俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

18 / 36
18話 鬼の副団長様

 

 

無事にタイタンズハンドを捉え、あたしはようやく自分のホームに戻る……予定だった。

 

「ほら!スイッチ!」

 

「笛吹和義?」

 

「そっちじゃないわよ!真面目にやんなさい!」

 

しごかれながら攻略に勤しんでいた。あー、やだなー。やめたいなー。

 

「ちょっと待ってくださいよぅ……。休憩にしましょうよ……」

 

「ダメよ。つい30分前にしたばかりじゃない」

 

「そんなぁ……」

 

最近はアイドル業ばかりで攻略なんて本気で久しぶりだ。

 

「まったく情けない……どうしてそんな体力なくなっちゃったのよ」

 

「体力だけならあります。ライブやる体力なら」

 

「そんなの、攻略に何の役にも立たないでしょう」

 

本気で言ってんのかなこの人。誰のお陰でここまで攻略組増えたと思ってんの?

 

「とにかく、しばらくアイドル業は休み!私と攻略だから、そのつもりでいてね!」

 

「ええ⁉︎ヤダよ!冗談じゃないよ!」

 

1日20時間攻略とか舐めてる!

 

「駄目よ、あなたのその弛んだ精神を私が鍛え直して上げる」

 

「転移!」

 

「あっ、待ちなさい!」

 

当然、あたしは逃げた。しばらくエギルの店で匿ってもらおう。

 

「エギルさぁん♪」

 

実にあざとく音符を付けて呼ぶと、エギルは一発で出てきた。

 

「おう、カンザキ。今までどこ行ってたんだ?」

 

「KANZAKI出張サービス。それより、アスナさんが来るまで匿ってもらえませんか?」

 

「おう。任せろ。あ、スポンサーと打ち合わせしながらになるけどいいか?」

 

「いいけど」

 

「血盟騎士団となんだけど」

 

「良くないですよー!それダメなやつでしょ!」

 

「血盟騎士団のダイゼンって人だ。あと団長が直々に来るから副団長様は来ないよ。安心しろ」

 

「ならいいけど……」

 

「じゃ、しばらくここにいろ」

 

と、いうわけであたしはエギルの店の二階の部屋で寝転がった。

………にしても、途中でシリカちゃんといるときに記憶が飛んだんだよなぁ……。何か、重要なことを思い出してた気がするんだけど……。確か、兄やら姉やらの話をしてた時……。

だめだ思い出せない。何があったんだっけかなぁ。必死に思い出そうとしてると、コンコンとノックの音がした。

 

「あ、はーい」

 

入って来たのはスポンサーさんの血盟騎士団、ヒースクリフとダイゼンだ。その後ろからエギルがやって来た。

 

「こんにちは。KANZAKIさん」

 

「どうも。ヒースクリフさん」

 

お互いに会釈する。この人、あまり表立った仕事はしないらしいが、あたしと会う時は必ず来る。やっぱ男なんてこんなもんだ。

 

「じゃ、これからの方針について話しましょう」

 

話し合いが始まった。

 

 

話し合いが終わり、あたしは早速新曲の練習。聞けば、あたしの曲は、ヒースクリフとエギルが共同で作ってるらしい。スポンサーというより、ほとんどプロデューサーに近いよね。

 

「ホッ、ホッ、ホッと、ここでターン☆」

 

口ずさみながら振り付けを確認する。やっぱアレだね。攻略より踊ってた方が楽しい。

エギルの店の二階で振り付けの練習してれば、自然と時間が経つのも早く感じる。気が付けば夜になっていた。ここでステップ、ここで笑顔、また回って決めポーズ。

 

「いえーい」

 

ふう、疲れた。今日はもう終わりでいいかな。自宅は多分アスナに張られてて入れないし、エギルの家に泊まっちゃおう。

歌詞覚えるのは……明日でいいかな。そう思いながら、あたしは全裸になってシャワールームを借りて軽く浴びると、パジャマに着替えて寝た。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。