俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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20話 新武器が欲しいです

 

 

数日後、ライブを終えて、あたしは少しの間お休みをもらえた。

 

「はぁ……にしても、二重人格ねぇ……」

 

なんというか、二重人格って漫画やアニメの世界だけのアレだと思ってたのに……。でも実感はある。この前、もう一人のあたしと会ったのだから。いや、まぁ外見はあたしと全く同じだったけどね。リアルの身体が出て来なかったのはなんでなんだろ。まぁどうでもいいけど。

 

「久々に攻略でもしようか」

 

着替えてサングラスとヘッドホンと帽子を被って、あたしは家を出た。

 

 

最前戦。目の前にはモンスターがザッと5匹。この前、アスナにしごかれたからある程度は戦えるはずだ。片手剣を抜いて、モンスター相手に相対する。

 

「………ッ‼︎」

 

肩慣らしに、ソードスキルを発動。ホリゾンタル・スクエアの一撃目をモンスターに当てた直後、バギンッと嫌な音が響いた。

刀身がなくなっていた。その直後に、青く光って四散する剣。

 

「嘘おおおおおおおおお‼︎」

 

なんで⁉︎なんで⁉︎なん……!そうか!もうしばらく戦ってなかったから武器の耐久値が逝ったんだ。イッケネー☆

 

『グオオオオオ‼︎』

 

「あーーーーーッ‼︎ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

慌てて転がりながら攻撃を回避する。そのままBダッシュで逃げた。

今は街の前の門。………にしても、まさか武器が折れるとは……。全然武器新調してなかったしなぁ……。というかこれ、もう60層辺りから変えてなかった気もする。あれ?これ普通の武器だったら普通にアスナとかと同レベルなんじゃね?

まぁ金ならいくらでもあるし、何の武器買っても問題ないか。せっかくだからエギルの店で。

そう決めると、街に入ってあたしはエギルの店に入った。直後、固まった。中にはキリトとアスナがいたからだ。

 

「あ、カンザキ」

 

「カンザキちゃん」

 

二人してあたしに声を掛けた。にっこりとアスナがあたしに微笑んだ。「お前、今からしごく」という目だ。

そのまま固まること数秒、あたしは無言のまま一歩後ろに退がった。直後、ダッシュで逃げた。

 

「お、おい⁉︎」

 

「何で逃げるのよ!」

 

無視!無視で逃げる。当然追いかけて来るアスナと何故かキリト。

 

「ハッ、ハッ、ハッ……」

 

『おい!』

 

「! え、えっと……お兄ちゃん?」

 

『お兄ちゃんって言うな。そう俺を呼んでいいのは詩乃だけだ』

 

「それで、何?」

 

『こんな逃げ方じゃ追いつかれんぞ。鬼ごっことかやったことねぇのかよ』

 

「あるわけないじゃん!あたしまだ1歳くらいだからね⁉︎」

 

『しゃーねーな。変われ!』

 

「え?うんっ。『お兄ちゃん』」

 

たらららーん

 

「っしゃ、久々に身体動かせる!」

 

そう言うと俺は入り組んだ道を使う。人の家の中に平気で上がり込んでは窓から出たりした。

 

『すごい……!アスナと距離がドンドン離れてく。やるじゃん!』

 

「いやお前より俺の方が人生経験豊富だからね?」

 

そんなことを話しながら俺はフィールドに逃げた。そこでようやく転移結晶を使う。

 

「転移!ここじゃない何処か!」

 

『あほか!そんなことできるわけないでしょ⁉︎かわんなさい!』

 

「カンザキ」

 

たらららーん

 

「転移!リンダース!」

 

あたしは55層に飛んだ。

 

 

ふぅ……助かった。エギルの店が使えない今、あたしは結局ここに来るしかない。武器のために。

 

『おい、なんでここに来たんだよ』

 

「もう引っ込んでて」

 

『アッハイ』

 

黙らせると、あたしは一つの水車付きの小屋の中に入った。

 

「リズベッド武具店へ……って、なんだ。カンザキか」

 

「こんにちは。リズさん、変装してるのにあたしだって分かっちゃうんですか?」

 

「そりゃ分かるわよ」

 

『うわっ、お前の擬態パーペキ過ぎwww誰?www』

 

『殴るぞ』

 

『ごめんなさい』

 

「それで、今日はどうしたの?」

 

「ちょっと新しい武器が欲しくて……」

 

「珍しいわね」

 

「まぁ、流石に60層から変えてませんからね……。一応あたし、アイドル兼攻略組ですからっ」

 

「それで、どんなのが欲しいの?」

 

「盾持ち片手剣」

 

『えーたまには斧とかにしようぜ』

 

「だーってろカス」

 

「へっ?」

 

「『なんでもない』」

 

「あれ?今声がブレて聞こえたような……」

 

まぁいいや、とリズは店の奥に剣を取りに行った。ふぅ……危なかった。

 

『てか何なの?さっきから五月蝿いんだけどあたしの中のあたし。殺されたいの?』

 

『やってみろやこら。俺が死んだらお前も道連れだからな?』

 

『は?あんたが死んだらあんたの全てがあたしのものになるだけでしょ』

 

『いいんだな?お前リアル戻ったら股間になんか生えてんの気にならねーんだな?』

 

『上等だよ』

 

『は?』

 

『あ?』

 

「お待たせ〜」

 

「全然待ってませんよ♪」

 

苦労しそうだった。

 

 


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