とある科学の傀儡師(エクスマキナ)   作:平井純諍

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すみません!

今回は長いです!
分割も考えましたが、中途半端になりそうなので
このまま載せます

申し訳ありません!


第64話 鬼ごっこ

赤髪狩りをしていた新不良集団の『侵略者(エイリアン)』を撃退する事に成功した白井と絹旗だったが、勝手に付いてきた幼い『フウエイ』が居なくなっている事に気が付き、慌てて付近を捜索したが見つからずじまいだった。

 

「超すみませんでしたー」

不良集団を撃退した場所から少し歩いた広場で絹旗と白井がドラム缶に腰掛けているサソリに頭を下げて謝った。

先ほど、初春経由で事情を聞いたサソリは何とも苦い顔をして不機嫌そうに腕を組んだ。

 

二人並んで頭を下げている白井と絹旗だが、絹旗は横目で白井に視線を送ると小さな声で会話を始めた。

「ちょっと何で私まで超謝罪しなきゃいけないんですか!?貴方に超謝って終わりですよね」

 

「サソリを怒らせると凄く怖いんですわよ!危うく泣きそうになりましたの」

「そ、そんなに超怖いんですか!?」

「ここはひたすら謝罪のみですわ」

 

御坂に雷を落とした日の事を思い出して、軽く怯える白井。

 

「あー、取り敢えず顔を上げろ。どうせアイツが勝手に付いて来たんだろ」

「それは......まあ」

 

「初春からの連絡からですと、その集団はかなり羽振りが良いみたいですよ」

「どどうするのサソリ!フウエイちゃんに何かあったら」

一緒に付いて来た佐天と御坂が悩みながら頭を抱えていた。

御坂に至ってはサソリの裾を引っ張って過去のトラウマを思い出したかのように震えていた。

 

あの時の悲惨な実験の結果を押し付けられるのではないか......

 

涙目になりながらサソリを見上げている。

震えている御坂の腕を後ろ手に振り返ると頭をポンと叩いた。

「すぐに見つけてやる......ただ」

サソリは目を細めて、空を見上げた。

「ただ?」

「誘拐した方がヤバイな......」

「そうよね。小さい子一人だし......危ない集団だし」

「違う」

「?」

「......フウエイはオレが造った傀儡の中で最強クラスだ」

 

「「「「えっ!?......」」」」

 

******

 

「鬼ごっこ!鬼ごっこ!」

不良集団のアジトの真ん中で腕を大きく振りながら体操をするフウエイ。

 

「だ、大丈夫なんすか?」

「仕方ないだろ!遊んで満足したら成仏してくれるはずだ」

「いや、圧倒的な死亡フラグが......」

金髪ロングの罪悪感からなのか、呪われたくないからなのか、前に進んでフウエイに近づいた。

 

「ほ、ほら......お兄さんが遊んであげるよ」

手を広げて精一杯の引きつった笑顔で竦む足を引きずるように前に踏み出した。

「お、お前死ぬつもりか!?」

「へ......元は俺のせいだ。ボスが戻っ......て!?」

一瞬で金髪ロングの男の目の前に移動したフウエイがニコニコとしながら。

「タッチ」

と言いながら、金髪ロングの男のおでこに触った。

「ひっ!?......?」

しかし、想定していた衝撃とは違い本当に子供が触れたような軽さだった。

「へっへへ......驚かせやがって」

「お、おい!お前......」

 

金髪ロングの男がバチリと蒼色に発光していて、不良集団の中にいた金属製のネックレスが引きつけられるように重力とは垂直に伸びていた。

いや、ネックレスだけでなくアジトで使われている金属が全て金髪ロングの男に引きつけられているようでボルトやネジが男の顔に当たり払い除ける。

 

「じゃあ行くよー!」

フウエイは外套から金属の手裏剣を取り出すと金髪ロングの男に向けて投げ出した。

「!?」

慌てて横に避けるが、手裏剣は意思を持っているかのように曲がりだして男性を追跡していく。

「はあはあ!どうなって」

「うわぁ!こっちに来るなー!」

執拗に追跡されているが手裏剣が徐々に加速を始めて、金髪ロングの男の背中に突き刺さった。

「ギャアアアー!」

俯せに倒れ込むとジタバタと背中の手裏剣を取ろうとするが、上手く取れずにもがいた。

 

