適当に魔法科学校で主人公の達也君と遊んだりしたい(願望)   作:倒錯した愛

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呼んでる人いないと思うけど、おまたせ。

今回は風紀委員に入るあたりまで。


第4話

卿サイド

 

 

空気が重いんだけど………。

 

ここ本当に生徒会室なの?ってくらい空気が重い、ってか寒い、寒くない?だーれー?エアコンの温度10度にしたの〜?絶対男子でしょ〜!?

 

なんて冗談すら言えない空気ですはい、さっきから隣の深雪さんから伝わる冷気で箸を持つ手が震えてる、温かいご飯はすでに冷えているし、飲み物のジュースは夏場や暑い日に喜ばれそうなシャーベット状になっている

 

こんな時になんだけどシャーベットジュースがすっごい美味しそう。

 

と、ここで深雪さんが達也君に今度から弁当を作ってくることを提案、するも、食べる場所が無いというトラップが………今度は気分が沈んでしまった深雪さん、冷めたご飯が温かさを取り戻していく、ジュースはシャーベットから液体に戻った。

 

正直シャーベットのほうが………。

 

「兄妹というより、恋人みたいですね」

 

会計の市原先輩がそんな爆弾発言をしたことで深雪さんは登校の時のようにふたたび上機嫌に、同時に達也君に近づいて密着、さすが本妻………じゃなくて妹。

 

「そうですね、血の繋がりが無かったら、恋人にしたいと考えたことはあります」

 

「ファッ!?」

 

「もちろん冗談ですが」

 

「「「え!?」」」

 

「チッ……」

 

「なんで深雪まで驚く……あと卿、舌打ちはやめてくれ」

 

「夫婦みたいな空気出しといて冗談とかないわー」

 

さっすがは美男美女兄妹!度胸が違うゼェ!って言おうとしたのに、まったく、ガッカリだよ!

 

そのあとはいきなり達也君が市原先輩の魚の骨を取り除き始めたので、代わりに私が七草先輩に質問することにした。

 

「七草先輩、私たちを呼んだ理由を聞いてもいいですか?」

 

「えっと、我々生徒会は、司波深雪さんに生徒会に入ってもらいたいと思っています、どうでしょうか?」

 

「……会長は、兄の成績をご存知ですよね?優秀な者を生徒会に入れるのなら、兄を入れることはできないのでしょうか?」

 

勧誘の話を切り出した七草先輩に対し、深雪さんは達也君を持ち出した、やっぱりというか、達也君に対しての扱いが不満なようだね。

 

七草先輩は深雪さんの発言に申し訳なさそうな顔をする、ついで市原先輩から原則として二科生は生徒会に入れないということを言われ、深雪さんの表情は沈んだ。

 

表現するなら、海底の美しい珊瑚礁、見た目は美しいが、物言えぬところがどこか悲しみをまとっているような雰囲気が漂っている………どうにも詩的な表現は苦手だね、それ以上にクサイし。

 

うーん、達也君が生徒会に入ってくれないと、深雪さんは安心して仕事ができないだろうし。

 

「そういえば真由美、風紀委員の生徒会専任枠が決まってないんだが」

 

「それは選別中でしょう?」

 

「たしか専任枠には縛りは無かったよな?」

 

「「あっ」」

 

偶然にも七草先輩と声が重なる、まさに『その手があったか!』ような声音で。

 

そこからはもうトントン拍子、流れるように達也君が風紀委員の専任枠として持ち上げられていく、最後まで拒否の態度の達也君であった。

 

時間もいいところなので、続きは放課後ということになり解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「達也君が風紀委員かー、いいんじゃない?深雪さん喜ぶと思うよ」

 

「しかしな………俺は実技が苦手なんだぞ?(実戦はともかく)一科生を取り締まるなんて無理だ」

 

「でも、風紀委員に入れば、深雪さんものすごーくやる気出してくれるって言ってたよ?」

 

「むぅ………」

 

放課後、お花を摘みに行った深雪さんを待つ間に達也君の入るつもりはないという決心をにぶらせようと、深雪さんをダシに使い話術で丸め込もうとする。

 

実際、風紀委員に達也君が入れば怖いものなんてなくなるんだよね、風紀委員と生徒会は合同会議とか多いから達也君と深雪さんの遭遇率は高めだし、何より風紀委員の巡察と称して深雪さんと公認校内デートもさせてあげられるわけだし。

 

何よりも私の負担が減る!

