とある科学の傀儡師(エクスマキナ)   作:平井純諍

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日常編スタート

リクエストの募集を締め切ります
リクエストしてくださった方、本当にありがとうございます
リクエスト内容は、案をまとめて本編に採用したいと考えています



第61話 刷り込まれた価値

満天の星空の下で赤い髪をした目つきの鋭い人形と茶色の髪をし、ゴーグルを付けた人形をチャクラ糸で操りながら、黒い髪をした物語の語り部『フウエイ』がガラスのように透き通った声を出している。

 

「助けに来たぞ!ミサカ」

「師匠!......どうして?」

赤い髪の人形は茶髪の人形を抱き締めた。

「......決まってんだろ......お前を愛しているからだ」

「師匠!私もで......!?」

こちらの視線に気付いたフウエイは、顔を真っ赤にしてコンテナの物陰に身を潜めた。

両脇に大事そうに赤い髪の人形と茶髪の人形を抱き抱えて、恐る恐るこちらを見ている。

「......み、皆さん......いつからご覧に?」

 

耳をダンボのように大きくして聞き耳を立てる。

 

「!......ほとんど全部じゃないですか......師匠と弟子の禁断の恋には憧れるものです」

目元を赤らめて、困ったように視線を薫せると人形を抱えたまま小石が敷き詰められている地面を踏み鳴らした。

 

黒い髪に暁の外套を着た御坂美琴そっくりの外見をし、一回咳払いをすると語り部の役割をこなし始める。

「えー、コホン......弟子を損壊甚大に保護したサソリ様でございますが、禁術を使い壊れたミサカの身体ごと人傀儡に造り変えました」

胸に付けた焦げ付き、古ぼけたカエルのバッジが月明りに照らされた。

 

フウエイは静かに手を前に持って来ると招待した客を丁寧に接待するように深く頭を下げた。

「では、改めまして......どうも皆さん!語り部であり、サソリ様の弟子兼娘のフウエイでございます」

 

フウエイは頭を上げると満面の笑顔でニコッとした。

その笑みは当時の面影を残したまま、変わらない無邪気さを醸し出している。

「第2章の最後に私が登場しましたね......いやー、今見ても可愛いと思いますよ......可愛いですよね?......可愛いって言いなさいですよ」

フウエイは、赤い髪の人形を抱き締めたまま、ジト目でジリジリと躙り寄りムキになったように詰め寄って凄まじい気迫を見せた。

 

「......そうですよね~!可愛いですよね〜。今も可愛いし綺麗ですって?いやですねぇ、何も出ないですよ」

ニコニコと上機嫌に鼻唄を歌いだし、両手首を顎の下に持ってくると片足を上げてぶりっ子ポーズをした。

そして、人差し指を立てて左右に振ると軽くウィンクをして、意味ありげに含み笑みをすると挨拶の締めに入る。

 

「さて......再び針を過去に戻しましょう。図らずとも学園都市最強に勝利してしまったサソリ様。その噂は一夜にして広がり始め、一週間もすると噂から紛れもない事実へと変貌を遂げます。燻り始める野望の数々、サソリ様の身体の変調......そして今となっては伝説となった学園都市を巻き込む一大派閥がついに立ち上がります!驚きと興奮の転生譚を御賞味あれ!!!あ、私の活躍しますよ」

 

フウエイはチャクラ糸を伸ばして、赤い髪の少年を操り始めた。

 

******

 

ミサカはあの時に死ぬ予定でした

脚を取られ、腕を捥がれ、失血により朦朧とする意識の中で思い出すのは、お姉さまとサソリ様。

クローンの代金18万円の安物で替えの効く人形。

在庫にして9968体もある存在。

死んでも誰も悲しまないと思っていた。

真上から迫る圧迫感と月光を遮る影。

何度と経験した『死』が迫っているのを肌で実感した。

頭での、記憶での、ネットワークで知った知識なんかと比較にならない程の息苦しさを感じる。

 

恐怖なんて感じない

送られてくる神経信号は、破砕した腕や脚の先の幻肢痛と呼吸のし辛さ、暗い影、温かみが抜けていく血の滴り。

全部、現実の物理的信号。

 

ミサカは人形......

誰も悲しまない存在

死んで価値が出るモノ

 

「お姉さま......サソリ様」

独り言のように末期の最後の遺言を絞り出すようにミサカは感謝が反射的に押し潰されそうな肺から溢れ落ちるように静かに湧いた。

「......大好きです」

 

時間が亡くなる

データとしてミサカの記憶はネットワークに共有されて、次の実験に繋がる。

何も見えない

何も感じない

何も聴こえない

 

ミサカのこの気持ちも一緒に送られるのでしょうか?

師匠......

大切な傀儡を壊してごめんなさい

お姉さま......

