ナザリックの喫茶店   作:アテュ

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ご無沙汰しております。大変に遅れました

色々と悩む回でちょっと短いです

少し雰囲気が変わります


5th Cup 「Royal milk tea」

ロイヤルミルクティー

 

その名称はほとんどの人が聞いた事があるのではないだろうか。喫茶店でそういった紅茶を飲まれた方、そういった清涼飲料水を飲んだ人も多いだろう。しかしながら自分で淹れなければ分からない点が1つある、それは甘みだ。清涼飲料水ではほぼ全てに甘みがついて販売されている、喫茶店等でも出された状態で砂糖が過分に含まれているものが多い。しかし本来砂糖とは最後の味の調整に使われるものであるそれが最初から入っているというのは少々自由度が損なわれているようにも感じる。何が言いたいかというと自分好みの味に調整するというのは、自宅だからこそ淹れることが出来る贅沢なのだ。

 

世界の美食を探し出す食通(グルメ)が各地の珍味を堪能しつくした結果、自ら包丁を握るように……最終的には大衆的に用意されたものは一個人がぴったりと嗜好に当てはめる事は難しい。しかしそれを参考にすることは大いに意義がある、あてずっぽうに行動しても効果が薄いが自分が好みと思ったものを軸に行動する事は非常に効率的だ。

 

 

閑話(飛ばしても構いません)

 

これは筆者の実体験だが、紅茶にはまった頃どうにも喫茶店の紅茶が美味しく感じなかった時がある、いや美味しくなかったとは言いすぎだが評判どおりとはとても思えなかった。スリランカの茶葉……キャンディ(以前紹介したディンブラとルフナの中間の標高で採れる紅茶)で非常に万人に好まれる紅茶だった、どうにも納得できず販売もされていたため少量を購入し自宅でも淹れてみた。

 

結果としてそれは正解だった。自分はキャンディも嫌いではないがもっとパンチのある風味、スリランカで言えばルフナの方が好みに合っていると分かった。一般的にキャンディはミドルグロウィン……中程度の標高と言われる(標高600m程度)そしてその特徴は万能さである、ホットはもちろん、ストレート、ミルク、アイスティーにも勧められる事が多い茶葉はそう無い。余談になるがスリランカは他国の紅茶と大きく違う点がある。それは標高別に分けられた紅茶を生産している事だ。一般的に紅茶の産地は特定のエリアで分けられている事が多い、インドのダージリン、アッサムなどインドの特定の地方しかしながらスリランカは世界をその1国に詰め込んだように所狭しと紅茶の生産地で埋め尽くされている。これは紅茶生産大国で無ければありえない現象だ。スリランカの紅茶がたびたびとり上げられるのは紅茶の輸出量が世界一(2017年時)というだけでなく、1国の中でありえないほどのバリエーションを持っているからに他ならない。

 

長々と書いたが要はストレートで不味かった、ミルクで不味かったという事を避けるにはまず一口目でストレート、その後にミルクを入れて色んな味わい方を試して欲しいという事だ。上記も筆者がまだ紅茶を飲みたての頃でミルクティーで試してみればいいところ何も考えずに通はストレートで!のような考えで飲んだのが原因だった。現在日本では嗜好品に何も入れない、加えない事が美徳として捉えられる事が多すぎる。コーヒーはブラック、紅茶にミルクを加えるなどありえないといった考えだ。もちろん個人の嗜好として選ぶ事は自由だがそれが他人の嗜好にまで及んでくると非常によろしくない風潮に思う。カフェオレで飲むこと、ミルクティーで飲むことが「こいつ分かってない」などと思われるのであっては嗜好品としてあるまじき姿だろう。とはいえコーヒーのサードウェーブのように産地、飲み方といった事から多種多様のあり方が認められ始めている。他人の飲み方にケチをつけるような人はそう多くは無いが是非色々な飲み方を試してみて欲しい(ストレート、ミルクティー(ティーウィズミルク)、レモンティー、アイスティー、ロイヤルミルクティー等々)、キリティー(ミルクの代わりにコンデンスミルクを使用)

 

閑話 終

 

 

「これが噂に聞くロイヤルミルクティーか。聞いた事はあるが飲んだ覚えはあまり無いな」

 

