建造が終わった。
しかし、建造装置から出て来たのは艦娘では無かった。
「幅1,300mmの両開き扉を片側3箇所に設置した、完全(?)バリアフリーの20m級ステンレス製気動車、キハE130-1です!」
ショートカットで髪の毛が朱色の女性は言った。
「「「「はい?」」」」
戦車や輸送艇ならともかく、列車が出て来た。
「どうする?これ。」
六田は言った。
「工廠で働くのは?」
明石が六田に問いかけた
「そうだな・・・。君、機械類をいじれるか?」
「私ですか?エンジン、ボイラー、電子機器なら出来ます。」
「じゃあ、工廠に編入しよう。君は大丈夫か?」
「君じゃややこしいので、『郡水(こすい)』で呼んで貰ってもいいですか?」
「分かった。郡水、宜しくな。」
「宜しくお願いします!」
その光景を夕張が見ていた。夕張は郡水が背負っている艤装が普通の艦娘と違う(そもそも艦娘ではない)ので、直ぐに駆け寄った。
「初めまして!私は夕張です!」
「は、初めまして。郡水です。」
「郡水ねぇ・・・。聞いたことない艦名だね。貴女の艦種は何?駆逐?軽巡?重巡?」
「私は、艦じゃなくて、列車なんです。」
「え?」
「貴女の形式は?」
夕張が恐る恐る聞いた。
「キハE130系です!」
「・・・・・・
え?キハE130?久留里線に導入されたのは?」
「私の妹です!」
「ヤタ───ヽ(〃∀〃)ノ───♪え?鉄娘だよこれ!それに、運転したかった車両で良かったぁ!」
「え?貴女って運転士だったんですか?」
「数年前までね!」
郡水と夕張は色々な事を話していた。
「あいつら何言ってるんだ?」
「「さあ・・・」」
六田は思い出したように言った。
「そうだ、明人、まだお前の所属を教えてなかったな。」
「はい。」
「お前は第7艦隊所属だ。」
「分かりました。第7艦隊ですね。」
「んで、急で悪いんだけど、明日、演習をする事になったんだが、大丈夫か?」
「大丈夫ですけど・・・。相手は?」
「横須賀鎮守府の第6艦隊だ。」
「相手の編成は?」
「旗艦が那智、それ以外が瑞鶴、摩耶、響、伊168、陽炎だ。」
「うちの編成は?」
「明人、青葉、秋月、曙、衣笠、日向だ。旗艦はお前だ。明人。」
「分かりました。場所と移動手段は?」
「演習は銚子近海で行う。移動手段は鉄道だ。あすの始発で行ってもらう。」
「分かりました。」
今日の夜、郡水の歓迎会があった。いつも通り救急車で何人か運ばれていった。
次の日、第7艦隊のメンバーは演習海域まで列車に揺られていた。
これ、分かる人が限られてくる様な気がする。