チョコミントのアイスを盗み食いしてごめんなさい

バッジを取り返そうとした手を振り払ってごめんなさい

......悲しい顔をさせてごめんなさい

また......逢いたいです

いつか、実験とは関係なくサソリ様とお姉さまと過ごしたい

でもお別れですね

 

これで検体番号9982号

第9982次実験は終わります

 

気持ち悪い......

痛い......

イ、嫌です

もう、サソリ様にもお姉さまにも会えないなんて嫌だ

生きたい

もっと生きて色んな事を知りたか......

 

狭まる視界の端で空間が歪み始めて、サソリがミサカの腕を掴むと歪んだ空間の中へと引きずり込んだ。

 

 

「......!?」

ミサカは薄明かりのぼやけた視界から眼を覚ました。

提灯のような淡い光が揺らめく中でミサカは台のような場所にちょこんと座っていた。

全ての物体が大きく見える。

 

「こ、ここは?」

と辺りを見渡していると、台の下に赤い髪をした師匠が呼吸音が分かるくらいな荒い息をして、台に背中を付けて腕をダラリと垂らしていた。

「はあはあ......」

「し、師匠?」

ミサカは、身軽な成りで台から頭を下げて顔色が悪くなっているサソリを横から眺めた。

 

「気付いたか......賭けは成功したようだ」

大義そうに立ち上がると、フラフラとした足取りでミサカの隣に座った。

そして、現在の状況についていけないミサカに説明するかのように腕を掴むと視界に注意深く放り込む。

 

それは今まで知っている温かみのあるクローン体の腕ではなく木製の人形の腕だった。

いや、それだけではない。

身体全体が小さくなり、動く度に関節が軋むような音がした。

 

「お前は今日から俺のコレクションだ......いいか、俺の傀儡だ......オレの命令があるまで死ぬことは許さん」

 

死んで初めて価値があるミサカは目を丸くした。

身体が傀儡になった衝撃よりも大切な人の命令を聴くのが嬉しかった。

状況を整理する前にミサカは声を出す。

 

押し潰されたはずの身体から

死が迫る冷たさから

視えないはずの世界に向けて

聴こえないはずの耳に向けて

感じることなんか許されない場所へ

叫ぶように、力強く

 

「はい!!!」

声というよりは、野生動物に近い泣き声かもしれない。

ミサカの死んだ時計の針は再び、大きな唸りを上げて回り始めた。

 

******

 

みゅーたんとニュース速報

(朗報)学園都市第一位が倒される(画像有り)

学園都市第一位の一方通行(アクセラレータ)が謎の赤い髪をした少年にフルボッコにされる様子が確認された。

 

画像表示(サソリが一方通行の顔面を殴っている画像)

 

1:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

ザマァァwwwwwwwww

 

2:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

マジで!?

誰なん?

 

3:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

血出してるwwwww

アイツって赤い血だったんだwwwwww

 

4:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

負け犬人生エンジョイしてなーw

 

5:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

倒した赤い髪の人誰?

全然知らないんだけど

 

6:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

意外にイケメンじゃねw

俺には負けるけど

 

7:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

<<6つ鏡

 

8:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

あれ?

これってレベルアッパー事件の時にもいなかったっけ?

 

9:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

って事はコイツ倒せば第一位?

夢が広がりんぐw

 

10:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

大人しくキーボードでも叩いてな

第一位に喧嘩で勝つってどんだけだよ

 

11:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

レベルアッパーって前にあった奴?

あれって常盤台のエースじゃなかった?

 

12:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

エースと一緒にいたはず

確か画像があった

 

13:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

今度はコイツを狙えば良いんやなw

背後から金属バットでおk

 

14:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

レベルアッパーの時にお世話になっておいて、この手の平返しwww

 

15:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

画像表示(写輪眼を開眼したサソリが高速で印を結んでいる画像)

 

あったあった

 

16:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

やってねーよ情弱

 

17:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

イケメンでワロタ

カラコンやってんの?

 

18:とある名無し脱能力者(レベル-1)

何処の誰だよwwwww

誰も調べにいかねぇwwww

 

19:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

いや、調べてんだけど

ない

 

19:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

嘘だろ?

 

20:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

ま、マジでねぇ

能力も一切不明

 

21:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

!?

わい、ボコられたわ

 

22:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

おっ!?

被害者がおったか

どちらさん?

 

23:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

警戒するほどじゃなかったぜ

あっちもギリギリみたいだったし

そこら辺適当に締め上げれば、でるんじゃね?

 

24:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

見つけ次第ぶっ殺せば良いぞよ

 

25:とある名無しの脱能力者(レベル-1)

wwwww通り魔乙

 

 

とあるインターネット上の掲示板サイトから始まった衝撃的な書き込みから、爆発的にこの噂は広がっていった。

学園都市最強が敗れたという、あまりにもセンセーショナルな話題。

絶対的な序列によって保たれていた学園都市のヒエラルキーが大きく変わり始め、赤い髪の少年が面目上第一位となってしまった。

この書き込みを見ていた不良達は赤い髪の人を無差別に襲い始めた。

これは後『赤髪狩り』と名前が付けられる事件に加速的に発展していく。

 

最強という甘美なる果実を求めて......

