俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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6話 壁役がわからない

 

「ふぃー……」

 

俺は息を吐きながら椅子に座った。

 

「あなた……すごいわね。この人数の中を女の子1人で言いたいこと言うなんて……」

 

アスナにエギルとまったく同じことを言われた。

 

「あたし、そこのキリトさんに助けられた身ですから。ここは言っとかないとダメかなって思ったんです」

 

「へぇ……そうなの」

 

でも、確かに今のは普通男じゃないと出来ない行動だったかもしれないな。次からはもう少し行動に気をつけるべきか。しかし、こういう時だからこそ男女差別は良くないと実感できる。これからは妹に優しくしよう。会うのいつになるかわからんけど。

 

 

数日後。再びボス攻略会議。第一層攻略メンバー全員の手元には鼠の攻略本があった。が、いつもと違う注意書きが裏に書かれていた。

 

【情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります】

 

……これはつまり、この本を作った奴が元ベータテスターだということを表していた。一瞬、キバオウがどんな顔をするのかと思って見ようと思ったが、ディアベルの声に遮られた。

 

「みんな、今は、この情報に感謝しよう!出処はともかく、このガイドのお陰で、二、三日はかかるはずだった偵察戦を省略できるんだ。正直、すっげー有難いって俺は思ってる。だって、一番死人が出る可能性があるのが偵察戦だったからさ」

 

その台詞に、ウンウンと頷くトッププレイヤー達。

 

「こいつが正しければ、ボスの数値的なステータスは、そこまでヤバい感じじゃない。もしSAOが普通のMMOなら、みんなの平均レベルが三……いや五低くても充分倒せたと思う。だから、きっちり戦術を練って、回復薬いっぱい持って挑めば、死人なしで倒すのも不可能じゃない。や、悪い、違うな。絶対に死人ゼロにする。それは、俺が騎士の誇りに賭けて約束する!」

 

その台詞に、よっ、ナイト様!と声が聞こえ、拍手も続いた。スゲェな相変わらずあのナイト様は。カリスマ性ならシャア以上なんじゃないか?

 

「それじゃ、早速だけど、これから実際の攻略作戦会議を始めたいと思う!何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担もできないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティを組んでみてくれ!」

 

体育かよ。マズイな、俺の知り合いはキリトやアスナしかいない。このままじゃアブれる……!そう思った時だ。

 

「おい、カンザキ、だったか?」

 

後ろから声をかけられた。エギルが立っていた。

 

「あんた、俺と組まないか?」

 

「え?いいんですかぁ?」

 

「ああ、俺たちもちょうど1人足りなかったんだ」

 

それはありがたい。やったー助かったー。エギルの仲間の群れに入りながらふと後ろを見ると、キリトとアスナが一番後ろの方でアブれてるのが見えた。

俺は心の中で全力で「ザマァーwww」と、言ってやった。

 

 

ボス攻略会議が終わった。俺が入れてもらえた、エギル率いるB隊の役割は壁役だそうだ。で、壁役って何するの?だが、役割が決まってしまってから今更、「で、壁役って何?」なんて聞けない。

まぁ、こういう時に役に立つのがキリトくんだろうな。

 

「おーい、キリトさーん」

 

俺は俺のできる限りの可愛さを振りまいてキリトのところに向かった。

 

「カンザキ。君はどこかの隊に入れたのか?」

 

「うん。エギルさんのB隊です」

 

「………B隊っていうと、壁役だよね?出来るの?その装備で」

 

「えっ、できないの?」

 

やべっ、今の素だ。

 

「………今からアスナにポッドやらスイッチやらの説明するんだ。ついでに壁役の働きも教えてあげるけど、一緒に来るか?」

 

「……いきます」

 

え、なんだろ。壁役って何?なんか怖いんだけど。

 

 


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