 

「………わかった、風紀委員に入ろう」

 

「お、やっぱり深雪さんg「ただし、卿も風紀委員に入ってもらうからな」………へっ?」

 

「交換条件だ、仕事のフォローはする、いいだろ?」

 

「んー……まあいいよ」

 

それくらいなら安いもんだし、何か揉め事でもあった時は達也君に投げときゃいいかな。

 

復帰した深雪さんを連れて生徒会室に入る、あ、あの時のキモいモブ上級生がいる。

 

んで、何やら不穏な空気に……いつの間にやら達也君とキモブ上との模擬戦が決定。

 

「七草会長、卿を風紀委員に入れることはできますか?」

 

「え?……本来なら森崎君の予定だったんだけど……どうなの摩利?」

 

「正直、先日の出来事で森崎が風紀委員として動けるか疑問が残るところでな……悪いやつではないんだが、頼りになるかは………」

 

いきなりの達也君の提案に微妙な表情で答える七草先輩一同、え?モブ崎って教師から風紀委員に推薦貰ってたんだ………超意外。

 

「あー………じゃあついでに姫城君もはんぞー君と模擬戦してもらいましょうか」

 

「適当ですね七草先輩………ていうか私超弱いんですけど?」

 

「だいじょーぶ!私のドライアイス弾を弾き返せるんだもの、いけるわ」

 

あの時の弾丸の射手はあなただったんかい!ってかドライアイス!?………弾けなかったらあかんかったんやなかろうか………。

 

「姫城君、あなたがあの時弾くことができなくても、光井さんに届く直前で消えるようにして撃ってたからそんな深刻に考えなくてもいいのよ」

 

「あ、そうなんですか?それなら良かったです」

 

生徒会長に抜擢されるくらいなんだ、それくらいは造作もないんだなぁ…………あれ?この中で一番弱いのって私じゃ?

 

「模擬戦のほうも、やれるだけ頑張ってみせましょう」

 

相手より先に魔法を発動させれば、まあ………いけるかなあ?

 

「それじゃあ、時間もいいところだし、そろそろ解散しましょうか」

 

七草先輩の解散の合図が出たので、恒例になりつつあるお昼休みの会はお開きとなった。

 

1-Aの教室に戻って授業を受ける、あっ、あの問題達也君がやってたとこだ、さすが達也君、予習プリントの範囲もバッチリとは。

 

そして放課後、ついにやってきた模擬戦!達也君、バーサス、モブ上!さあ一体どんな攻防が………。

 

「始め!」

 

「うっ……」

 

「……しょ、勝者、司波達也!」

 

…………はい!達也君の勝ち!

 

いやー………なにこれ?瞬殺とかモブ上君ちょっと弱すぎんよ〜、初めの合図から、5秒も経っていないんじゃないの?

 

敗因は、達也君が強過ぎたってとこでしょ、モブ上(副会長)も強いとは思うしね、生徒会長に次ぐ強さかはわからないけど………。

 

まあでも、深雪さんの目論見通り、これで達也君の実力は証明できたわけで…………あっ、これじゃ余計に怪しまれるだけじゃない?示し過ぎちゃったんじゃかな?

 

CADもトーラスシルバーのやつだってバレちゃってるし、ってかあのちっこい先輩ってトーラスシルバー、のシルバーのほうのファンだったのか、本人目の前ですよー、サインもらうなら今ですよー。

 

「サイオンの波を………」

 

あっ、なんか気づいたら難しい話してる、ループ……キャスト……がなんたらとか…………またよくわからないもの作ったんだねえ達也君。

 

「しかしループキャストでは…………波の合成………変数……………」

 

しっかし、早かった、それに、速かった、始まったと同時に地面を蹴って瞬きするよりも短いほどの時間で後ろに回り込み、CADに位置座標と複数の異なるサイオンの波を入力して発動、異なる複数のサイオンの波を当てられたモブ上は嵐の中に突っ込んだ漁船並みの船酔いを感じることになる。

 

私じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

達也君にとってはその場に立って『分解』したほうがずっと早いんだろうけど、さすがにそんなことしたら身バレ確定だし、即死技だからルール違反だし、何よりこの模擬戦は風紀委員として渡辺先輩に推薦された達也君の実力を示すものだし、行動不能にさえできればいいわけだから、これがベストだったんだろうね。

 

「それじゃあ、次は姫城君ね」

 

「え、本当に模擬戦やるんですか?」

 

「ある程度の実力を把握しておかないと、風紀委員に入った後の行動が決められないからな」

 

渡辺先輩がそう言うけど………絶対に私の光剣が見たいだけだあの顔。

 

「私なんて偵察役で十分ですよ………そもそも戦闘には向いてないんですし」

 

「まぁまぁ、軽くだから、ね?」

 

パチリッ、とウィンクをする七草先輩、ちょっとやめてくれないかなー、そういうのに男子は弱いんだよー?