「ケラケラ、おじさんの負けー!解除」

「んぎゃ!?」

フウエイが金髪ロングの男に触れると纏わり付いている電荷が外れて、手裏剣を回収した。

「にしし」

悪魔のような笑顔にキラリと瞳が光ると残りの不良集団に戦慄が走った。

「な、なんとなくルールが分かった気がする」

「あ、ああ......」

ジリっとフウエイが一歩踏み出すと不良集団は一歩後退した。

また一歩踏み出す

一歩後退する

 

「キャハハハ!待て待てー」

外套を翻しながはフウエイは嬉しそうに走りだした。

「触られたらアウトだぁぁー!逃げろぉぉー!」

蜘蛛の子を散らすように逃げ出した不良集団。

 

フウエイの血継限界(三代目 風影の)

磁遁

触った相手に磁力を纏わせて、金属の攻撃を追跡する。

 

「タッチ」

髑髏の服を着た男性が背中を触られて磁力が纏わり付いて、蒼い燐光を放つ。

「し、しまった!助けてくれー!」

「は、離れてくれ!またあのガキが」

フウエイは再び流れるように手裏剣を投げつけると磁石に吸い寄せられるように追跡を始めた。

 

「ひ、ひぃぃー!」

端に置いてあった鉄パイプを手に取ろうとするが近づくに連れて、鉄パイプの金属が反応して髑髏の服を着た男性の顔面を殴るようにして吸い付いて止まった。

「アガっ......」

そこにプスッと手裏剣が刺さるが気絶しているらしく反応はない。

 

「はーい、負けー!」

フウエイは磁力を解除して手裏剣を回収して、アジト内を散り散りになった不良達を眺めた。

 

「どれにしよーかなー」

 

そこへ、バンダナを頭に巻いた男が金属バットを持って、フウエイに殴り掛かる。

「こ、このガキー!」

「ん?」

しかし、殴り掛かった金属バットがフウエイの身体に当たる寸前にフウエイの右眼が万華鏡写輪眼となり、すり抜けて硬い地面に当たり両腕に強烈な痺れが走った。

「な、何!?す、すり抜けた」

「おじさんにもタッチ!」

両腕の衝撃を受け流そうと立ったまま堪えているバンダナの男の脚をフウエイはペタペタと触った。

 

「あ......ああ、そういえば幽霊には効かなバ!」

床に転がっていた金属バットが磁力で持ち上がり縦に回転しながらバンダナ男の頭を殴った。

 

「びっくりしたなー。まんげきょを使ったぞ。パパから禁止されているのに」

バンダナの男の磁力を解除すると、今度は金属バットを手に持ってブンブン振り回しながら追いかけ始めた。

 

「はあはあ、すり抜けた......やっぱり幽霊だ」

「どうすんだよ!かなりの悪霊だぞ!無邪気な顔して地獄に引きずり込むんだ!」

「待て!俺に考えがある!」

逃げ回っていたとある集団の中で息を切らしながらスキンヘッドの男性が声を上げた。

「な、何だ?」

「俺が最近観たホラー映画での対処法だ」

「何でも良いから早く言えー!」

スキンヘッドの男性はドヤ顔で顎に手を当てながら言う。

 

「井戸に突き落とすんだ」

 

...............

 

「どんだけ古い映画観てんだよ!」

「待て!上から石で出来た蓋をするんだ。この人数ならイケる!」

「この科学が発達した学園都市の何処に時代遅れの井戸があんだ!!」

「そうか!しまった」

驚愕の表情を浮かべるスキンヘッドの男性に他のメンバーも呆れ顔だった。

 

「キャハハハッ!」

フウエイは不良達の中を縦横無尽に動きながら、楽しそうに笑っていた。

 

アジトは阿鼻叫喚の渦に飲まれていき、まさに地獄絵図の展開だった。

 

******

 

