SIREN(サイレン)/小説   作:ドラ麦茶

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第七話 牧野慶 大字粗戸/眞魚川岸辺 初日/五時〇三分〇七秒

 大字荒戸の眞魚川の河川敷の小道を、牧野(まきの)(けい)はフラフラとさ迷い歩いていた。八月を迎えたばかりのこの時期は夜でも蒸し暑い。にもかかわらず、牧野が着ているのは全身を覆う厚手の修道服だ。羽生蛇村の信仰の中心・眞魚教の求導士のみが着ることが許されているものである。

 

 もうすぐ陽が上る時間だが、深夜から雨が降り続いており、空は黒雲に覆われているのだろう、周囲はまだ真っ暗だ。牧野は明かりを持っていない。しかし、不思議と、うっすら周囲の様子を見ることができる。いったい、どうなっているのか。

 

 強い風が吹いた。牧野は風を遮るように右手で顔を隠す。正面から何かが飛んできて、牧野の顔を覆った。驚き、慌てて引き剥がす。見慣れた赤い布だった。眞魚教の求導女が顔を覆うために使うベールである。眞魚教に求導女は八尾比沙子しかいないから、彼女のもので間違いないだろう。彼女はここに来たのだろうか?

 

 牧野が八尾比沙子のことを考えていると、突然、これまでに経験したことが無いほどの激しい頭痛に襲われた。頭を抱えてうずくまる。目を閉じ、歯を食いしばり、痛みに耐える。

 

 その、閉ざされた目に、別の映像が映った。

 

 包丁を持って周囲を伺う映像……拳銃を持って街を徘徊する映像……ハンマーで板に釘を打ちつける映像……畑の草を刈る映像……いくつかの映像がテレビのザッピングのように切り替わった後、頭痛は嘘のように治まった。顔を上げる牧野。今のはまさか、幻視か? なぜ私が、幻視を行うことができるのだ? そして、今の幻視で見えたのは、人ではない者の姿。あれは……屍人だ。牧野はめまいを覚えた。突如降り出した赤い雨、血に染まったかのような赤い川、幻視、屍人……眞魚教の聖典・天地救之伝(てんちすくいのつたえ)末世過乱ノ事(まつせからんのこと)に書かれてあることと一致する。やはり、私の行った儀式は失敗だったのだろうか? だが、一体何がいけなかったのか? 儀式は手順通り行ったはずだ。余所者に見られはしたが、それが失敗に繋がるとは思えない。

 

 牧野は、風に運ばれてきた八尾比沙子のベールを、じっと見つめる。

 

 ――ああ……八尾さん、今どこに……私は、これからどうすれば……。

 

 牧野は、まるで母の温もりを求める幼い子供のように、八尾比沙子のベールに顔をうずめた。

 

 

 

 

 

 

 牧野慶は、羽生蛇村のほとんどの住人が信仰する宗教・眞魚教の求導士(きゅうどうし)だ。まだ二十七歳という若さだが、父である先代の求導士が十五年前に急死してしまったため、弱冠十二歳で今の地位に就いた。もちろん、まだ子供と言える年齢の者に務まるような職ではない。牧野慶が求導士に就いてしばらくの間、実質的に眞魚教を取り仕切ってきたのは、求導女である八尾比沙子だった。

 

 その後、八尾の後見のもと牧野は成人し、今では信者から敬われる立派な求導士へと成長した。

 

 いや、正しくは、信者からは立派な求導士へと成長したと思われていた。

 

 実際の所は違う。

 

 牧野は、表向きは眞魚教を取り仕切ってはいるものの、裏では十二歳の頃と何も変わっていなかった。二十七歳の今でも、八尾比沙子の保護の元でないと、務めを満足に果たすことができない状態なのである。それは、母離れできない息子のようなものだった。昨晩行われた儀式も、信者の前では自らが先導して行っているように振る舞ってはいたが、全て、八尾比沙子の指示通りに行ったことだった。それですべてがうまく行くはずだったのだが……。