 

ま、たぶんわかっててやってるんだろうけども………悲しい哉、女の子の頼みを断れないのは男のサガ、それにお昼に頑張りますって言っちゃったし。

 

「わっかりましたー………でも誰とするんです?モb…………副会長は伸びちゃってますけど」

 

「そうね…………じゃあ、あーちゃんとやって見るのはどう?」

 

「わ、私ですかぁ!?」

 

七草先輩の提案に達也君に纏わり付いてCADを触らせてもらおうとしてぴょんぴょん跳ねたりして達也君に密着している中条先輩が振り向いて驚いた顔をした。

 

あっ、この人、なんだかあのメガネの女の子の………柴田さんみたいな、加護欲が掻き立てられる感じがする。

 

年上属性持ちで加護欲が掻き立てられるとか、中条先輩、というかあーちゃん先輩やべえ!

 

……………ん?ってことは。

 

「えっと………え?中条先輩とですか?」

 

「そうよ」

 

「無理無理無理!無理ですよ!女の子に攻撃なんてそんなこと………」

 

「あら、女の子だからって手加減をすると痛い目に合うわよ?あーちゃんは結構強いのよ」

 

「いえ中条先輩は上級生ですし、強いのはわかりますけど………その、やはりどうしても女の子相手だと無意識に手加減が出る可能性が……」

 

「ふむ、真剣な勝負で無意識に手加減が出るのはいけない、かと言って、服部副会長はこの有り様だ」

 

モブ上君、まだまだ起きぬ、気絶から(心の一句)。

 

見た感じ、達也君は全力の1割使ったかギリギリ使ってないかのどちらかという絶妙な手の抜き具合だったし、そろそろ起きてもいい頃合いだと思うんだけど………深雪さんの目の前で張り切り過ぎちゃったのかな?

 

「しかし、風紀委員ならば違反者が異性であっても取り締まらなくてはならない、これも良い機会と思って臨んでくれ」

 

「あー、まぁ、そうですよね、女の子が違反者になることもあり得るんですし…………わかりました、やりましょう中条先輩!」

 

「ほ、本当にやるんですか!?か、会長〜!?」

 

「あっ、じゃあ、ルール変更で、寸止めしたら終わりにしましょう」

 

「す、寸止めか………うぅむ………どうする真由美?」

 

「良いんじゃないかしら?そのルールでなら姫城君もやりやすそうだし」

 

「真由美、会長の許可も出た、では姫城が攻撃する際は寸止め、中条の攻撃する際は直撃で構わないな?」

 

「私は構いません」

 

むしろ寸止めじゃないと私の魔法もどきが通用しないし。

 

「うぅ……」

 

それでも中条先輩は乗り気じゃない様子、うーん、傷つけるのが嫌いな優しい性格なのかな?

 

「ほら、あーちゃん、ここで先輩としての威厳を示すの、どう?」

 

「!」

 

違うわ、チョロ可愛い女の子なだけだわこの子、じゃなかった中条先輩。

 

「わ、わかりました…………姫城君!私が先輩だてとこ、み、見せてあげますからね!」

 

「えぇ…………しっかりと見せてもらいますからね!!」

 

胸を張って震える脚で虚勢を保ちつつ私を指差してそう宣言する中条先輩、いや、あーちゃん先輩。

 

あーちゃん先輩は銀河系一かわいいのかもしれない。

 

「それでは両者、位置について」

 

渡辺先輩の声である程度の距離を開けてあーちゃん先輩と相対する、あーちゃん先輩は自前のCADに衣服が干渉しないように少し腕捲りした。

 

対する私は、自前のCADを相手から見えないままにしておく、こうしないといろいろ面倒だしね。

 

達也君と深雪さん以外が不審な目で見てるけど、まあ不審に見えるよね、腕捲りくらいしないとCAD操作がし辛いのに、そのままで挑もうとしてるんだから。

 

「姫城君、頑張ってね」

 

チョーガンバリマス!!!

