「……………」
俺は目の前の出来事に頭が追い付かなかった。
目が覚めたらいきなり森の中って事に。誰でもパニックになると思う。
「……まず、ここどこの森だ?今まで入ったことのない森だ」
俺は過去の出来事で何度も自殺をしようと森に入ったことがある為入った森を『全て』記憶していたが、こんな澄み渡った空気が流れてる森に来たのは初めてだった。
「……あ、靴は……履いてるか。歩くなら問題無いな」
それから森の中を歩いていき、黙々と歩いていくと、周りは段々薄暗くなって行き、更には変なモヤみたいな煙まで出てきた。
「……これは奥に入ってきてるな。それに気味が悪い。早くこの森から出ないと……」
そうして後ろを向き歩こうとすると、後ろから彼に話し掛ける声が聞こえた。
「お兄さん、食べていい人類かー?」
なんとも幼い女の子が喋った。しかし、この声にも彼は無視してもときた道を歩いていた。
「むー、お兄さん反応してほしいのだー」
しかしまた彼は無視をする。
「………」
「お兄さん!!」
「……なんだよ」
堪らず女の子は大きい声で話し掛けると彼は不機嫌そうに反応した。
「ようやく反応してくれたのだー」
「…………」
彼は驚いた。それもそのはずだ。声を掛けた女の子は地面から浮いていたのだから。
「?どうしたのだー?」
「……今どき飛ぶことが流行ってるのか?」
「?」
女の子は可愛らしく首を傾げ、それを正すと再度言ってくる。
「お兄さんは食べていい人類かー?」
「………は?」
彼を驚かせるのに充分な言葉だった。女の子はふわふわと空中を漂いながら彼に近づいて行く」
「………」
彼は頭が追い付いていかず、パニック状態になっていた。
その間にも女の子は近付いている。それに気付いた彼はすぐに走っていた。
「むー、逃げるなー!!」
無論、女の子もついて来る。しかし、彼は人間とは思えない速さで走っていく。
「お兄さん速いのだー!!」
「喰われる前提で止まれるか!!」
彼の本能が言っていた。この女の子から逃げろと。
(クソ……!!体力が持ってくれればどこか人がいる所に行ける!持ってくれよ……!!)
しかし、彼の願いは打ち砕かれた。どんどん森の奥に入っていき、人は到底いるとは思えなかった。
「クソ……!!」
「もう逃げられないのだー」
彼の後ろに女の子はいた。まるで狩りをしているかのように。
「………一つ聞いていいか?」
「なんなのだー?」
「……お前はなんだ?」
「妖怪なのだー」
「よう………」
彼は驚いた。そう、彼が思い描いてた妖怪とはかけ離れたからだ。
「………」
「んー……でもお兄さんどことなく『妖怪』っぽいのだ。どうしてなのだー?」
「……知るか。それよりも喰うのか喰わないのかどっちだ」
「うーん……食べないのだー。今はそんなにお腹は減ってないから」
ホッと彼は安堵した。もし喰われるのならたまったもんじゃない。
「そう言えば、お兄さんの名前はなんなのだー?」
「……神凪想真だ」
「想真兄、なのかー」
「……お前の名前は?」
名前の呼び方にむず痒さを覚えるが抑え、女の子に言った。
「私はルーミアなのだー」
「ふぅん………」
「わはー」
そうして、彼、神凪想真は暫くルーミアといることになった。