 

 

 

 

 

 

 牧野は顔を上げた。八尾比沙子は近くにいるのかもしれない。探さなければ。彼女に会い、今、村で何が起こっているかを訊いて、これからどうするのか教えてもらわなければならない。牧野は八尾のベールを大事そうに懐にしまうと、河川敷の道を進んだ。

 

 しばらく進むと右手側に階段があり、堤防の上にあがれるようになっていた。牧野は階段を上り、そして、目の前に広がる光景に、呆然と立ち尽くした。

 

 ――ここは、どこだ……?

 

 目の前には、古い木造の商店が軒を連ねていた。今にも崩れ落ちそうな食堂に、廃屋同然のタバコ屋。とても、営業しているとは思えない商店街だ。自分は、眞魚岩の広場から眞魚川に沿って南下して来たから、上粗戸の商店街に着くはずだ。上粗戸は、かつては大字粗戸という地名で、二十七年前の土砂災害で消滅した地域だ。近年の区画整理で新たな商店街が作られ、現在の地名に変わったのである。コンクリート製の立派な建物が並ぶ近代的な商店街で、こんな古い街並みではない。道に迷ってしまったのだろうか? ここまで暗い森の中を歩いてきたから、その可能性もあり得なくはない。しかし、羽生蛇村は小さな村だ。例え森の中で迷っても、牧野が知らない場所に出るということはないはずだ。

 

 呆然と立ち尽くす牧野。まるで、異世界に迷い込んでしまったような気分だ。

 

 突然、牧野の身体が大きく震え、一瞬だけ、堤防に立ち尽くす自分の姿が見えた。今のは何だ? 周囲を見渡す。商店街の方から、包丁を持った屍人がこちらに向かって来るのが見えた。

 

 牧野は求導師としては頼りない存在であるが、勉強だけは怠らなかった。眞魚教の聖典は何度も読んでおり、屍人に関する知識はあった。赤い水を体内に取り入れた人間の成れの果ての姿で、生きている人間を見かけると襲ってくる。それが眞魚教の求導師であろうとも関係ないだろう。牧野はとっさに走り出した。正面の食堂のそばにある細い道に駆け込む。道はそのまま表通りと並行するように南へ続いているようだ。そのまま走って逃げようとした牧野だったが、再び身体が震え、屍人の視界を感じた。今度は正面だった。鎌を持った屍人が、こちらに向かって来る。後ろには包丁を持った屍人が迫っている。挟まれた。逃げ場を探し、周囲を見渡す。食堂の裏口と思われる木製のドアが目に入った。牧野はドアを開け、中に入った。ドアを閉め、鍵をかける。もちろん、それくらいでは多少の時間稼ぎにしかならないだろう。室内を見回す。八畳ほどの縦に長い部屋で、手前に大きな冷凍庫、奥には流し台と食器棚があるだけだ。食堂の調理場のようである。隠れられるような場所は無い。冷凍庫のそばにドアがある。食堂のフロアへ通じていると思われるが、向こう側から鍵がかけられてあるり、開かなかった。逃げ場が無くなった。

 

 がちゃり、と、裏口のドアのノブを捻る音がして、牧野は悲鳴を上げる。何度もノブが回され、ドンドンとドアが叩かれる。今にも崩れ落ちそうな古い家屋だ。ドアが破られるのは時間の問題だろう。隠れる場所も逃げる場所もない。残された道は戦うことだけだが、牧野は生まれてから一度も、喧嘩などの争いごとをしたことが無かった。凶器を持った屍人二人を相手に戦うことなどできるはずもない。牧野にできることは、祈ることだけだった。調理場の隅に身を縮め、手を組み、救いを求め、祈った。それが眞魚教の神に救いを求めたのなら、まだ求導士としての面目は保たれたと言っていいのかもしれない。だが、この時牧野が救いを求めたのは神ではなく、求導女の八尾比沙子だった。

 

 ――ああ、八尾さん、助けてください! 八尾さん!!

