俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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24話 金属がない

 

 

あれから何時間経ったのだろうか。殺したドラゴンの数は20を超える。でも、出ない。金属。どうなってんの?本気で。

 

「出ねぇ……」

 

「デマなんじゃねぇのかこれ?」

 

「さぁ……」

 

冗談抜きで辛い。だが、金属を取らないとリズが怒る。キリトも困る。

 

「どういうことだ……何かしらあるはずだ。まだ条件が揃ってないのか、それとも部位破壊しないといけないのか……」

 

うわあ、キリトはキリトでゲーマーらしいや。あたしはゲームあんまやったことない、つーか生まれたのが最近なのでSAOが初ですね、はい。

 

『おい、ちょっと』

 

何?なんか用?

 

『さっきのドラゴン、腹の中でクリスタル精製っつってたよな?』

 

それが何。

 

『それ、マジでウンコ何じゃねぇの?』

 

くだらない事で話しかけんなクズ。

 

『いやお前言い過ぎだろ。てかマジだって。腹の中で精製ってそれしかないでしょ。だったらさ、そのドラゴンの巣みたいなとこ探してみりゃ出るんじゃないの?』

 

巣ねぇ……ゲームにそんなんあんの?

 

『その辺はキリトに聞いて』

 

人任せな……。まぁ、仕方ないか。

 

「あの、キリトさん」

 

「ん?」

 

「クリスタルインゴットってドラゴンのお腹の中で精製されるんですよね?」

 

「ああ、リズの話だとそのはずだ」

 

「なら、ドラゴンの巣とかにあるんじゃないですか?ほら……こう、排泄物として……」

 

「………なるほど。その可能性もあるけど……」

 

「なら、探しましょうよ」

 

「……待てよ。そういえば、さっきからドラゴンは同じ方向から飛んで来て俺たちと戦ってたな……」

 

「? そういえばそうですね……」

 

「それって、そっちに巣があるからじゃないのか?」

 

「おお、なるほど……。じゃあ、行ってみましょうか」

 

確かドラゴンが出て来る方向は……。あっちの方か……。

あたしとキリトはその方向へ歩いた。割とすぐ近くに、ドラゴンの巣穴、或いはステージトラップと思われる穴を見つけた。

 

「これは……?」

 

「これかどうかは分からない。けど……深い穴だなこれ。仮にこれだとして、どうやって金属を取りに行くんだ?」

 

「…………紐を用意とか?」

 

「長さ足りないだろ……」

 

「ですよねぇ……」

 

「それに、ステージトラップなら降りた瞬間即死だ」

 

………確かに。流石にたかだかアイテム如きで命は掛けられない。

 

「他のところにあるか探してみましょうか」

 

「だな」

 

そう言った直後、またまたドラゴンの鳴き声が響いた。

 

「っ⁉︎」

 

「このタイミングで……!」

 

あたしもキリトも、索敵をフルで巡らせる。

 

「! 穴の中からだ!」

 

直後、巨大な穴から21匹目のドラゴンが出て来た。

 

「あたしが前に出ます!」

 

「おう!」

 

そう言ってあたしはドラゴンの方に盾を構える。だが、ドラゴンは空を飛んであたしとキリトの後ろに回り込んだ。

 

「⁉︎」

 

「後ろ……⁉︎」

 

「キリトさん!」

 

あたしはキリトの前に出て盾を構えようとする。だが、突風が先にあたしに直撃、あたしもキリトも風に飛ばされた。

 

「ッ⁉︎」

 

飛ばされた先は、穴の真上。

 

「うそおおおおおおおお⁉︎」

 

「カンザキ‼︎」

 

キリトが空中であたしの手を掴む。そして、グイッと強引に引っ張り、あたしを庇うように抱きかかえた。

 

「ーーーッ⁉︎きっ、きききキリトさん⁉︎」

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイ‼︎ち、近いよ!し、心臓がバックバクいってる!む、胸が張り裂けそう‼︎

 

『張り裂けるほど胸ないだろ』

 

お前は黙ってろ!つーかそれ誰の所為だと思ってんの?

そんな事を話しながら、あたしとキリトは穴の中に落ちていった。

 

 

薄っすらと目を開けると、穴の中だった。生きてる以上、ステージトラップではなかったのだろう。

あたしは半ば安心したようにホッと胸を撫で下ろす。

 

「生きてた、な……」

 

キリトの声が聞こえて、あたしはビクッと背筋が伸びる。

 

「? どうした、カンザキ?」

 

「い、いえ!な、何でもありましぇ……せん!」

 

な、何……?今更、キリトにドキドキしてる……。さっき、抱き締められてからずっと……。

いやいやいやいや、あり得ないから。今までからかっておいていつの間にかこっちが惚れてるとかないから。ダサいにも程がある。

 

「カンザキ?」

 

「は、はひっ⁉︎」

 

「どうした?どっか調子悪いのか?」

 

「い、いえっ!何でもありません……!」

 

「そうか……。まぁ、とにかく良かったな」

 

「? 何がですか?」

 

「とりあえず、ここはドラゴンの巣穴だ。さっきドラゴンが出てきたし、俺たちが死んでない以上、巣穴の線もない。カンザキのお陰だな」

 

ニコッと微笑まれた。ドッキーーーンとした。………今更だけど、この人ちょっとイケメンじゃない……?

 

「とりあえず、クリスタルを探そう。それから脱出方法を考えよう」

 

「そ、そそそうですね!」

 

あたしは顔を隠すように急いでクリスタルを探した。じゃないと、赤くなった顔が見られてしまうからだ。

 

 


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