 

「それでは…………始め!」

 

始まった瞬間に踏み込む、とは言っても、達也君のような力強い踏み込みとは違い、フラリと倒れこむように見える一歩目。

 

そして二歩目で…………相手の視界から消えるように、地面スレスレを擦るような感覚であーちゃん先輩に迫る。

 

右手付近に短剣型の光るサイオンの塊を作り出し、右手の表面にサイオンの塊に干渉できるようにサイオンを吸着、短剣を逆手に握りこむと同時に三歩目を踏み出し、一気にあーちゃん先輩の後方へ。

 

あーちゃん先輩の後ろに回り込んだところで、逆手に持った短剣を首元に近づける。

 

「動かないでください、危ないので」

 

「えっ…………えぇ!?う、うしろ!?え!?前にいたはずなのに!?えぇ〜〜!?」

 

「勝者…………姫城卿……」

 

腕を伸ばしさっきまで私がいた場所にCADを向けていたあーちゃん先輩、どうやら私の移動には全く気がつかなかったみたいで、とても驚いている。

 

「姫城君、もしかしてあなたも達也君と同じように………」

 

「あ、違います違います、私のは…………まあ、独学?と言いますか、インターネットの動画を見て真似してたら自然と」

 

「映像を見て真似しただけで、達也君レベルの回り込みができた、というの?」

 

前世で同じことやっていたのが知識として残ってるから、って言っても信じてもらえないだろうね、達也君は別として。

 

「七草先輩、達也君のは紛れも無い本物の技術です、対し私のは猿真似…………レベルの差が激しすぎますよ」

 

とりあえずこう言っておけばいいかな、達也君持ち上げとかないと深雪さんがね……。

 

「それに、私は光魔法しか使えない、さらにこの短剣も見た目だけで中身のないサイオンの塊、なので、実際には攻撃を当てられない………つまり物体に接触できないんですよ」

 

まあこれについては嘘は言ってないね。

 

「……………うむ、真由美、教師に掛け合って森崎の代わりに彼を風紀委員会に入会させるようにしてくれ」

 

満足気な表情でそう言う渡辺先輩、キリッとしてかっこいいなぁ………なんで男じゃないんですかねえ?

 

「えぇ、早速そうするわ……ふふっ、姫城君も十分強いじゃない」

 

「いやぁ………七草先輩が応援してくれたお陰、ですかね」

 

さあて、これで無事、風紀委員会への入会を果たせそうだよ。

 

疲れたなあ、早く帰って寝たいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也サイド

 

 

模擬戦の時に見せた卿の動き、間違いない、暗殺稼業を営む家も者に伝わる秘伝の類いの歩法。

 

卿の歩法からは極々小さな音すらも聞き取れなかった、踏み込むタイミングは完全に見えていた、だが二歩目から追跡は不可能になった。

 

後ろに回り込んだ卿が中条先輩に降伏勧告を発するまで、一切の音は聞こえなかった。

 

靴底が床を叩く音も、呼吸の音も、心臓の音すらも、聞き取ることができなかった。

 

『無音の極技』とも言えるあの技は、紛れも無い卿自身の技術だ、おそらく、転生する前の知識とやらが関係していそうだ。

 

可能性は低いが、卿と対立した場合の勝算は五分だろう、俺の魔法なら卿の魔法を無効化できる、だが全く知覚できないあの歩法を使われれば………。

 

…………考えるのは止しておこう、卿とは今後風紀委員会で顔を合わせる時間がより増える、顔に出てはまずい。

 

知らず知らずのうちに、体が重くなっている気がした。

 

「ん?達也君何してんの?深雪さん待ってるよ?」

 

玄関口で長考していると心配そうに卿が覗き込んできた。

 

「あぁ悪い、すぐ行く」

 

「………………前にも言ったと思うけど、私は達也君と深雪さんの味方だからね」

 

「確かに前にも聞いたな」

 

「うん、だからね、こんな私でよければ、愚痴くらいは聞くから」

 

「…………助かる」

 

嘘偽りを感じないし声の淀みも感じない、いたって普通、リラックスした状態で卿はそう言った。

 

「それじゃあ早く行こう、あんまり待たせると深雪さんが私を凍らせにくるし」

 

自身を抱きしめるようにしてガクガクブルブルと声に出して震えてみせる卿。

 

「卿なら大丈夫なんじゃないか?」

 

「達也君ほど頑丈じゃないので無理ー、深雪さんのあまーいラヴをお受けなさーい」

 

おちゃらけた卿のおかげか、少しだが、体が軽くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

卿サイド

 

 

さあ、やってまいりました!クラブ勧誘の時期が!