 

 そのような祈りが通じるはずもないが、祈った瞬間、どういうわけか、ドアを叩く音は治まった。顔を上げる牧野。まさか本当に八尾比沙子が助けに来てくれたのだろうか?

 

「……八尾さん?」

 

 ドア越しに名を呼んでみた。返事は無い。冷静に考えれば、都合よくこの場に八尾比沙子が現れる可能性は低いだろう。では、何が起こったのだろう? 屍人はどうなったのか? ドアを開けるのを諦め、どこかへ行ってしまったのだろうか? そんな訳は無いと思うが、そのまま様子を見ていても、それ以上は何も起こらなかった。調理場に窓は無い。外の様子を窺うには、裏口のドアを開けるしかない。しかし、開けた瞬間、包丁か鎌で斬りかかられるということも十分に考えられる。いったい、どうすれば……。

 

 そこで牧野は気が付いた。自分は今、赤い水の影響で、幻視ができるということに。目を閉じ、外の様子を探る。すぐに映像が浮かび上がった。畑のような場所で、鎌を使って草を刈っている。食堂のすぐそばのようだ。さきほど正面から来た屍人で間違いないだろう。まるで、牧野のことなどすっかり忘れてしまったかのように、草刈りに没頭している。

 

 牧野は別の気配を探った。もうひとつの気配もすぐに見つかった。包丁を持った屍人は表通りを歩いていた。一瞬、食堂の玄関に回ったのかと思ったが、そのまま食堂の前を通り過ぎ、元いた場所に戻ってしまった。

 

 どうやら屍人はあまり頭が良くないらしい。想像でしかないが、牧野の姿を見て追いかけたものの、逃げ込んだドアを叩いているうちに、何をしているのかを忘れてしまったのだろう。牧野は大きく安堵の息を付いた。とりあえずの危機は去ったが、問題が解決したわけではない。表通りは包丁を持った屍人が警戒しているし、裏道は鎌を持った屍人が作業をしている。身動きが取れない。だが、このまま待っていても助けが来る保障は無い。行動を起こさなければ。やはり、戦うしかないだろう。何か武器になる物は無いだろうか? 牧野は調理場を探してみることにした。冷凍庫、食器棚、流し台の下、何かありそうな場所を全て探る。しかし、めぼしいものは何も無かった。見つかったのは、新聞紙、広報誌、手ぬぐい、ブタの貯金箱、そして、冷凍庫の中の腐った食料だけだった。調理場だというのに包丁一本見つからない。もっとも、仮に包丁があったとしても、それで屍人を刺したりする精神力が牧野にあるはずもないが。

 

 武器になりそうなものは無い。この身ひとつで、刃物を持つ屍人を突破しなければならないのか? ああ、せめて冷凍庫の電源さえ入っていれば。凍った食肉などは、立派な打撃武器になったかもしれない。

 

 そこで、牧野はひらめいた。先ほど室内を調べた時、冷凍庫は壊れているのではなく、単にプラグが抜けていただけだったことを確認している。また、流し台の蛇口からは、赤く染まってはいるものの、一応、水も出るようである。見つけた手ぬぐいを濡らし、それを凍らせれば、武器になるのではないだろうか? あまり名案とは言えないが、何も持たないよりははるかにマシだろう。牧野は水道から流れる赤い水で手ぬぐいを濡らすと、冷凍庫に入れ、プラグを差し込んだ。ぶうん、という、低い稼働音がする。念のため、幻視で屍人の動きを探ってみたが、音に気付いた様子は無かった。よし。時間はかかるが、これで一応、武器は確保できるだろう。

 