路地裏を赤いジャージを着て、ニキビだらけの顔をした男が頭を掻きながら、買い取った写真を見ていた。

「ちっ......どれもターゲットじゃねーな」

赤い手袋をした手で頭を掻きながら、盛大に舌打ちした。

「あーあ!面倒な仕事を貰ったもんだぁ。畜生道のワン公にでも遣らせればいいんだ」

指を弾くと火花散って、写真数枚に火が付いて燃えていく。

男の紅い前髮の隙間から片方だけ紫色の波紋状の瞳が鈍く光っている。

 

「ん?」

自分の組織したアジトから青い顔をしたメンバーが命からがら逃げ出していくのが目に付いた。

「冗談じゃねー!すり抜けるわ、刃物は吸い付いてくるわ!やってられるか......!?」

迷彩のシャツを着た男の前に紅い髮をしたジャージ姿の男が仁王立ちで現れると強い味方が来てくれたかのように拝むポーズをした。

「何かあったのか?」

「ぼ、ボス!!待ってましたよ!そのガキの霊が暴れていまして......」

「ガキの霊?」

疑問符を浮かべる紅い髮をした男だが促されるままに扉から入ると黒い髪をした幼い少女が不良の一人に頭突きをかましていた。

他は蒼く光って擦り寄ってくる金属製の手裏剣やナイフから逃げるように必死の形相で逃げ回っていた。

 

「何してんだぁ!テメェ!!」

紅い髮の男が威嚇をするように地響きに近い声を張り上げるとアジト内が軽く震えた。

「!!?」

「ボス!来てくれたんすね......助けてくだせぇ」

不良達はまるで救世主が現れたかのように安堵の声を漏らすが、金属製の手裏剣が刺さりもがく。

 

「おっ!?びっくりしたー......ん?おじさんも鬼ごっこす......!」

 

前に出て来た紅い髮の目付きの鋭い男は、腕を伸ばすと腕内部で火薬が爆発して黒いケーブルに繋がれた腕をロケットパンチのように飛ばした。

フウエイの腹部に命中するとそのまま壁際に腕が伸びて、叩きつけた。

「や、やっちまってください!修羅道の兄貴!」

 

測定不能(レベル エラー)

修羅道

 

「俺のかわいい部下が世話になったみてぇだな......覚悟は出来てんだろ......な?」

土埃が晴れた壁際にはバラバラになったフウエイがカチカチと音を立てて組み上がった。

 

フウエイは万華鏡写輪眼を開眼すると渦を発生させて、神威で修羅道の背後に回るとジャージに触れた。

 

万華鏡写輪眼に

このガキ、傀儡か?

 

「タッチ」

バチバチと蒼く光る修羅道だが、チャクラを入れると磁力を吹き飛ばした。

「ありり?」

首を傾けるフウエイだが、修羅道がミサイルを構えると至近距離から放つ。

爆発炎上する中で修羅道は高らかに笑っていた。

「アーハハハハ!ビンゴだお前ら!ガキ!お前も傀儡みたいだな」

 

万華鏡写輪眼の能力ですり抜けていたフウエイが爆炎の中からトコトコ歩いて出てきた。

「も?」

「そうだぁ!俺も傀儡だ!!」

 

ロケットパンチで飛ばした腕を巻き戻して回収し、断端にはめるとニヤリと笑った。

修羅道の言っている事の半分も理解出来ていないフウエイだが、ニッと大きく笑顔になると。

「にしし、じゃあ本気出していーい?」

「あ?」

フウエイは外套を片腕をだすようにはだけさせると、胸にある四角い蓋を開けた。

すると中からワイヤーのようにチャクラ糸が伸びて建物の至る所に貼りついていく。

「じゃあ行くよー」

フワフワとフウエイはチャクラ糸を使って浮き出すと、印を結んで口から大量の砂鉄を吐き出した。

 

「はぁぁぁー」

空中にいるフウエイがチャクラを込めるとウネウネと形を変えていた砂鉄が複数の刃となり修羅道へと襲い掛かりだした。

「さてつしぐれ!」

球場に刃が修羅道一点に集中する中で砂鉄が命中する寸前に消えて、フウエイの正面に来ると拳が変形してより機械的で巨大になると、手の甲か勢い良く炎が飛び出して加速してフウエイを殴ろうと力を溜める。

 

「ガンズナックル!」

フウエイが即座に腕を前に出して、修羅道の拳を受け止めようとするがロケット並の威力の拳に後方に飛ばされていく。

「へへへ......?!」

 

ピタッ......

