俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが 作:杉山杉崎杉田
詳しく調べるために、一度俺と代わった。サイト内に書き込んで、いくつかわかったことがある。
どうやら、これはALOというゲームの中の写真らしい。世界樹、とかいう奴の上を目指すゲームらしいが、そこに行くために肩車して飛ぶ踏み台形式に上を目指し、そこまで行った証拠を残すために写真を撮りまくったやつの一枚だそうだ。
…………つーか、このゲーム飛べるのか。飛べるということはつまり……、
「下からパンツ覗き放題だな……」
直後、また勝手に拳が俺の顔面に減り込んだ。
「何すんだよ⁉︎」
『時と場合を考えて発言しなさいよ』
「………チッ、それでどうする?」
『何が』
「行くか?ここ。これが本当にアスナかなんて知らないけど、なんか見た目アスナっぽいし、見に行っても面白いかもよ」
『でも、SAOのプレイヤーは全員、ログアウトしたんじゃ……』
「意識が戻ってないプレイヤーがいるの知らないのか?」
『………じゃあ、まさか』
「いや断定はできないけど」
『…………』
「で、行く?」
『行く』
「じゃあ、ソフト買いに行くか。俺、金たくさんあるし」
『うん』
*
買い物を済ませ、俺はついでに買ったアミュスフィアを被った。
「じゃ、やるか」
『うん』
「リンクスタ……ふぇっくし!……リンクスタート」
『締まらなっ』
リンクスタートした。
まずは名前は前と同じ『kanzaki』、性別は女性を選んだ。
『女性なの?』
「こっちの体はお前に合わせてやるよ」
『………ありがと』
「お礼はいらん」
続いて種族を選ぶ。サラマンダーだのシルフだの色々あった。
「何がいいと思う?」
「うーん、ケットシーとか売れそうじゃない?」
「あー確かに。あとウンディーネとかも清楚さが出てていいよなぁ」
「シルフみたいなエロさも良いかもね」
俺も妹もアイドル目線だった。
色々考えた挙句、結局サラマンダーにしてゲーム開始、まずは自分の領地の上に落ちるのだ。
なんか全体的に赤くて、日本の城みたいな領地が見えてきた。
「おい、代わるか?」
『いいの?』
「正直、ここからはお前の領分だろ。このゲームは基本的にPK推奨らしいし、偉いハードだ」
『はーい』
たらららーん
「さーて、じゃあまずはどうする?」
『とりあえず、あそこまで行くのに必要なのは情報と数だ。領主の首を取って俺たちが新しい領主になる』
「その後は?」
『無論、領主をやるには本気でやる。サラマンダー全員で世界樹を攻略する』
「分かった」
着地した。あたしは早速、城の中に乗り込んだ。
*
和人はエギルの店にいた。アスナの情報を得たからだ。
「よう」
「おう、キリト」
「あの写真はどういう事だ?」
「どういうことも、そういうことだ。SAO生還者のコミュニティサイトで見つけた情報だ。詳しくはそこを見ろ」
「………ALO、か」
「そういえば、一人サイトに面白い奴がいたぞ」
「面白い奴?」
「熱心にこのアスナについて聞いてたやつだ。……ちょっと待ってろ」
エギルはコミュニティサイトを開くと、それを見せた。和人はそれをカチカチとマウスを使いながら読んだ。
「………へぇ、確かに随分と熱心だな」
「ちなみに、そいつのハンドルネームは『kan』だ。どう思う?」
「カンザキか……」
「あいつは助けに行ってるみたいだ。お前、カンザキに会いたがってなかったか?礼が言いたいとか何とか」
「…………エギル、ALOのソフトどこで買った?」
「どこでも売ってるだろ。行くのか?」
「ああ。カンザキ一人じゃ無理だ。俺も行く」
「分かった」
和人は走って帰った。
*
サラマンダーの城の屋根の上、そこで二つの影が同時に動き出し、屋根の真ん中で鋭い火花を散らし、通り過ぎた。
片方はあたし、そしてもう片方はALO最強の剣士というユージーンだ。が、それも今日までだ。ユージーンのHPゲージは無くなり、炎となった。
「おい、マジかよ……!あのユージーン将軍に勝っちまったぞ!」
「何者だあいつ……!強すぎる」
「マジでどうすんだよ……‼︎」
サラマンダー全員が騒然とする中、カンザキは領主のモーティマーに言った。
「で、あんたもやる?それとも素直に領主の座を明け渡す?」
「………確かに、戦闘中に勘で随意飛行を覚えて、ジンを堕とす奴とやり合うには分が悪いな。良いだろう、負けを認める」
「よし、じゃあ早速だけど働いてもらおうかな。ちょっと待ってね」
ほら、ここから先はあんたの領分よ。
『おk』
たらららーん
っし、やるか。
「まず、現状のサラマンダーの戦力を教えて欲しいんだが……その前に中入ろっか」
「ああ、分かった」
さて、世界樹クリアを目指そうかな。