 他に何かできることはないだろうか? 見つけた新聞紙と広報誌を見る。火を点ければ武器や陽動に使えそうだが、残念ながらマッチもライターも無い。しかし、使い道がないわけではない。刃物を持つ暴漢と対した時、紙は決して馬鹿にできないものだ。雑誌やダンボールなどで刃物を防いだという話を聞いたことがある。新聞紙も広報誌も薄いもので頼りないが、これも、無いよりはマシかもしれない。牧野は広報誌を手に取った。

 

 と、何気なく広報誌に書かれてある文章を読んで、牧野は首を傾けた。広報誌は羽生蛇村役場が定期的に発行しているもので、土地区画整理に関する知らせだった。大字粗戸と波羅宿が対象で、地名も変更になるというものである。かなり昔の話だ。実際に区画整理が行われたのは十年ほど前だが、計画が上がったのは三十年以上前。牧野が生まれるよりも前の話だ。まさかこの広報誌は、そんなに古いものだったのか。発効日を見た。昭和五十一年七月発行、とある。随分と古いものを取ってあるな、と、牧野は思った。そう思うのが当然だったが、しかし、何かが心の中に引っかかった。

 

 ――まさか、な。

 

 牧野は心の引っかかりを解消しようと新聞紙を広げた。真っ先に日付を見る。昭和五十一年八月二日発行の物だった。

 

 それは、二十七年前の、あの土砂災害が起こる前日である。

 

 牧野の背中を、冷たいものが流れ落ちた。

 

 新聞紙も広報誌も、日付は古いが、最近発行された物のように、ほとんど痛んではいない。まるで、コレクターが細心の注意を払い保管していたもののようである。もちろん、その可能性も考えられるが、もしそうなら、食堂の調理場などに投げ出したりはしないだろう。

 

 牧野は、聖典・天地救之伝の一節を思い出した。

 

 ――末世において人の心の乱れ長きにわたり、地鳴りと豪雨と共に、今も昔もひとつとなる。

 

 まさか、この見知らぬ街は、二十七年前の土砂災害で消滅した、かつての大字粗戸の商店街だとでもいうのだろうか? もしそうならば、やはり、私は儀式に失敗したのだろうか……。

 

 ああ、八尾さん、私はどうしたら……。牧野は、懐にしまった八尾比沙子のベールを、ぎゅっと握りしめた。

 

 ガラガラガラと、引き戸が開く音がした。驚いて顔を上げる。真っ先に調理場の裏口を確認したが、閉ざされたままだ。音は、調理場の外から聞こえた。恐らく、この部屋の隣、食堂のフロアの入口が開いたものと思われる。誰か来たのだろうか? 牧野は目を閉じ、幻視で食堂内の気配を探った。すぐに見つけた。獣のような低く荒い息をしながら、店内を見回している。その右手に握られている物を見て、牧野は悲鳴を上げそうになった。拳銃だ。モデルガンであると思いたいが、その可能性は低いと思わざるを得なかった。屍人が下を向いた時、着ているものが見えた。薄いブルーのシャツに紺のスラックス、肩の近くに無線機、腰のベルトには拳銃のホルダーと警棒が下げられてある。警察官の格好だ。

 

 警官屍人は席に着くと、テーブルの上のメニュー表を見始めた。まさか、料理を注文するつもりだろうか? 店はどう見ても営業している雰囲気ではないが、屍人にそれが判るとは思えない。もし、誰も注文を取りに来なかったら、どうするだろうか? そのまま帰る、などと楽観的に考えない方が良い。恐らく、誰かいないかと、調理場を確認するはずだ。調理場とフロアをつなぐ扉は鍵がかけられているが、こちらから開かない以上、向こう側からは開けられるのだろう。まずいことになった。もう、ここにはいられない。氷のタオルは完成していないが、こんな狭い場所で拳銃を持った屍人と対峙するよりは、逃げ場のある外で鎌を持った屍人と対峙する方が、まだ生き残る可能性は高い。牧野は意を決し、裏口のドアから外へ出た。静かにドアを閉める。念のために幻視を行ったが、食堂の警官屍人も、隣の畑の鎌屍人も気付いていないようだ。ひとまず安堵する。