 

フウエイは不自然に天井に当たる寸前に止まり、ミシミシと建物全体が引きつる音がするとフウエイの身体は修羅道に向かって凄まじい速度で飛んでいく。

「ビョーン」

フウエイは多量の糸の弾力によりパチンコのように修羅道の腹部に強烈な頭突きをした。

修羅道の攻撃力がそのまま跳ね返ったに近かった。

 

「がはっ!!こ、このガキ」

床に叩きつけられて大の字になる修羅道であったが、ゴムのように空中を跳ね回っているフウエイが高速で印を結び出した。

 

磁遁 山土の術

次の瞬間には地面が盛り上がり修羅道を挟み込むように壁が出現して、内側には黒い砂鉄の棘を付け加えて、正極と負極で引かれ合うように高速で隙間なく挟み込んだ。

 

黒い二つの重なりあった壁は静かになったアジト内に不気味に鎮座していた。

「おもしろ~!お前ちょー強いなぁ!」

フウエイが糸を仕舞いながら地上に降りてきた。

「やったやったー!勝った勝った!フウエイの勝ちー」

勝利のVサインを決めるフウエイに不良達はボスが倒されてしまい、互いに顔を見合わせると、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

「......ぼ、ボスがヤラレタ」

「あの幽霊マジやべぇ」

「気付かれない内に......」

そろりそろりと忍び足で不良達はアジトの裏口から一人また一人と逃げ出していく。

 

「おっ!帰るの?」

「「「ギクッ!」」」

まるで悪魔に見つかったように尋常じゃない汗をかきながら......

「あ、ああ......そろそろ帰らんとな」

「そっか~。気を付けて帰るんだよ。今日はフウエイと遊んでくれてありがとー!また遊ぼうね」

手を振りながら、不良達を見送る。

不良達は、ぎこちない笑顔で手を振りながら扉から外に出るや否や全員アスリートのような顔つきになって全力疾走し始めた。

 

そこに、赤い髪をツインテールにした白井がにこやかに立ちふさがっていた。

「げっ!?」

 

 

パララ......

 

黒い墓標のような砂な壁が崩れると中から腕を6本に生やした修羅道が壁をぶち破った。

 

「大したガキだ......アシュラモードにされるとはな」

ノコギリのような尻尾を床に叩きつけて、顔から滴り落ちた血を舐め取った。

修羅道の異形な姿にフウエイは目をキラキラさせてピョンピョンと跳ねている。

「おおおー!!カッコイイー!」

「久々のアシュラだ!楽しませて貰うぜ」

 

修羅道が6本の腕を構えると跳ね回っているフウエイに狙いを付けて前に進んだが......

 

『何をしている?』

 

修羅道の右耳にしてある黒いピアスから冷淡な女性の声が響いて慌てて立ち止まった。

「げっ!?天道か」

修羅道は黒いピアスを押さえると天道と呼ばれる人物と会話を始めた。

「邪魔すんな!良いところなんだよ!」

 

『本来の目的から外れるな。貴方の仕事はターゲットを見つける事だろ。それとも私に逆らうか?』

 

「くっ......分かったよ......」

天道からの通信が途切れたらしく、修羅道はがっくりと肩を落とすと余分な腕を仕舞い始めた。

 

「?どうしたー?終わりか?」

フウエイが首を傾げながら、寂しそうに言った。

「ああ、時間切れだな。決着はまた今度な」

「ええー!つまんないのぉ」

「すまんな......文句なら天道に言ってくれ......あの堅物リーダーが」

 

フウエイの頭をポンポンと叩いて寂しそうにしているフウエイを慰めていると、蒼い光一直線に飛んで来て修羅道の肩を抉るように吹き飛ばした。

「!?」

「大丈夫!?フウエイちゃん」

御坂が息を切らしながらアジト内に入ってきた。

「ん?御坂ママだ」

御坂はフウエイを抱き上げると何処かに傷がないかどうかを丹念に見ていく。

無事な様子を確認すると、力の限りフウエイを抱きしめた。

「苦しいよ......御坂ママ」

「良かったー!変な事されてないわよね」

 

