pso2仮想戦記二年前の戦争   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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16話 大遠征軍出撃‼︎第10次Schloss von Gott(神の城)要塞攻略戦 1

10月2日、オラクル首都の国防軍大本営にアークス首脳陣、国防軍首脳陣、そしてオラクルの保有する大中小問わず数百の艦隊司令官と参謀が集まった。理由は、このオラクルから長駆遠征し、ダーカーの本拠地を破壊、ひいては深遠なる闇の完全破壊を目的とした大遠征の軍議であった。

この大遠征を立案したのはベルナジューという若い将校であった。内容は銀河外縁から銀河系の外に通じているアルカリスク回廊を通り、銀河系の外から19万光年先の銀河系に広がるダーカー支配圏を正義の大軍勢を持って解放するというものだった。ここで物語の舞台の宇宙の構図を話さねばならない。銀河中心に位置するオラクルや諸惑星を初めてとした銀河系、その十数万光年先にふた回り大きい銀河系があり、銀河系まるまるダーカーの支配圏になっている。この二つの銀河の中心にタクミ達の銀河系とほぼ同じ大きさを誇るもう一つの銀河系があり、そこにオラキオ王国や、グラール太陽系…改グラール及びその他惑星国家連合はそこにあり、オラクルとは別路線でダーカーと戦っている。この3つの銀河系はそれぞれ回廊によってつながっている。この三銀河は航行不能の宙域が交差しており、おいそれと艦を進める事が出来ないのだ。そのためもし、航行不能宙域に出れば、船体が耐えられず崩壊してしまう。その中を通過可能なのが回廊である。その回廊がこの三銀河を結んでいるのだ。だが近年、もう1つの回廊を発見したのだ。それは三銀河を結ぶ回廊の間の航行不能宙域の中央に存在した。銀河を結ぶ三回廊のどれよりも広く、大艦隊を通過させるのも容易であった。この回廊を通り、遠征を行うというのだ。然し、問題点はある。

それはこの回廊内に一切の居住可能惑星及び要塞や基地の類が無い。つまりこの回廊を通った場合、無補給を強要されるだけで無く、補給線寸断を起こせば、退却するのも困難であった。回廊に入って、出れるか、出れないかというギリギリのラインで艦隊のエネルギーは切れてしまうからである。実はその点を含めた幾つかの問題を提示してタクミ達は反対していた。この軍議とリリーパ会戦の間に一ヶ月の期間があった。その一ヶ月の間に様々な問題や事件が起きていた。内乱の元凶であり未だ生き残っていた反乱軍残党の始末。惑星アムドゥスキアにてオラクルと共に生きる事を良しとしない龍族の内乱鎮圧支援。ウォパルやリリーパにおける原生種の暴走。とてもでは無いが、大戦力を送るような余裕は無かったのだ。

 

そんな状態ではあったが軍議は行われた。『以上が今作戦の内容であります。大戦力を持って長駆遠征し、ダーカー支配圏を正義の大軍勢を持って解放する‼︎横合いから分断せんとする輩は大軍を持って撃滅する。』ベルナジューは熱意を持ってこの遠征作戦の意義を強調した。多数の提督達はこれに好意的な態度をとった。オラクル国防軍大元帥スミルノフは、この作戦を承認する気になったが、ネルソン艦隊司令長官やウルクアークス総司令官の表情が優れない事を目に取った。ネルソンと同年代で衰えを極めつつもかつては勇名を馳せた人物であったから、彼らの意見を聞こうという気を起こした。『ネルソン元帥、何か思うところでも?』

