pso2仮想戦記二年前の戦争   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

5 / 46
5話 反乱勃発‼︎船団燃ゆ

第一艦隊は旗艦とその麾下の艦隊は修理と補給を終え、一路リリーパに向かっていた。途中で敵分遣艦隊と戦闘これを殲滅し、航海は順調に進んでいた。然し、物事が順調ばかりに進むのなら人間は苦労と言うものを知らずに生きられたであろう。リリーパが肉眼で捉えられる程の距離に艦隊が近づいた位であろうか。それは起こった。艦橋内に警報が鳴り響いた。『提督‼︎船団本営より至急電です‼︎』

通信兵が叫んだ。タクミは、『パネルに出せ』と下令したパネルに若い本営付きの通信兵が映し出された。

『第一艦隊応答願います!こちら大本営指令室‼︎第一艦隊応答願います!』『こちら第一艦隊のF提督だ。状況を説明せよ。』タクミは落ち着いてそう答えた。

『緊急事態です!オラクル防衛軍の一部が反乱を起こし、大本営以下アークス関連施設を包囲しました。船団直営隊も壊滅で、おまけに建造が完了した守護衛士級5番艦アキレスを鹵獲され、状況はもうなんて言うか…その壊滅的です‼︎』『落ち着け!兎に角何が起こってるかデータをこちらに送れ!それと誰が主犯なんだ‼︎』『政府です‼︎』

これを最後に通信は途絶えた。

艦橋内、鎮座していた幕僚達はみんな言葉を発さなかった。ある者は、予想通りになったと閉口し、ある者は、呆れて物が言えず、ある者は、信じられないといった感じであった。タクミに至っては既にこれが起こることは予期こそしていたものの、自分が出撃して直ぐに起こるとは思わず、何とも言えない表情をしていた。やがて彼は口を開いた。『これより幕僚会議を開く。各幕僚は30分後に集結されたし』かくしてタクミの幕僚達は集まった。先ずは艦隊の任務についてだった。この時第一艦隊は惑星リリーパ採掘基地がダーカー六万五千体の包囲軍に囲まれており、基地を守っているのは僅か三千の将兵であった。それを救援する為に、兵力150万(内50万は戦闘兵力)を持ってして援軍に駆けつけていた。だがオラクル船団が内乱状態になった今、リリーパに構っている暇は無かった。かといって、三千の将兵を見殺しにすることも出来ない。だが50万の、将兵を降ろし、大軍を率いている時間は無かった。何より、政府軍を相手にすると言うことは、船団内外で戦わねばならないと言うことを意味しており、戦力を失うわけにはいかなかったのだ。『それなら俺が行こう。』そう声をあげたのは、この初老の男だ。然し、若い時は相当な美男子だったのだろうか、初老になってもその顔つきは一切変わらず、今でも女に困る事の無いであろうマスクを持ち、見るからに強靭であろう体つきをしているこの男は名をフリードリヒ・ケンプ・オイゲンといい階級は准将である。この男はタクミの父の戦友であり、数年前の惑星アムドゥスキアにて起こった、龍族とアークスの初の大規模軍事衝突において互いに武勲を建てた。然し、タクミの父は敵の大将と騎馬の一騎討ちにてあいうちになり戦死、フリードリヒ自身も戦友を失った為にアークスを退役したが、彼の友の遺言に従い、彼の子であるタクミを鍛えた。言うなれば二人は師弟の関係であった。フリードリヒは防衛軍発足時に功績を買われ、防衛軍最精鋭擲弾兵連隊ポツダム連隊を任せられ、タクミの第一艦隊に乗り込んでいた。

『然し、いくら精鋭ポツダム連隊一千名といえど、包囲軍六万五千に対して、守備兵含め四千の兵力で敵にあたるなど自殺行為ではありませんか?』と心配そうにアリス航海長は言った。それに対しタクミは、『大丈夫だよ、アリス大尉。し…准将ならきっと持ち堪えてくれる。』

『その通りだ。だがな提督直ぐに戻ってきてくださいよ?長くは持ち堪えられないと思うからね。』フリードリヒはそう答えた。『ポツダム連隊は直ちに降下‼︎戦線を維持せよ‼︎』タクミは大きく下令した。フリードリヒは踵を返すと自動ドアに消えていった。タクミは師匠の背中を見送った。かくして第一艦隊とポツダム連隊は別れた。このリリーパに置いて、ポツダム連隊は鬼神の如く戦い、敵味方双方に恐れられる事になるのだが、今は語らないでおく。

