俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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アルヴヘイムで領主やります
1話 退院後


 

んっ、なんか身体が重い。重力を感じる、ここは宇宙じゃない。なんてことを考えなが。薄眼を開けてみた。見覚えのない天井、ドラマの中でなら見覚えのある天井、病室という奴か。

股間に違和感があるな……なんていうか、こう……ああ、ち○こか。

 

『ふえっ⁉︎ち、ち○こ⁉︎いきなり何言ってんの⁉︎』

 

うお、お前まだいたんか。そういや、お前俺にまだ股間が付いてた時は存在してなかったもんな。

 

『〜〜〜!し、しばらく呼ばないで!心の準備するから!』

 

なんだ、こいつ意外と純情なとこあったんだな。

さて、そろそろ起きますか……。

 

「お兄、ちゃん……?」

 

横から声が聞こえた気がした。なんて言われたから分からないが、声は聞こえた。横を見ると、ベリーベリーキュートなマイシスター、詩乃たんがおるではありませんか。

 

「詩乃たそー!」

 

「お兄ちゃん‼︎」

 

起き上がった直後、ガバッと抱きついてきた。え、何これ?嘘でしょこれ?う、ううううちの妹が俺に抱きついてるの⁉︎

 

「良かった、良かったよぉ……」

 

こんな事、SAO前はしてくれなかった!俺の事なんてナメクジくらいにしか思ってなかったのに!SAO最高!もう一回閉じ込めて!

………まてよ、この場面、俺は抱き返してもいい場面なんじゃないか?

 

「………詩乃」

 

優しく抱き返した。すると、詩乃は目尻に涙を浮かべて、「ばか……」と可愛く呟いた。

ふおおおおお!俺もう死んでもいい!さっきまでよく聞こえてなかった耳も完全に回復してる!

ニヤニヤしてると、いつの間にか病室に看護婦さんが来ていた。

これから、色々と診察の時間である。

 

 

それから数週間が経過した。リハビリによってなんとか歩けるようになり、ようやく家で暮らせるようになった。

 

「いやー、やっぱり我が家が一番だわ」

 

『へぇ、そういえばあたしこの家来るの初めてかも』

 

「だろうな」

 

「? 何か言った?」

 

ついうっかり声に出してしまい、詩乃に聞かれてしまった。

 

「や、なんでもない」

 

「最近、よく一人言話すけどどうかしたの?」

 

「や、マジなんでもないから」

 

SAOで妹の体触りまくってネカマになった挙句、流されて女性人格作ったなんて言えるか。

何より、今の俺は非常に萎えている。何故なら、俺がヒースクリフを倒したことによって、金はそこそこもらえたわけだが、最初は俺が倒したと信じてもらえなかったからだ。

理由は、性別と外見である。なぜそんな事になったのか説明したら、総務省の菊……菊名さん?にドン引きされました。それどころか警察だの病院の先生だのにもドン引きされ、すごく萎えている。

で、それを大々的にニュースで報道することはなおさら無理だ。何故なら、俺はアイドルをしていたからだ。正体は男でした、なんて知られたら俺は外出できなくなる。袋叩きにされるからな。

で、妹の詩乃にもドン引きされました。

 

「はぁ……」

 

『ドンマイ』

 

黙れ。

 

「じゃあ、私は勉強に戻るから」

 

「お、おう」

 

詩乃は今年受験なので、高校受験のために頑張っている。

 

「勝手に部屋に入って来たら殺すから」

 

「お、おう……」

 

よし、自殺しよう!

 

 

確か、一番いい死に方は首を吊ることだったな。亜人で読んだ。

ロープで輪っかを作り、天井からぶら下げて、そこに頭を……、

 

『させるかァッ‼︎』

 

直後、俺の拳が勝手に俺の顔面に減り込んだ。

 

『じ、自殺なんかさせるか!あっぶね!マジであっぶね!』

 

「邪魔すんじゃねぇよ‼︎詩乃たそに嫌われたらもうこの世なんてどうでもいい、首を紐で括って携帯ストラップになるしかねぇだろ‼︎」

 

『あんたのストラップなんて誰もぶら下げないよ‼︎戦隊モノでレッド、ブルー、グリーン、ピンクが人気過ぎて一番出っ張ってぶら下がってる小太りのイエローだよあんたは‼︎』

 

「それはキレンジャーのこと言ってんのか⁉︎つーか俺はピンクだろ、アイドルやってたし!」

 

『ピンクはあたしですー!あんたは……あれよ!茶色!』

 

「ちゃ、ちゃちゃちゃ茶色⁉︎どういう意味それ⁉︎未だかつて聞いたことないよ茶色‼︎」

 

そんな話をしてると、ガチャッと自室の扉が開いた。詩乃が写輪眼並みの眼光でこっちを睨んでいた。

 