「はい、アインズ様。先日アストリアに飲ませていただいた私のお気に入りの一品でありんす」

 

「ほほう?シャルティアもアストリアの喫茶店に行っていたか、休日を謳歌しているようで何よりだ」

 

主が自分の行動を褒めてくださる。もはやそれだけで絶頂に達しようとしているシャルティアだったがさすがに目の前でそんな粗相は犯せないと踏み止まる。

 

「ありがとうございます、私もペロロンチーノ様より賜った知識……紅茶については少々拘りが……どうしても気になりまして」

 

「では頂こう。ふむ……口当たりの柔らかさが違うな。普通のミルクティーよりも……コクといえば簡単だが、奥深さ?複雑さの調和が上手くいっているようにも感じる。ミルクをたっぷりと使っている事は分かるがなおかつ紅茶の味はしっかりと軸に残っている……すばらしい風味だ」

 

「恐れ入ります。流石はアインズ様、正に仰られるとおりかと……ロイヤルミルクティーは多量にミルクを使う分、しっかりとした味わいの茶葉を使わなければミルクに紅茶の風味が負けてしまいます。あくまでミルク風味の紅茶という形にならなければそれはもうミルクティーとは別物……紅茶風味の牛乳になってしまいます。それは大いに違ってしまうと思いますえ」

 

「ふふ、シャルティア饒舌だな?」

 

「し、失礼致しました。少々はしたなく……」

 

「いやいや、構わない。その知識はペロロンチーノさんからもらったものだろう?であればその知識を披露したい気持ちは十分に分かる、さぁ私にも教えてくれないかな?」

 

アインズがにやりとシャルティアをからかうように話す。周りのナーベラル、アストリアもとても興味深そうに聞きながら羨ましそうな顔でシャルティアを見ている。

 

至高の御方に頂いたものはこれ以上無い尊いもの、そんな尊きもの……知識を仲間に披露できるとならば思わず口元が緩むシャルティアはこらえきれない笑みを浮かべながら話し始める。

 

「では……恐れながらご説明をさせて頂きます。こちらの紅茶……茶葉はルフナを使用しております、特徴としてはコク深い、奥深さミルクとの相性が抜群な紅茶でございます」

 

「ルフナか、以前アストリアに淹れてもらったことがあったがそれとはまた違った趣だな」

 

「はい、実は少々こちらにはアレンジを加えております」

 

「ほう?実に気になるな教えてもらえないかな、シャルティア」

 

至高の御方、自分を唯一自由に出来る尊い方に求められるのはたまらない。下から出る忠誠心を抑えようと奮起しつつシャルティアは徐々に濡れていく下着の感触に溺れる。

 

「は、はい。実はヌワラエリヤ・・・・・・そちらをすこぉし加えさせて頂いていんす」

 

「ほう?確かヌワラエリヤはストレート向きと聞いていただが面白い試みだ」

 

アインズは内心非常に驚いた、こういってはなんだがシャルティアはスキル「血の狂乱」だけでなく設定そのものが直情的な性格をしている。そういった特徴からいささか短絡的な行動が目立っていた、しかし考えさせる行動を指示すればきちんとそれに基づいて行動をする。思えば製作者のペロロンチーノもそういった節が思い当たる、エロゲー等拘りあるところに関しては非常に暴走しがちだがいざレイドボスやPVPともなれば驚く程変わった空気を出していた事もあった。

 

今までにもセバスの良心やデミウルゴスの悪への拘り、コキュートスの武人としての心構えといったように制作者の思いを感じ取れる部分をいくつも感じてきた。ただかつての仲間達の中でもペロロンチーノはかなり仲が良かったほうだ、だからこそ自分が気づけた部分があると思うと自然と嬉しく思えてきた。

 

「アインズ様、その・・・・・・とても楽しそうに見えますが、何かございましたでしょうか?」

 

少し照れたような雰囲気でシャルティアが問いかける。

 

「いやすまない、気にしないでくれ。シャルティアのもてなしが嬉しかっただけだ」

 

「それは何よりで!私も嬉しくありんす・・・・・・ただこちらの試みは私だけではございんせん。アストリアや他の者にも相談した上でのもので・・・・・・私1人では何もできないんした・・・・・・」