 

その日を境にして、赤い髪をした学生が路地裏に引きずり込まれて、集団による脅迫、暴行、監禁などの事案が発生し、風紀委員(ジャッジメント)が鎮圧に乗り出した。

 

******

 

「よし......っと」

エプロン姿の佐天涙子はバターを塗った豊富な種類のクッキーをオーブンに入れると戸を閉めて設定をしていく。

「あとは焼き上がるのを待つだけですね」

設定をすると加熱がスタートしてクッキーの香ばしい匂いが部屋一面に広がった。

「ごめんね佐天さん。無理言って台所使わせてもらって」

同じくエプロンを着た御坂が使い終わったボールとかき混ぜたゴムベラを流しに片付けていく。

 

「いえ、それは全然かまわないんですけど。クッキー作るならウチのしょぼいオーブンより御坂さんの寮の方が機材揃ってるんじゃ......」

「あ......いや......寮の厨房だと色々とね」

 

予想され得る反応

白井黒子の場合

お姉様、それはどちらに?

サソリにですの?

ギョワァァー!お姉様まで......

 

湾内絹保の場合

サソリさんにでしたら、私が調理しますわ

......あとでサソリさんに詳しく質問しますわ(包丁片手に)

 

その他

きゃー(ハート)

 

少なからず、あのハーレム野郎で鈍感バカにお礼をするためにはここまで配慮しなければならない事に御坂はゲンナリしながら肩を落とした。

「ちょっと......ね」

「サソリにですか。喜ぶと思いますよ。サソリってこういう事された事ないですから」

「!?」

御坂が顔を真っ赤にさせて生地をかき混ぜたボールをゴトリと落とした。

 

「ふふふ......」

佐天は優しく子供達を見守る近所のおばちゃんのように自慢げにニコッと笑いながら頭に巻いたバンダナを外して、丁寧に折り畳む。

「べ、別にアイツを喜ばそうとか考えてないわよ!ただ、アイツに借りを作っちゃったから......その」

言葉の末尾になるに従って声の張りが無くなり、ボソボソと呟くようになった。

『お礼』という事を自覚するのが癪だったり、独りではどうにもならなかった事を解決してくれた事への自分の不甲斐なさや恥ずかしさだったり、グルグルと感情が入り乱れている。

 

お姉さま......御坂は幸せです

 

何より死んでしまったと思い込んでいたミサカを生かしてくれた事が今回の手作りクッキーを選択した大きな要因だった。

 

「びっくりしましたよ。初春から連絡が入った時は......無我夢中で駆け付けましたけど......あたしじゃ頼りにならないと思いますけど、相談してくれると嬉しいです」

その顔はどこか寂しげだった。

 

困った事があったら相談して欲しい。

佐天がレベルアッパー事件に巻き込まれた時に御坂も感じた寂しさだ。

それなのに、いざ自分の番になったら困ったり、疑心暗鬼になったりして相談することも出来なかった。

 

サソリは全て分かっている風にそっと手を差し伸べてくれた。

なんか常盤台のエースや学園都市第三位なんてモノが酷くちっぽけで悲しく思えてしまう。

第一位でさえ、あんな悲惨な実験に加担している事もある。

超能力者(レベル5)という肩書きが金属音を立てて崩れ落ちた気がした。

 

「あぅ......ゴメン。あたしも何が何だか分からなくなって湾内さんやサソリに迷惑掛けちゃったし。以後気をつけます......」

何も言い返せない。

 

「ーーで、ひょっとして御坂さんもサソリが好きになったとか?」

「す......は!?アイツをあたしが!」

御坂が沸騰したやかんのように真っ赤になると否定しながら後退した。

すると、テーブルに腰をぶつけて薄力粉が床に落ちていき、辺りに白い靄が立ち込めた。

「ギャーーー!薄力粉がっ!?おわ、卵もッ!!」

盛大にやらかしてしまい御坂は薄力粉の粉を吸い込んだらしく、いがらっぽい咳をしていた。

 

ん?御坂さんも??

