俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが 作:杉山杉崎杉田
キリトの目論見通り、あたし達はドラゴンの背中に乗って帰還した。
「たっだいまー!」
「あ、おかえりー」
あたしが豪快に扉を開け放つと、リズが出迎えてくれた。
「随分と遅かったね。何かあったの?」
「うん、色々ねー。これ、クリスタルです」
「よーし、これで二人の依頼のものは作れそうだね。片手剣と盾付きだったわよね。少し待っててね」
そう言うと、リズは店の奥に消えていった。
残されたのはあたしとキリト。
「……………」
「……………」
なんだろう、この空気。あたしもキリトも何故かモジモジしてる……。いや、動いてないんだけど、なんとなくそんな空気、みたいな?
「あ、あのさっ、キリトさん……」
「な、なんだ?」
「………な、なんでもない」
「そ、そうか……」
一々、どもらないと会話できないのかあたし達は……。
ああもうっ!私(の本体)はもう高校生だよ⁉︎なんでこんな中学生の恋愛みたいな空気になってんの⁉︎
「あのっ、カンザキ」
「ひゃいっ⁉︎にゃっ、何⁉︎」
そっちから声をかけてくるとは……⁉︎
「もし、良かったら、さ。今度、二人で出掛けないか?」
「へっ……?」
「狩りでも買い物でもなんでもいいから……」
「……………」
「ダメか?」
「い、いえいえ!全然ダメなんかじゃないです!OKです!」
「そうか。良かった。詳細は後日な?」
「は、はい!」
やった!デートだ!やった!
…………あれ、何で喜んでるんだろ。あたし。別に、キリトの事なんてどーでも……、
『おい、やめろよ』
へ?
『お前は元は男なんだからな?ホモりたいのか?』
わ、わかってる!………はぁ、分かってるよ。
『つーかお前、キリトのことアレだけからかってたくせに逆に惚れるとか……』
ほ、惚れてないし!
『はたから見たらウブな中学生だぞ』
う、うるさいうるさいうるさい!
『シャナ?』
違うよ!
『まぁ、キリトは確かにイケメンだけれどもな?本来の体を持たないお前にはどう足掻いても付き合える相手じゃねーよ』
べ、別に付き合うつもりなんか……!
『あ、リズ戻って来たぞ』
う、うん……。
「お待たせ〜!」
リズが店の奥の扉を開け放ち、戻って来た。
「はい、これキリトの剣ね。名前はダークリパルサー」
「ありがとう、リズ」
「これがカンザキの」
そうだよね……。仮に付き合えたとしてもこのデスゲームをクリアするまでの間の関係。
「カンザキー?」
そんなの、嫌だ。それなら、いっそ気持ちは隠し通したほうがいいかもしれない。
「カンザキ‼︎」
「オビョルホ⁉︎」
「な、何面白い悲鳴あげてんのよ……。はい、剣と盾」
「あ、ありがとう……。あれ?というかなんであたしの分も?」
「ついでよついで。お金はいいから」
「あ、ありがとうございます……。すいません」
「名前はダークリパルサー・デュフェンダーズ。キリトとほとんどお揃いね」
ちょっとやめてー!ペアルックとか恥ずかしいからやめてー!
顔を赤くして頭を抱えてると、ガチャッと後ろの扉が開いた。アスナが入って来た。
「リズー。カンザキここに来てな……あっ」
「あっ」
つ、捕まった……。
「カンザキ、みーつけた♪」
あたしは観念したように引き摺られた。