。
「そんなに真剣を相手にしたいなら、見せてやる」
あっ!剣術部の人がCADを!
キィィィィイイイイイインッ
うっさ!うるっさ!なにあれ!?超振動?超音波?……………高周波?高周波ブレード!?
竹刀を高周波ブレードにした!?殺す気なの!?
「どうだ壬生!これが真剣だ!」
真剣じゃないよ!高周波ブレードだよそれ!
どうにかして…………あれは、達也君?アイコンタクト…………なるほど、それはいいね。
うんうん………もちろん信じるよ、任せて。
オーケー、了解ですよ達也君。
それではかっこいいとこ、見せましょう?
姫城君の魔法簡単説明。
サイオンの塊を作り出し、それを振るったり投げたり射出したり設置したりして攻撃・防御を行う万能魔法。
微々たるサイオン量をカバーするため、『周囲のあらゆる』サイオンを集め、そこに自身のサイオンを混ぜ込むことでただのサイオンの塊を操作している。
物理的な攻撃力はほとんどない。