 

そういいながら落ち込んだ様子でこちらを見るシャルティア、まだまだ傷は根深い。

 

「そうでもないぞ?シャルティア、最も愚かな者とはどういったものだと思う?」

 

「わ、私めの事を仰っているのでしょうか・・・・・・」

 

「違う、悪いように考えすぎだぞ。・・・・・・ふむ、ナーベラルはどう思う?」

 

「はっ!やはり人間の事かと!」

 

「・・・・・・そうか、アストリアはどう思う?」

 

少し期待を込めてアストリアへ問いかける。アストリアはカルマ値+50に設定されている、シャルティアの-450(邪悪~極悪)、ナーベラルの-400(邪悪)に比べればかなりの高さであり理性的な判断が出来るといえる。

 

「はい、・・・・・・アインズ様に従わない者かと」

 

 

駄目だった。

 

 

「・・・・・・そうか、そうだな私が思う最も愚かな者とは学ばない者だ。誰にでもミスはある、だがそれを小さなミスとして見逃すかどうかだ」

 

「シャルティア、お前には罰を与えた。それで全ては精算されたはずだろう?それをぐちぐちと今更気にするのは私に対しての侮辱と思え」

 

「・・・は!申し訳ございません!」

 

威圧的な言い方になってしまい罪悪感が沸く、とはいえシャルティアへどのような形であれ罰は与えたのだ。アルベドに進言された信賞必罰とは世の常とは非常にもっともな話、身内への甘さが抜けていないのは自分・・・・・・アインズのみだけやもしれない。

 

 

ふと疑問が沸く。こうして国を築き残されたNPC達と日常を過ごす、なるほど大変に充実した生活だ。かつての仲間達が見たら羨むこと間違いないだろう。しかしながら自分自身で得たものは何かあるのだろうか、コキュートスがリザードマンの案件の際に学んだように自分も新たな一歩を進めているのだろうか。

 

じくじくとした嫌な気持ちが抜けない、大きな感情の起伏ではないため精神の安定化も作用されない。必要な時になかなか起きないなと思わずため息をつきそうになる。慌ててこの場がどのような場かを再認識する、幸いシャルティアもナーベラルも顔を伏せていたため気づいてはいない。ただ・・・・・・たまたま給仕の手伝いをしていたアストリアには見られてしまった。

 

主の不機嫌そうな顔に愕然とする様子のアストリア、ただそっとアインズが落ち着けというジェスチャーを行い落ち着かせる。伝わるかどうかは分からないが「忘れろ」と小声でつぶやく、アストリアがそっと頭を下げ給仕に戻る。思わず自己嫌悪するがそれでは無意味なループだ、今すべきことは違うだろうと思いなおす。

 

 

少し空気を換えようとシャルティアに話を振ろうとシャルティアのほうへ見た。

 

「さて、シャルティア・・・まだまだ紅茶については知っている事があるのだろう?ペロロンチーノさんから教えてもらった事、是非聞かせて欲しい」

 

「はい、喜んでご説明させていただきます!」

 

シャルティアの喜んだ顔を見ながらアインズはこの悩みを誰ならば相談出来るだろうかと考える、ナザリックのNPC?だめだ、とても出来ない。しかしどうだろう、ヤツならば自分の疑問に答えられるかもしれない。

 

そっとアインズは宝物殿にいる自分が作ったNPCの事を考えながらロイヤルミルクティーを飲む、心なしか落ち着いた気がした。

 

 

 




読み直すたびに悩む回でした

最後の思いつきは少し突発的かもしれません、ただ自分にもありますが余裕が出来た時ほど悩む事は多くなるなぁと。仕事とか忙しいときは目の前のことで手一杯ですが落ち着いた時期になるとふと悩むものです。


オーバーロード2期が始まりましたね。調べてみたらEDのボーカルの方が変わっているようですが僕はこれはこれで大好きです

ここで書くのもなんですがEDの曲「HYDRA」ですが意味は有名なヒュドラのほかに「根絶しにくい害悪」「ひとすじなわではいかない難問」といった意味合いもあるようです

……含みがありますね、紅茶でHYDRAとかそんなブレンド名があったらどんな味になるんでしょうねぇ。一度は飲んでみたい。


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