俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが 作:杉山杉崎杉田
「バカアアアアアアアアア‼︎」
第一声でアスナの怒鳴り声が聞こえた。キーンとした、今、キーンとしましたよ。
「な、なんですか……」
「なんで団長とそんな約束するのよ‼︎勝てるわけないじゃないそんなの‼︎」
「す、すみません……。だって、なんでも言うこと聞いてくれるって言うもんですから、つい……」
「つい、じゃないわよ‼︎あーもうまったく……どうしてこうなるのかしら……!」
「大丈夫だと思いますよ」
「大丈夫じゃねぇよ‼︎」
エギルが大声で口を挟んで来た。
「な、何⁉︎」
「お前なぁ、それはつまり血盟騎士団Pのアイドルになるってことだぞ‼︎」
「…………あっ」
「ったく、これからどうするつもりなんだよ‼︎」
「ご、ごめんなさい……。で、でも、勝てばいいだけだから♪」
「じゃあ負けたらお前マジ責任取れよ」
「ええっ⁉︎」
「とりあえず、ヒースクリフに土下座してせめて今月一杯はおれがPでライブやることを懇願しろ。あとお前に金はいかないからな」
「それは流石に酷くないですか⁉︎」
「知らん。それくらいの覚悟で勝つ気でやれ」
「うう、ひどいですよぅ……」
まぁ、勝てば良いのか勝てば。まだ、幸い一週間あるわけだし、何とかなるかな。
*
早くも一週間が経過した。あたしとヒースクリフは闘技場の中心にいた。それまでにキリトに修行をつけてもらったり、一人でモンスターと修行したりしてた。
なんかその間、キリトとアスナが22層でAIがどうのなんだの言ってたけど、詳しく知らない。
「えーっと、で、これ何?」
あたしはヒースクリフに聞いた。なんであたしのコンサートと同じくらい人が集まってんの。
「それが、色々と話に尾ひれが付いてしまったようだな」
「だな、じゃなくて。これ負けたらいい笑い者じゃん」
「安心したまえ。勝てばそのまま人気者、負ければその弱々しい可愛さによってまた人気が出るだろう」
「おお……確かに」
「まぁ、後者しかないだろうがな」
「あたしは勝たなきゃダメなんです‼︎今月死にますから‼︎」
「………そうか、まぁ好きにしたまえ」
ヒースクリフとあたしは剣と盾を構えた。デュエル開始まで3秒前、あたしとヒースの頭上でカウントダウンが始まった。
2、1、0。
直後、あたしとヒースクリフはお互いに突きを放った。剣先と剣先がぶつかり合い、ヒースクリフは少し後ろに退がり、あたしは後ろにひっくり返りながらすっ飛ばされた。
その隙を逃さず、ヒースクリフはあたしを追いかけて来た。
ヒースにあたしは盾を投げた。その盾を剣で打ち払われた直後、ヒースクリフに向かって走り込み、打ち払った腕を踏み台にしてジャンプし、空中で回転しながら片手剣を振るった。それを盾でガードされる。
あたしが後ろに着地した直後、ヒースクリフは振り向き様に剣を振り下ろした。横に横転しながら回避し、途中で盾を拾った。
「やるな」
「どうも」
さて、どうしようか。反撃するには何か隙が欲しいものだ。神聖剣の熟練度は間違いなく向こうの方が上だ。なら、神聖剣同士では打ち合わない方がいい。
「ッ」
再び突撃した。神聖剣は基本、守り重視のカウンタースタイル。なら、カウンターを成功させたと思わせてこちらの陣に誘い込んだほうがいい。
あたしは剣を振り上げて、頭に向かって振り下ろした。それを盾で打ち上げてガードされる。ガラ空きになったあたしに突きを放った。
その突きがあたしに当たる前に、横から盾で殴ってガードする。ヒースクリフの崩れた肘にあたしは突きを放った。
咄嗟にヒースクリフは剣を逆手に持ってガードしたが、大きく崩れた。
攻めるならここしかない、そう思った直後、ヒースクリフの盾が迫って来た。咄嗟に盾でガードするが、身体は大きく跳ね飛ばされ、後ろに回転しながら着地した。あの盾、どうやら攻撃判定もあるらしい。
いや、問題はそこじゃない。崩したつもりが崩されていた。ヒースクリフはその隙を逃さずに詰めて来て、駆け寄った。盾は投げられない。同じ手が通じる相手ではない。
ヒースクリフからの猛攻が始まった。
「ヤバイ……!」
盾での突進、ここまで距離を詰められると、上に回避するのは無理だ。
横に身を翻してよけると、それを読んでいたように横から剣が飛んで来た。それを盾で受けながら抑えつけつつ、回転して躱すと、蹴りが飛んで来た。
それを膝でガードすると、後ろにバランスを崩して倒れた。そのあたしに容赦なく剣を突き刺して来た。
首を横に捻って避けて、横に横転しながら躱したが、そっちにさらに剣が突き刺さる。あたしの転がった後に剣がどんどんと刺さっていった。
そして、あたしが転がってる途中に上を向いた直後、剣が迫った。ここしかない、そう決めて、あたしも動き出した。
決着はついた。