 

チラリと御坂が佐天を見るとテーブルに肘を突いて佐天が照れ臭そうに笑っていた。

「あたしもサソリが好きだなぁ......って思いましてね。サソリが居たから動けたし、サソリが居たから本当の自分にも気付けた。みんなサソリが好きなんだと思います」

 

ぶっきらぼうで短気で口が悪いけど

子供っぽい所もあるけど

あたし達の中で誰かが困っていたら、迷わずに助けに入ってくる

ピンチの時には歳上のように頼りがいのある奴になるし、見捨てない

 

「これが好きって感情か分かりませんけど......サソリやみんなと居ると毎日が驚きだし、何より楽しいんですよ」

ニシシと歯を見せながらイタズラな笑みを浮かべている佐天に御坂が思わず頬を押さえた。

「もうー!佐天さんのせいでどんな顔してサソリに会えば良いか分からなくなったわよ!」

「ありゃま」

 

******

 

ジャッジメント本部では初春と白井が通称『赤髪狩り』の暴行事件の対応に追われていた。

 

「やはり赤い髪をした人が集中的に襲われているみたいですわね......」

「今週で既に40件近く。何か意味があるのでしょうか?」

モニターに映し出されている折れ線グラフを見ながら二人で会議をしている。

今週に入ってからというもの赤髪の男女問わずに襲われているという摩訶不思議な現象に白井は難しい顔をした。

「まだ分かりませんわね.....何かのメッセージ?」

 

「メッセージですか?」

「そうですわね......誰かに対する警告の可能性もありますわね」

「けえこく?」

「......犯人は赤い髪に強い怨みが......!?」

黒い髪をした少女が背伸びをしながら、初春達が見ているモニターを一生懸命背伸びをしながら観ていた。

 

「!?」

「ふ、フウエイちゃん!?」

フウエイは、クルッと首だけを半回転させて驚いている白井達を見上げた。

ホラー紛いの演出に白井が思わず、飛び退く。

 

注)メンバーには、サソリが超技術で造りあげた生きた人形であると説明してある。

 

「どうして此処に?」

ジャッジメント本部への扉は厳重にロックされており、専用IDとパスワードがないと入れないはずなのだが......

「えっとね〜。グルグルってなってビューンって飛んできたの」

両腕を回しながら、鋭く斜め上に腕を突き出した。

 

「んが!?」

「あ!ごめん」

フウエイの突き出した腕がパソコンの操作をしている初春の喉に地獄突きをした。

 

???

何処から?

 

「さ、サソリはどうしましたの?ちゃんと言ってあるんですの?」

白井が腰を屈めてフウエイと目の高さを合わせる。

「パパ?いつも寝てばっかだからつまんないの」

不機嫌そうに口を尖らせるフウエイ。

「そうなんですか?やはり、前の疲れが出ているんですかね......心配ですね」

初春が地獄突きされた首横を押さえながら、首をグルグル回転させている妙な人形を眺めた。

 

「わぁー、世界が回ってるるる〜」

「全くサソリも変なモノを造りましたわね。はいはい、首は回さないの」

「はーい!がしゃん」

首をはめてクルッとジャンプして一回転した。

 

「赤い髪に強い怨みですか......?」

初春が首を傾げた。

「例えば......立派な海兵にしようと思って鍛えていたのに、フラって現れた赤髪の人に唆されて海賊になってしまったとか」

「それは、違う漫画!海兵がいるんですか?」

 

注)某大秘宝を追い求める海賊アドベンチャー漫画の事です。

 

「くろだ」

フウエイの声がしたので白井は後ろを向くと小さい身体を活かして、白井の履いているスカートに頭を突っ込んでいた。

 

「!!?な、何をしてますの!!?」

慌ててスカートを閉じるとフウエイの体勢が崩れて尻餅をついた。

「あうた......えへへ」

ニコニコとした無垢の笑顔に顔を赤くしてスカートを防御している白井は毒っ気を抜かれる。

「......サソリに説教ですわね」

 

受け継がれる『B(黒髪)』の意志......

 

初春はギュッと自分のスカートの先を固めるように脚を揃える。

 

すると、ジャッジメントの通報用の電話が鳴り出して、初春が慌ててスイッチを切り替えて対応した。

「......はいジャッジメントです。はい、はい......分かりましたすぐに向かいます」

スイッチを切り、通報を終えると白井に真剣な表情で見上げた。

 

「また赤髪狩りが出たみたいです」

「......分かりましたわ。原因が分かりませんが、やるだけの事をしますわよ」

「はい、場所はこちらになります」

「では行ってきますわ。何かありましたら、連絡してくださいな」

 

白井は軽く腕を曲げたり伸ばしたりすると座標の演算を始めて、テレポートの能力を発動した。

会話していた相手が急に居なくなり、部屋の静寂さが際立ってきた。

「あ!そうでした。フウエイちゃん、何か食べます......?」

しかし、部屋の中を幾ら探してもフウエイの姿は無く、軽く顔を引きつらせていった。

 

「ま、まさか......白井さんに?」

 

初春は転びながら、白井の携帯電話に電話をかけ始めた。

白井がテレポートした瞬間から消えたフウエイ。

考えられる結論は一つだけだった。

 

そして、赤髪狩りの魔の手は本人は自覚していないが白井も標的になっていることも......


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