俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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31話 勝負です!

 

それから、クライン達に75層の転移門のアクティベートを任せ、あたしとキリトとアスナ、それから軍のメンバーは街へ引き返した。

しかし、あたしが悪戯にアイドルなんて始めたから、攻略組でああやってバカやる人達が増えたのかなぁ。そう思うとなんかスッゲーヘコむんだけど。

 

『や、考え過ぎだろ』

 

ちょっといきなり声かけないで。

 

『いいか、君が今考えているのは、アイドルのコンサートのチケットを買うために銀行強盗したのは、アイドルの所為と言ってるようなもんだ』

 

………そう?

 

『だから気にしない方がいい。つーか気にするな。この物語的にああいう真面目なのいらねーから』

 

そ、そっか……。

 

『じゃ、俺は寝る』

 

………ま、まぁ、そういうことに、しとこうかな?

 

 

翌日、あたしはエギルの店の二階でボンヤリしていた。

 

「眠い」

 

「そうだな。ま、昨日は大変だったみたいだし、しばらくライブも休みだ。ゆっくりしろ」

 

「はーい」

 

「良かったな、カンザキ」

 

「……う、うん。キリト……」

 

「? な、なぁ、なんか少し前から神崎、俺と話すときだけよそよそしくないか?」

 

「ふえっ⁉︎」

 

「確かにな。前まではむしろキリトをからかう側だったのに。キリト、お前アイドルに何したんだよ」

 

「お、覚えがない!」

 

「むっ」

 

何それ、この前55層であたしのおっぱい揉みしだいた癖に……‼︎イラついた。

 

「ふんっ」

 

「いだっ⁉︎なんで蹴るんだよ‼︎」

 

「うるさいです。人のおっぱい揉んどいてそれを忘れてるなんてー‼︎」

 

「ちょっと待て!あったかそんなこと⁉︎」

 

「おい、キリト……」

 

ゆらりとエギルが椅子から立ち上がった。

 

「どういうことだ……。テメェ、まさか自分の所のアイドルを傷物にしようとしやがったのか……?」

 

「待て待てエギル!覚えがねぇんだって……!……あ、いや………待てよ………?」

 

思い出したな。

 

「おい、キリト、まさか」

 

「……………」

 

「心当たりがあんのか?」

 

「……………………」

 

「ぶっ殺す‼︎」

 

「あるなんて言ってねえだろ‼︎」

 

「あると言ってるようなものだ‼︎」

 

目の前でバカ男二人の殴り合いが始まり、あたしは息を吐きながらぼんやりしていた。すると、バンッと店の扉が開いた。

 

「あ?」

 

「お?」

 

「?」

 

涙目のアスナが、あたし達を見ていた。

 

「ど、どうしよう……」

 

「?」

 

「大変な事に、なっちゃった……」

 

 

どういうわけか、二刀流のキリトではなくあたしがヒースクリフに呼び出された。

アスナの後に続いて、緊張気味にあたしは部屋の中に入った。

 

「失礼します、カンザキをお連れしました」

 

「ああ、ありがとう」

 

中はヒースクリフ以外のプレイヤーの姿はない。あたしと1対1で話し合う的なあれかな。

 

「アスナくんも退がりたまえ」

 

「わ、私もですか?」

 

「うむ」

 

本当に1対1かよ。え、なんだろ。もしかしてあたしにサインとか?

アスナが部屋を出て、ヒースクリフは「座りたまえ」と声をかけた。お言葉に甘えて、椅子に座る。

 

「アスナくんから聴いたよ。大変だったそうだね」

 

「あーはい。大変でしたぁ。軍ってめちゃくちゃするんですね」

 

「まぁ、彼らも必死なのだろう。君のコンサートがみたくてね」

 

「あたしの所為だって言いたいんですか?」

 

「そんな事は無い。その時の君の様子を、アスナくんから聞いたよ。キリトくんの二刀流にも驚いたが、君の剣技はまるで攻防一体のような剣だったようだね」

 

「そうなんですよ。私もそれをイメージして戦ってるんです」

 

「…………」

 

「………な、なんですか?」

 

「ひょっとして、気付いてない?」

 

「や、だから何が?」

 

「ステータスを見てみたまえ」

 

「?」

 

言われるがまま見てみた。様々な武器の熟練度の一番下に、見たことのないアイコンがあった。

 

「………?」

 

「いや気付けよ。それは、おそらく君のエクストラスキルだろう」

 

「は、はぁ」

 

「つまり、私と同じ神聖剣だ」

 

「…………え、マジで?」

 

「何故、君がそれを持っている?」

 

「さぁ、そんなこと言われましても……」

 

「そうだな。君は今気づいたようだし。とはいえ、同じスキルを持つ者が二人、というのは私は好きではない。よって、私とデュエルしたまえ」

 

「え?」

 

「勝てば、一つ言うことを聞こう。ただし、君は負ければ血盟騎士団に入るのだ」

 

「一つ言うことって……なんでも?」

 

「そうだ。可能な限りではあるが」

 

「マジで⁉︎」

 

「うむ」

 

「良いよ、乗った!やろう、今すぐやろう!」

 

「まぁ、待ちたまえ。勝負は一週間後だ。いいな?」

 

「いよっしゃああああああ‼︎やる気出て来たあああああああ‼︎」

 

バタバタ走りながら外に出た。あれ、なんでこんなことになったんだろう。

 

 


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