 

 だが、問題はここからだ。表通りも裏道も、屍人が待ち受けている。ヤツらに見つからないためには、どちらの道を進むべきだろうか? 牧野は幻視を続けつつ、様子を探る。表通りの包丁を持った屍人は、商店街を行き来し、油断なく巡回をしている。裏道の鎌を持った屍人は、畑の草刈りに没頭していた。どちらの道を行くかは明白だった。牧野は、裏道を少し進み、食堂の隣の畑の様子をそっと窺った。屍人は裏道に背を向け、一心に草を刈っている。こちらには全く注意を払っていない。行ける。そう確信し、牧野はゆっくりと、静かに、しゃがみ歩きで屍人の背後を通過した。思った通り、屍人が牧野に気付くことはなかった。

 

 畑の裏を無事に通り抜け、牧野は大きく息を吐き出した。このまま裏道を進むと、すぐに表通りと合流するようである。牧野は目を閉じ、幻視で道の先の様子を探った。すぐに、一人の屍人の視点を発見する。表通りに建つ古い木造の家屋の屋根の上で、ハンマーで外壁に釘を打ちつけている。畑の鎌屍人と同じく、牧野に背を向ける格好である。恐らく、先ほどと同じ要領で通り抜けられるだろう。牧野は目を開け、道を進んだ。表通りと合流し、道端に立つ火の見櫓の下を通り抜ける。屍人が釘を打つ音が、はっきりと聞こえる。通りの向こうの建物の屋根の上を見た。暗がりだが、うっすらと屍人の背中が見える。いまヤツが振り返ると見つかってしまうが、畑の屍人同様に、作業に没頭していて振り向く気配は無い。そのまま通り抜けた。しばらく進むと、バス停と、トタン製の小さな小屋があった。小屋の陰に身を隠した牧野は、再び大きく息を吐き出した。この先に屍人の気配は無い。もう安全だろう。

 

 しかし、少し道を進んで、牧野は愕然とした。木の板を何枚も貼り合わせて作ったバリケードが、道を塞いでいたのである。高さは五メートル以上あるだろう。とても乗り越えられない。ヤツらが作ったのだろう。道路の右側はコンクリートで舗装した三メートルほどの高さの崖になっており、その上はフェンスで囲まれている。フェンスの向こうは木々が生い茂る山だ。反対側は家屋が立ち並んでいる。これ以上は進めない。ああ、ここまで来て、また今の道を引き返すのか……牧野は心が折れそうになった。

 

 と、牧野の身体が大きく震え、屍人の視線を感じた。まずい、見つかった。

 

 次の瞬間、どさり、と、高いところから何かが落ちたような音がした。音のした方を見る。ハンマーを持った屍人が、ゆっくりと起き上っていた。屋根の上にいたヤツだ。作業に没頭して気付かないと思ったが、甘かったようだ。

 

 屍人は起き上がると、ハンマーを振り上げ、大股でこちらに向かって来る。あんなもので殴られたらただでは済まない。頭を打たれれば即死だ。こちらは武器も何も持っていない。逃げなければ。でも、どこへ? 周囲を見回す。バス停のそばのトタン小屋が目に入った。あの上に登ってやり過ごせないだろうか? 甘い考えだが、他に逃げ場はない。牧野は小屋へ走り、屋根の上にあがった。

 

 それは、まさに奇跡だった。少なくとも、牧野はそう思った。トタン小屋の屋根から崖の上を見ると、フェンスに大きく穴が開いており、その向こうに細い山道が続いている。屍人は迫ってきている。逃げるしかない。牧野はフェンスの穴を潜ると、山道を走った。

 

 ……ああ、八尾さん……八尾さん……。

 

 牧野は知らず、懐のベールを握りしめていた。屍人が追って来る気配は無い。それでも牧野は、足を止めることなく、走る。

 

 

 

 

 


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