のび太をGGOにぶち込んでみた(作者の活動報告見てね★) 作:暇なのだー!!
「へぇー、ノビもALOやってたんだ」
「うん、まあちょっとぐらいしか出来なかったけどね」
とある広大な草原。
その中を、ぽつんと歩く人影は二つ。
一つは一見美少女かと思うほどら華奢な体付きをした美少年─キリト。もう一人は並んで歩いている美少年とは正反対のように、整った顔立ちをした美青年。二人が並んで歩いていると、息を呑むほど絵になっていた。
話している内容は自分達の昔の出来事。どうやら同じゲームをプレイ彼らの話は更に熱を持っていった。一見、長い時を共に過ごした親友のように見えるが、この二人は今日邂逅したばかりであり、会話も先程までは一言二言しか交わしていなかった。つまり、今日まではタダの赤の他人である。
しかし、共通点が一つある。どちらもただならぬプレイヤーでは無く、目的を持ってこのVRMMORPGに参加している事。その共通点が妙な引き合わせとなったのか、この二人は出会った。
─それぞれの思惑とは裏腹にその足は《バレット・オブバレッツ》、通称BoBの開催地、総督府へと進んでいた。
「─そういえば、どうしてその銃にしたんだ?」
そう、俺─キリトは何気無く、殴りたくなる程顔立ちが整っている美青年にと疑問を口にする。
彼が先程とあるガンショップで勝ったのは、一丁の拳銃。バレルは純白のような銀色、およそ20cmほどあるだろうか。そして、銀色の鉄の根元から伸びるグリップは、バレルとは正反対の漆黒の黒。そして、シリンダーに入れられる弾丸は全てで六発。よく見ると、西部劇に良く出てくる銃に酷似していた。─即ち、一般的に言われる
問いかけられた彼─ノビはああ、と腰に掛けてある
「コルトS.A.A…シングルアクションアーミーって言うんだよ。結構西部時代ぐらいのだし、現実世界でも有名だから、対策も考えられやすいけど、僕はコレが一番扱いやすくて」
ホルスターからスルリとノビは拳銃を抜いた。懐かしむような目付きと共に銃を握った姿は、何処か様になっていた。
「…その銃になにか思い出があるのか?」
「うーん…どちらかと言うと嫌な思い出ばかりだけど、まあ、それでも一緒に戦ってきた
あはは、と笑うノビ。
もはや銃を友と呼ぶ人物など現実では危ない人だが、生憎ここは仮想世界。思いやりの武器が一つ二つあったって、違和感は無い。故に、俺はとあるデスゲームの中で使用していた愛剣を思い出すと、愛しく感じてしまう。
ホルスターにリボルバーをしまうノビ。しまいながら見るのは俺の腰。こいつ、まさかソッチの人か…?と誤解しそうになったが違うらしい。
ふふ、と微笑むノビ。笑と共に言葉を口に出した。
「まあ、この銃の世界で剣を買っちゃうキリトもすごいと思うけどね」
「うっ、それは仕方ないじゃないか。なんか、剣士の血が騒いじゃって…」
「なんだそれ」
ノビから言われた言葉に声が詰まる。
ふと、腰を見た。そこには金属の筒のようなモノが一つぶら下がっている。太さ2、3cmほどであるそれは何処か星が戦争しているような映画で出てきている、誰もが一度は見たモノに似ていた。つうかまんまそれだった。筒に付けられている円形のボタンを押すと、ブゥンというサウンドエフェクトと共に現れる光の棒。
まぁ、俗に言う剣である。
「まぁ、キリトの反射神経なら銃弾ぐらい切れるんじゃない?」
「…楽に言ってくれるな。期待しますよ?」
「うん、僕が期待してるね」
飛び交う笑い声。
俺は思う。初めてだ、と。同年齢の男と会話をして楽しくおもったのは。