 

「というわけで、北山さんに光井さん、この時期は外でも廊下でも学校内を歩く場合は気をつけないといけないからね」

 

風紀委員としてせめて友人にこの時期の脅威を教えようと思い、朝の空き時間に2人を呼んで説明をしていた。

 

「そうなの?」

 

「風紀委員長の渡辺先輩曰く、毎年毎年この時期はトラブル続出!口喧嘩、優秀な部員の取り合い、殴り合いに魔法の撃ち合いまで、トラブル全書ができるレベルだよ」

 

「うっ………巻き込まれたくない」

 

嫌そうな顔をして北山さんはそう言った、そうだよねえ……気持ちはわかるよ。

 

「だと思った、でも残念!北山さんも光井さんも、成績良くてかわいいので勧誘は絶対来ます!絶対です!」

 

「かわっ…………///」

 

「ん…………///」

 

あれ?この2人って、この前の騒動で達也君に興味持ってたような………ひょっとしてかわいいとか言われ慣れてないのかな?

 

「なので、襲われたら自衛できるように心構えをちゃーんと持っておくように!風紀委員も回るから、何かあったら助けを求めるといいよ」

 

「姫城君は、助けてくれる?」

 

「近くにいればね、私じゃなくとも一番近いとこにいる風紀委員の人が駆けつけてくれるから、安心して」

 

「……………ニブチン」

 

「ちょっと北山さん?ニブチンってなにニブチンって!?確かに達也君に比べたらドンガメ反射速度だけども、ニブチンはひどいよ!?」

 

「そ、そうだよ雫!姫城君にもいいところはたくさんあるんだよ!」

 

「そーだそーだ!私にもいいところが………」

 

「こうやって事前に危ないことを知らせてくれるし、いつも場を和ませてくれるし、明るくてかっこいいし、この前の騒ぎの時だって、私を魔法の弾丸から守ってくれたんだよ!?姫城君はかっこいい紳士さんなんだよ!」

 

「あのね、嬉しいけどね光井さん、声、声大きいから」

 

おっかしいなぁ…………達也君にフラグ立ってると思ったのに、これじゃあまるで………イヤイヤナイナイ。

 

「は、す、すみません!////」

 

「あぁでも、高く評価されてるみたいで、とても嬉しかったから」

 

「は、はい、それはそれは大変よろしゅう………」

 

「ちょっ北山さん、いきなりなに言ってるの?言葉遣いおかしくなってるよ?」

 

「ほのか、パニクりすぎ」

 

「うぅ………埋まりたい……」

 

「光井さんが地面に埋まったらヒマワリの花と見分けつかなくなっちゃうよ!」

 

「んぶ!ふぅっ………んっ!………」プルプル

 

「雫!吹き出さないでよ!!」

 

手で口元を押さえ笑いをこらえるレアな北山さんが観れたところで、HRが始まる時間が来たので解散となった。

 

そして、放課後。

 

風紀委員本部にて、集まった風紀委員の先輩方と達也君、あと私。

 

達也君が掃除したらしい本部は綺麗に片付けられていてとても居心地の良さそうな場所だと思った。

 

席が埋まると渡辺先輩が長机の端の方に立ち言い放った。

 

「さて諸君、今年もあの馬鹿騒ぎの季節がやって来た、幸いにして今年は補充が間に合った、教職員推薦枠の1-Aの姫城卿、生徒会推薦枠の1-Eの司波達也だ」

 

渡辺先輩の紹介で席を立つ、タイミングが達也君と被るが先輩方の視線は達也君のイケメンフェイス…………よりも下にある肩の印の無い部分に向けられる。

 

「役に立つんですか?」

 

「両名の腕前は確認済みだ、先日の模擬戦で司波は服部に勝っている」

 

先輩方にどよめきが広がる、対面に立つ達也君の表情が一瞬だけ歪んだ、目立ちたくないのはわかるよ、うん。

 

ってかあの副会長ってそんな驚かれるほど強かったんだ、驚きだよ。

 

二年有数の実力者でも達也君に手も足も出ない……………達也君強すぎじゃないの?

