俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが 作:杉山杉崎杉田
少し記憶が飛んでたが、あまり気にせずにあたしはシリカと丘に連れて行った。
「ここが……思い出の丘……」
「うん。あそこに花が……あ、ほらアレ」
あたしの指差す先では、ちょうど花が咲こうとしていた。花が開き、水滴が飛び散る。
「これで、ピナを生き返らせられるんですね……!」
「うん。でも、ここはまだモンスターが多いから、街に戻ってから生き返らせようか」
「うん。お姉ちゃん」
あ、だめだ。お姉ちゃん呼びの破壊力は反則過ぎる。どのくらい反則かというと、サッカーの試合中にラグビーをするレベルで。落ち着けあたし、相手は女の子、あたしも女の子、落ち着こう。
「じゃ、もどろっか」
言うと、シリカも頷いた。
*
街の前に到着。タイタンズハンドの間抜けどもが絡んで来るとしたら、この辺りのはずだ。というか、すでにバレてる。軽く10人はいそうだ。いつでも狩れるように備えておこう……そう思った時だ。
「見ぃつけたぁッ‼︎」
物凄い勢いでフラッシングペネトレイターが突っ込んできた。
「っ⁉︎」
「きゃあ!」
慌ててシリカを抱えて回避した。何⁉︎タイタンズハンドってそんなに強いの⁉︎と、思っていた時だ。あたしに攻撃を仕掛けてきていたのはアスナだった。
「げぇっ⁉︎アスナぁ⁉︎」
「げぇっ⁉︎って何よ!」
「えっ?えっ?えっ?」
一人混乱してるシリカ。マズイ、このままじゃシルバーナンタラの依頼が果たせない……!
「ま、待ってアスナ!今は少し手が離せなくて……!」
「そうはいかないわよ!今日はライブの練習だの打ち合わせだの言ってこんな所にいるんだから、絶対に嘘だわ!」
「そ、それはホントだよ!サボったんだよ!」
「それは……?」
「あっ、いやっ、今のは言葉のアヤで……」
「嘘おっしゃい!何が何でも攻略させるわよ!」
「ああもう!面倒クセェなこの人!」
逃げる追うの追いかけっこが始まった。や、ヤベェー!こんなことしてる場合じゃないってのに……!ていうかアスナの姿なんて見られたらタイタンズハンドに逃げられるのがオチなんじゃ……!
「あ、あの……お二人とも……というか、《閃光》のアスナさん⁉︎」
バカ!そんな大声出したら……!
「あら、あなたは……?」
話してる所でタイタンズハンドの気配はパッタリ無くなっていた。
「………あーあ」
完全に見失っちゃったよ……。どうしてくれんの?ジロリと咎めるような視線を送るが、アスナも俺を攻めるような視線を送ってくる。
「なんだよ!」
「何よ!」
「こちとらあんたの所為でオレンジギルドの連中全部逃したんだからね!」
「………えっ?」
「昨日、アスナから逃げた後に1狩り行こうとしたら、仇討ちを頼まれたんだよ。捉えて黒鉄宮に入れてくれって」
「じゃあ、その子は?」
「タイタンズハンド尾行してる最中に助けた子。シリカちゃんっていうの」
「………本当?」
「嘘だと思うならシルバーフラグスのリーダーさんに聞いてみれば!」
「……そうね、悪いことしたわ」
「分かったら、タイタンズハンド捉えるの手伝ってもらうからね!」
「はいはい……」
「あ、あのー……」
そこで、シリカが声を掛けてきた。
「「何?」」
「それで、その……私はどうすれば……」
「うーん、そうだね……とりあえずピナ生き返らせてから……」
「もしかしたら、まだ狙われてるかもしれないから、私達がしばらく守ってあげるね」
「ええっ⁉︎い、いいんですか⁉︎」
「当たり前だよ〜シリカちゃんのためだもの」
「まぁ、わざとじゃないとはいえ、私の所為で犯罪ギルドを逃したんだしね」
「で、でも……!」
「大丈夫!あたしもアスナも攻略組だから!」
「あなたは最近サボってるけどね……」
「あ、あはは……(そうじゃなくて、メンバーが豪華過ぎて少し気まずい……)」
なぜか乾いた笑いを浮かべるシリカだった。