確かにクラインとエギル達のような、ナイスガイな男達でも会話は盛り上がる。しかし、半引きこもりのような生活をしていた俺は、同年齢の友達など居なかった。故に、ノビと会話をするのは楽しかった。俺は今、どこかでノビに対して安心感と充実感を覚えているのかもしれない。
─しかし、彼が
俺の本来の目的、それは死銃と呼ばれると名の邂逅。GGOでは半分都市伝説となっているプレイヤーである。
その死銃なる者との邂逅は、本来二人組でタッグを組み行うものだったが、生憎とはぐれてしまった。
恐らく彼はBoBに出場するだろう、と菊岡誠二郎は言った。なら、ノビも必ずとも死銃ではないとは言えなくなっている。
(…だけど)
目の前に俺達の目的、BoBが開かれる開催地、総督府が見える中、俺は悩む。
(もし、ノビが死銃だったなら、倒せるだろうか)
脳裏に焼き付いているのは先程のギャンブルゲーム。路頭に迷っている中、賑わいの声が大きかった方向に向かっていると偶然、十数秒という短い間の中で捉えたモノ。僅かばかりだが、俺の頭を悩ませるには充分だった。
─体に迫り来る弾丸。それ無機質な機械のような瞳で避け続ける
あの、冷たい氷のような瞳。何処か俺がSAOの中で荒れていた時の目を思い出したが、アレとは違う。アレはもっと深い、深い、真っ黒な深層意識の中で眠っているモノを必死で押さえつけているような、そんな感情。アレに、俺は勝てるだろうか。
「急ごう!キリト!」
ふと、投げ掛けられる声。え?と返事をしたのも束の間、手をグイッと引っ張られる。それによって先程までの思考は急停止させられる。
「どっ、どうしたんだよ!?」
「多分、登録に五分ぐらいかかる!今は八分前。あと三分でつかせるよ!」
俺の言葉を待たないまま、手を引っ張りながら走るノビ。ノビの瞳には確かに光が写っていて、あの時の機械のような目とは予想も出来ないほど童のような輝かしい光を放っていた。その瞳に何処か安堵を覚える。
そうだ、こんな目をする奴が人を殺せる訳がない。
そう、何処か安堵と共に否定も混ざった、根拠にもならない根拠をどうにか結論として押し込み、前を向く。眼前にはノビの後ろ姿。その背中に向かって言葉を発する。
「ノビはどうしてBoBに出るんだ!?」
走りながら口から出た言葉は、聞き取りずらくもノビの耳に届いたらしい。ノビは後ろを見ずに言った。
「…とある人からの頼み事だよ。あと…」
「ん?」
「何でもない!行くよ!」
グイッと、再び加速する速度。どうやら、俺よりもAGIを高くしているのだろう、ぐんぐんと総督府が近付いてくる。
もう一つの理由は何だったのだろう、とノビが口に出さなかった理由について考えてみるが何も出てこない。まぁいいか、と俺もノビに置いてかれないように必死に足を回す事にした。
「ふーっ…危なかったー。」
「そうだね、ほんとギリギリ」
さて、エントリーを完了させた俺らはやっと安堵の息を吐いた。
「しかし、僕達同じ所に入っちゃったね」
先程、振分されたトーナメント番号を見る。
「Fの37か」
「僕はFの1番…良かった、戦うなら決勝戦だね」
ほっとした素振りを見せるノビ。俺だってアンタとはやりたくねえよ!と言いそうになったが、いかんせん元気が無い。先程のダッシュで疲れてしまったようだ。
ノビから聞いた話によると、決勝戦へ行けるのはブロック上位者二名までらしい。運良く、俺とノビは分かれたようだ。
─だからだろうか、ほっとした間の一息の間に起こった事に驚愕したのは。
「よし、後三十分もあr」
「…え?」
─目の前でノビの姿が─消えてしまったのだった。
さて、のび太が選んだコルトS.A.A.
わざわざシングルアクションのリボルバーというマゾ系武器を買ってしまいましたが、ハンデには充分だろ(白目)…あっ、キリトとのび太さんのお金の面はどうかご慈悲をば…