「......第三位か......クソ」

修羅道がヨロけながら、抉られた肩の部分を庇いながら体勢を立て直していると首元にクナイを突き立てられ冷たい声が響く。

「動くな......妙な真似をしたら殺すぞ」

 

サソリ術で修羅道を地面に縛り付けながら殺気を込めて修羅道を睨み付けた。

「......」

「......何者だ?」

 

コイツの右眼は......輪廻眼か?

 

サソリが緊張を解く事なく指先に力を込め続けていた。

 

「!!?ああああー!」

首だけを後方に回転させると修羅道はサソリの顔を見ると驚嘆の表情を浮かべて大声を出す。

「?」

「見つけたー!ターゲット見つけたー!やはり、あのガキと関係していたか!!」

「「??!」」

相手の予想外の行動に目を白黒させているサソリと御坂。

 

「修羅道~」

アジトの屋根を突き抜けて、やや茶色がかった黒髪のショートカットの女性が落下してきた。

「ビッグニュースなの!この近くにターゲットが......えっ?」

青色のフード付きパーカーを身に付けていて、左側の髪を微妙に少しだけヘアバンドで留めており、彼女の右眼も崇高なる輪廻眼が光っている。

 

赤い髪の少年に拘束されている修羅道を見つけるとパニックになったように忙しなく腕を曲げ伸ばしをした。

「だ、大丈夫なの?」

「人間道かよ。もう俺が見つけた」

「うわぁ!さすが修羅道なの......じゃなくて、今の状況は?」

「心配要らねえから、さっさと要件を済ませ......?」

人間道がややおっとりした口調で話しをしているが時折口をモグモグさせているのに修羅道が気付く。

 

「人間道......お前......何してたんだ?」

「えっとね~......コンビニで情報収集しようとしたわけなの......だけど、そしたら『肉まん』が食べて欲しそうに見てたから」

幸せそうにパーカーにある大きのポケットから袋に入っている食べ掛けの肉まんを出して勢い良く食べ始める人間道。

 

ブチン!

修羅道のコメカミに血管が浮き出て、片腕を強引に伸ばすと人間道のフードを掴み上げて人間道を宙吊りにした。

「テンメェェー!!」

「あわわ~、ごめんなさいごめんなさい!決してサボっていた訳じゃないの」

人間道の方が修羅道より背が低いので、バタバタと身体全体を使って軽くもがいていた。

 

「な、何なのこの二人?」

御坂が疑問符を浮かべると腕の中にいたフウエイが御坂の身体の隙間から顔を出した。

「あのね!フウエイと遊んでくれたんだよ」

ニコニコとしながら、修羅道を指差した。

「そ、そう......でも知らない人に付いて行っちゃダメだぞ」

フウエイの小さな鼻を御坂がピンと軽く突くとくすぐったそうにハニかんだ。

 

「んへへ~」

 

御坂はその様子を見ると更に愛しさが止まらなくなり、フウエイを抱きしめた。

 

しかし、サソリは二人目の輪廻眼を持った存在を危惧して左眼の万華鏡写輪眼を開眼させるとスサノオを出現させた。

 

「わああああー!ちょっと待っふぇ?」

人間道が肉まんを流し込みながら、アタフタと手を動かして制止しようとするが。

「......」

問答無用な感じにサソリはスサノオの太刀を振り下ろした。宙吊りになっている人間道だが修羅道が紙一重で引き戻して、地面に向けてミサイルを発射すると固定していたサソリの砂を吹き飛ばした。

黒い煙を出しながら、修羅道は肩を鳴らしながら無造作に隣に人間道を落っことした。

「痛っ!?」

 

「改めて『赤砂のサソリ』だな?別に闘いに来た訳じゃねーから、スサノオを仕舞えよ」

「!?どこでそれを知った?」

サソリは警戒しながらもスサノオの発動をやめて、奇妙な二人組を睨み付けた。

 

「そりゃあ、第一位を倒したみてぇだからな。お前はちょっとした有名人だぞ」

「............」

「おい、人間道。あれを渡せ」

「分かったの」

人間道はパーカーの袖から封筒を取り出すとサソリに向けて方向を変えて丁寧に渡した。

 

「?」

「近い内にお祭りがありますから、これはその招待状なの」

 

怪訝そうな顔をして封筒を受け取るが目付きが鋭く輪郭からはみ出した口が印象的な画伯のウサギ(かもしれない)物体から吹き出しが出ていて......

