俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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4話 攻略会議があるそうです

どうやらアスナは俺が消えた後も1人で狩りを続けていたようだ。

 

「今のは、オーバーキル過ぎるよ」

 

「オーバーで、何か問題あるの?」

 

「システム的なデメリットはないけど、効率が悪いよ。ソードスキルは集中力を要求されるから、連発し過ぎると精神的な消耗が速くなる。帰り道だってあるんだし、なるべく疲れない戦い方をした方がいい」

 

………なんでちょっと仲悪そうなんだよこいつら。うーわ、出て行きたくねぇー……。でも、パンのパシリどうしよう。あの後、「うるさいわね、関係ないでしょ」みたいなこと言いそうだなぁ、アスナ。

と、思ったら意外にも別の言葉が飛んで来た。

 

「……そう。ありがと」

 

そう短くお礼を言うと、アスナは再び剣を握り直して、狩りを続けた。その様子をジーッと見るキリト。何してんだよあいつ。さっさと帰れよ。

 

「………まだ何か?」

 

その視線に気付いてか、アスナはさらに質問した。

 

「いや、意外と素直なんだなと思って」

 

「素直だと、いけないの?」

 

「いや、そういうわけでは……」

 

口籠るキリト。何なんだよあいつ。何が言いてぇんだよ。いいからさっさと帰れよ。もうこのまま俺が帰ってやろうと思ったが、俺の後ろからモンスターが湧いて出たのに気付いた。

 

「……こんなタイミングで」

 

仕方ないので、ナギナタを抜いて斬りかかる。モンハンの操虫棍をイメージして、先端を地面に突き刺して跳んだ。モンスターの真上を取ると、空中からリニアーを放ち、脳天からケツの穴までを貫通させる。

見事に一撃で仕留めてやった。だが、さらに出てくるコボルトの群れ。

 

「あっ、カンザキさん?」

 

キリトにバレたがそれどころではない。一匹のコボルトを目の前にして、ナギナタの刃の付いてない方で顔面とボディに突きを連発する。

その間に別のコボルトから攻撃が来たので、後ろの刃を回してそいつを斬った。後ろに怯んだ殴られたコボルトと斬られたコボルトを二人まとめて薙ぎ払うと、さらに別の所から追撃が来た。

 

「……!」

 

だが、そいつは何もしてないのにパキィンと消滅した。一瞬、俺の超能力だと思ったが違った。後ろからアスナがリニアーを放っていた。

 

「来てたなら言いなさいよ」

 

「え、えへへ……。なにか、言い争いをしていたみたいでしたので……」

 

「お、俺も手伝うよ!」

 

キリトが言うと、横に入ってきてモンスターを斬った。……なんかこいつ急に口調が変わったな……。もしかして俺に惚れたか?やめろよ。俺はホモじゃねぇぞ。

で、三人でコボルトを片付けた。

 

 

数分後、全滅させた。ハァハァと肩で息をする中、俺はアスナに聞いた。

 

「ねぇ、アスナさん。何匹倒した?」

 

「4匹」

 

「勝った〜!あたし6匹、さっきのパンはチャラね」

 

「ち、ちょっと!勝負なんて言ってなかったから無しよ!」

 

「分かってないなぁ。人間、いつでも勝負してる気でいないとダメなんだよ」

 

「どうしてよ!意味わかんないわよ!」

 

なんて話してると、「ち、ちょっと」とキリトが声を掛けた。

 

「俺、7匹倒したんだけど……」

 

「い、今のは勝負してないからダメだよ!」

 

「言ってることメチャクチャだぞ!」

 

 

で、俺たち三人は一度、街に戻った。

 

「そういえば、カンザキ。そこのお節介の人と知り合いなの?」

 

そこの人、というのはキリトのことだろう。お節介だってー、ケラケラケラ。

 

「あ、ええ。そうですよ。キリトくんって言ってあたしのお師匠さんなんです」

 

「し、師匠⁉︎」

 

「お、大げさだな。初日に少し教えてあげただけだよ」

 

苦笑いでキリトが言った。あ、照れてる。

 

「大げさじゃないよ、お師匠さん♪」

 

♪を付けて言うと、照れたように頬をポリポリと掻きながらそっぽを向いた。

 

「あ、照れてるんですかぁ?」

 

「う、うるせっ」

 

ああ、なんか可愛い男の子を虐める女の子の気持ちがスゲェ分かるわ……。

 

「そ、それよりこのフェンサーさんのこと教えてくれよ」

 

「あっ、うん。あたしと一つ前の街で友達になったアスナさんです。クリームのクエストあるじゃないですか?アレのこと教えてあげたら友達になりました」

 

「物で釣られて友達になったような言い方やめてよ」

 

言いながらもキリトに向かってペコリと頭を下げるアスナ。

 

「良かったですねお師匠さん、こんな可愛い子2人と一層から仲良くなれて」

 

「か、からかうなよ。というかお師匠さん言うな」

 

そこを注意して咳払いするキリト。

 

「それより、2人はどうするんだ?」

 

「何が?」

 

「今日、《トールバーナ》の街で一回目の『第一層フロアボス攻略会議』が開かれるらしいんだ」

 

その言葉に俺は少なからず興味を持った。フロアボス、それはつまりここ2ヶ月の間、まったく進めていない現状を打破出来るということだ。

 

「行きます!」

 

キチンとキャラを忘れずに俺は即答した。すると、アスナも少し苦笑すると、「私も」と言った。さて、また楽しくなりそうだ。

 

 


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