俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

11 / 36
11話 ライブです

 

あの後、キリトはビーターだなんだと攻められたが、俺には関係ない。全部聞き流した。

で、今は一年と数ヶ月後。今はどっかのスタジオ。デンデロデンデロと音楽が流れる。そして、俺の身体はウイィィィンと音を立てて上に上がって行った。

上を見れば、たくさんのスポットライトが浴びせられていて、激しい音楽と観客の歓声が聞こえて来る。

そして、ステージの上に出た。さぁ、俺の舞台だ!

 

『いくよぉーーーーーッッ‼︎』

 

マイクにそう叫ぶと、ウオオオオオオオオオオッッ‼︎と観客から帰って来る。そのままトーク抜きで一曲目「ヘヴィーローション」が始まる。

そう、今日はアイドル「KANZAKI」のライブだ。全力で歌を歌う中、俺は思う。

 

どうしてこうなった……

 

と。

 

 

ことの要因は、ちょうど50階層の攻略が終わった時だ。攻略も進むにつれてモンスターも強くなる。これに関して、キリト、エギル、クラインの三馬鹿と俺が話していた時に、「アイドルでもやれば攻略組も増えるんでない?」という酔っ払ってるとしか思えない提案でこうなったわけだ。

チケットやスタジオとかは全部エギルがやり、残り三人で必死こいて資金を搔き集めまくった。ライブの広告で写真などを撮って、過去の街など全部に貼りまくった結果、そこそこ人気が出て、初ライブでは二百人集まった。

このライブのチケット購入制限は「攻略組」であること。その為にはステータスをエギルやキリトに見せ、判断してもらうしかない。

俺は最初はそんなの集まるわけねぇだろ、とか思っていたのだが、「可愛いは正義」とはよくいったもので、攻略組は馬鹿みたいに増えた。「可愛いは正義」ってこれ、そろそろことわざに入れてもいいんじゃない?

 

「お疲れ、カンザキ」

 

ライブが終わり、エギルが俺の横に座った。

 

「は、はい……お疲れ様ですぅ」

 

微笑みながら俺は言った。いやー、ネカマだってバレたらレッドプレイヤーでもないのに街に帰れなくなりそうだ。というか、俺今までよくバレなかったな。本気でスパイの才能があるかもしれない。

 

「しかし、まさかここまで人気出るとはなぁ……」

 

「ほんとですね……あたしもビックリしてます……」

 

たはは、といった感じで俺は頭を掻いた。すると、客席からアンコールの声が聞こえる。

 

「カンザキちゃん!呼んでるよ!」

 

クラインから言われて、俺は仕方なくため息をつくと、スマイル全開でステージに戻った。

 

 

ライブが今度こそ終わり、俺は楽屋のソファーに倒れ込んだ。

 

「うあー!疲れたー!」

 

「ははは、お疲れカンザキ」

 

キリトが言いながら飲み物をくれた。

 

「あ、ありがとうございます」

 

ストローで飲み物をチューッと啜る。あー……染みるぜぇ〜……。

しかしまぁ、本当こうして見ると、超人気あるな俺。まぁ俺の理想の女の子なんだから当たり前かもしれないが、それでも少し驚いている。まさかこんな事になるなんてなぁ……。

 

「じゃ、あたし帰りますね……。もうヘトヘトなんで」

 

「ああ。またな」

 

「はい」

 

テキトーに挨拶して、俺は転移結晶を使った。……リアル戻った時には精々、バレないようにしないとな。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。