 

「それでも心配なら、お前が司波につくか?」

 

「い、いえ、遠慮しておきます」

 

生徒会室で見た渡辺先輩と今の風紀委員の渡辺先輩はちょっと違うんだ、こっちの方が、なんていうか、『姐御!』とか『姐さん!』って感じがする。

 

そんな押しの強い渡辺先輩に先輩方はタジタジ、うーん、やっぱりイケメンだね。

 

「質問がないなら出動!司波と姫城は残れ、では解散!」

 

「「「「オスッ!!!」」」」

 

先輩方がゾロゾロと出て行く、その途中で2人ほどから声をかけられる達也君、内容を聞くに、二科生だからうんぬんじゃなくて、挨拶とか激励みたいなものだった。

 

「あの先輩と知り合いになってたんだ」

 

「あぁ、とても『常識的』な良い人たちだよ」

 

「へえ、達也君がそう言うなら、私も仲良くできそうだね」

 

二年三年ともなると、副会長みたいな露骨なタイプは珍しいのかな?一科と二科で分けないで考えることのできる常識的な人も決して少なくはないんだろうね。

 

時間さえかければ、居心地も良くなる、といいんだけど。

 

「さて、司波と姫城には、このレコーダーと腕章をつけるようにしてくれ」

 

「レコーダー、ですか?」

 

「迷惑行為や魔法の不正使用があった時に、レコーダーで録画しておくんだ」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

「それで、こっちの腕章は見ての通りだが、風紀委員としての身分を示すものだ、これをつけているうちは、我が校の風紀委員としての自覚を持って行動するように」

 

「「はい」」

 

「よろしい、それから、風紀委員はCADの携行を許可されている、魔法の使用に許可を取る必要はないが、不正使用は厳罰だということを頭に入れておくように」

 

「CADは、あちらのものを使っても?」

 

達也君には自前のいいものがあるでしょうが!

 

「あれは旧式だぞ?」

 

とここで渡辺先輩が指差したのは腕につけるタイプのCAD、え?あー、たしかにあれは達也君も使いたそうな感じがする。

 

「あれは………」

 

「エキスパート仕様の最高級品、でしょ?達也君」

 

「そうだ、卿、よくわかったな」

 

「私もそれなりに知識は鍛えられてるんだよ、達也君のおかげだけど」

 

達也君の教えてくれた範囲は小テストにドンピシャだから、あとは復讐を重ねれば高得点はお手の物。

 

今回もあのCADが高級なものだって気づけたのはその副産物、つまるところ、さすおに、ってこと。

 

「そんなものだったのか………だから掃除をやると言ったんだな」

 

「CADについては、中条先輩ならお分かりかと思いますが」

 

「中条は本部に来ないんだ」

 

あーちゃん先輩、きっと風紀委員のいかつい人たちが怖いんだろうなー。

 

でも達也君には普通に接したし…………達也君!あーちゃん先輩ともフラグ立ってるよ!おめでとう!そして御愁傷様!深雪さんが待ってるよ!(^^)b

 

「卿、何か不吉なことを考えたりしてないか?」

 

「いんやぁ?そんなことないけどなあ?」

 

「……………」

 

「ごめんなさい睨まないでくださいマジ怖いんで」

 

「お前たちなかなかに愉快だな………」

 

おっと、渡辺先輩が置いてけぼり食らってるからそろそろ終わりにしよう。

 

「それで司波、そこのCADは好きに使っていい」

 

「ありがとうございます、それでは…………この2基を」

 

「2基?」

 

「達也君、手品でもするつもりなの?」

 

CADを2基、同時に使う気満々だろうけど、それだと互いの起動式が干渉しあってマトモに発動もできやしない。

 

それをわかっててやるってことは………十中八九、なーにか企んでるんだろうね。

 

「おおよそ、卿の言う通りだよ」

 

「くぅーっ!面白そうだからあとで教えてね!」

 

「機会があればな」

 

「私も少し気になるが…………すでに下校中の生徒が勧誘に飲み込まれつつある、出動してくれ」

 

「「はい!」」

 

渡辺先輩の指示にしっかりと返事をして本部から出る。

 

「それじゃあ、私は闘技場から外に向けて行くよ、達也君は?」

 

「俺はエリカと待ち合わせてるんだ、クラブを見学しつつ外から闘技場に向かう」

 

「わかった、気をつけてね」

 

「卿もな」

 

軽い打ち合わせをして分かれる、ここからは別行動、目的地の闘技場、第2体育館に向かった。

 

『闘技場』、って言うくらいだし、何かしら乱闘騒ぎがあってもおかしくない、何事も起きないでくれないかなー。

 


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