ネルソンは席から立ち上がってこう反論した。『長駆遠征なさることは確かにこの戦いを終わらせる上で必ず必要な事でしょう。ですが我が領内にはこの遠征をやるには不安要素が多すぎます。先のアムドゥスキアの内乱鎮圧やリリーパ、ウォパルの原生種暴走。いささか戦力が足らん気がしますが?』ベルナジューはこれに対し、『原生種がなんです?あの獣畜生共に何が出来るというのです?それに龍族などのような野蛮人共に戦力を割く必要性もありません。やがて彼らは我らの勝利をしり、無益な争いを止め、進んで我らに加担するでしょう。』『野蛮人とは聞き捨てなりませんな?』とこれに対し異を唱えたのが、タクミであった。『龍族を野蛮人とベルナジュー少将は仰いましたが、これは失礼ではありませんか?彼ら龍族と我々は同盟の間柄つまり同志です。その友人たる彼らを…いや同じ人類たる彼らを野蛮人とまるで獣の如く扱うのは民主主義の軍人として恥すべきところであると思います。それに作戦案で我が軍の大軍が大挙として1つの列を作り進撃出来るとは思えません。ダーカーの、少なくとも3割、多くて半数の戦力を手中を収めるアウグスト・シュヴァーベンがあの戦争の天才が手をこまねいて見ているはずがありません。恐らく、最も取るべき行動は先ほどベルナジュー少将が言った通りに横から分断せんとする事でしょうが、恐らくこれは成功してしまいます。我らはその中に補給路を建設しなければならない挙句、この列は各艦隊の行動を阻害しあってしまいます。そして薄い薄氷のような箇所を見つければ、容赦無く寸断するでしょう。ここは先ず、国防を優先するべく、Schloss von Gott(神の城)要塞の攻略を先決なさるべきかと思います。』『成る程、龍族は人と見なければならないか…閣下はアークスとして数々の同僚や、友人、そしてお父君を殺したのは誰かという事をお忘れになられたようだ。彼らは所詮敵ではありませんか?それを同志と呼ぶなど国家に対し不敬ではありませんか!それと閣下は慎重のご様子、ですが敵がその様な事を出来るとは思えません。2000万将兵を乗せた数百万隻の艦隊を目にして戦える敵など存在しません!Schloss von Gott(神の城)要塞に至っては要塞守備戦力のたかだか2万隻。長駆遠征を完了しまえば無視して然るべきではありませんか?』『それはあくまで戦術レベルでは確かに脅威では無いでしょう。ですが戦略レベルでは敗北は免れません。我らが船団から離れれば、我が領内は手薄です。そして我らが第二銀河を解放するよりも早くに船団は殲滅されてしまいます。…長駆遠征をなさるのであればやれば宜しいでしょう。我が国民もそれを望んでいます。だがその前に後故の憂いを絶ち、盤石の態勢をもって当たるべきと思います。』ベルナジューは尚も、そうであったとしても必要なし!と言いたかったのだろうがタクミが折れた事や、正論が出て諸提督も納得してしまったためかスミルノフ大元帥も静止の合図を送った為、ベルナジューもここは黙った。決議は、長駆遠征を行う際の方針、作戦はベルナジューのもので行くと決まり、並行して行っていたオラクル政府の各省大臣達によって行われる民主的(閉鎖されていて何処が民主的だろうか)な会議によって遠征するか否かを決めた。結果は半々であったが僅かな差で遠征が決定した。その反対側にフレーゲルの政治家としての師匠である。武田厚生労働大臣、アフマド国土交通相大臣が居たが、その中にこの遠征を行うかの決議を取ると言いだしたマッケンジー首相も居た事は皆を驚愕させたが、彼としては、遠征などどうでも良く、国民の戦意と愛国心を煽る材料として使っただけであり、その目的も達し、無謀である事も分かっていたからであった。因みにベルナジューは作戦案をマッケンジーに私的なルートで提出していた事が後に分かった。

 

