俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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9話 ボス戦開始です

 

夜が明けた。昨日、男だとバレたら間違いなく抹殺されそうな経験をしたわけだが、そんなことをアスナに悟られるわけにもいかず、今日はなんとか真顔で過ごさなきゃいけないわけだ。まぁ、パーティも違うし、あまり顔を合わせる機会はないと思うが。

にしても、アスナ結構大きかったな。悪ふざけのノリで揉んでも良かったかもしれない。いや、俺にとってのベストサイズは今の自分の体にぶら下がってるだろ。自重しろ、俺。

まぁ今日はボス戦当日だし、景気付けに一揉みして行くか!

 

「むっ、こ、これは……⁉︎」

 

 

「先生!また多量出血……(以下略)」

 

 

ふう、堪能した。俺はヤケにスッキリした表情で家を出た。集合場所には既にメンバーがほとんど揃っている。B隊も全員、揃っていた。

 

「す、すみませーん。遅れちゃいました?」

 

パタパタとエギルさんの元へ走った。

 

「いや、そんなことない。俺たちも今来たところだ」

 

流石、俺の作ったアバターだ。エギル含めて男達の顔がにやけてやがる。ははは、もしかしたら俺、この世界では神にでもなれるんじゃないか?キャピッ☆とかやってみようかな。

 

「キャピッ☆」

 

『ウオオオオオオオオオオオッッ‼︎‼︎』

 

B隊どころか、全隊の士気が上がった。スゲェ、本格的にアイドルでもやってみようか。攻略組のメンバーも増えるんじゃないか?

 

 

そんなこんなで、全員で出発。ボス部屋を目指して、みんなで遠足みたいな感じでぞろぞろと歩く。モンスターが出てきても、さすがは最初のボス攻略に参加してる事だけはあるというか、出てくるモンスターはほとんど瞬殺している。俺の出る幕などまるでなかった。

あっという間にボス部屋の前に到着してしまった。

 

「………行くぞ!」

 

ディアベルの台詞で、全員がボス部屋になだれ込んだ。中はかなり広く、ナイトメア同士のタイマンで使えそうなほどの広さだ。

最前列は鉄板じみたヒーターシールドを掲げたハンマー使いと、そいつが率いるA隊だ。その左斜め後方をエギル率いていて、俺のいるB隊。反対側の右側にはディアベルのC隊と両手剣使いのD隊。さらにこの後ろをキバオウ率いる遊撃用E隊と、F、G隊、さらにそのうしろにキリトとアスナの二人部隊。ザマァーwww

そして、部屋の中央に巨大なシルエットが見えた。そいつが大きく口を開き、

 

「グルルラアアアアッッ‼︎」

 

と、吠えた。獣人の王《イルファング・ザ・コボルドロード》。さぁ、始まった。このデスゲームを終わらせる第一歩が。

 

 

「やぁッ‼︎」

 

『オラァッ‼︎』

 

野太い男の声と、可愛らしい俺の声が響き、敵の攻撃を弾いた。

 

「やるな、カンザキ!」

 

パーティメンバーの一人に褒められる。まぁ、そりゃ片手盾で他の面子に負けないレベルで敵の攻撃を弾いてるからな。

 

「はぁ!」

 

その隙にA隊が攻撃する。ボスの攻撃パターンもちゃんと見切ってるし、このままいけば本当に死者なしで突破できるかもしれない。

攻略は順調に進み、一気にボスのHPを減らしていく。そして、ディアベルが落ち着いた動作でボスの攻撃を捌こうとした。フゥ……もう終わりそうだな。俺がそう思った時だ。

 

「だ、だめだ、下がれ‼︎全力で後ろに跳べーーーッ‼︎」

 

キリトの声が響いた。えっ、何?何事?前を見ると、ボスは大きく垂直に跳んだ。空中であり得ない角度まで身体をぎりりと捻り、落下しながら、それを竜巻のごとく解放した。それが水平に放たれる。

 

「ッ!」

 

ディアベル率いるC隊全員に直撃し、床に倒れこんだ六人の頭上に黄色い光が取り巻いている。スタン状態してるようだ。

 

「危ねェッ‼︎」

 

思わずキャラを忘れて俺は一番近くのC隊の一人の前に立った。追撃が来るかもしれないからだ。それに気付いて、他のB隊のメンバーが、C隊のそれぞれのメンバーの前に立ち塞がろうとした。だが、間に合わなかった。しかも、ボスが狙ったのは俺が庇った奴じゃなく、ディアベルだった。

 

「ッの野郎ッ……‼︎」

 

またまたキャラを忘れて、俺は走っては間に合わないと踏み、ディアベルの方に盾を投げ付けた。だが、意味がなかった。ボスは盾もろともディアベルを叩き斬り、思いっきりぶっ飛ばした。

キリトがポーションを手にとって、慌ててディアベルの方へ駆け寄った。だが、間に合わず、ディアベルは四散した。

 

 


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