艦隊は猛スピードで船団に向かっていた。その間彼は第二、第三艦隊を呼び出していた。かくしてパネルに四つの顔が映し出された。第二艦隊提督のジャン中将とジョーゼフ少将と第三艦隊提督のバルバラ少将と第三艦隊指揮官候補生のフーリエ中尉である。先ずジャンとジョーゼフは互いに数十年も昔からアークスとして活躍しており、その老練した戦いは場所を問わないという事で、二人は第二艦隊を預かる事になった。旗艦は、守護衛士級一番艦守護衛士(ガーディアン)第三艦隊のバルバラ少将は以前はアークス教官であったが防衛軍発足時の指揮官不足により現役復帰し、栄達した指揮力を買われ、第三艦隊の提督に就いている。フーリエは歳はタクミと同い年であるが、惑星リリーパに住むリリーパ族との交流の、架け橋になるなど若いながら功績を残しており、その才覚を買われ、第三艦隊指揮官候補生の中尉として艦隊に乗り込んでいた。旗艦は、守護衛士級三番艦ホウショウである。ホウショウは他のガーディアンとは違って後部の形状が異なっている。後部は横に長く、200機を超える艦載機を収容できるように改造されており、位置的には航空戦艦に違い。因みにバルバラは二年前にゲルマン系ヒューマンと結婚しており三十代半ばにして一児の母となっている。それぞれの面々が画面越しでオラクル船団主力艦隊指揮官の顔を見ていた。そしてタクミはオラクル船団の内乱状態を説明した。そしてそれぞれが各々の航路をたどり、障害となる艦隊は撃滅しつつ進むと決まった。然し、彼らには不安要素があった。タクミが遣わした通報艦によると反乱側に五番艦アキレスが第五艦隊の半数近くの戦力を持って、参加した事、身動きが取れない第四艦隊旗艦ムスタファーは乗組員が降ろされ、接収されるのも時間の問題だという事、既に船団内では、反乱を起こした政治家たちに反対的だった僅かな政治家たちの粛清を開始し、反乱側に支持する民衆と反対する民衆または反乱軍と民衆が激突し既に民間人に約五千の死傷者を出してしまっていると言う事だった。

三艦隊の行方には、分遣艦隊が三つ合わさって出来た聯合艦隊がそれぞれの航路に立ち塞がっており、その何れか一つにアキレスが混じっているという事だった。

『アキレスの艦首にはワシらのガーディアンと同じく下部に要塞砲クラスの大出力巨大レーザー砲が搭載されておる。これを食らえば、艦隊はひとたまりもない。』とジャン中将は言った。それに対し、タクミは『ならば、アキレスはそれを撃てば、大きく隙が出来るということ、つまり巨大レーザー砲は回避すれば良い。』『どう回避するつもりなのかしら?』バルバスは尋ねた。光の速さで動く巨大なレーザーの塊を避けれる筈など無いからだ。タクミは『ならば我らは光の速度を超えて、回避すれば良い。』

フーリエは答えが分かった。『ワープですね?』

『その通り‼︎ワープです。』『成る程ワープか確かにそれなら避けれる。だがタイミングが生死を分ける。』タクミの案にジョーゼフは感心した。しかし、これはタイミングが重要だった。失敗すれば跡形も無く消滅する。

だからこそ、効果がある。タクミはそう考えていた。

そして何より、『アキレスは間違いなく、このスサノオを止めに来る。』彼はそう確信していた。その為にこんな危険な案を考えついたのだろう。『兎に角、今は、無事に船団にて逢おう。』ジャン中将はそう言い、通信を切り、もう一方も同じように通信を切った。タクミは、直ぐに艦隊に増速をかけるように指示を出した。時間がない。

政治家たちが船団を掌握しては全てが手遅れになる。それぞれの思いがこの宇宙を交差していた。

 




第5話です。また一人タクミ一党の顔ぶれが明らかになりました。銀英伝で言うところのシェーンコップの、ような立ち位置にいる人です。彼の率いるポツダム連隊は、プロイセン王フリードリヒ1世が編成したポツダム巨人連隊がモチーフで擲弾歩兵連隊でもあった事から、そこから持ってきました。そしてまさかのバルバラが人妻…wwwでも彼女隠れているけど、エメラルドの美しい瞳を持っているため、こういうのでも良いかなと思い書きましたw
さて次回は第一艦隊対反乱軍第一艦隊(防衛軍第五艦隊)との戦闘がメインです。そして、主人公が反乱を起こした政治家達を口汚く批判しますw

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。