 

絶対出ろウサ

楽しいウサよ♪

 

と描いてあり、どう反応して良いか分からずにフリーズしていた。

 

「あー、終わった......これで仕事終了だな。畜生道、戻していいぞ」

右耳にある黒いピアスを押さえながら、修羅道が軽く伸びをした。

「そうだね~。良く頑張ったの」

「お前の事はしっかり天道に伝えるからな」

「えぇ~!怒られるのはちょっと......」

「サボっていたお前が悪い!」

と話しをした所で輪廻眼をした二人組が煙に包まれて消えてしまった。

 

!?

逆口寄せか?!

 

煙が四散していき、幾らかの沈黙が流れた後で建物の扉が開き、佐天達が手を振りながらやって来た。

「サソリー!こっちは終わったよー」

「やたら数が多くて超疲れました」

「大丈夫ですの!?フウエイちゃん!」

白井が駆け寄るより前にテレポートをして御坂の前に移動し、フウエイの両手を握った。

「フウエイ大丈夫だよ~!」

「良かったですわ」

へなへなと腰が抜けたように白井は床に座り込んだ。

「いやー、無事で良かったですね」

佐天がホッと一息を入れて、フウエイの元気な姿を見る為に移動した。

 

「超何です?なんか妙なイラスト付きですけど」

「知らん」

サソリは外套に封筒を仕舞うと、無言のまま御坂に抱っこされているフウエイに近付いた。

 

「パパ~」

嬉しそうに両手を伸ばして抱っこをせがむが、サソリは拳を固めてフウエイの頭を拳骨を食らわせた。

「んぎゃ!?パ......パ?」

「ちょっといきなり何するのサソリ!?」

御坂が頭を抑えて戸惑っているフウエイをサソリから遠ざけるように体勢を変えようとするが、サソリは語気を強くしながらフウエイを叱り始めた。

 

「御坂、お前は黙ってろ。フウエイ!勝手な事ばかりしやがって、こっち向け!」

「え......えっぐ......パパ?」

涙をボロボロ流しながら、フウエイが怯えたように身体を震わせながら泣き始めた。

「えっぐえっぐ......ごわいよ.....,パパ」

「ちょっと言い過ぎじゃ」

「ここに来るまでどれだけ心配したと思ってんだ!フウエイ!しっかり謝れ!」

「んぐえっぐ、ごめんなさい......ごめんなざいぃ....,,えぇぇーん!ごめんなざい」

御坂に抱っこされながら、大声で泣き出すとフウエイは身体を仰け反らせて降ろして貰うと、機嫌が悪そうに腕を組んでいるサソリの脚に抱き着いて涙顔を抑えて泣き続けていた。

 

「ちっ!」

サソリはフウエイを抱き上げると力を込めて泣きじゃくるフウエイの頭を優しく撫でた。

「あまり心配掛けるなよ」

「うん......んぐ、ごめんなさい。パパ......」

火が付いたように泣いているフウエイをなだめるサソリ。

「すまんな、コイツのせいで」

サソリの肩に顔を埋めながら、泣きじゃくっているフウエイを抱き上げたままサソリが御坂達に謝罪した。

 

唖然とする御坂達にサソリが首を傾げた。

「どうした?」

困ったように慌てなんとか言葉を紡ぎ出していく。

「いや、その......」

「超意外です」

「り、立派に躾をしているようで」

「驚きましたわ」

「これぐらい普通だろ」

 

輪廻眼を所有していた謎の二人組から貰った奇妙な封筒。

それがこの先に起こる学園都市全体を巻き込む大事件に繋がっていく事をサソリ達はまだ知らない。


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