大遠征に備えて、艦隊は増強された。パトロール艦隊は2000隻から4000隻に、駐屯艦隊は5000から艦隊にもよるが8000〜1万隻、戦闘艦隊は旗艦が守護衛士級の場合1万5000隻から1万8000隻に、大和級であれば2万隻から2万5000隻に及び、分艦隊(オラクル国防軍艦隊は本隊合わせて4個分艦隊で構成する)構成数6250隻である。よって艦隊の構成将兵も増員された。第一艦隊には分艦隊司令官として、エドワードと攻勢と多勢との戦いに置いて定評のあるヒューズという中年将校を艦隊幕僚に加えた。そしてもう一人加えた。経理を担当するルイ少将も加えられた。ルイはタクミ達の先輩であり、秀才であり後方勤務のエキスパートである。歳は29歳で同い年の妻と2歳の娘を持つ。更に、未成年のアークスや兵士も艦隊に加えると本営から沙汰があり、補充兵の内300名が未成年でありその代表としてアークス3名がタクミの元に訪れる事になっていた。『オラクルは未成年を戦場に出すのは、アークス時代からやってるからね。あまり珍しくも無いのだろうけど、未来の国を作る子供達を戦わせるのはやはり大人としてはやりたく無いな。』とタクミはアリスに淹れて貰った紅茶を啜っていた。『閣下、そろそろ代表の3名が来るはずです。お通しする準備をしても?』『アリス少佐の宜しきように〜』とタクミは気怠く返し、アリスもクスクス微笑しながら部屋を出た。暫くして、準備が出来たのかアリスは部屋に戻ってきた。『代表者3名を連れてまいりました。』『ご苦労さま』ノックが3回ほど起きた。『どうぞ』とタクミは返すと『失礼致します!』と若い三人の男女の声が帰ってきて、タクミは驚きのあまりに紅茶を吹き出した。タクミは驚きと喜びの声をあげた。『まさか…嘘だろ?イオ!ルベルト!ロッティ!』タクミは若いアークス達の名を呼んだ。一人はデューマンの少女で、一人はヒューマンの少年で、一人はニューマンの少女であった。三人はお手本通りの敬礼をしていたがタクミの感嘆の声に気を良くし敬礼を下げた。『先輩、じゃなくってF提督お久しぶりです!』イオの挨拶に続けて、『お久しぶりです閣下‼︎』と挨拶を行った。『300名共々よろしくお願いします‼︎』と三人で声を揃えたものだ。タクミはすっかり成長した三人を見て、ただひたすら祝福してやった。そこにアリスが三人に目配せを送った。三人も目で合図をした。これは何かを企んでる時にやる常套手段だ。ロッティはタクミに話しかけた。『閣下。もう一人紹介したい人が居るんです。お呼びしても良いですか?』『おっ!誰だい?君達の友達?』とこの後輩が可愛くてしょうがない提督は完全に惚けていた。そして四人がニヤリと笑うと、『どうぞお入りください‼︎』と口を揃えた。そしてドアから入ってきたその人を見て、タクミはおもわずティーカップを落とした。

パリンッ!と乾いた音を立てた部屋に入ってきたのは、マトイだった。タクミも開いた口が塞がらないといった感じであった。『タクミ…宜しくね?』マトイの言葉でタクミは我に返った。『な、なんで君が、なんで貴女が…そんな辞令も、そもそも私は君にはこんな所に来てほしくは…』とタクミは悲痛な返事をした。だがマトイは強く押した!『タクミの力になりたい!私も戦えるよ!』タクミは部屋にいる者の顔を見た。みな頷き、おまけに何処から聞いてきたのか、フリードリヒやガブリエル、アースグリムに、グリッドマンまでドアからこっちを覗いて頷く始末だ。タクミは察した。タクミと一緒に戦いたいとマトイが、シャオかウルクあたりに言ったのだろう。そこに大本営の連中と艦隊幕僚が乗っかり、こういう大イベントにしてしまったのだ。つまりアークス広報担当のシー女史曰くyou付き合っちゃいなよ!という事だった。どんなに姿を変えようとアークスはアークスであり、仲間の幸せの為にここまでやるのである。(しかもクリスマスとかハロウィンなればアークスシップ一隻を丸々使ってパーティーする位である)こうしてタクミは波乱万丈の大遠征に行く事になるのである。


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