「………うるさいんだけど。何一人で騒いでんの?」

 

「はい、すみません」

 

すると、詩乃の視線は俺の頭上に移った。輪っかを作った縄である。

直後、詩乃の表情はマジで鬼のような顔になった。

 

「………何それ」

 

「え?それって、これ?」

 

「そう、それ」

 

「……や、えっと、」

 

「そんな悩むもんじゃないでしょ。あんたが作ったんだから。さっさと答えて」

 

「…………く、空中ブランコ」

 

『こんな物騒なブランコがあるか⁉︎』

 

「るっせーなテメェ黙ってろよ‼︎」

 

「は?」

 

「『いえ、なんでもありません』」

 

なんでお前も謝ってんだ。

すると、詩乃はゴミを見る目になって、「そう」と息をついた。

 

「………なんでもいいけど、やめてよね」

 

「あ、はい。死ぬなら私の関係ないところでって事ですよね」

 

「………もう一人にしないでって意味よ」

 

「……………はっ?」

 

「じゃ、次うるさくしたら蹴るから」

 

俺の返事を待つことなく、詩乃は自室に戻った。

………そうか、次うるさくしたら蹴られるのか……。

 

「Foooooo‼︎ハード芸で……‼︎」

 

蹴られた。

 

 

我が妹ながら見事な蹴りを喰らい、しばらく立ち上がらずにいるも、なんとか復活してとりあえず二年ぶりくらいの自室を見回した。

何一つ変わってないなぁ。ちゃんとパソコンもある。そういや、ちゃんとうちの親とかアプデしといてくれたんかな。正直、しててくれればラッキーくらいにしか思ってないけど。

 

『意外と綺麗な部屋だな』

 

「あーまぁな。俺、こう見えて綺麗好きなんだわ」

 

『ね、パソコン付けてみてよ』

 

「あいよ」

 

電源を入れて、パスワードを打ち込む。アプデは意外にもしてくれていたみたいだ。

 

「何検索する?」

 

『「SAO カンザキ」で』

 

「だよな、やっぱそうだよな」

 

『か、勘違いしないでよね!別に、自分の栄光を見たいわけじゃないんだからねっ!』

 

「や、それ誰に対してのツンデレ?」

 

そんなことを言ってると、デスクトップが映った。並んでるアイコンの中に、「バカのタカラ」と名付けられたファイルがあった。開くと、俺が以前ダウンロードした、貧乳モノのエロ画像が出て来た。

 

「……………」

 

『……………』

 

どうやら、アプデの際に俺のいろいろなモノはバレていたようだ。あとでパスワード変えとかないと。

 

『ちょっと、』

 

「あ?」

 

『体代わって』

 

「え、なんで?」

 

『いいから』

 

たらららーん

 

へぇ、SAOだけじゃなく、リアルな体でも代われるのね。さて、早速……あたしはマウスで矢印を「バカのタカラ」に持って行くと、ファイルごと削除した。

 

『あーてめっ、何してくれてんだよ⁉︎』

 

「うるさい。あたしの貧乳の根源は全部削除します」

 

『ああああ!やめろってかマジやめてー!謝るから!後で俺の財布でパフェ食べて良いから‼︎』

 

「うるさい。黙ってなさいよ」

 

『てか俺の体で女言葉喋るんじゃねぇ‼︎そもそもSAOの身体は消えただろうが‼︎』

 

「うるさい、知らない。バカ」

 

全ての削除を済ませ、あたしはようやく本題に入った。

「SAO、カンザキ」で検索すると、もう既にかなりのスレやサイトが出来ていた。

一個ずつ、順番に見ていった。

 

「ふへへ、見て見て。『英雄アイドルKANZAKIの行方を知る人集合』だって。えへへ、英雄アイドル〜♪」

 

『まぁ、実際英雄だからな』

 

「倒したのはあたしでしょ?」

 

『指示出してたのは俺だ。じゃなきゃあんな風に予測したように避けれるか?』

 

「お、見て見て。SAO生還者のコミュニティサイトが出来てる」

 

『おい、あんま好き勝手にサイト開くなよ。ウィルスとかあるんだから』

 

「へーきへーき。………おっ、これエギルじゃない?」

 

『お、確かに。つか、あの時の名前そのまま使ってんのかよ』

 

その後も、リズだのクラインだのどっかで見たことある名前が上がっていた。K騎士団団長とかいうのも見えたけど記憶から消しました。

そのままのんびりとみんなのコメントを読んでると、急にどっかで見たことある茶髪の女が、檻に入れられている写真が流れて来た。

 

「………あれ?」

 

『おい、こいつ……』

 

これ、K騎士団副団長じゃね?

 

 


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