俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが 作:杉山杉崎杉田
そんなわけで、あたしはとりあえず35層辺りから探すことにした。………しかし、なんかアレ……なーんか大切なこと忘れてる気がする……。なんだろう、なんか重要なことを……まぁいいか。大したことじゃないだろうし。
「しかし、この人数から標的を探すのは大変だよね……はぁ……」
あたしが顔晒せば有名人を見に行こう的な感じでみんな集まるだろうけど……釣れても捕まえられないよなぁ……。
地道に探すしかないか。
確か、タイタンズハンドとかいう名前だったな。それなら一応聞いたことはある。確かロザリアとかいう女がリーダーの小者狙いのオレンジギルドだったよね。
「ま、テキトーにブラブラしてれば見つかるかもね」
そんな事を呟きながら、モンスターを剣一振りで倒しつつ歩いてると、とあるパーティが言い争いしてるのが見えた。
「………?」
よく見れば、その中の言い争いをしている一人は見覚えがあった。あの前髪で片目を隠すダサい髪型は……、
「ロザリアじゃん……」
うわあ、見つかるの早過ぎんだろオイ。まぁ見つかるに越したことはないけどさ。
「ロザリアさんこそ、ろくに前面に出ないで後ろをチョロチョロしてばっかりなんだから、クリスタルなんか使わないんじゃないんですか⁉︎」
と、今大声で叫んだのは小さいロザリアじゃない女の子の方だ。つーかこのゲームって小学生以下はアウトとかの年齢制限はないの?あと、今のガキの台詞でロザリアは確定した。
「私は必要よ。お子ちゃまアイドルのシリカちゃんと違って男達が回復してくれるわけでもないし、そのトカゲがいるわけでもないしね」
などという口喧嘩がしばらく続くのを黙って見守る。口喧嘩などはどうでもいいが、あそこのロザリアは間違いなくタイタンズハンドのリーダーだ。しばらくはここで張ってる必要がある。
何より、あたしの聞いてる感じだと、ロザリアはあのシリカとかいう女の子をわざと挑発してるようにも聞こえる。もしかしたら、わざと仲間割れして別々の道に進んだ後に仲間を呼んで狩るつもりか……?
あたしの勘が当たったのか、シリカとかいう子の怒声が響いた。
「もういいです!アイテムなんかいりません。あなたとはもう絶対組まない、あたしを欲しいっていうパーティは他にも山ほどあるんですからね!」
えっ、ちょっ待て待たんかお主。まさか、一人で行くのか?ここは迷いの森とかいうありきたりにも程があるネーミングの森だが、他の迷いの森のは比べ物にならないレベルの迷いの森だよ?迷うよ?
せっかく見つけたロザリアを放っておくのは癪だが、あのクソガキを放置するわけにもいかない。
仕方ないのであたしはシリカの後ろを追いかけた。